血圧の下が高い場合の症状や取るべき生活習慣の改善方法を徹底解説

高血圧と言えば、上の血圧も下の血圧も高いイメージですが、どちらか一方の数値だけが基準より高い場合でも「高血圧」に該当します。そこで今回は、「上の血圧は正常なのに、下の血圧が高い」場合の高血圧に焦点を当てて見ていきます。下だけが高い場合でも、高血圧は長く続くと、脳や心臓などに、命に関わる危険な合併症を起こしてしまう怖い病気であることに変わりはありません。
ここではまず、「高血圧」「上の血圧」「下の血圧」などの知識を改めて確認していきます。その上で、下の血圧が高いことに関する原因、治療、対策などを一緒に見ていきます。
「そもそも下の血圧だけが高くなるのは、なぜなの?」「どうして下の血圧が高いと良くないの?」「下の血圧が高い場合にはどうしたら良いの?」など、下の血圧が高いことに関する疑問を一つ一つ解消していきましょう!

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01下の血圧の数値が90/100/110、いくつだと「下が高い」と考えられるのか
  2. 02下の血圧が高くなる理由
  3. 03下の血圧が高いことによる体への影響
  4. 04血圧の下が高い場合に特有の症状はあるのか
  5. 0520代なのに血圧の下が高い場合もある
  6. 06更年期で血圧の下が高い人もいる
  7. 07血圧の下が高い場合の生活習慣の改善方法・対策
  8. 08血圧の下が高い「拡張期高血圧症」の治療
  9. 09おわりに

下の血圧の数値が90/100/110、いくつだと「下が高い」と考えられるのか

ここがポイント!

  • 下の血圧(拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。)が90mmHg以上もしくは上の血圧(収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。)が140mmHg以上であれば高血圧
  • 下の血圧が90mmHg以上であれば「拡張期高血圧」、上の血圧が140mmHg以上であれば「収縮期高血圧」、両方(140/90mmHg以上)であれば「収縮期拡張期高血圧」
  • 下の血圧が高いと言えるのは、拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。が90mmHg以上

「高血圧」の数値について

最初に「高血圧」とされる血圧の数値について確認しましょう。
日本高血圧学会は、病院で測ったときに、上の血圧(収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。)が140mmHg以上もしくは下の血圧(拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。)が90mmHg以上である場合に「高血圧」と定めています。
高血圧は、上と下のどちらが高いかによって、次の3つに分類されます。
1.収縮期高血圧:上の血圧が高血圧範囲(140mmHg以上)で下の血圧は正常範囲(90mmHg未満)
2.拡張期高血圧:上の血圧は正常範囲(140mmHg未満)で下の血圧が高血圧範囲(90mmHg以上)
3.収縮期拡張期高血圧:上の血圧も下の血圧も高血圧範囲(140/90mmHg以上)
血圧値の分類

「下が高い」と言える数値

日本高血圧学会による高血圧の基準値を参考にすると、「下の血圧が高い」と言えるのは、下の血圧が90mmHgを超えている場合です。つまり、「拡張期高血圧」もしくは「収縮期拡張期高血圧」に該当した人は「下の血圧が高い」人と言えます。

高血圧の基準値について詳しくは「高血圧の診断基準を知ろう|自分の血圧は正常な数値か確認しよう」]をご参照ください。

参考


高血圧症発症チェック

下の血圧が高くなる理由

ここがポイント!

  • 細い血管で動脈硬化が進んでいると下の血圧が高くなる
  • その仕組みには動脈の「ふいご機能」と呼ばれる仕組みが関わっている!
  • 高血圧になりたての人や、60歳前の人が、比較的下の血圧だけ高くなりやすい
高血圧について確認が出来たところで、次は、下の血圧が高くなる理由を知るために、「上の血圧」と「下の血圧」の違いについて確認をしておきましょう。

そもそも血圧とは

心臓は、血液を全身へ送り出す「ポンプ」のような役割をしています。心臓は絶えず収縮と拡張を繰り返して血液を体の隅々まで送り出し続けています。血液の流れによって血管にかかる圧力が「血圧」です。血圧は心臓の動きに合わせて常に変動しています。

