【高血圧とは】高血圧の原因から予防法まで幅広く解説

みなさんは自分の血圧がどのくらいか知っていますか?
普段から血圧を測る習慣があったり、健康診断のときに測った自分の血圧を覚えていたりする人は少ないのではないでしょうか?
血圧がずっと高い「高血圧」は、代表的な生活習慣病の1つです。
高血圧の大きな特徴の1つは、自覚症状がほとんどないことです。だからといって気付かずに放っておくと、徐々に全身の血管がダメージを受けます。そして受けたダメージは、命に関わる重篤な合併症を引き起こす原因となってしまいます。
ここでは、知っているようで実はあいまいな、高血圧の原因、基準値、食事と動による予防法、薬の知識などについて、一挙に解説していきます。

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01そもそも「高血圧」とはどんな状態なのか
  2. 02「高血圧」と「高血圧症」
  3. 03高血圧の基準値
  4. 04高血圧の原因は1つではない
  5. 05高血圧を放っておいた場合に現れる症状
  6. 06高血圧予防のための食事方法
  7. 07高血圧の人が行うべき運動と避けるべき運動
  8. 08高血圧の治療で飲む薬
  9. 09まとめ

そもそも「高血圧」とはどんな状態なのか

ここがポイント!

  • 病院測定の場合、「収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。140mmHg以上または拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。90mmHg以上」が高血圧
  • 家庭測定の場合、「収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。135mmHgまたは拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。85mmHg以上」が高血圧
  • 高血圧の状態が長く続くと動脈硬化が進み、心臓や脳に致命的なダメージを受ける可能性が高くなる
「高血圧」は、一言で言うと血圧が高い状態ですが、血圧がどの程度高くなると「高血圧」と呼ばれるようになるのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

「高血圧」の状態に対して厚労省は?

厚生労働省は、高血圧を「血圧が高くなる病気で、脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)や心臓病のリスクを高める病気」と説明しており、日本人の約3分の1に当たる約4,000万人が、高血圧に該当すると予測されています。

血圧の数値は、いくつからが「高血圧」なのか

具体的な数値を見ていく前に、血圧について解説します。
血圧」とは、「血液が血管の中を流れる時に、血管の壁にかかる力」のことです。この力は、「血管を流れる血液量」と「血管の硬さ」で決まります。
また、血圧は「収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。(最大血圧)」と「拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。(最小血圧)」の2つの数値で表され、心臓は血液を全身に送り出すためのポンプの役割をしています。

収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。(最大血圧)」は、心臓がぎゅっと縮んで全身に血液を送るときに血管にかかる圧力です。もう一つの「拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。(最小血圧)」は、送り出していた血液が心臓に戻り、縮んでいた心臓が膨らんで元の形に戻るときに血管にかかる圧力のことです。つまり、2つの数値のうち高い方が「収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。」、低い方が「拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。」を指しているというわけです。
心臓の動きと血圧

では、2つの数値はいくつくらいから「高血圧」になるのでしょうか。
日本高血圧学会では、測定した条件に応じて基準値を決めており、具体的には、
病院測定の場合は収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。140mmHg、または拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。90mmHg以上(140/90mmHg以上)」家庭測定の場合は「拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。135mmHg、または収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。85mmHg以上(135/85mmHg以上)」
が、高血圧とされています。

一点注意すべきことは、高血圧の基準値は上記の様に測定条件ごとに決められていますが、血圧は、1日中一定の数値を示すものではないという点です。血圧は、日中に高くなる、睡眠中には低くなるなど、1日の中でさまざまな活動に応じて変動するものなのです。また、ストレスや緊張などにより「交感神経」という神経が活発に働くと、血圧は上昇します。このように血圧は高くなったり低くなったりするため、「ずっと血圧が高い状態」である「高血圧」と医師が診断する場合には、病院で月に1~2回程度測る血圧の数値よりも、家庭で毎日測定した血圧の平均値の方を重視した上で、慎重に診断すべきだと考えられています。

高血圧が全身の血管に及ぼす影響

高血圧の人の血管は、常に強い圧力がかかっている状態です。そのため、血管は次第にダメージを受けて、弾力性がなくなり硬くなっていきます。使い込んだゴムホースのようなイメージです。また、ダメージを受けた血管の壁に傷ができ、その傷に悪玉コレステロールなどが沈着することで「動脈硬化」が徐々に進んでいきます。
高血圧は動脈硬化につながる

確かに高血圧は140/90mmHgからということになっていますが、実は120/80mmHgを超えたあたりから脳梗塞脳梗塞(のうこうそく)脳の血管が詰まったり、細くなったりして、必要な酸素や栄養素が送られず、脳の細胞が死んだり、障害を受けてしまう状態。障害された脳の部位によって、様々な症状(麻痺や意識障害なぢお)が起こる。心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。を起こす危険が高くなっていくことが知られています。140/90mmHgは医療機関に行って治療を開始する際の目安です。血圧は低ければ低い方が良いという意識で家庭血圧家庭血圧(かていけつあつ)家庭で測定した血圧をいう。家庭血圧の高血圧の基準は、収縮期血圧135mmHg以上かつ/または拡張期血圧85mmHg以上をいう。診察室血圧よりも基準が低い。近年では、家庭血圧の測定値が診断や治療でも重要視されている。を測ったり、健康な生活を心がけるようにすると良いですね。

参考

あなたに合わせた生活・食事指導で高血圧改善

「高血圧」と「高血圧症」

ここがポイント!

  • 「高血圧」も「高血圧症」も、血圧が高い状態が続く病気を指し、重要な区別はされていない
  • 高血圧は自覚症状がほとんどないため、発見が遅れがち
  • 降圧薬は一時的に血圧を下げるだけ
  • 高血圧の根本的な治療には投薬ではなく、「生活習慣の改善」が必要
「高血圧」と「高血圧症」という二つの言葉があります。「高血圧」という言葉の方が、「高血圧症」よりも一般的によく知られ、用いられている場合も多いと思いますが、それぞれどのような違いがあるか、ご存知でしょうか。

高血圧と高血圧症

初めに、高血圧と高血圧症の区別について、お話しします。
結論から言うと、「高血圧」も「高血圧症」も、血圧が高い状態が続く病気を指し、重要な区別はされていません。

ただし、日本で保険診療を適用する際に使われている「保険病名(レセプト病名)」は、「高血圧症」とされており、「高血圧」という病名は保険病名として登録されていません。つまり、高血圧も高血圧症も同じ意味ですが、一般には「高血圧」と呼ばれることが多く、保険適用の際に書類上使われる病名が「高血圧症」というわけです。

つまり、医療機関側での扱いにおいて区別をされているだけですので、皆さん側は特に区別することなく、「高血圧」と呼んで問題ないでしょう。

高血圧はさまざまな要素が組み合わさって引き起こされる

高血圧は「本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。」と「二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。」の2つに分類されます。

本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。高血圧の約90%を占めています。単に「高血圧」と言った場合は、主にこちらを指します。明確な原因は解明されていません。遺伝や生活習慣(食事、運動、喫煙など)が要因であることは明らかになっています。
二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。特定の病気が原因となって引き起こされる高血圧です。多くの場合、原因となっている病気を治療することで、高血圧も改善されます。

このように、「二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。」は原因が特定出来ているものの、「本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。」は原因につながるさまざまな要因によって引き起こされている病気になります。

高血圧は症状に気付くのが難しい

高血圧になると、頭痛や疲れやすさなどの症状が現れることがありますが、ほとんどの場合は自覚症状がありません。さらに、これらの初期症状は風邪や単純なストレスによる疲労の症状に似ているため、これらの症状が「高血圧」からきていると気付く人はほとんどいないでしょう。高血圧は、初期症状に気付くのがとても難しいのです。

高血圧は治療が必要

症状も出ていないし、自覚症状もほとんどないのであれば、治療をしなくても、放っておいてもいいのではないか、と考える人もいるでしょう。

しかし、高血圧は別名「サイレントキラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれている恐ろしい病気なのです。
長期間放置されやすく、徐々に血管がダメージを受けてしまいます。血管が傷付くと、その部分にLDLコレステロールなどが沈着し、動脈硬化が進んでいきます。動脈硬化は、脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などの命に関わる病気を引き起こす原因となります。
高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺人者)」
つまり、高血圧は、自覚症状がなくとも「治療が必要」な病気です。早期に治療することで、血管へのダメージを最小限に防ぎ、危険な病気を防ぐことにつながります。

高血圧は薬を飲めば治るのか

高血圧になってしまったらどのような治療を受ければいいのでしょうか。
高血圧には、「この薬を飲めば治る」というような特効薬はありません。高血圧の治療で用いられる「降圧薬」は、血圧を下げるための薬です。しかし、降圧薬は、飲んでいるときだけ血圧を下げることが出来る薬なので、高血圧を根本的に治療するものではありません。根本的な治療には、生活習慣の改善が必要です。高血圧の人は、薬だけに頼らずに、食事や運動などを実践し、生活の見直しを行っていきましょう。

参考

高血圧の基準値

ここがポイント!

