降圧薬(降圧剤)について:知っておくべき主な4種類と効果・副作用を解説〜市販薬や併用に関する注意点やグレープフルーツで起こり得る危険性なども降圧薬(降圧剤)について

高血圧治療の基本は「生活習慣の改善」と「降圧薬(降圧剤)治療」が2本柱とされています。

生活習慣の改善は主に「バランスの取れた食事」と「毎日の適度な運動」であり、皆共通です。一方、降圧薬の種類は実にさまざまで、種類ごとに血圧を下げる仕組みが違います。

病院では、そんなたくさんの降圧薬の中から、一人一人の血圧のレベルや他の病気の有無などを基に、その人の状態に合った主には4種類の降圧薬の中から適切と思われる薬を選んで処方してくれています。
ここでは降圧薬の種類、血圧を下げる仕組み、副作用から豆知識まで、降圧剤についてのさまざまな正しい知識を説明していきます。

実際に降圧薬を飲んでいるという人も、今のところ血圧は高くないという人も、降圧薬について一緒に確認していきましょう。

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伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01降圧薬/降圧剤とは
  2. 02最初に飲み始める降圧薬/降圧剤の種類を知ろう~第一選択薬~
  3. 03主な降圧薬/降圧剤の効く仕組み~作用機序を見てみよう~
  4. 04降圧薬/降圧剤の効果とその強さ~最も使われているCa拮抗薬で比較しよう~
  5. 05降圧薬/降圧剤で起こり得る主な副作用
  6. 06「Ca拮抗薬」を飲んでる人はグレープフルーツを食べてはいけない
  7. 07降圧薬/降圧剤は「配合剤(合剤)」もある
  8. 08降圧薬/降圧剤は種類によってどう使い分けられるのか
  9. 09降圧薬/降圧剤を点滴する場合もある
  10. 10豆知識1:降圧薬/降圧剤と市販薬
  11. 11豆知識2:降圧薬/降圧剤は英語で何と言うのか
  12. 12日本で販売が許可されている降圧薬/降圧剤の一覧表(2016年現在)
  13. 13まとめ

降圧薬/降圧剤とは

ここがポイント

  • 降圧薬と降圧剤は同じ意味
  • 降圧薬は高血圧治療で用いられる「血圧を下げる」ための薬
  • 降圧薬治療の最終目的は「心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる危険な合併症を予防する」こと
高血圧の治療の基本は「生活習慣の改善」と「降圧薬(降圧剤)治療」です。
生活習慣の改善については「【高血圧とは】原因・基準値から食事・運動による予防法、さらに薬の知識まで幅広く解説」で詳しく説明していますのでそちらをご参照ください。

ここでは、降圧薬について詳しく説明していきます。
「降圧薬」と「降圧剤」は、どちらも同じ意味で、文字通り「血圧を下げるための薬」のことです。
高血圧をそのままにしておくと、血管の壁に強い圧力がかかっている状態が続き、やがて血管がダメージを受けたことが引き金となり「動脈硬化」になってしまいます。動脈硬化は自覚症状がほとんどないまま進行します。そして動脈硬化が進行すると、ある日突然、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる危険な病気(合併症)を発症する恐れがあります。
突然の怖い合併症を防ぐため、高過ぎる血圧は下げなくてはなりません。これが高血圧はほとんど自覚症状がないにも関わらず、治療をする必要がある理由です。生活習慣の改善だけでは血圧が下がらない人は、降圧薬を飲み、薬の力を借りて血圧を下げる必要があります。降圧薬治療の目的は「血圧を下げること」ですが、その先にある最終目的は、「心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる危険な合併症を予防する」ことなのです。
降圧薬ってなに?
「降圧薬」と一口に言っても、たくさんの種類があり、血圧を下げる仕組みや副作用などはそれぞれ異なります。まずは降圧薬の「種類」について、順を追ってお話ししていきます。

参考

最初に飲み始める降圧薬/降圧剤の種類を知ろう~第一選択薬~

ここがポイント

  • 高血圧の治療で最初に飲むことになる降圧薬は「第一選択薬」と呼ばれる
  • 高血圧の第一選択薬は「Ca拮抗薬」「ACE阻害薬」「ARB」「利尿薬」の4種類
高血圧の治療で最初に飲むことになる降圧薬にはどのようなものがあるでしょうか。一緒に確認してみましょう。