血圧について詳しくは【血圧の基礎知識】正常値と血圧が「高い」「低い」と判定される数値までをご参照下さい。

「上の血圧」と「下の血圧」の違い

心臓が収縮する「収縮期」には、血液が心臓から押し出されます。押し出された血液は、動脈と呼ばれる血管に一気に流れ込みます。このとき、血管には最も強く圧力がかかり、血圧は最大の数値を示します。そのため、収縮期の血圧を「収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。」「最大血圧」そして「上の血圧」と呼びます。

心臓が収縮すると、次は心臓が膨らんで、全身から血液が心臓に戻ってきます。それが「拡張期」です。拡張期では、次に説明する「ふいご機能」により、血管にかかる圧力は最も低く、血圧は最小の数値を示します。そのため拡張期の血圧を「拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。」「最低血圧」、そして「下の血圧」と呼びます。

「ふいご機能」とは

「拡張期」には、全ての血液が心臓に戻るのかというと、実はそうではありません。
「収縮期」に心臓から血液が押し出されると、心臓に直結した「大動脈」と呼ばれる太い血管が膨らんで、血液を一部溜め込みます。膨らんだ大動脈は、次いで拡張期に、それ自体が持つ弾力性によって元の太さに戻ろうとします。動脈が元の太さに戻ろうとしたときに、溜め込まれていた血液は、大動脈から動脈、細動脈と枝分かれして手足の先の方まで続く細い血管へ送られます。この動きを「動脈のふいご機能」と言います。このふいご機能が働くことで、拡張期にも体中の血液が全て心臓に引き上げられることなく、絶えず体中を循環しているのです。

以上が「上の血圧」と「下の血圧」の違いとその仕組みです。
「上の血圧」と「下の血圧」の仕組みと違い

下の血圧が高くなる大きな原因は「動脈硬化」

上の血圧と下の血圧の違いが分かったところで、下の血圧が高くなる原因について一緒に見ていきましょう。上の血圧が正常域なのに、下の血圧だけが高くなる大きな理由は、手足の先などにある細い血管が「動脈硬化」によって硬くなるからです。

肌などと同じく、血管も年齢を重ねるごとに老化して弾力を失っていきます。弾力を失った血管の壁は、血流による圧力を柔軟に受け止めて逃がすことが出来ず、傷付きやすくなります。老化に加えて、脂肪分の多い食事などの不適切な生活習慣を長期間続けていると、血液はドロドロになり、流れにくい血液が通う血管はさらに傷付きやすくなります。

血管の壁が傷付くと、傷付いた部分に血液中のコレステロールなどが付きやすくなります。血管の壁にコレステロールなどが付くと、それがきっかけでさまざまな細胞が反応し、徐々に血管の壁が盛り上がっていきます。すると、血管は硬くなり、血液の通り道も狭くなります。これが「動脈硬化」と言われる状態です。
動脈硬化の仕組み
「下の血圧」が生じる心臓の拡張期には、「ふいご機能」によって細い血管に血液が送られます。このとき、動脈硬化によって手先や足先の細い血管が硬くなり弾力性を失っていると、細い血管にかかる圧力を柔軟に逃がすことが出来なくなり、「下の血圧」が上がります。そして、心臓に近い太い血管では動脈硬化が進行しておらず、細い血管だけが硬くなっている場合には、上の血圧が正常域で下の血圧だけ高血圧という状態が起こります。このような状態は60歳くらいまでの人や高血圧になりたての人などに起こりやすいとされています。

参考


下の血圧が高いことによる体への影響

ここがポイント!

  • 下の血圧だけが高い人が脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などで死亡する確率は、正常な血圧の人と同じ
  • だからと言って下だけ高い状態を放っておくと、動脈硬化が進んで上の血圧も高くなる
  • そうなってくると、正常な血圧の人に比べて脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などで死亡する確率が高くなる
下の血圧が高い状態が続くと健康にどのような影響があるのでしょうか。

下が高いときに対策を立てないと上も高くなる可能性がある

下の血圧だけが高い状態をそのままにしておくと、徐々に上の血圧も高くなってしまう可能性があります。下の血圧が高い場合には、比較的細い血管が動脈硬化を起こしていると考えられます。これを放っておくと、やがて太い血管も含め、体中の血管で動脈硬化が進んでいきます。心臓に直結する大動脈などの太い血管で動脈硬化が起こると、心臓から血液を送り出すときに強い力が必要になり、上の血圧も上がります。