  • 高血圧の基準値は、病院で測った血圧が「140/90mmHg以上」
  • 数値によって、I度、II度、III度に分類されている
  • 正常値も「正常高値血圧正常高値血圧(せいじょうこうちけつあつ)収縮期血圧130~139/拡張期血圧85~89mmHgの血圧。正常域血圧の中で、最も心血管病のリスクが高く、高血圧を発症する確率も高い。」「正常血圧正常血圧(せいじょうけつあつ)収縮期血圧120~129mmHg/拡張期血圧80~84mmHgの血圧。正常な血圧である。心血管病の発症リスクは、至適血圧<正常血圧<正常高値血圧<高血圧の順で低い。」「至適血圧至適血圧(してきけつあつ)収縮期血圧120mmHg未満/拡張期血圧80mmHg未満の血圧。心血管病の発症率が正常血圧よりも低く、高血圧の発症リスクも低い。 」に分類されている
  • 血圧は、分類によって危険な病気(高血圧の合併症)の発症率が異なる
この章では、高血圧の基準値について日本だけでなく海外も含めて見ていきます。

日本高血圧学会によって「基準値」が定められている

高血圧の人は、脳梗塞脳梗塞(のうこうそく)脳の血管が詰まったり、細くなったりして、必要な酸素や栄養素が送られず、脳の細胞が死んだり、障害を受けてしまう状態。障害された脳の部位によって、様々な症状(麻痺や意識障害なぢお)が起こる。心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。などの、命に関わる危険な病気を発症する可能性が高くなります。日本では、先述した通りですが、日本高血圧学会が発表している「高血圧治療ガイドライン」に「収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。140mmHg、拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。90mmHg(140/90mmHg)以上」を高血圧と定めています。(「mmHg」は、圧力を表す単位です。)

血圧は値によって以下の表で分類することができます。またこの表は、病院で測定した場合の表となります。
血圧値の分類
出典:日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014
上の表は、縦軸が収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。、横軸が拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。を表しています。
診察室血圧診察室血圧(しんさつしつけつあつ)医療機関で測定した血圧をいう。診察室血圧の高血圧の基準は、収縮期血圧140mmhg以上かつ/または拡張期血圧90mmHg以上。(病院で測定した時の血圧)が「140/90mmHg以上」だった場合が「高血圧」です。
診察室血圧診察室血圧(しんさつしつけつあつ)医療機関で測定した血圧をいう。診察室血圧の高血圧の基準は、収縮期血圧140mmhg以上かつ/または拡張期血圧90mmHg以上。が「140/90mmHg未満」だった場合は、「正常血圧正常血圧(せいじょうけつあつ)収縮期血圧120~129mmHg/拡張期血圧80~84mmHgの血圧。正常な血圧である。心血管病の発症リスクは、至適血圧<正常血圧<正常高値血圧<高血圧の順で低い。」とされ、正常血圧正常血圧(せいじょうけつあつ)収縮期血圧120~129mmHg/拡張期血圧80~84mmHgの血圧。正常な血圧である。心血管病の発症リスクは、至適血圧<正常血圧<正常高値血圧<高血圧の順で低い。はさらに「正常高値血圧正常高値血圧(せいじょうこうちけつあつ)収縮期血圧130~139/拡張期血圧85~89mmHgの血圧。正常域血圧の中で、最も心血管病のリスクが高く、高血圧を発症する確率も高い。」「正常血圧正常血圧(せいじょうけつあつ)収縮期血圧120~129mmHg/拡張期血圧80~84mmHgの血圧。正常な血圧である。心血管病の発症リスクは、至適血圧<正常血圧<正常高値血圧<高血圧の順で低い。」「至適血圧至適血圧(してきけつあつ)収縮期血圧120mmHg未満/拡張期血圧80mmHg未満の血圧。心血管病の発症率が正常血圧よりも低く、高血圧の発症リスクも低い。 」に分けられています。
上記の3つの分類は全て正常値であるため、治療等の必要はもちろんないのですが、「至適血圧至適血圧(してきけつあつ)収縮期血圧120mmHg未満/拡張期血圧80mmHg未満の血圧。心血管病の発症率が正常血圧よりも低く、高血圧の発症リスクも低い。 」の人は、他の領域の血圧の人と比べると、心血管病の発症率が最も低いと知られています。次いで発症率が低いのが正常血圧正常血圧(せいじょうけつあつ)収縮期血圧120~129mmHg/拡張期血圧80~84mmHgの血圧。正常な血圧である。心血管病の発症リスクは、至適血圧<正常血圧<正常高値血圧<高血圧の順で低い。、その次が正常高値血圧正常高値血圧(せいじょうこうちけつあつ)収縮期血圧130~139/拡張期血圧85~89mmHgの血圧。正常域血圧の中で、最も心血管病のリスクが高く、高血圧を発症する確率も高い。という順番となっており、正常血圧正常血圧(せいじょうけつあつ)収縮期血圧120~129mmHg/拡張期血圧80~84mmHgの血圧。正常な血圧である。心血管病の発症リスクは、至適血圧<正常血圧<正常高値血圧<高血圧の順で低い。の中でも、値が低いほど心血管病の発症率は低いということが明らかになっています。

高血圧の基準値について詳しくは「高血圧の診断基準を知ろう|自分の血圧は正常な数値か確認しよう」をご参照ください。

豆知識1.世界的な基準値はあるのか

答えはイエスです。
WHO(世界保健機関)とISH(国際高血圧学会)が、高血圧に関連した命に関わる病気になる危険度などを考慮して定めた国際的な血圧の基準があります。日本の基準もこうした国際的な基準を考慮して定められています。現在は世界も日本も「140/90mmHg以上」を高血圧としています。

豆知識2.基準値の変遷には歴史がある

血圧の基準値は、昔から見ると徐々に変わってきています。

・<1970年代~1990年代の初頭>主に拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。のみが基準
・<1991年~>収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。の重要性が証明される
・<1997年~>降圧薬開始基準は、年々低くなっている
今では基準値については、だいぶ確立されて来ていますが、今後また変化が起きるということもあり得るでしょう。

豆知識3.高血圧は英語で何と言うのか

高血圧を英語では「high blood pressure(ハイ・ブラッド・プレッシャー)」と言います。海外に行ったときに体調が悪くなった際、自分の病状を伝えるのはなかなか難しいことですので覚えておいて損はないでしょう。

参考

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高血圧の原因は1つではない

ここがポイント!

  • 高血圧は原因によって、「本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。」と「二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。」に分類される
  • 高血圧の人のおよそ9割は「本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。
  • 本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。の原因はさまざまで遺伝や生活習慣(塩分の取り過ぎ、肥満、運動不足、喫煙など)が要因
高血圧は、血液量が増えたり、血管が細くなったり硬くなったりすることで、血管の壁にかかる圧力が高くなっている状態です。その原因にはどのようなものがあるのでしょうか。

多くの高血圧は直接の原因が不明

高血圧はその原因によって、「本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。」と「二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。」に分類されます。これまでに行われてきた多くの医学研究により、高血圧の人のうち約90パーセントは「本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。であると明らかにされてます。

本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。」は、「遺伝的要因」や「生活習慣による要因(環境的要因)」が深く関係していると考えられています。
遺伝的要因とは、生まれつき親から受け継いだ、高血圧のなりやすさのことです。生活習慣による要因としては、塩分の取り過ぎ、肥満、運動不足、喫煙などが挙げられています。一般的に、家族は生活習慣も似ているため、遺伝的に高血圧になりやすい人は、高血圧に関連する生活習慣にも該当している場合が多いと考えられています。

高血圧の要因 ~食事が最も重要

本態性高血圧本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)原因の明らかでない高血圧。高血圧の原因となる病気がなく、生活習慣の乱れなどが原因である。高血圧の約90%が本態性高血圧である。の発症に深く関係していると考えられている要因について、解説していきます。当てはまるものがないかチェックしてみてください。
高血圧を引き起こす原因

1.塩分の取り過ぎ

塩分を取り過ぎると、血液中の塩分濃度が上がります。塩分濃度の上昇を感知した私たちの体は、腎臓(血液から水分と老廃物をこして尿を作る臓器)からあまり水がこし出されないように作用するホルモンを放出します。水分が抜けると余計に塩分濃度が上がってしまうためです。この仕組みによって、塩分を取り過ぎると血液の中の水分が減らなくなり、通常よりも血液の量が多くなります。結果として、血液が血管の壁を押す力が大きくなり、血圧が高くなります。

また、塩分の取り過ぎは、血管を収縮させるホルモンを体内で多く放出させるように作用します。血管が収縮すると、血液はその分細い管の中を通ることになります。すると、通常と同じ量の血液が流れていても、細い血管の中では通常よりも血管の壁を押す力が大きくなり、結果的に血圧が高くなります。