第一選択薬は主に4種類

生活習慣の改善を行っても、血圧が目標の数値(降圧目標値)まで下がらなかった場合には、危険な合併症になるのを防ぐために、「降圧薬治療」が開始されます。
降圧薬治療で最初に処方される薬は「第一選択薬」と呼ばれます。
第一選択薬には、「カルシウム拮抗薬(Ca 拮抗薬)」「ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)」「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」「利尿薬」の4種類があります。
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第一選択薬のうち妊婦が飲んではいけない種類はあるのか

高血圧の第一選択薬のうち「ACE阻害薬」「ARB」は、「RA系阻害薬(レニン-アンジオテンシン系阻害薬)」に分類されます。この2種類の薬は、妊娠中の使用による胎児への影響が報告されており、妊婦の使用は避けるべき医薬品とされています。
報告されている主な影響は、「羊水が少なくなる」「早産」「胎児の発育が遅れる」「胎児死亡」などです。
妊娠前から降圧薬治療をしていた人は、気付かず飲み続けてしまっているケースもあるようです。降圧薬治療を行っている人、またはこれから降圧薬治療を始める人で、「妊娠した人」または「妊娠の可能性がある人」は、必ず担当医にその旨を伝えましょう。

参考

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主な降圧薬/降圧剤の効く仕組み~作用機序を見てみよう~

ここがポイント

  • 「Ca拮抗薬」はCaイオンが血管の細胞に取り込まれるのを邪魔することで血圧が上がるのを防ぐ(血圧を下げる)
  • 「ACE阻害薬」「ARB」はどちらもレニン‐アンジオテンシン系という血圧を上げる一連の仕組みの一部を邪魔することで血圧が上がるのを防ぐ(血圧を下げる)
  • 「利尿薬」は腎臓に働きかけて尿量を増やすことで血液量を減らして血圧を下げる
  • 第一選択薬以外にも「β遮断薬」「α遮断薬」「中枢性交感神経抑制薬」「末梢交感神経抑制薬」など交感神経系に働きかけて血圧を下げる降圧薬がある
降圧薬を飲むとどのような仕組みで血圧が下がるのでしょうか。降圧薬は、種類によって血圧を下げる仕組みが異なり、その人の健康状態に合った降圧薬が選ばれて処方されています。

Ca拮抗薬の効く仕組み

「Ca拮抗薬(カルシウムきっこうやく)」は、もともと心臓の太い血管(冠血管)の収縮を防ぐ作用により、狭心症を治療する薬として開発されたものでしたが、全身の血管の収縮を防ぐ作用もあるため、降圧薬としても使用されるようになりました。
Ca拮抗薬にはいくつか種類があり、不整脈など高血圧以外の治療に主に使われるものもあります。ここでは、主に降圧薬として使われている「ジヒドロピリジン系」のCa拮抗薬について説明をします。

血管の壁には、平滑筋という筋肉の細胞があります。この細胞に「Caイオン」という物質が取り込まれると、血管が収縮して細くなり、血圧が上がります。
Ca拮抗薬の「拮抗」とは、Caの作用を邪魔して、血管を収縮させる働きを弱めるという意味です。具体的にCa拮抗薬には、血管の細胞にある「Caイオンの取り組み口(Caチャネル)」を塞ぐ作用があります。取り込み口が塞がれるため、血管の細胞はCaイオンが取り込めなくなります。これによりCaの作用が弱まり、血管の収縮が抑えられ、結果として血圧が下がるのです。
また、Ca拮抗薬は、心臓の筋肉細胞にも働きます。心臓が収縮する力を弱めて、送り出される血液量を減らすことで血圧を下げる作用もあります。
カルシウム拮抗薬の作用

ACE阻害薬の効く仕組み

私たちの体には「レニン・アンジオテンシン系(RA系)」と呼ばれる、血管を収縮させて血圧を上げる一連の仕組みが備わっています。この仕組みでは、肝臓で作られた「アンジオテンシノーゲン」という物質を、数種類の酵素が何度か分解して形を変え、最終的に血圧を上昇させる物質である「アンジオテンシンII」にします。
レニン・アンジオテンシン系と降圧薬
「ACE」という酵素の働きを妨害して、血圧を上げる物質「アンジオテンシンII」が作られるのを防ぐことで血圧を下げているのが、「ACE阻害薬」の働きの仕組みです。

ARBの効く仕組み

「アンジオテンシ」が血圧を高くする作用は、アンジオテンシンIIが、それを受け止める「アンジオテンシンII受容体」というタンパク質にくっつくことで発揮されます。「ARB」は、「アンジオテンシンII受容体」の、アンジオテンシンIIがくっつく部分をあらかじめ塞いでしまう薬です。アンジオテンシンIIが受容体にくっつけないようにすることで、血圧を下げているのがARBの仕組みです。