血圧が高い状態が続くとどうなるのか

高血圧が続くと、動脈硬化が徐々に進み、血管が詰まりやすくなります。脳や心臓の血管が詰まると、必要な酸素や栄養を、脳や心臓に送り届けられなくなります。これが高血圧の合併症として発症する脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。です。脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。は、程度によっては命を失うこともある危険な病気です。

高血圧の合併症について詳しくは「【高血圧の症状】頭痛・めまいなど高血圧によって引き起こされる主な症状をチェックしよう」をご参照ください。
高血圧は危険な合併症を招く
東北大学医学部公衆衛生学分野の研究グループは2000年に、米国医師会の内科専門誌「アーカイブス・オブ・インターナル・メディシン」において、下の血圧だけが高い場合、脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などで死亡する確率は正常な血圧の場合と差がないという論文報告をしました。一方で、上の血圧が高い、もしくは上の血圧と下の血圧の両方が高い人は正常な血圧の人に比べて、脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などで死亡する確率が高いという結果が同論文の中で示されています。

参考

  • eヘルスネット|厚生労働省
  • Hozawa A et al. Prognosis of isolated systolic and isolated diastolic hypertension as assessed by self-measurement of blood pressure at home: the Ohasama study. Archives of Internal Medicine. 2000; 160 (21): 3301-6.
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血圧の下が高い場合に特有の症状はあるのか

ここがポイント!

  • 高血圧では、合併症に関連して頭痛、吐き気、動悸などの症状が出ることがある
  • 下の血圧が高い場合も、高血圧による合併症に関連した症状が出る可能性がある
  • 下の血圧だけが高い場合は、上の血圧または上下両方の血圧が高い場合と比べて、症状が出る可能性は低い
高血圧は、特有な自覚症状がほとんど見られないことで有名ですが、血圧が高いことに関連して症状が出る場合もあります。下の血圧が高い場合はどのような症状が出るのでしょうか。

高血圧で起こり得る症状

まずは、一般的な高血圧の症状を簡単に挙げていきます。
高血圧では、「頭痛」「吐き気」「動悸」などの症状が出ることがあります。これらの高血圧による症状の多くは、脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などの合併症に関連して起こります。

高血圧の症状について詳しくは「【高血圧の症状】頭痛・めまいなど高血圧によって引き起こされる主な症状をチェックしよう」をご参照ください。

下の血圧が高い場合も症状が出るのか

高血圧治療ガイドラインでは、高血圧の重症度を、血圧の高さ別にI度、II度、III度と分類しています。一方で、上が高いか下が高いかによる、「収縮期拡張期高血圧」「収縮期高血圧」「拡張期高血圧」の分類による重症度の区別はしていません。この3種類の高血圧は、どの種類の高血圧でも頭痛などの症状が起こる可能性があると考えられています。
先ほど紹介した東北大学の研究論文で、「収縮期拡張期高血圧」と「収縮期高血圧」は正常域血圧に比べて、脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などで死亡する確率が高い一方で、「拡張期高血圧」、つまり下の血圧だけが高い場合には正常域血圧と死亡率に差がないと示されています。
この結果から、合併症による死亡率が正常血圧正常血圧(せいじょうけつあつ)収縮期血圧120~129mmHg/拡張期血圧80~84mmHgの血圧。正常な血圧である。心血管病の発症リスクは、至適血圧<正常血圧<正常高値血圧<高血圧の順で低い。と変わらない「拡張期高血圧」の場合、高血圧に関連した症状が出る可能性も「収縮期拡張期高血圧」と「収縮期高血圧」に比べて低いと考えられます。

参考

20代なのに血圧の下が高い場合もある

ここがポイント!

  • 若い人は血管に弾力性があるため、基本的に高血圧になりにくい
  • 若い人(一般的に35歳未満)がなる高血圧を「若年性高血圧(じゃくねんせいこうけつあつ)」と言う
  • 下だけが高くなるという特徴はなく、140/90mmHg以上とされている
  • 他の病気が原因で起こる「二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。」である場合が多い
高血圧は若い人よりも高齢者に多いというのは、経験から想像しやすいのではないでしょうか。一方で、20代であっても下の血圧が高くなる人もいるのです。