2.肥満

ドロドロ血液と高血圧の関係性
これまでに世界各国で行われたさまざまな研究により、肥満の人は標準体重の人に比べて高血圧になりやすいと分かっています。肥満の人の血液は脂質が多くドロドロしています。そのため、細い血管を通るときに強い力が必要となり、血圧が高くなります。また、ドロドロ血液は長期的には動脈硬化をすすめ、血液を押し出すポンプである「心臓」にも負担をかけることで心臓を弱めていきます。
日本肥満学会(JASSO)の「肥満症の治療ガイドライン」によると、肥満症の人が体重を3~5%減量すると、血圧や血糖値が統計学的に顕著に改善されます。減量は、血圧を下げる効果があるというわけです。

インスリンと高血圧の関係性
肥満では、ドロドロ血液だけでなく、血糖値を下げるホルモンの「インスリンインスリン(いんすりん)膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞で作られるホルモン。血液中のブドウ糖を細胞や臓器に取り込ませる働きがあり、血糖値を下げる唯一のホルモンである。インスリンの分泌や効果に異常が生じると、糖尿病を発症することで知られている。」も、高血圧に関係してきます。肥満になるとインスリンインスリン(いんすりん)膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞で作られるホルモン。血液中のブドウ糖を細胞や臓器に取り込ませる働きがあり、血糖値を下げる唯一のホルモンである。インスリンの分泌や効果に異常が生じると、糖尿病を発症することで知られている。が多量に分泌されます。すると、インスリンインスリン(いんすりん)膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞で作られるホルモン。血液中のブドウ糖を細胞や臓器に取り込ませる働きがあり、血糖値を下げる唯一のホルモンである。インスリンの分泌や効果に異常が生じると、糖尿病を発症することで知られている。の働きによって、腎臓での「ナトリウムの再吸収」という働きが進みます。ナトリウム再吸収とは、腎臓で作られた「原尿」から、エネルギーを使ってナトリウムを能動的に血液中へと吸収する働きです。ナトリウムは食塩の成分のことです。従ってナトリウムの再吸収が進むと、体内に塩分が多い状態になるため、体は塩分を薄めるために血管内に水分を溜め込もうとします。その結果、血液量が増えて、血圧の上昇につながります。
また、インスリンインスリン(いんすりん)膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞で作られるホルモン。血液中のブドウ糖を細胞や臓器に取り込ませる働きがあり、血糖値を下げる唯一のホルモンである。インスリンの分泌や効果に異常が生じると、糖尿病を発症することで知られている。が過剰に分泌されると交感神経という神経が刺激されて、血液中に「カテコールアミン」という物質が放出されます。「カテコールアミン」には末梢血管を収縮させる働きがあるため、血圧が上昇します。

3.喫煙

たばこに含まれる「ニコチン」は、副腎という臓器に作用し、血圧を上げるホルモンの分泌を促します。また、ニコチンには血管を収縮させる作用もあります。血管が収縮すると、血圧が上がります。
さらに、たばこには、血圧の上昇につながる「一酸化炭素」も多く含まれます。
赤血球には、酸素を運ぶ役割の「ヘモグロビン」という色素が存在します。一酸化炭素は酸素に比べて「ヘモグロビン」と200倍以上もくっつきやすい性質を持っています。そのため、酸素より優先的に一酸化炭素がヘモグロビンにくっついてしまい、体は酸素を運べなくなって酸欠状態となります。酸欠状態になると、体は何とかして多くの酸素を取り入れようとするため、脈拍が上がります。脈拍が上がるとその分血圧も上がります。これが、一酸化炭素で血圧が上がる仕組みです。

4.過度の飲酒

アルコールは少量であれば血圧を下げることもあります。しかし、大量の飲酒を続けると、交感神経のはたらきが活発になり、その作用で心臓の拍動が強まります。心臓の拍動が強いと、1回の拍動で心臓から送り出される血液の量が増え、血圧が高くなります。

高齢者の4割以上が高血圧。原因は?

加齢とともに血圧は上昇する傾向にあります。
厚生労働省が平成26年に実施した国民健康・栄養調査によると、日本の60歳以上の高齢者の4割以上が高血圧という結果でした。

血圧が加齢とともに上昇する主な理由は、年齢を重ねるごと動脈硬化が進み、血管は弾力を失い、圧力を吸収出来なくなるからです。また、動脈硬化が進んだ血管には、血液も流れにくくなり、心臓に負担がかかります。加齢が原因の場合、収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。は上昇しますが、拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。はそれほど大きく上がらないという傾向が見られます。そのため、収縮期血圧収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)心臓が縮んで、全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最大の値のこと。拡張期血圧拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)心臓が縮んだ後もとの大きさになり、全身から血液が戻るときに血管にかかる圧力。血圧を測定した時の最小の値のこと。の差が大きいことが、高齢者に多い高血圧の特徴だと知られています。

他の疾患が原因で起こる高血圧もある

二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。」は、何か病気にかかっていて、それが原因で血圧が上がり、結果として起こっている高血圧のことです。原因となっている病気を治療することで二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。は改善します。逆を言えば、原因となっている病気の治療をしない限り、高血圧の状態が続いてしまうということです。
二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。の原因には、甲状腺(甲状腺機能亢進症甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)甲状腺の活動が活発になり、甲状腺ホルモンが過剰に作られ、体の各組織にその作用が過剰に発現される内分泌疾患の一つ。主な症状には、動悸、息切れ、体重減少、血圧上昇、発汗、倦怠感などがある。 (バセドウ病))、腎臓(慢性糸球体糸球体(しきゅうたい)腎臓にある毛細血管が毛糸の球のように丸まっているもの。血液のろ過をする役割があり、体に不要な老廃物、塩分などをボーマンのうへこし出すことで、血液をきれいにしている。腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん))、副腎(原発性アルドステロン症原発性アルドステロン症(げんぱつせいあるどすてろんしょう)アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されている状態。原因の多くは、副腎(腎臓の上にある小さな臓器)に出来る腫瘍である。主な症状は高血圧症であり、二次性高血圧の原因で最も多い。低カリウム血症、多尿、テタニー(手足のしびれ、けいれん)などの症状が現れる場合もある。褐色細胞腫褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)主に副腎(腎臓の上にある小さな臓器)に出来る腫瘍であり、カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン・ドパミンの総称)を過剰に分泌する。高血圧、体重減少、頻脈、多汗、高血糖、頭痛など多彩な症状がある。(かっしょくさいぼうしゅ))などの病気があります。

高血圧の原因について詳しくは【高血圧の原因】塩分・アルコール・運動不足などで血圧が上がるメカニズムをご参照下さい。


二次性高血圧二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)特定の病気が原因となり引き起こされる高血圧。原因となっている病気の精査や治療が必要。の原因として最も多いのは原発性アルドステロン症原発性アルドステロン症(げんぱつせいあるどすてろんしょう)アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されている状態。原因の多くは、副腎(腎臓の上にある小さな臓器)に出来る腫瘍である。主な症状は高血圧症であり、二次性高血圧の原因で最も多い。低カリウム血症、多尿、テタニー(手足のしびれ、けいれん)などの症状が現れる場合もある。です。40代くらいの比較的若い層で顕著な高血圧を来す場合、この病気である可能性がとても高くなります。放っておくと50代や60代で腎不全や心不全になることもあります。逆に、きちんと診断できれば手術ですっかり治ることもある病気です。若い人の高血圧ほど、一度は信頼できる医療機関に相談することをお勧めします。


参考

高血圧を放っておいた場合に現れる症状

ここがポイント!

  • 高血圧は自覚症状がほとんどなく、知らないうちに重症化する
  • 高血圧の初期症状は、頭痛、倦怠感などで、疲労や風邪と勘違いしてしまうことが多い
  • 高血圧が重症化すると脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。・腎不全などの、命に関わる危険な病気を引き起こす
高血圧の状態が続くと、私たちの体にはいったいどのような症状が現れるのでしょうか。
高血圧の初期症状から重度の症状まで、順番に見ていきましょう。

高血圧は「サイレントキラー」~初期症状は出ていても気付くのが難しい

まずは、初期の高血圧で現れる症状について見ていきましょう。
実は、高血圧にははっきりとした自覚症状がほとんどありません。そのため、高血圧に気付かないで過ごしているうちに、いつの間にか重症化してしまい、突然死に至るような危険な病気を引き起こしてしまったというケースもあります。そのことから高血圧は別名「サイレントキラー」とも呼ばれているのです。

また、高血圧の症状が現れていても、初期症状は風邪や過労などで現れる症状と似ており、多くの場合勘違いして見逃されてしまいます。高血圧の症状を見逃さないために、勘違いしてしまいがちな高血圧の「初期症状」について1つ1つ確認していきましょう。
高血圧の初期症状