レニン・アンジオテンシン系に働く降圧薬は、ACE阻害薬とARB以外に、レニンという酵素の働きを直接妨害する「DRI」という種類もあります。

利尿薬の効く仕組み

血液中の水分が増えると、血管を流れる血液量が増えて血圧が上がります。利尿薬は、簡単に説明すると尿を増やし、血液量を減らすことで血圧を下げる薬です。利尿薬は腎臓に働きかけて、ナトリウム(塩分)の排泄を促します。ナトリウムには水分を引き込む性質があるため、ナトリウムが排泄されれば水分も一緒に排泄され、血液量が低下するという仕組みになっています。

その他の降圧薬/降圧剤の効く仕組み

降圧薬は、第一選択薬の4種類以外に「α(アルファ)遮断薬」「β(ベータ)遮断薬」「中枢性交感神経抑制薬」「末梢交感神経抑制薬」などもあります。これらの薬には全て「交感神経」が関係しています。
私たちはストレスや緊張を感じると、交感神経の働きが活発になり「カテコールアミン」という物質を放出します。カテコールアミンは、細胞の「受容体」というタンパク質にくっついて作用し、血管を収縮させて血圧を上げます。

それでは、それぞれの薬がどのように血圧を下げているのか簡単に紹介していきます。

○α遮断薬・β遮断薬

カテコールアミンの受容体にはαとβの2種類があります。α受容体は血管に、β受容体は心臓に存在します。「α遮断薬」「β遮断薬」は、カテコールアミンが受容体にくっつけなくすることで血圧を下げています。

α遮断薬:血管の「α受容体」に作用します。カテコールアミンとα受容体の結合を遮断することで血管の収縮を防ぎ、血圧を下げます。

β遮断薬:心臓の筋肉に分布している「β受容体」に作用します。カテコールアミンとβ受容体が結合すると心拍数と血液を送り出す力が増えて血液量が増加し、血圧が上がります。β遮断薬はその結合を遮断することで血流量を少なくし、血圧を下げます。

α遮断薬とβ遮断薬の比較
種類 遮断する受容体 作用のメカニズム
α遮断薬 血管のα受容体 血管の収縮を防ぎ、血圧を下げる
β遮断薬 心臓のβ受容体 心拍数を抑えて血流量を減らし、血圧を下げる
*「αβ遮断薬」という、「α受容体」と「β受容体」の両方に作用する薬もあります。

中枢性交感神経抑制薬

中枢神経(脳と脊髄)に働きかけて、交感神経の働きを抑制し血管の収縮を防ぐことで血圧を下げます。

末梢交感神経抑制薬

体の隅々まで張り巡らされた交感神経に直接作用し、血管の収縮を防いで血圧を下げます。副作用が強いため、あまり使われません。

参考

降圧薬/降圧剤の効果とその強さ~最も使われているCa拮抗薬で比較しよう~

ここがポイント

  • Ca拮抗薬には長時間作用型と短時間作用型があり、降圧薬としては長時間作用型が適している
  • アムロジピンは最も作用時間が長く、1日1錠飲めばOK
  • 「DHP系」のCa拮抗薬は、降圧薬の中で最も降圧効果が高い
この章では、多くの人が飲んでいる「Ca拮抗薬」に着目して、薬を飲んでからどのくらいの時間で効果が現れ、どのくらいの時間持続した後に効果が切れるのかなど、詳しく解説していきます。

Ca拮抗薬の効果の持続時間を見てみよう

Ca拮抗薬には1日1回程度の内服で良い「長時間作用型」と、1日3回程度の内服が必要な「短時間作用型」があります。先ほど説明したように、Ca拮抗薬は狭心症の治療薬としても用いられますが、基本的に高血圧の治療薬として用いる場合には「長時間作用型」が適しているとされています。

高血圧の人に処方されることが多い「アムロジピン」はCa拮抗薬の中でも最も作用時間の長い薬です。アムロジピンの効果の持続時間は、1錠(5㎎)で39時間、つまり1錠飲めば、まる1日以上血圧を下げ続ける効果が続きます。