若いうちからなる「若年性高血圧」とは

高血圧の人の割合は、若い人ほど低く、高齢になるに連れて高くなっていきます。なぜなら、若い時は血管に弾力性があったのが、加齢によって動脈硬化が進行し、徐々に血管が弾力性を失っていくからです。
厚生労働省が行った平成26年の国民健康・栄養調査では、20代の平均血圧は115/71mmHgですが、30代、40代と徐々に上がっていき、70歳以上になると139/77mmHgまで高くなります。数字を比較すると、若い人は高齢者より血圧が低めだとはっきり分かります。
しかし、若いうちから高血圧になる人もいます。若い人の高血圧は「若年性高血圧」と呼ばれます。「若年性高血圧」には明確な定義はありませんが、一般的に35歳未満で血圧が140/90mmHg以上である場合とされています。国民健康・栄養調査によると、20代で高血圧である人の割合は20代全体の約5%、30代では約10%でした。

若年性高血圧の特徴

「若年性高血圧」の特徴は、若年という年齢以外に、その症状が起こる原因にもあります。若年性高血圧は、他の病気が原因となって起きている「二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。」である場合が多いのです。
高血圧は、血圧が上がる原因の違いによって大きく本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。」と「二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。に分けられます。
本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。は、食事や運動などの生活習慣の影響が考えられるものの、明確な原因が分からない高血圧です。一方、二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。とは、腎臓の病気やホルモンの病気などが原因で起こる高血圧です。
(詳しくは「【高血圧とは】高血圧の原因から予防法まで幅広く解説」を参照。)

参考

高血圧症発症チェック

更年期で血圧の下が高い人もいる

ここがポイント!

  • 女性ホルモンの「エストロゲン」には、動脈硬化を予防したり血圧を下げたりする働きがある
  • 閉経が近づくと、エストロゲンの分泌量が低下するため血圧が上がりやすくなる
  • 第一子妊娠中に高血圧や腎機能障害があった場合には更年期に高血圧になりやすくなる
  • 更年期の高血圧は、下だけが高くなるという特徴はなく、140/90mmHg以上とされている
女性の場合、閉経も血圧に影響を与えます。そのメカニズムについて見ていきましょう。

「更年期高血圧」とは

日本の女性は、50歳前後で閉経すると知られています。閉経する前後数年間を「更年期」と言います。卵巣の機能がストップしていく「更年期」には、ホルモンバランスの変化が起こり、その影響で更年期特有の症状が現れてきます。例えば体のほてり(ホットフラッシュ)や頭痛、イライラ、動悸、めまいなどが挙げられます。これらの更年期症状に加えて、更年期は血圧が上がりやすいという特徴があります。
エストロゲンは動脈硬化を防ぎ、血圧を下げる
更年期の血圧上昇に大きく関係しているのが、卵巣で作られる「エストロゲン」という女性ホルモンです。
エストロゲンは、動脈硬化のもとになる、悪玉コレステロールの値を低下させます。加えて、血管の壁に付いたコレステロールをはがす役割のある善玉コレステロールを増やします。
さらにエストロゲンは、血管の壁に直接作用し、作り出した「一酸化炭素」で血管の筋肉(血管平滑筋)の細胞の増殖を抑え、血管を広げる働きがあります。血管が広がると血圧は下がります。
これらの働きにより、エストロゲンには動脈硬化を抑えて、血圧を下げる作用があるのです。

女性は、閉経が近付くとエストロゲンの分泌量が徐々に減少していきます。エストロゲンが減少すると、動脈硬化を抑え血圧上昇を防いでいたエストロゲンの作用も低下してしまいます。そのため、更年期には血圧が上がりやすくなってしまうのです。米国で半世紀以上前から行われている大規模な心臓病の疫学調査「フラミンガム研究」により、閉経前の女性に比べ、50代以降の女性では心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などの心血管病を発症する危険性が急激に上昇すると示されています。

更年期高血圧になりやすいケース

米国で、医療界のゴールドスタンダードと言われるほどに評価されている総合病院「メイヨークリニック」の研究グループは2013年に、「最初の子どもを妊娠したときに妊娠高血圧症候群妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)妊娠20週以降産後12週までに、初めて発症した高血圧をいう。タンパク尿を伴う場合には、妊娠高血圧腎症に分類される。妊婦の約20人に1人の割合で起こり、重症の場合子癇(しかん)、肝・腎機能障害、HELLP症候群などを引き起こす。になった、あるいは腎機能障害によりたんぱく尿が出た」という人の場合、更年期に高血圧になりやすいという研究結果を報告しました。
もしも妊娠によって高血圧や腎機能障害を指摘された場合には、更年期高血圧になりやすいということを意識しておきましょう。

参考


血圧の下が高い場合の生活習慣の改善方法・対策

ここがポイント!