頭痛

高血圧により動脈硬化の進んだ脳内の血管が、一時的な血圧高値などの原因により破たんして、脳に合併症などの異常が生じると、頭痛が起こります。

倦怠感

高血圧に伴う心拍数の増加、心筋収縮力の増大などにより心臓への負担が大きくなります。心不全という状態になると、安静にしていたり少し体を動かしたりするだけでも疲れが出やすくなります。

鼻血

高血圧で血液量が増えているのに血流が悪い状態だと、血管壁に負担がかかって血管は破れやすくなり、出血しやすくなります。

このように、高血圧の初期症状は、高血圧の人にだけ現れる症状ではありません。そのため、これらの症状が現れていても、「今日はよく動いたから疲れているのかな」「パソコンを使い過ぎたために肩がこって頭痛がしているのだろう」などと、自分で判断してしまいがちです。

しかしこれらは、高血圧によって引き起こされている病気、つまり「高血圧の合併症」の初期症状である場合があります。

高血圧の合併症は、命に関わるような重大な病気に進行していくため、早いタイミングで気付く必要があります。

重症化すると現れる症状

高血圧の症状が進行すると、脳、心臓、肺など、生きる上でとても大切な臓器に影響が現れ、命に関わる危険な病気の発症につながります。これから、高血圧の合併症のサイン(初期の症状)とも考えられる症状を挙げていきます。これらの症状が現れた場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
高血圧合併症のサイン

手足のしびれ(脳梗塞のサイン)

高血圧の状態が続くと、血管が傷ついて、動脈硬化が引き起こされます。動脈硬化になると、脳に送られる血流が滞ってしまい、隅々の脳細胞までに栄養がきちんと行き渡りにくくなります。これにより、脳からの手足への神経伝達が正常に機能しなくなり、手足のしびれが引き起こされます。

むくみ(心不全のサイン)

高血圧の状態が続くと、腎機能が低下したり、心臓が血液を送り出す力が低下したりしていきます。すると、体内に血液が溜まってしまい、むくみを引き起こします。

動悸(どうき)や息切れ(心不全のサイン)

高血圧に伴う心拍数の増加、心筋収縮力の増大などにより心臓への負担が大きくなります。すると、安静にしていたり少し体を動かしたりするだけでも動悸や息切れが起こるようになります。

吐き気(脳出血・心筋梗塞のサイン)

高血圧による吐き気は2通りのメカニズムで起こります。
1)動脈硬化の進んだ脳内の血管が、一時的な血圧高値などの原因により破たんして、脳内に血液が留まると、脳の内圧が高まります。すると、脳内の延髄(えんずい)という場所にある嘔吐(おうと)を司る神経が刺激され、吐き気を引き起こします。
2)心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。によって心臓にダメージが生じると、心臓の近くを通る「迷走神経」という神経が刺激され、吐き気が起こると知られています。

胸の痛み(狭心症・心筋梗塞のサイン)

高血圧により、心臓の筋肉に栄養を供給している「冠動脈冠動脈(かんどうみゃく)心筋(心臓を動かす筋肉)に、必要な酸素と栄養素が含まれた血液を送る動脈で、心臓を囲むように存在する。(かんどうみゃく)」という血管の動脈硬化が進むと、心臓の筋肉に十分な血液量が供給されず、胸の痛みが引き起こされます。

呼吸困難(心不全のサイン)

肺には、肺動脈、末梢血管、毛細血管があります。高血圧によってこれらの血管に動脈硬化が起こり血液の流れが悪くなってしまうと、肺の機能低下が起こります。すると、酸素を取り込んだり二酸化炭素を排出したりすることがうまく出来なくなり、呼吸困難を引き起こします。

このように、高血圧の合併症のサインも実にさまざまです。高血圧は、各臓器や血管にダメージを与えることで、これらの症状を引き起こします。そしてこれらの症状は、危険な病気のサインである場合があり、それに気付くことがとても重要なのです。

高血圧の症状について詳しくは【高血圧の症状】頭痛・めまいなど高血圧によって引き起こされる主な症状をチェックしようをご参照下さい。

進行した先にある、命の危険につながる高血圧の合併症

高血圧は、特有の自覚症状というものがない病気です。前の章でお話ししたような「サインとなる症状」が現れないまま、いきなり命にかかわる危険な状態になる場合もあります。高血圧は、血管に高い圧力がかかる状態です。血管は、体の隅々まで張り巡らされているため、高血圧の合併症は全ての臓器に起こり得ます。ここでは、脳・心臓・腎臓に関する合併症に焦点を当てて説明していきます。高血圧の合併症は命に関わるものが多く、気が付いたときには手遅れになる、という可能性が無いとは言い切れません。
それでは、高血圧の合併症を具体的に見ていきましょう。
高血圧による合併症

脳に関する合併症

脳梗塞(のうこうそく)
高血圧により動脈硬化を起こしている脳の血管に、「血栓」という血液の塊が詰まることで発症します。血管が詰まると、その先に血液が流れて行かないため、酸素や栄養分を届けることが出来なくなります。すると、その部分の脳細胞は死んでしまい、まひや言語障害がもたらされます。

脳出血、くも膜下出血
高血圧により動脈硬化を起こしている脳の細い血管の壁に、高い圧力がかかり続けると、その血管は遂には破裂します。すると、脳内で出血が起こります(脳出血)。出血した血液は、脳内で「血腫(けっしゅ)」と言われる塊になります。血腫は大きくなって脳を圧迫し、まひや意識障害を引き起こします。死亡する例もあります。
特に「くも膜下出血くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ)脳動脈瘤という血管の膨らみが破れて、出血することで起こる。脳の髄膜は3層構造になっており、中間のくも膜と脳の間で、出血が起こった場合にくも膜下出血と呼ばれる。突然の激しい頭痛で発症する。」は、頭蓋骨と脳の間にある「くも膜」という部分に出来た動脈瘤(どうみゃくりゅう)や動脈硬化が、血圧が高くなったときに破れて出血したものです。くも膜下出血くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ)脳動脈瘤という血管の膨らみが破れて、出血することで起こる。脳の髄膜は3層構造になっており、中間のくも膜と脳の間で、出血が起こった場合にくも膜下出血と呼ばれる。突然の激しい頭痛で発症する。は、前兆がなく突然起こることが多く、急に強い頭痛や吐き気を感じてそのまま意識を失ってしまうケースが多く見られます。重症度によっては死に至る、怖い病気です。

これら「脳出血」や「脳梗塞脳梗塞(のうこうそく)脳の血管が詰まったり、細くなったりして、必要な酸素や栄養素が送られず、脳の細胞が死んだり、障害を受けてしまう状態。障害された脳の部位によって、様々な症状(麻痺や意識障害なぢお)が起こる。」などの「脳血管障害」は、命を脅かす病気です。一命を取り留めたとしても、半身不随や脳機能障害など、その後の人生に影響するような重大な後遺症を引き起こしてしまう可能性のある病気です。

心臓に関する合併症

心不全
高血圧では、体を巡る血液の量が増えています。心臓はその分大量の血液を送り出し続けなければなりません。頑張って拍出量を増加させている心臓には、大きな負担がかかります。また、心臓が頑張ってたくさん働くようになると、筋トレをしているように、心臓の筋肉が反応して、心臓の壁は厚くなり、重さが増してきます。この状態を「心肥大心肥大(しんひだい)心臓の壁が厚くなり、大きくなった状態をいう。(しんひだい)」と言います。心肥大心肥大(しんひだい)心臓の壁が厚くなり、大きくなった状態をいう。が過度に進むと、ある時点から疲れ切った心臓は、そのポンプ機能が弱くなってしまい、体に血液をうまく循環させられず「心不全」の状態に陥ってしまいます。心不全になると、足がむくんだり、心臓の力が弱っているので少し運動しただけでも息切れ、だるさ、呼吸困難などの症状が現れたりします。

狭心症
高血圧が続いて動脈硬化が進むことで、心臓の動脈が狭くなり血液が流れにくくなってしまいます。これは「狭心症発作」が起こるきっかけになります。狭心症発作は、突然胸が強く締め付けられるような痛みや圧迫感が現れる、狭心症の発作症状です。

心筋梗塞(しんきんこうそく)
狭心症発作が起きても適切な治療を受けずに放っておくと、やがて心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。になります。高血圧による動脈硬化が原因で血流が悪くなり起こるのが上記の「狭心症」でした。「心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。」は、既に硬化している心臓の動脈にとどめのように「血栓」が出来て、完全に血流が途絶えてしまった状態です。血栓が詰まった部分から先の心臓の筋肉には、血液が流れず酸素や栄養が届かなくなります。すると、血液が流れない部分の細胞は死んでしてしまいます。この状態が「心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。」なのです。心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。が起きると胸に強烈な痛みを感じます。心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。による死亡率は非常に高く、命を取り留めたとしても多くの場合、後遺症が残ります。