Ca拮抗薬の血圧を下げる力ってどのくらい

Ca拮抗薬には「ジヒドロピリジン(DHP)系」と「ベンゾチアゼピン(BTZ)系」の2種類があります。
DHP系のCa拮抗薬は、血管拡張作用が強く、現在使われている降圧薬の中で最も降圧効果が高いとされています。臓器への血流保持効果もあり、臓器に障害がある人や高齢者でも使用可能です。そのため、多くの高血圧の人が第一選択薬としてこの薬を処方され、飲んでいます。先ほどお話ししした「アムロジピン」も、DHP系のCa拮抗薬です。
一方、BTZ系は、作用は緩やかですが、心臓の病気を抱える人には使えない薬です。
多くの人が飲んでいる時間作用型のカルシウム拮抗薬
Ca拮抗薬は降圧薬として年齢を選ばず広く使われている一方で、心臓の力を弱める作用があるため、心不全や徐脈がある場合には使われません。また、心臓の力が衰えている可能性がある高齢者への使用やβ遮断薬との併用は十分に注意が必要であるとされています。

参考

降圧薬/降圧剤で起こり得る主な副作用

ここがポイント

  • Ca拮抗薬の主な副作用は手や足のむくみ
  • ACE阻害薬の主な副作用は乾いたせき(空咳)
  • 利尿薬の主な副作用はカリウムやナトリウムのバランスが崩れる電解質異常
  • β遮断薬の主な副作用は、脈が遅くなる不整脈(徐脈)
降圧薬は種類によって作用のメカニズムも異なれば、現れる副作用も異なります。もちろん副作用は全ての人に現れるわけではありませんし、現れた場合の症状にも個人差があります。

種類別、主な副作用一覧表

降圧薬の主な副作用を、まずは種類別に一覧でお見せします。

降圧薬の種類 副作用
Ca拮抗薬 局所性浮腫(むくみ)主に、足首、足の甲、下腿、まぶた、手指など、頭痛、ほてり感、動悸など
ACE阻害薬 空咳(からせき)、口の中・のど・まぶたなどの突然の腫れ(血管浮腫)、高カリウム血症など
ARB ACE阻害薬の特徴を併せ持つが空咳(からせき)の副作用がほとんどない薬
利尿薬 電解質異常(低ナトリウム血症、低カリウム血症、高カリウム血症など)、脱水、高尿酸血症(痛風発作の原因)、血糖値の上昇(耐糖能障害)、血液中での脂質の異常、など
β遮断薬 徐脈(脈が遅くなる不整脈)、気管支ぜんそくの悪化、糖尿病・脂質異常症の悪化

副作用で現れる咳の特徴

「ACE阻害薬」を飲むと、副作用で「空咳(からせき)」と呼ばれる「痰(たん)の絡まない乾いたせき」が出る場合が多く見られます。なぜ、ACE阻害薬を飲むと「空咳」が出るのでしょうか。

ACE阻害薬は、血圧を上げる物質の元となる酵素(ACE)の働きを阻害します。これにより、血圧の上昇は抑えられますが、同時に、気道を刺激する「ブラジキニン」の分解も抑えてしまいます。すると、「ブラジキニン」は体に蓄積し、その作用で「空咳」が出ます。ウイルスや細菌に感染しているわけではないので、痰の絡まない乾いたせきになります。

空咳が出始めるのは、薬を飲み始めてから数日後~数カ月後と人によってさまざまですが、ほとんどの人は、2~4週間程度で出始めます。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」には、空咳は薬を飲むのを中止すれば速やかに止まると記載されています。また、イスラエルの研究グループは1992年に、薬を中止ししなくても、約4割の人は空咳の副作用は自然に消えるか軽くなると報告しています。

副作用で認知症にもなるという噂は本当か

「血圧の薬で認知症になる」という噂がありますが、降圧薬治療による副作用が、認知症発症に影響していることを明らかにしている研究は今のところありません。また、降圧薬が高齢者の認知機能に影響を与えるとの報告もありません。
一方で、中年期に高血圧だった人は、高齢になったときに認知症になる危険性が高くなることが複数の研究で証明されています。そのため、高血圧治療ガイドラインでは、「中年期の高血圧は、認知症予防のためにも積極的に降圧薬治療を行うべき」と推奨しています。

参考

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「Ca拮抗薬」を飲んでる人はグレープフルーツを食べてはいけない

ここがポイント

  • Ca拮抗薬とグレープフルーツを一緒に摂取してはいけない
  • いけない理由は、薬の効果が高まって低血圧になったり副作用が出やすくなったりするため
  • グレープフルーツに含まれるNG物質は、薬の体内での分解を妨げる「フラノクマリン」
「薬と薬」や「薬と食品」との間には、相互作用が働いて薬が効き過ぎてしまったり、反対に薬の効果が弱くなってしまったりする組み合わせがあります。降圧薬では、グレープフルーツと一緒に摂取すると薬が効き過ぎてしまうものがあります。

グレープフルーツがNGな降圧薬

降圧薬の中で、グレープフルーツを一緒に取ってはいけないのは「Ca拮抗薬」です。Ca拮抗薬とグレープフルーツを一緒に摂取すると相互作用が働いて薬が効き過ぎてしまいます。