  • 下の血圧が高い場合の改善方法や対策は、一般的な高血圧に対する方法と同じ
  • 高血圧には生活習慣が大きく影響しているため、高血圧の改善には生活習慣の見直しが重要
  • 日本人は塩分を取り過ぎる傾向があるため、減塩を意識した食生活を送ろう
  • 肥満は高血圧の原因であるため、肥満につながる食生活や運動不足を改善しよう
  • 運動はややきついと感じる有酸素運動を、出来れば毎日30分以上行おう

「拡張期高血圧」の人が脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などで死亡する確率は、正常域血圧の人と比べて差がないことを示した研究をご紹介しました。一方で、下の血圧が高いということは動脈硬化が進行しており、放っておくと上の血圧も高くなってくる可能性が十分にあります。そのため、下の血圧だけが高い時から、高血圧を改善していく必要があります。
では下の血圧が高い場合、どのような改善方法や対策をとれば良いのでしょうか。

改善方法・対策は通常の高血圧と同じ

高血圧は、上が高いか下が高いかによって「収縮期拡張期高血圧」「収縮期高血圧」「拡張期高血圧」の3つに分類できますが、高血圧治療ガイドラインでは、「拡張期高血圧」に対する特別な対策法は書かれていません。そのため下の血圧が高い場合でも、高血圧に対する一般的な改善方法と同じように対策していきましょう。

では次から、一般的な高血圧対策について、簡単にご紹介していきます。

減塩を始めとした食事の見直しが重要

高血圧は「生活習慣病」と言われることからも分かるように、生活習慣が大きく影響しています。そのため、高血圧を改善していくためには生活習慣を見直していくことが重要です。
生活習慣の中でも、「食生活」は高血圧に強く影響しています。
あなたは普段、味が濃い食事を好み、味が薄いと感じたら、しょうゆなどの調味料を加え過ぎてはいませんか。味を濃くする塩分は、高血圧の原因の1つです。塩分を取り過ぎると高血圧になり、命に関わる合併症の原因となるため、厚生労働省は 塩分の摂取量を1日あたり男性8g、女性7gに抑えるよう推奨しています。しかし、実際の塩分摂取量は男性約11g、女性約9gと、推奨されている目標量を上回っています。普段から減塩を意識しつつ、食事をするようにしましょう。

減塩に加えて、高血圧を改善するためにはもう1つ、肥満にならないような、カロリーを抑えた食習慣にすることも大切です。肥満も高血圧の原因の1つだからです。
減塩・減カロリーを踏まえて、高血圧を改善するための対策法をご紹介します。

高血圧対策の食習慣のポイント

下の血圧が高い場合の改善方法・対策
  • みそやしょうゆなど塩分を多く含む調味料を減らし、酢、唐辛子、こしょうなどの塩分の少ないものを積極的に使おう
  • ラーメンなどの麺類はスープを飲み干さずに残そう
  • 栄養成分表示の食塩量、ナトリウム量(2.5倍するとおよその食塩量になる)、エネルギー量を確認して少ないものを選択しよう
  • 早食い、食べ過ぎ、夜遅くの食事などは避けよう

血圧を下げる食べ物について詳しくは【血圧を下げる食べ物】食材から飲み物・レシピ情報まで幅広く紹介をご参照下さい。

適度な運動の継続も重要

高血圧の対策方法としては、食生活の改善だけでなく、毎日の運動も重要です。あなたは普段、どれくらいの頻度で運動していますか。運動の習慣がない人は、食事による摂取エネルギーの方が消費エネルギーよりも多くなりがちです。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、体脂肪が増えて肥満につながります。肥満は高血圧の原因の1つです。そのため、高血圧対策のためには肥満にならないように定期的に運動をすることが重要なのです。
運動の中でも特に、ゆっくりとした呼吸で行う有酸素運動は、血圧を下げる効果があることが数々の研究により証明されています。

それでは、具体的な運動方法についてのポイントをご紹介します。

高血圧対策の運動のポイント

下の血圧が高い場合の改善法・対策
  • 出来れば毎日30分以上の運動をしよう(1回10分以上であれば、2~3回に分けて行っても良い)
  • ウォーキング、ジョギング、自転車、水中運動など、十分に酸素を取り込みながらできる有酸素運動を行おう
  • きつすぎる運動は血圧を上昇させるため、「ややきつい」と感じる程度の運動を行おう
  • 普段運動をしない人は、最初は「歩いて通勤する時間を増やす」「家事で体をこまめに動かす」など、簡単なことから始めて「継続」しよう


血圧を下げる方法について詳しくは【血圧を下げる3つの方法とは】食べ物・運動・薬について詳しくご紹介をご参照下さい。

参考

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血圧の下が高い「拡張期高血圧症」の治療

ここがポイント!