腎臓に関する合併症

慢性腎不全・腎硬化症
高血圧が続くと、腎臓で血液をろ過する役割をしている「糸球体糸球体(しきゅうたい)腎臓にある毛細血管が毛糸の球のように丸まっているもの。血液のろ過をする役割があり、体に不要な老廃物、塩分などをボーマンのうへこし出すことで、血液をきれいにしている。(しきゅうたい)」という部分へ血液を送る「細動脈(さいどうみゃく)」が傷つき、細動脈で動脈硬化が起こります。豊富な血流を必要とする糸球体糸球体(しきゅうたい)腎臓にある毛細血管が毛糸の球のように丸まっているもの。血液のろ過をする役割があり、体に不要な老廃物、塩分などをボーマンのうへこし出すことで、血液をきれいにしている。で血液の流れが悪くなると、徐々に糸球体糸球体(しきゅうたい)腎臓にある毛細血管が毛糸の球のように丸まっているもの。血液のろ過をする役割があり、体に不要な老廃物、塩分などをボーマンのうへこし出すことで、血液をきれいにしている。が硬化してしまい、腎臓機能の低下(腎硬化症腎硬化症(じんこうかしょう)高血圧により、腎臓の毛細血管の動脈硬化が進むことで、糸球体が硬くなり、血液のろ過が上手に行えなくなる状態をいう。進行すると、慢性腎不全となり透析治療が必要になる。)が起こります。そして、ついには「慢性腎不全」に至ります。慢性腎不全になると、透析療法が必要となります。1回4,5時間の人工透析を、少なくとも週に2回、一生行っていくことになります。当然、その後の生活には大きな制限がかかることになります。

腎硬化症腎硬化症(じんこうかしょう)高血圧により、腎臓の毛細血管の動脈硬化が進むことで、糸球体が硬くなり、血液のろ過が上手に行えなくなる状態をいう。進行すると、慢性腎不全となり透析治療が必要になる。が原因で慢性腎不全になった人は、腎臓以外の動脈硬化も同時に進行しているため、命に関わる「心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。」や「脳血管障害」などを起こす危険性も高くなります。

その他の合併症

大動脈解離(だいどうみゃくかいり)・大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)
大動脈解離大動脈解離(だいどうみゃくかいり)大動脈は、内膜・中膜・外膜の3層構造になっている。何らかの原因で中膜が裂け、血液が外膜と内膜の間に流れ込み、縦方向に大動脈が裂けてしまう状態をいう。」と「大動脈瘤」は、どちらも体の骨幹をつなぐ「大動脈」の血管壁が破壊されることにより起こる病気です。大動脈は、脳や心臓、腎臓などの血管と違い、血管が狭くなって閉塞することはまれですが、高血圧が進むと血管の壁が壊されて、内側に瘤が出来たり(大動脈瘤)、血管壁を構成する外側と内側の層の間に血液が流れ込んで層構造が剥がれてしまったり(大動脈解離大動脈解離(だいどうみゃくかいり)大動脈は、内膜・中膜・外膜の3層構造になっている。何らかの原因で中膜が裂け、血液が外膜と内膜の間に流れ込み、縦方向に大動脈が裂けてしまう状態をいう。)します。これらがさらに進行すると、大動脈が破裂し、命の危険性が高くなります。

参考

あなたに合わせた生活・食事指導で高血圧改善

高血圧予防のための食事方法

ここがポイント!

  • 「塩分を控える」「飽和脂肪酸を控える」「野菜・果物・魚を積極的に食べる」ことが重要
  • カリウム、食物繊維を多く含む食材は予防に効果的なので積極的に取ろう
  • 緑茶に含まれる「カテキン」には、血圧上昇を抑制する効果がある
  • お酒の飲み過ぎは要注意
高血圧は生活習慣の改善が一番の予防法になるため、食事や運動においてそれぞれ気を付けるべきことについて説明していきます。

体内に取り込む「食事」に気を付けよう

ほとんどの高血圧は、遺伝と生活習慣が深く関係していることは明らかになっています。遺伝は、親から受け継いだ生まれつきのものなので、変えることは出来ません。しかし、生活習慣は「見直す」ことが出来ます。
生活習慣の中でも、特に「食事」は重要です。人間は、血圧に関連する栄養分を毎日体に取り入れているので、見直して改善すれば大きな効果が得られます。詳しく見ていきましょう。

予防のために食生活で見直したいポイント

高血圧を予防するには、食事のときに「塩分を控える」「飽和脂肪酸を控える」「野菜・果物・魚を積極的に食べる」ことが重要だとされています。あなたは、食事の際にこれらにどのくらい気を付けていますか?高血圧予防のために見直したいこれらのポイントを詳しく見ていきましょう。

塩分を控える

私たちは1日にどれくらいの塩分を取っているのでしょうか?厚生労働省が毎年行っている「国民健康・栄養調査」によると、日本人の塩分摂取量は1日平均10〜11gです。
それでは、1日にどれくらいの塩分を取ってよいとされているのでしょうか?厚生労働省は、国民の生活習慣病の予防のため、5年に1度、国民の「食事摂取基準」を見直しています。前回開かれた「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」により、2015年4月1日から、日本人の1日当たりの食塩摂取目標量は、男性8g未満、女性7g未満とされました。
参考までに、国際的に推奨されている1日の食塩摂取目標量を見てみましょう。世界保健機関(WHO)は、「成人の1日の食塩摂取目標量を5g未満にすれば、それが高血圧や心血管病の予防につながる」と呼びかけています。5gというのは、世界で行われた数々の医学研究の結果をもとに、WHOが基準とした値です。ずいぶん少ないなと感じるかも知れませんが、そう感じるということは、私たち日本人が、やはり塩分を取り過ぎているということに他なりません。

このように、塩分は血圧を上昇させる主な要因の一つであるため、減塩は高血圧予防においてとても重要なポイントなのです。

塩分量をチェックする
塩分を取り過ぎないためには、塩分が多く含まれている食品を避けるようにすることが大切です。
一般に販売される加工食品・生鮮食品の容器包装などには「栄養成分表示」が記載されています。栄養成分表示の中で、塩分は「ナトリウム量」として書かれている場合もあります。塩分量は「ナトリウム量(mg)×2.54÷1000」で計算出来ます。
計算するのが面倒な場合は、1食あたりに取っても良いナトリウム量の目安を知っておきましょう。厚生労働省が示している食塩摂取目標量をナトリウム量に換算すると、男性は約3,000mg、女性は約2,700mgです。1日3食とすると、1食あたりナトリウム900〜1,000mgが目安になります。

調味料のかけ過ぎには注意
塩分を取り過ぎないためには、食品の選び方に加えて、食べ方や調理方法も工夫していく必要があります。
まず、醤油やドレッシングなどの調味料による塩分の取り過ぎに注意しましょう。調味料による塩分の取り過ぎを防ぐために1番簡単な方法は、減塩の調味料を使うことです。もちろん、減塩だからと言って、調味料を使い過ぎないように気を付けましょう。例えば、調味料は「かける」のではなく、少しずつ「つけて」食べるのがお勧めです。また醤油差しなどを、ワンプッシュずつ出せるタイプのものにすると、かけ過ぎを防ぐ事が出来ます。

麺類を食べるときはスープを残す
麺類のスープには、大量に塩分が含まれています。国立健康・栄養研究所によると、スープを全部飲んだ場合、スープを全部残した場合と比べると食塩摂取量は3倍に増えます。ラーメンやうどんの汁などは飲み干さず、残すようにしましょう。

減塩のために工夫したい調理方法としては、唐辛子やわさびなどで辛味を出したり、酢やレモンで酸味を出したりするのがお勧めです。辛味や酸味によるアクセントで、減塩して薄味になったとしても、おいしく感じやすくなります。
高血圧予防のための減塩方法

飽和脂肪酸を控える

肉の脂身などに含まれる「飽和脂肪酸」を取り過ぎると、血中の脂質が増え、動脈硬化の悪化につながります。既にお話ししてきているように、動脈硬化は高血圧の原因となります。飽和脂肪酸の摂取を控えることは、動脈硬化の予防、引いては高血圧の予防につながるわけです。
飽和脂肪酸が多いのは、牛肉・豚肉・鶏肉、牛脂、ラード、ソーセージ、ベーコン、バターなどです。
おいしいからといってこのような食品をとり過ぎてはいませんか?これらの食品はとり過ぎないように注意しましょう。
食べ過ぎ注意!飽和脂肪酸の多い食品

野菜・果物・魚を積極的に食べる

野菜や果物に多く含まれている「カリウム」には、塩分の取り過ぎによる血圧上昇を防ぐ作用があります。そのため野菜や果物は、積極的に食べましょう。野菜はゆでるとカリウムが減ってしまうので、生で食べられる野菜は生でも食べることをお勧めします。また、果物は果糖を多く含み、取り過ぎは糖尿病糖尿病(とうにょうびょう)膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンという、血糖値を下げるホルモンの分泌が減少したり、効果が弱まったりすることで、血液中のブドウ糖濃度が高くなる状態をいう。β細胞が破壊され、インスリンの分泌がほどんどなくなる1型糖尿病と生活習慣病の一つである2型糖尿病の2つに分類される。や肥満など逆効果につながります。1日に取るべき果物の分量の目安は、自分の握りこぶし大で1〜2個分です。魚には、動脈硬化を抑制する不飽和脂肪酸という物質が多く含まれています。魚は1週間に魚料理5~7皿くらい(可能であれば1日1品)を目安に食べるようにしましょう。