薬はその人にとって必要な量が処方されています。薬が効き過ぎてしまうということは、薬を多く飲んでいるのと同じなので、低血圧になってしまったり、副作用が過剰に出てしまったりする場合があります。

グレープフルーツに含まれるNG物質とは

Ca拮抗薬とグレープフルーツの相互作用は、グレープフルーツの中に含まれている「フラノクマリン類」という成分が原因で起こります。
一般に、口から服用した薬の成分は、食道から胃を通り主に「小腸」の血管から吸収され、肝臓を経由して心臓に到達し全身へと広がっていきます。
Ca拮抗薬は吸収される際に、小腸の表面にある「小腸上皮細胞」が出す「CYP3A4」という酵素によって一部が分解(代謝)されます。この酵素は肝臓にも存在しており、肝臓での薬の分解にも関わっています。
「フラノクマリン」には、この酵素の働きを妨げる作用があります。そのため、Ca拮抗薬の分解が抑えられ、吸収量が増加して血中濃度が高くなるのです。
ちなみに、グレープフルーツジュースにもフラノクマリンは含まれています。そのため、Ca拮抗薬を飲んでいる人はグレープフルーツジュースを飲んではいけません。
グレープルフーツとカルシウム拮抗薬の相互作用

グレープフルーツの量は関係あるのか

Ca拮抗薬を飲んでいる人は、少量であってもグレープフルーツを摂取してはいけません。
フィンランドの研究グループの報告によると、グレープフルーツジュースの場合には200ml程度であってもCa拮抗薬の効果が増加したそうです。さらに、同報告では、グレープフルーツを一度摂取すると、3~7日もの間、Ca拮抗薬に対する影響が持続すると示されています。

一般に、医薬品には「添付文書」というものが存在します。添付文書は、患者さんの安全を守るために、薬を正しく使う上で必要な情報を医師や薬剤師などに提供するもので、製薬会社が薬事法に基づいて作成しています。薬を処方する際には、医師や薬剤師が添付文書の情報に基づいて適切な説明をする必要があります。また、患者さんがその内容に従わない飲み方をして健康上の問題が起こった場合には、医師や薬剤師の責任が問われる可能性があります。、
このように、添付文書は法律に則って作成されたお薬の飲み方の説明書なのですが、例えばバイエル薬品が販売しているCa拮抗薬「バイミカード(一般名:ニソルジピン)」の添付文書には、グレープフルーツジュースを常飲していた人は、ジュースを飲むのをやめて4日後から薬を飲み始めるように記載されています。
高血圧治療のために飲んでいる薬が、かえって体に害を与えてしまっては意味がありません。
Ca拮抗薬を飲んでいる人は、「少しなら」などと決して思わず、グレープフルーツを食べないようにしてください。また、薬を飲むときは必ず用法容量を守って飲むようにしましょう。

参考

降圧薬/降圧剤は「配合剤(合剤)」もある

ここがポイント

  • 降圧薬の配合剤は「ARBと利尿薬」「ARBとCa拮抗薬」の2種類
  • 配合剤を使用すると薬の種類や量が減り、経済的負担も軽くなるというメリットがある
  • 配合剤は飲む量が固定されており状態に合わせて増減出来ないため第一選択薬としては使用されない
降圧薬の中には、作用のメカニズムが異なる2種類の薬を組み合わせた「配合剤」と呼ばれる薬も存在します。なぜ、このような配合剤が作られているのでしょうか。配合剤のメリットと種類について紹介します。

配合剤の種類とメリット

日本で現在使用が許可されているのは、「ARBと利尿薬」および「ARBとCa拮抗薬」の2種類の配合剤です。

配合剤の一番のメリットは、飲む薬の数を減らすことが出来ることです。薬の種類が減るので、薬の自己管理も簡単になります。実際に、「配合剤を使用している人は、ばらばらに数種類飲んでいる人に比べ、降圧薬治療を継続して主体的に取り組むことが出来、降圧目標値の達成度も上がる」という事実が複数の研究により示されています。
また、1錠にまとまっている配合剤の方が、ばらばらで処方してもらうよりも安価に設定されているので、経済的負担が軽減されるメリットもあります。