  • 高血圧そのものを根本的に改善するためには、大前提として生活習慣の改善が必要不可欠
  • 生活習慣の改善だけで高血圧が治らなかった人は病院で薬の治療が始まる
  • 下の血圧が高い場合に処方される可能性が高い降圧薬は「カルシウム拮抗薬」と「α1遮断薬」
  • 「カルシウム拮抗薬」と「α1遮断薬」はどちらも血管の収縮を抑えて血圧を下げる作用がある
  • 降圧薬による高血圧治療は、一時的に血圧を下げるものであり高血圧そのものを改善するものではない
下の血圧が高い場合、どのような治療が行われるのかを見ていってみましょう。

正しい食習慣と運動習慣は大前提

血圧を一時的に下げるのではなく、高血圧自体を根本的に治すためには、生活習慣の改善は必要不可欠です。高血圧を治すには、正しい食習慣と運動習慣は大前提だということを、まずは心得ておきましょう。

下の血圧を下げやすい薬が処方される

病院での一般的な高血圧に対する治療では、生活習慣の改善だけで高血圧が改善されない人には、降圧薬などの飲み薬が処方されます。降圧薬は、血圧を下げる仕組みによっていろいろな種類があります。
その中で拡張期高血圧に対して処方される場合が多いのは、血管を広げる作用のある「カルシウム拮抗薬」と「α1遮断薬」という薬です。心臓が膨らむ拡張期は、大動脈の弾力性によって手足などの細い血管に血液が流れます(動脈のふいご機能)。その時に「カルシウム拮抗薬」や「α1遮断薬」が作用して血管を広げることで、拡張期の血圧を下げることが出来ます。
それぞれの薬について簡単に説明します。

カルシウム拮抗薬

血管の収縮は、血管の細胞に「カルシウムイオン」が入ることがきっかけとなり起こります。「カルシウム拮抗薬」は「カルシウムイオン」が細胞に入る通り道を塞ぎます。そうすることで血管の収縮を抑えて、血管を広げ、血圧を下げます。

α1遮断薬

血管には「α1受容体」というものがあり、「ノルアドレナリン」という物質が結びつくと、血管が収縮します。「α1遮断薬」は「α1受容体」と「ノルアドレナリン」の結びつきを阻害します。すると、血管の収縮が抑えられて、血管が広がり、血圧は下がります。

降圧薬について詳しくは「降圧薬(降圧剤)について|知っておくべき主な4種類と効果・副作用を解説」をご参照ください。

「生活習慣改善+薬」で治療が行われる

降圧薬による高血圧治療は、生活習慣の改善による高血圧治療よりも即効性があります。また薬は飲むだけで終わるため簡単です。そのため、人によっては薬に頼りがちになって生活習慣の改善がおろそかになる場合もあります。しかし、薬による治療は、薬を飲んだ時に一時的に血圧を下げることが出来るだけで、高血圧そのものを根本から治すことはできません。薬を飲まなければ、血圧は高くなってしまいます。一方で、薬で一時的に血圧を下げ続けることは、合併症を防ぐために重要です。薬を飲んでいる場合にも、生活習慣の改善は必ず続けていくようにしましょう。

参考

おわりに

今回、下の血圧が高いとされる基準から、理由、症状、そして改善方法などを説明してきました。下の血圧が高いからといってすぐに命に関わる危険性は高くはありませんが、それが続くと合併症を引き起こして命を失うこともあり得ます。最悪の状況にならないためには、高血圧改善として生活習慣の見直しとその継続をしていくことが重要です。また、食生活や運動の改善を行っていく上では、自分がつらいと思う方法は途中で挫折して長続きしない可能性が高いということを心得ておき、無理な計画を立てないようにしましょう。大切なのは、継続です。適切な生活習慣を継続するために、自分の生活スタイルに合った方法を見つけて実践していくようにしましょう。

Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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