予防につながる食事:食材やレシピのヒント

最初にもお話ししましたが、「血圧」は、「血液が血管の中を流れる時に、血管の壁にかかる力」のことです。この力は、「血管を流れる血液量」と「血管の硬さ」で決まります。そのため、血液量が増えたり、血管が硬くなったりすると血圧が上がってしまいます。ここでは、全身の血液量が増えてしまう仕組みを簡単におさらいしてから、血液量の増加を防ぐ栄養素について紹介していきます。

食べ物が原因で全身の血液量が増えてしまい血圧が上がる仕組み

全身の血液量はさまざまな要因によって変化します。
血液量に関連する要因の1つに「ナトリウム(Na)とカリウム(K)の量的バランス」があります。正常な状態では、ナトリウムは細胞の外(血液中)に、カリウムは細胞内にそれぞれ多く存在しており、お互いに一定のバランスを保っています。
食事などからナトリウムを多く取ると、血液中にナトリウムがたくさん取り込まれ、血液のナトリウム濃度が高くなります。血管の壁を構成する細胞は、血管内と血管外のナトリウム濃度を等しくするために、血管内に水分を引き込んでナトリウムを薄めようとします。そのため、体が水分を溜め込み全身を循環する血液量が増加します。
ナトリウムは食塩に含まれている成分であるため、食塩を多く含む食品を食べるということは、すなわちナトリウムを多量に摂取するということになります。塩分を多く摂取すると高血圧になるのは、このナトリウムと水分の動きによるものなのです。

ではどうしたら良いのか

食事などでカリウムを多く取ると、カリウムが細胞内に取り込まれます。すると、カリウムが入って来るのと引き換えに、細胞内のナトリウムが追い出されます。ナトリウムが追い出される際に、水分も一緒に出ていきます。こうして追い出されたナトリウムと水分は、最終的に尿として排出されます。すると全身の血液量は減少し、血圧が下がります。
ナトリウムやカリウムによる血圧量の変化

全身の血液量を減少させてくれる「カリウム豊富な食材」

カリウムが多く含まれる食材
全身を流れる血液量を減少させるには、「カリウム」が重要です。
いったいどのような食品にカリウムは多く含まれているのでしょうか。
カリウムが多く含まれる野菜は、ほうれん草、かぼちゃ、たけのこ、とうもろこしなどです。果物では、アボカド、バナナ、メロン、みかん、いちごなどに多く含まれます。
「カリウム」豊富な食材
カリウムを含む食材を調理する上でのポイント
カリウムは水に溶ける性質があります。そのため、ゆでてしまうと食品から流れ出てしまい、その分だけ摂取できるカリウムの量が減少してしまいます。生で食べられる野菜などは、出来るだけサラダのようにして生野菜として食べるようにしましょう。また、果物には「果糖」という糖分も多く含まれています。そのため、血糖値が高い人は果物を取り過ぎないように気を付けましょう。1日で、握りこぶし大くらいの果物を1~2個取るのが目安です。

腎臓が悪い人はカリウムを多く含む食品の摂取には注意が必要です。カリウム自体は、取り過ぎた分は尿から排泄されます。しかし腎臓が悪い人は排泄能力が低下しているため、取り過ぎた分のカリウムが体内に蓄積してしまい、脈の乱れや筋力の低下などの悪影響を与える場合があります。気になる人は、医師に相談しましょう。

食べ物が原因で血管が硬くなってしまい血圧が上がる仕組み

血管は本来硬いものではなく、ゴムチューブのように弾力性があります。年齢を重ねるに従って、血管の弾力性は低下し、硬くなっていくと知られています。これが「動脈硬化」です。
揚げ物や、肉の脂身ばかりを食べて、血液中にコレステロールなどの脂質が多い状態が続いていると、脂質が血管壁に付着して血液の通り道が狭くなります。すると血管壁が傷付いて、傷付いたところに脂質が付着しやすくなります。脂質が付着した部分から「動脈硬化」は進んでいきます。
動脈硬化により血管が硬くなると、血流量が増加したときに柔軟に対応出来ず、血液の圧力をまともに受けて血圧上昇の原因となります。血圧を下げるためには、脂っこい食べ物を避け、血液中のコレステロールを減らして動脈硬化を防ぐことが大切です。
動脈硬化による変化

血管が硬くなってしまう「動脈硬化」を防げる食材は「食物繊維」と「魚介類」

動脈硬化の予防効果がある食材を見ていってみましょう。

まずは、野菜などの「食物繊維を含む食材」です。
これまでの研究で、「食物繊維」には血中のコレステロールを減らす効果があることが分かっています。
食物繊維には水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」の2種類があります。

水溶性食物繊維
血中のコレステロールを減らす効果があるのは2つの食物繊維のうち「水溶性食物繊維」の方です。「水溶性食物繊維」は、オクラ、アボカド、なめこ、しいたけ、ひじき、海苔、わかめ、納豆、ごぼうなどに多く含まれています。
「水溶食物繊維」豊富な食材
不溶性食物繊維
「不溶性食物繊維」はコレステロールに直接的には働きませんが、便秘には効果的です。
便秘になると排便時に強くいきんでしまうことがあります。いきみは一時的ではあるものの、血圧上昇の原因になります。そのため、不溶性食物繊維を取って便秘を解消することも高血圧の予防に大切です。
「不溶性食物繊維」は、いんげん豆、こんにゃく、里芋、じゃがいも、えのきだけ、干ししいたけなどに多く含まれています。
「不溶食物繊維」豊富な食材
魚介類も動脈硬化予防には効果的
食物繊維の他に、魚介類も動脈効果の予防には効果的です。さんま、いわし、まぐろなどの青魚には「EPA(エイコサペンタエン酸)」、「DHA(ドコサヘキサエン酸)」といった質の良い脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)が含まれています。これらの脂肪酸の働きにより、血液がさらさらになり動脈硬化を防ぐことが出来ます。また、かき、ほたて貝、いか、たこなどに含まれる「タウリン」という物質にもコレステロールを減らして動脈硬化を防ぐ働きがあることが分かっています。
魚介類も動脈硬化を下げる効果がある
高血圧予防に適した食材を使おう
これまでに紹介してきた食材を取り入れて、高血圧予防のレシピを作ってみましょう。
高血圧予防レシピは「【高血圧におすすめの食事法】塩分の少ない食べ物・外食メニューまでを徹底解説」をご参照ください。

お茶と高血圧予防の関連性

緑茶に含まれる「ポリフェノール」の1種である「カテキン」という物質には、血圧を上昇させる「アンジオテンシンⅡ」という物質をつくる酵素の働きを抑える作用があります。そのため、緑茶を飲むことは、高血圧の予防につながるとする研究報告もあります。
血圧が気になる人は、毎日の食生活の中に緑茶を取り入れてみてはいかがでしょうか。
お茶と高血圧について詳しくは「【血圧を下げる3つの方法とは】食べ物・運動・薬について詳しくご紹介 」をご参照ください。

予防のために気を付けたい飲み物

高血圧予防のために、気を付けて飲まなくてはいけないもの、それは「お酒」です。
アルコールは少量であれば、血圧を降下させる作用があるという研究報告もなされています。ただしこれは一時的な作用です。アルコールは取り過ぎると、血管を収縮させて細くしたり、心臓の拍動を速めたりする効果があり、高血圧につながる危険性が高くなります。

では、具体的にどのくらいの量のお酒を飲むと、血圧が上がるのでしょうか。

米国カイザーパーマネンテ医療センターの研究グループが、アジア人を含めたいろいろな人種を対象に、普段飲んでいるアルコール量と血圧を比較した研究では、1日に飲んでいるアルコールが30mL多いごとに、血圧は平均で3mmHgほど高くなっていたという報告がなされています。

「日本酒1合」「ビール大瓶1本」「ウイスキーシングル2杯」「ワイン2杯」のそれぞれに含まれるアルコールは、「約30mL」です。
アルコール 30ml あたりのお酒の量
日本高血圧学会では、血圧を上げないために、1日のアルコール量を、「男性で20~30ml以下、女性で10~20ml以下」にするように推奨しています。お酒は飲み過ぎないように「節酒」を心がけましょう。
また、お酒を飲む際におつまみとして塩辛いものを多く取ることなども、お酒が高血圧につながる原因になります。高血圧予防のためには、アルコールの量だけではなく、おつまみのカロリーや塩分量にも注意していきましょう。

毎日の運動や体操も予防には欠かせない

運動不足は肥満の原因になります。先ほども説明したように、肥満は高血圧につながるということが、数々の研究により医学的に証明されています。そのため、高血圧を予防するためには、肥満の予防や治療が重要となります。
肥満を予防・治療するために最も大切なのは、高カロリーな食事の改善です。実際、食事の改善をせずに運動だけでやせるのは不可能であると、日本肥満学会作成の「肥満症の治療ガイドライン」にも書かれています。
一方で、肥満の予防や治療のためには、運動を習慣付け、運動不足を解消することも大切です。肥満を予防・治療するためには、食事に気を付けるだけではなく、運動や体操も日常生活に取り入れて、運動不足にならないようにしましょう。

厚生労働省による「健康づくりのための運動指針2013」では、週に「23メッツ」以上の身体活動を行うことが目標とされています。「メッツ」とは身体活動量の強さを現す単位です。座っている状態が1メッツ、歩行が3メッツに相当します。3メッツ未満の弱い身体活動は目標に含まれません。
下の表を参考に、健康のためにも週に23メッツ以上身体を動かすように心がけましょう。
運動・強度・生活活動

参考

高血圧の人が行うべき運動と避けるべき運動

ここがポイント!