例えば、MSD社が販売するARBと利尿薬の配合剤「プレミネント(一般名:ロサルタン(50mg)/ヒドロクロロチアジド(12.5mg))」は、1錠の薬価が146.4円です。同じ量の薬を、配合剤ではなくばらばらで処方してもらうと、ニューロタン(ロサルタン(50mg))が143.4円、ヒドロクロロチアジド(ヒドロクロロチアジド(12.5mg))が5.6円で、合計149円になり、1錠当たり3.4円安くなります。
配合剤を選ぶメリット
配合剤はさまざまなメリットがある一方で、第一選択薬としては使用されません。配合剤は一回に飲む量が固定されているため、高血圧の状態によって、量を増減することが出来ないからです。基本的には、降圧薬治療を続けていき、ある程度血圧を下げるために必要な量が把握出来た人に対し、医師の判断で処方されます。

配合剤にジェネリック医薬品はあるのか

降圧薬の配合剤も、ジェネリック医薬品(後発医薬品)が登場し始めています。
ジェネリック医薬品は「これまでに有効性や安全性が実証されてきた薬と同等の効果が得られる、と認められた低価格な薬」です。ジェネリック医薬品は、新薬(先発医薬品)の特許が切れた後に製造販売されます。新薬と同等の成分を含みますが、研究開発に要する費用を低く抑えられるため、先発医薬品よりも薬の価格を低く設定することが出来るのが、ジェネリック医薬品のメリットです。

参考

降圧薬/降圧剤は種類によってどう使い分けられるのか

ここがポイント

  • 高血圧に併発している病気によっては、飲む降圧薬の種類が決められている場合がある
  • 他の病気がある場合には、降圧薬がその病気で飲んでも良いものかどうかを必ず確かめてから処方される

降圧薬治療の最終目的は、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる危険な合併症の予防です。降圧薬を飲んで目標値まで血圧を下げるためには、生活習慣の改善を心がけつつ、定期的に病院へ通って薬の量を調整してもらうことが必須です。
降圧薬治療の第一選択薬は「Ca拮抗薬」「ARB」「ACE阻害薬」「利尿薬」の4種類です。先ほどお話ししたように、この4種類の薬はそれぞれ血圧を下げる仕組みが違います。そのため、高血圧以外に持っている病気によって、積極的に使うべき降圧薬が異なります。

次の表は、医師が治療の際に参考にする「高血圧治療ガイドライン」に記載されているものです。この表には、併発している病気別に、積極的に使うべき降圧薬(第一選択薬の4種類とβ遮断薬)が示されています。

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出典:日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014

高血圧以外の病気を持っており、その病気に対して積極的に使用するべき降圧薬がある場合には、該当する種類の薬が積極的に用いられます。その人の病気の状態に合った降圧薬を使うことで、より血圧を下げる効果が高まると考えられています。

一方で、病気によっては、積極的に使用するべき降圧薬が指定されていないものもあります。積極的に使用するべき降圧薬が指定されていない病気を併発している場合には、薬を使用してはいけない「禁忌(きんき)」に該当する病気でないか、また薬を使用する際に十分に気をけなくてはならない「慎重使用例」に該当する病気でないかを考慮して決めます。

次の表には、主要降圧薬の禁忌や慎重使用例となる病気が示されています。

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出典:日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014

例えば、妊娠している場合には「ARB」「ACE阻害薬」は使用してはいけない(禁忌)とされています。また、利尿薬の使用も慎重に行うべきだと示されているのが分かります。

このように、降圧薬は、血圧の高さだけで選ばれているわけではなく、医師が体の状態を十分に確認した上で、選ばれているのです。

参考

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降圧薬/降圧剤を点滴する場合もある

ここがポイント

  • すぐに血圧を下げる必要がある「高血圧緊急症」のときには点滴の降圧薬が使われる
  • 高血圧緊急症とは「すぐに血圧を下げる治療を行わないと命の危険がある状態」

降圧薬には、点滴で血液中に直接薬を入れる注射薬タイプのものもあります。降圧薬を点滴で行う場合は、一体どのようなときなのでしょうか。

緊急の降圧治療が必要なときは点滴を行う

降圧薬を点滴する場合は、緊急で迅速に血圧を下げなくてはいけない場合です。点滴で直接血液中に降圧薬を入れると、すぐに血圧を下げることが出来ます。薬の効果は、速いもので1~2分、遅くとも10分程度で現れます。降圧薬の点滴は、主に「高血圧緊急症」の治療で用いられています。

すぐに治療が必要な「高血圧緊急症」とは

高血圧緊急症とは、「血圧の上昇(多くは180/120mmHg以上)によって、脳、心臓、腎臓、大血管などの臓器障害が急速に進行しており、すぐに血圧を下げる治療を行わないと命に関わる状態」です。単に血圧が高いだけでは「高血圧緊急症」には該当せず、緊急の降圧治療は行われません。

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高血圧緊急症における「臓器障害」に該当するのは主に、高血圧脳症、急性大動脈解離、肺水腫を伴う高血圧性左心不全、急性心筋梗塞、不安定狭心症、重症高血圧を伴う妊娠などです。

参考

豆知識1:降圧薬/降圧剤と市販薬

ここがポイント

  • 日本では、市販薬として販売が許可されている降圧薬はない
  • 降圧薬は医師によって処方される「医療用医薬品」に指定されている
  • 降圧薬を飲んでいるときに、市販薬を飲む場合には事前に医師に相談をすることが重要
ここまで色々見てきたように、降圧薬は、用法容量を守らないと、とても重い副作用を引き起こす恐れがあります。注意が必要な降圧薬ですが、市販薬はあるのでしょうか。また、風邪薬や漢方薬と一緒に飲んでも大丈夫でしょうか。疑問にお答えします。

降圧薬は医療用医薬品〜したがって市販薬はない

血圧を下げるための降圧薬は、用法容量を守って飲まないと副作用が現れたり血圧を下げすぎてしまったりと危険な薬でもあります。その作用から降圧薬は、リスクが最も高い医薬品の分類である「第一類医薬品」に指定されています。降圧薬は、医師の指示によって処方されるものであり、日本で許可された市販薬はありません。
また、降圧薬は高血圧の状態や心臓や腎臓などの臓器障害の有無によっても、量や飲むタイミングは人それぞれ異なり、医師はその人の状態に合わせて必要な種類、必要な量を処方しています。自己判断で飲む量を勝手に変えたりするのはとても危険です。絶対にやめましょう。
最近では、インターネットを経由して海外の降圧薬を購入出来るサイトもあるようですが、ネットで販売されている薬は国内で認可されていない成分を含む場合もあります。必ず病院で医師から処方された降圧薬を飲むようにしましょう。

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風邪薬などの市販薬と一緒に飲んでも大丈夫か

漢方薬や市販の風邪薬の中には、血圧を下げたり、反対に血圧を上げたりする作用を持つ成分が含まれているものがあります。そのため、降圧薬の効果に影響を与えてしまう場合があります。もし、漢方薬や市販の風邪薬を併用する場合には、必ずその旨を医師に相談してから飲むようにしましょう。風邪薬や漢方薬に限らず、市販薬やサプリメントは、飲み始める前に主治医に相談してください。

サプリメントについて詳しくは「【血圧を下げる3つの方法】食事・運動・飲み物・サプリなど、日頃の生活で実践出来る方法をご紹介」

参考

豆知識2:降圧薬/降圧剤は英語で何と言うのか

ここがポイント

  • 降圧薬は英語で「antihypertensive drug(アンティハイパーテンシブ・ドラッグ)」
  • 普段内服している人は海外旅行などの際に覚えておくと安心
降圧薬は、英語で「antihypertensive drug(アンティハイパーテンシブ・ドラッグ)」。

「anti(アンティ)」は日本語で「抗」を、「hypertensive(ハイパーテンシブ)」は「高血圧の」を、「drug(ドラッグ)」は「薬」をそれぞれ意味しています。それをつなげて、高血圧に対抗する薬と言う意味の「anti hypertensive drug」が「降圧薬」の英語です。
日本語を直訳したような英語なので、覚えやすいのではないでしょうか。
“I’m taking antihypertensive drugs orally.”(アイム・テイキング・アンティハイーパーテンシブ・ドラッグス・オーラリー)で、「私は降圧薬を内服しています」という意味になります。
降圧薬を普段から内服している人は、海外で体調が悪くなった時のために、英語での言い方を知っておくだけでもとても安心です。

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日本で販売が許可されている降圧薬/降圧剤の一覧表(2016年現在)