  • 運動時に血圧は一時的に上昇するが、適切な運動を続けると、通常時の血圧は低下する
  • 予防のために、「ややきつい」程度の運動を毎日30分以上続けることが理想
  • 運動強度が強過ぎると急激な血圧上昇が考えられるため、注意が必要
ここでは高血圧予防と運動について、詳しく見ていきます。

運動不足は高血圧のリスクを上げる

運動不足によって、心臓や肺などの機能は徐々に衰えてしまいます。すると血液循環がスムーズにいかなくなり血圧が上がる原因となります。また、運動不足によって肥満になると血液はドロドロになり動脈硬化が促進され、さらに血圧が上がってしまいます。
運動は、心肺機能を強化し、肥満を防ぎます。そのため、高血圧予防にはとても大切なことなのです。

運動時や運動後の血圧

運動をすると一時的に血圧は上昇します。しかし、運動を続けると、筋肉に酸素や栄養が多く運ばれて血管が拡張します。血管の拡張は血圧の低下につながります。また、血圧を上げる「交感神経」の働きが緩和されて血圧が下がります。

血圧を下げるのに運動が効果的な理由

血管は、外膜・中膜・内膜の3層構造になっています。この最も内側の「内膜」を構成している細胞、つまり、血管の内側を覆っている細胞を「血管内皮細胞」と言います。

運動をすると、血管内皮細胞のはたらき(血管内皮機能)が改善され、血圧が下がるといわれています。
血管(動脈)の構造
血管内皮細胞は、一酸化炭素(NO)などの、「内皮由来血管弛緩因子(ないひゆらいけっかんしかんいんし)」という物質を出します。この物質には、動脈硬化を防ぐ働きがあります。もしも何らかの原因で血管内皮機能が低下すると、血管の動脈硬化が進展してしまい、高血圧につながります。反対に、運動による血管内皮機能の改善は、高血圧の予防につながるというわけです。

この他にも運動によって、血管の拡張、交感神経の働きの緩和、インスリンインスリン(いんすりん)膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞で作られるホルモン。血液中のブドウ糖を細胞や臓器に取り込ませる働きがあり、血糖値を下げる唯一のホルモンである。インスリンの分泌や効果に異常が生じると、糖尿病を発症することで知られている。の機能上昇による分泌量低下などが起こり、これらは全て血圧が上がるのを抑える効果があります。

高血圧の人に推奨される運動強度

血圧を下げるための運動法
ウォーキング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を行うことで、高血圧の予防につながるといわれています。

運動は定期的に(できれば毎日)30分以上を行うことを目標としましょう。また、継続して30分以上行わなくても、10分以上の運動を合計して1日30分超えれば良いとされています。多くの指針は最適な運動強度について、運動をしていて「ややきついな」と感じる程度を推奨しています。

厚生労働省による「健康づくりのための運動指針2013」では、身体活動を「運動」と「生活活動」に分けています。運動については先ほど説明した通りですが、この指針の中では、生活活動の身体活動度を増加させることも、とても重要視されています。

生活活動の身体活動度を増加させるためには、例えば通勤通学で電車や車を利用している人は、自転車に変えてみるというのも1つの方法です。往復それぞれ15分以上であれば、それだけで1日30分の運動を達成出来ることになります。自転車で通える距離でなければ、電車やバスを、目的駅の1駅か2駅手前で降りて、15分程度歩いてみるという方法もあります。その際は、ゆっくり歩くのではなく、早歩きを意識すると、より効果的です。
休みの日は気分を変えて、景色のいい場所でジョギングをしたり、ジムなどで水泳やエアロバイクなど漕いで汗を流したりしてみてはいかがでしょうか。

運動における「リスク管理(危険度管理)」とは

適切な有酸素運動を続けることで血圧が低下するとお話ししてきました。しかし、運動をすると一時的に血圧は上昇します。激しい運動を行った場合、血圧が急激に上昇するため、特に重症の高血圧の人は、激しい運動には注意が必要です。激しい運動の他にも、急激に力を入れる無酸素運動、腕立て伏せ、重量挙げ、けん垂などは危険です。高血圧の人が運動する場合には、適切な有酸素運動を行いましょう。
高血圧における運動について詳しくは「【血圧を下げる3つの方法とは】食べ物・運動・薬について詳しくご紹介」をご参照ください。

参考

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高血圧の治療で飲む薬

ここがポイント!

  • 生活習慣の改善だけでは血圧が下がらない場合に「降圧薬」による治療を行う
  • 降圧薬にはさまざまな副作用が起こり得るため、飲む際には注意が必要
  • 妊婦さんは飲んではいけない降圧薬もある
  • 降圧薬を飲んでいる人がそれ以外の薬を飲む際には、必ず主治医に相談すること
生活習慣の改善をしても血圧が下がらない場合には、その人の高血圧の程度に合った薬による治療が行われます。どのような人が、どのような薬を使って治療するのでしょう。これから、高血圧の薬物治療の基準と薬の種類について見ていきましょう。

高血圧で薬物治療を始めるタイミング

高血圧の治療には「生活習慣の改善」と「薬物治療」があります。まずは、「生活習慣の改善」による治療が行われます。しかし、生活習慣の改善だけでは十分に効果が得られなかった場合には、生活習慣の改善に加えて「薬物治療」を開始します。
日本高血圧学会によると、薬物治療を開始するタイミングは、血圧の高さと血圧以外の危険因子「高齢(65歳以上)、喫煙、脂質異常症脂質異常症(ししついじょうしょう)コレステロールや中性脂肪などの代謝に異常が生じ、血液中の脂肪分(血清脂質)が高い状態をいう。HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の値から、いくつかのパターンに診断が分かれる。、肥満、メタボリックシンドローム、若年(50歳未満)発症の心血管病」の有無で決められます。高血圧が重症な人ほど、薬物治療を開始するタイミングは早くなります。

高血圧の薬はたくさん種類がある

高血圧の治療では、血圧を下げる作用のある「降圧薬」が用いられます。
高血圧治療ガイドラインでは、「カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)」「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)」「アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)」「利尿薬」の4種類の降圧薬が、最初に飲み始める薬(第一選択薬)として推奨されています。これから、その4種類の「降圧薬」を紹介していきます。

カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)

「カルシウムイオン」は、血管が収縮する(血圧が上がる)ときに必要な物質です。カルシウム拮抗薬は、カルシウムイオンが血管の細胞内に入らないように邪魔することで、血管が収縮して血圧が上がるのを防ぐ薬です。降圧効果が高く、後で説明する「ARB」という薬に並び、よく使われています。
この薬はもともと、心臓の太い血管(冠血管)の収縮を防ぐ作用により、狭心症を治療する薬として開発されたものでしたが、全身の血管の収縮を防ぐ作用もあるため、降圧薬としても使用されるようになりました。
血管の収縮を防ぐことで血の巡りが良くなるので、冷え性の人に処方される場合もあります。脂質や糖の代謝に影響を与えないので、糖尿病糖尿病(とうにょうびょう)膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンという、血糖値を下げるホルモンの分泌が減少したり、効果が弱まったりすることで、血液中のブドウ糖濃度が高くなる状態をいう。β細胞が破壊され、インスリンの分泌がほどんどなくなる1型糖尿病と生活習慣病の一つである2型糖尿病の2つに分類される。をもった高血圧の人にもよく処方されます。
カルシウム拮抗薬には、年齢問わず狭心症の人にも有効な「ジヒドロピリジン(DHP)系」と、作用は緩やかですが心臓の病気を抱える人には使えない「ベンゾチアゼピン(BTZ)系」の2種類があります。
カルシウム拮抗薬の作用

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)

体には、「レニン・アンジオテンシン系(RA系)」と呼ばれる、血圧を上げる仕組みが備わっています。ARBはこの仕組みに働きかける薬です。ARBは、RA系の一部である「アンジオテンシンⅡ」という物質を受け止めて、血管を収縮させて血圧を上げるように作用する「アンジオテンシンII受容体」というタンパク質を邪魔することで、血圧を下げる薬です。ARBは、動脈硬化、腎障害、心肥大心肥大(しんひだい)心臓の壁が厚くなり、大きくなった状態をいう。・心不全などに対する予防効果もあることが証明されています。カルシウム拮抗薬と並び、一般的によく使われている降圧薬です。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)

この薬も、レニン・アンジオテンシン系に働きかける薬です。先ほど説明したアンジオテンシンⅡは、「ACE」という酵素の働きでアンジオテンシンⅠから作られます。ACE阻害薬は、ACEの働きを邪魔して、アンジオテンシンIが、血圧を上げる作用をもたらすアンジオテンシンⅡになるのを防ぎます。ACE阻害薬は、ARBと同様に、臓器を保護する効果が確認されており、脳・心臓・腎臓に合併症を持っている人や、糖尿病糖尿病(とうにょうびょう)膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンという、血糖値を下げるホルモンの分泌が減少したり、効果が弱まったりすることで、血液中のブドウ糖濃度が高くなる状態をいう。β細胞が破壊され、インスリンの分泌がほどんどなくなる1型糖尿病と生活習慣病の一つである2型糖尿病の2つに分類される。の人に対して特に処方されています。
ACE阻害薬による高血圧の治療効果はARBとほぼ同程度です。副作用で空咳が出る人がいるため、ARBの方が積極的に処方される傾向があるようです。一方で、ACE阻害薬はARBより費用が安いため、副作用やその他の状況を考慮しながら処方されています。
レニン・アンジオテンシン系と降圧薬

利尿薬

尿は、腎臓で血液からこし取られた「水分」や「体の老廃物」で出来ています。老廃物とは、主にタンパク質を代謝した際に生じた尿酸や尿素、古くなって死んだ細胞などです。利尿薬は、腎臓に作用することで水やナトリウムの排泄を促し、尿の量を増やします。利尿薬により尿の量が増えると、体を流れる血液と塩分の量が減少するため、血圧が下がります。利尿薬は、むくみのある人や食塩の影響を受けやすい高血圧の人によく処方されます。利尿薬は、多く服用しても効果は変わらず副作用が増えるため、副作用予防ために少量で処方されます。
利尿薬には、「サイアザイド系」「ループ利尿薬」「K保持性利尿薬」などがあります。

多くの人が飲んでいる「アムロジピン」

降圧薬と一言で言っても、種類はさまざまです。
その中でも一般的に飲んでいる人が多い「アムロジピン」という薬の特徴についてお話しします。
「アムロジピン」は、カルシウム拮抗薬に分類され高血圧や狭心症の治療に用いられています。カルシウム拮抗薬の中でも「第3世代」と呼ばれる新しい世代のもので、効き目が高く、副作用も少ないため、高血圧治療の第一選択薬とされています。

薬の持続力が高いため、1日1回の服用で効果が持続することもメリットとして挙げられます。さらに降圧薬は、種類によっては未成年や高齢者の服用が危険とされるものもありますが、アムロジピンは年齢を問わず飲むことができるため、特に合併症の多い高齢者に処方される場合が多いようです。アムロジピンはジェネリック医薬品のため価格も安く、経済的負担が少ないのも特徴です。
これらのさまざまな特徴が、アムロジピンが多くの医師に選ばれている理由であるとも言えるでしょう。

※アムロジピンの添付文書はこちら
アムロジン
ノルバスク

高血圧の薬で気を付けたい副作用

降圧薬は血圧を下げる作用がありますが、一方で、さまざまな副作用を引きおこす可能性もあります。主な副作用について薬の種類別に紹介します。

カルシウム拮抗薬

むくみ(手首、足の甲、まぶたなどの部分的なむくみ)・動悸・ほてり・頻脈・歯肉肥厚・便秘・心不全悪化など

ARB、ACE阻害薬

空咳(からぜき)、血管浮腫、腎機能低下、高カリウム血症など

利尿薬

低カリウム血症・低ナトリウム血症・低マグネシウム血症・尿酸上昇・脂質・糖代謝異常など

妊娠中の人は飲めない高血圧の薬

降圧薬の中には、妊娠中は服用できないものもあります。
母親と胎児はへその緒を通してつながっています。母親が飲む薬によっては、血液に乗って胎児にも影響を及ぼす恐れがあるのです。
降圧薬の中では、「ARB」と「ACE阻害薬」がそれにあたります。これらの薬は妊婦には非推奨とされており、飲んでいる場合には薬の変更が必要です。2008年には、製造販売業者が適正使用のお願いを配布するなど注意喚起が行われています。しかし、国内では妊娠が判明したあとも薬を飲み続けている事例が少なくありません。妊娠中に飲み続けていた場合、羊水過小、早産、胎児発育遅延などさまざまな副作用が報告されています。「ARB」もしくは「ACE阻害薬」を飲んでいる人は、妊娠または妊娠している可能性がある場合には、すぐに医師に相談するようにしましょう。

高血圧の薬で気を付けるべき飲み合わせ

薬は飲み合わせによっては、体に悪い影響を与えるものもあります。
漢方薬を構成する生薬の1つである「甘草(かんぞう)」には、血圧を上げる作用があります。例えば、市販もされており、風邪や肩こりなどの薬として飲まれることの多い漢方薬である「葛根湯(かっこんとう)」にも甘草は含まれています。
高血圧とは関係ないだろうと思い、何気なく飲んでいた薬が、高血圧治療の妨げになる場合もあります。降圧薬を飲んでいる場合には、既に飲んでいる他の薬、またはこれから飲もうと思っている他の薬があれば、必ず医師に相談するようにしましょう。

高血圧の薬代は1カ月どれくらいなのか

高血圧の薬代は1カ月でどの程度かかるのでしょうか。

病院で処方される薬は全て、厚生労働省により「薬価(やっか)」と呼ばれる公定価格が定められています。

降圧薬の薬価は、1錠10円~200円代のものまで幅広くあります。

例として、1錠100円の薬を1日1錠飲んだ場合、1カ月にかかる薬代を考えてみましょう。
1カ月を30日とすると、100(円)×30(日)=3,000円となります。健康保険が適用されて自己負担額が3割の人で考えると、900円となります。1カ月でみると、費用は少なく感じますが、これを何年も払い続けるとなると、それなりの費用はかかります。

さらに血圧の状態によっては、薬を飲む量が増える場合もあります。つまり、薬の種類や量によって、費用は増える可能性があるのです。
また、高血圧の治療は薬の費用だけではありません。通院費や検査費用もかかることになります。

治療の費用を少しでも減らすためにも、やはり薬に頼り切らずに、食事や運動など生活習慣の改善を行うことがとても大切です。

高血圧の治療薬について詳しくは「降圧薬(降圧剤)について|知っておくべき主な4種類と効果・副作用を解説」をご参照ください。

参考

まとめ

高血圧は脳梗塞脳梗塞(のうこうそく)脳の血管が詰まったり、細くなったりして、必要な酸素や栄養素が送られず、脳の細胞が死んだり、障害を受けてしまう状態。障害された脳の部位によって、様々な症状(麻痺や意識障害なぢお)が起こる。や心不全など重い病気につながる可能性がありサイレントキラーと呼ばれる生活習慣病です。
高血圧に起因する日本の死亡者数は年間約10万人と推定されています。これは「心血管病による死亡者の約半数は高血圧」だったと推定されているという計算になります。

命に関わる病気を防ぐためにも、今一度自分の食習慣を見直し、塩分やカロリーの取り過ぎ、お酒の飲み過ぎなど、心当たりのある人は今日から改善していくようにしましょう。

改善すべきなのは食習慣だけではありません。喫煙や運動不足も高血圧につながるため、禁煙や日頃の運動も、高血圧の予防には重要です。

だからと言って、「高血圧につながる可能性がある生活習慣を今日から全て見直そう」というのは、なかなか難しいものです。出来ることから1つずつチャレンジし、少しずつ改善していきましょう。それが、継続するための大切なポイントです。

高血圧の怖いところは、「自覚症状がほとんどない」ところです。

高血圧に早期に気付くためには、自分の血圧がどの程度なのかを知っておくことが重要です。健康診断の際には毎回、自分の血圧をチェックするようにしましょう。

健康診断は年に1,2回ですが、実は身近には、血圧測定が出来るチャンスは多くあります。

例えば、公民館、保健所、市役所、薬局、総合病院の待合室など、身近なところに自分で簡単に測れるタイプの血圧測定器が設置されており、待ち時間などに無料で気軽に血圧を測定することが出来ます。また、家電量販店などではさまざまなタイプの家庭用血圧計が販売されており、家に血圧計があるという人も多いのではないでしょうか。

高血圧の基準は、家庭で測定した場合には135/85mmHg以上、病院で測定した場合は140/90mmHg以上です。もしも自分の血圧が常に高いと気付いた場合には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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