最後に、2016年現在、日本で販売が許可されている降圧薬の一覧表をお示しします。
降圧薬を飲まれている方は、自分の薬がどこにあるか、確認してみてください。

<降圧薬の一覧表>
降圧薬の種類 薬剤名:一般名(商品名
Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系) ・アムロジピンベジル酸塩(ノルバスク・アムロジン)
・ニフェジピン(アダラート・セパミット)
・二フェジピン徐放剤(アダラートL、セパミットRなど)
・二ソルジピン(バイミカード)
・ニトレンジピン(バイロテンシン)
・シルニジピン(アテレック)
・二カルジピン塩酸塩(ペルジピン・ペルジピンLA)
・アゼルニジピン(カルブロック)
・マニジピン塩酸塩(カルスロット)
・エホニジピン塩酸塩エタノール付加物(ランデル)
・フェロジピン(ムノバール・スプレンジール)
・ベニジピン塩酸塩(コニール)
・ニルバジピン(ニバシール)
・バルニジピン塩酸塩(ヒポカ)
・アラニジピン(サプレスタ・ベック)
アムロジピン・スタチン配合剤 アムロジピンべシル酸塩・アトルバスタチンCa水和物配合(カデュエット)
Ca拮抗薬(ベンゾチアゼピン系) ・ジルチアゼム塩酸塩(ヘルベッサー・ヘルベッサーR)
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 ・カプトプリル(カプトプリル ・カプトプリルR
・エナラプリルマレイン酸塩(レニベース)
・アラセプリル(セタプリル)
・デラプリル塩酸塩(アデカット)
・シラザプリル水和物(インヒベース)
・リシノプリル水和物(ロンゲス ・ゼストリル)
・ベナセプリル塩酸塩(チバセン)
・イミダプリル塩酸塩(タナトリル)
・テモカプリル塩酸塩(エースコール)
・キナプリル塩酸塩(コナン)
・トランドラプリル(オドリック ・プレラン)
・ペリンドプリルエルブミン(コバシル)
ARB(アンジオテンシンII(AII)受容体拮抗薬) ・ロサルタンカリウム(ニューロタン)
・カンデサルタンシレキセチル(ブロプレス)
・バルサルタン(ディオバン)
・テルミサルタン(ミカルディス)
・イルベサルタン(イルベタン・アバプロ)
・オルメサルタンメドキソミル(オルメテック)
・アジルサルタン(アジルバ)
利尿薬(サイアザイド利尿薬) ・トリクロルメチアジド(フルイトラン)
・ヒドロクロロチアジド(ヒドロクロロチアジド)
・ベンチルヒドロクロロチアシド(ベハイド)
利尿薬 (サイアザイド類似利尿薬) ・インダパミド(ナトリックス・テナキシル)
・メフルシド(バイカロン)
・トリパミド(ノルモナール)
・メチクラン(アレステン)
利尿薬 (K保持性利尿薬) ・スピロノラクトン(アルダクトンA)
・エプレレノン(セララ)
・トリアムテレン(トリテレン)
レニン阻害薬 ・アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)
β遮断薬 ・アテノロール(テノーミン)
・ビソプロロールフマル酸塩(メインテート・ビソノ)
・ベタキソロール塩酸塩(ケルロング)
・メトプロロール酒石酸塩(ロプレソール・セロケンなど)
・アセブトロール塩酸塩(アセタノール)
・セリプロロール塩酸塩(セレクトール)
・プロプラノロール塩酸塩(インデラル)
・ニプラジロール(ハイパジール)
・ナドロール(ナディック)
・カルテオロール塩酸塩(ミケラン・ミケランLA)
・ピンドロール(カルビスケン)
・ピンドロール徐放剤(ブロクリンL)
αβ遮断薬 ・カルベジロール(アーチスト)
・アモスラロール塩酸塩(ローガン)
・アロチノロール塩酸塩(アロチノロール塩酸塩)
・ラベタロール塩酸塩(トランデート)
・ベバントロール塩酸塩(カルバン)
α遮断薬 ・ドキサゾシンメシル酸塩(カルデナリン)
・ブナゾシン塩酸塩(デタントール・デタントールR)
・テラゾシン塩酸塩水和物(ハイトラシン・バソメット)
・ウラピジル(エブランチル)
・フェントラミンメシル酸塩(レギチーン)
中枢交換神経抑制薬 ・クロニジン塩酸塩(カタプレス)
・グアナベンズ酢酸塩(ワイテンス)
・メチルドパ水和物(アルドメット)
*高血圧緊急症の治療薬である硝酸薬、血管拡張薬については記載していません。

参考

まとめ

降圧薬には第一選択薬である「Ca拮抗薬」「ACE阻害薬」「ARB」「利尿薬」を始めとして、さまざまな種類があります。降圧薬は種類ごとに血圧を下げる仕組みが異なるため、病院でその人の血圧の値や他の病気の有無を詳しく調べた上で、その人に合った種類と量が処方されています。飲む量や飲む時間を自己判断で変更するのはとても危険です。絶対にやめましょう。また、ネットで個人輸入して飲んだりするのも危険です。
降圧薬は、血圧を下げる効果がありますが、その分副作用も多様です。そのため、降圧薬は医療医薬品に指定されており、医師の指示でのみ処方が可能です。医師の指示に従って、用法容量を守って正しく降圧薬を飲み、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる危険な合併症の予防につなげましょう。
Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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