【糖尿病の疑いとは】判定基準とすぐ始めたい食事・運動療法をご紹介 |

健康診断で「血糖値が高い」と判定されたあなた。どうやら「糖尿病」行きの乗車券を手に入れたようです。この乗車券は片道切符。終点にたどり着いたら、もう引き返すことができません。
ただしこの乗車券、片道なのは途中の駅からです。最初の停車駅は「空腹時血糖のみ高い」または「HbA1cのみ高い」の2駅あります。そしてこのいずれかまでであれば、「生活改善」により、まだ引き返すことが可能です。
去年までは大丈夫だったのに、今年の健康診断で血糖値が「要再検査」となり、「糖尿病疑い」と判定されてしまったあなた。一体今からどうしたらよいのか?来年は引っかからないために何かできることはあるのか?ここで一緒に見ていってみましょう。
糖尿病にはいくつか種類がありますが、ここでは日本人の糖尿病患者の大半を占め、生活習慣が原因で発症する「2型糖尿病」に焦点を当てて見ていきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01健診で「糖尿病疑い」と判定されたら
  2. 02健診結果を持って病院へ行くとどうなるの?
  3. 03糖尿病の食事療法
  4. 04糖尿病の運動療法
  5. 05努力を継続させるには
  6. 06まとめ  

健診で「糖尿病疑い」と判定されたら

ここがポイント!

  • 健康診断で「糖尿病疑い」となるポイントは「血糖値」と「HbA1c」
  • 「糖尿病疑い」なら、まだ糖尿病になるとは決まっていない
  • 「糖尿病疑い」には自覚症状がない
  • 「糖尿病疑い」と判定されたら放置せずに病院で受診しよう
あなたは毎年健康診断を受けていますか?
健康診断の検査項目には、異常値であれば「糖尿病の疑いあり」となるものが含まれています。(「糖尿病とは?あなたは予備軍でないと言い切れる?」を参照)

中でも「血糖値」と、1,2カ月前の血糖値の状態を反映する「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」は、糖尿病であるかどうかの重要な判断材料の1つとなります。糖尿病(2型糖尿病)は、インスリンというホルモンが正常に作られなくなったり、うまく働かなくなったりして高血糖の状態が続く病気だからです。

病院で医師は、血糖値とHbA1cの値をもとに、通常次のような流れで「糖尿病」と診断するかどうかを決めています。

この流れを見ると、「明らかな症状がある」か、「血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型」であった場合に、糖尿病と診断されると分かります。一方で、そうでなければ「糖尿病疑い」という状態に留まっていると分かります。

また、よく見ると、前回「糖尿病型」と判定された血糖値やHbA1cが、1カ月~数カ月後の再検査で「糖尿病型でない」に改善されている場合があると分かります。つまり、「糖尿病疑い」の段階ならば、血糖値もHbA1cも改善が可能で、まだ糖尿病にならずに済む可能性があるわけです。

初期の糖尿病には、自覚症状がありません。健康診断で引っかかってしまっても、「まだ大丈夫だろう」と自己判断をして放置しておくと、完全に「糖尿病」となり引き返せなくなってしまうリスクが高まります。
そもそも、病気の兆候にいち早く気付いて対処するのが健康診断の目的です。糖尿病の疑いと判定されたら、なるべく早く病院へ行って再検査を受けるようにしましょう。それこそが、糖尿病にならないためにとても重要なことなのです!

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健診結果を持って病院へ行くとどうなるの?

ここがポイント!

  • 病院へ行くと「問診」「身体測定」「各種検査」の結果から診断が行われる
  • 薬による治療が必要になる前の人は「生活改善」を求められる
  • 生活改善は「食事療法」と「運動療法」
  • 生活改善は、本人の努力と継続する意志が土台となる
  • 糖尿病が悪化する人の多くは、途中でくじけて努力をやめてしまった人

ところで、健康診断で「糖尿病疑い」となってしまい、病院へ行くと、どうなるのでしょうか?風邪と同じように、診察を受けた後に薬をもらって帰ってくるだけなのでしょうか?そうではなく、糖尿病疑いになった場合には、あなたの努力が必要とされる診療が待っています。

病院へ行くと通常、まず医師が「問診」「身体測定」「各種検査」の3つの結果もとにして体の状態を把握し、診断を行います。
問診結果の高血糖の自覚症状が「あり」で、かつ血糖値が300mg/dL以上と明らかに高かった場合には、糖尿病と診断され、ただちにインスリン治療が行われることになります。つまり、自覚症状が出る頃には、残念ながら相当糖尿病が進んでいるというわけです。

自覚症状がなくても、重症の感染症を起こしていたり、尿ケトンが強く陽性だったりした場合には、ただちにインスリン治療が行われます。
その他の場合は、まだ後戻り可能だと判断され、血糖値やHbA1cを正常な値に戻すために、生活改善をするように指導されます。生活改善とは具体的に、「食事の見直し」と「適度な運動」を行うことです

ただし、この「生活改善」は、単に「自分で勝手に改善してください」というような、突き放したものではありません。病院から指導された生活改善には「食事療法」「運動療法」という、れっきとした治療名が付いており、生活改善は病院スタッフと一緒に改善に向け、努力を続けていくものなのです。

生活改善を継続しても高血糖が改善されなかった場合は、血糖値を下げる飲み薬(経口血糖降下薬)を処方され、生活改善を続けながら、薬を飲むようになります。経口血糖降下薬にはさまざまな種類のものがあり、医師によってその人に合った薬が処方されます。

それでも高血糖が改善されなかったり、さらに悪くなったりした場合には、インスリン治療が開始されます。毎日インスリンの注射をしなくてはならないようになると、生活はとても不便なものになります

糖尿病の初期には自覚症状がありません。糖尿病予備軍から糖尿病になってしまう人や、糖尿病が悪化してしまう人の多くは、生活改善をついついさぼってしまったり、薬を飲み忘れがちだったり、飲んでも効果が実感できないからと言って勝手にやめてしまったりした人だといわれています。
もう治らないところまで行き着く前に引き返し、糖尿病からサヨナラするためには、強い意志を持って病院に通い、「食事療法」と「運動療法」を受けて生活改善を続けることこそが大変重要なのです。

糖尿病の食事療法


ここがポイント!

  • 食事療法は「食品交換表」の単位計算を基に行われる
  • 病院では、一人ひとりの状態に合った食事指導が行われる

今回の健康診断では血糖値がギリギリセーフだった人も、日々の努力で血糖値を改善できるに越したことはありません。糖尿病の食事療法は、自主的にも行うことが可能なものです。そこで、糖尿病の食事療法では実際どのような指導が行われているのか、ここで見ていってみましょう。
食事療法は通常、日本糖尿病学会編・著の「糖尿病食事療法のための食品交換表」という本を基本として行われます。

この本では、約600種類の食品が栄養素別に6つの表に分類されています。さらに、80kcal(キロカロリー)を1単位として、さまざまな食材について1単位の目安となる重さが載っています。このように、食品を単位に交換して、栄養素やカロリーをバランスよく摂取できるよう自分でコントロールするために用いる本なので、「食品交換表」という名が付いているのです。

必要な栄養素とそのカロリー(単位)は、身長、体重、毎日の活動量などをもとに、一人ひとりに合ったものが算出されます。それに従い、食品交換表を用いて毎日の献立を考えます。

食事療法の進め方

食事療法は、まずは自分の適正なエネルギー摂取量を把握することが大切です。目安になるエネルギー摂取量は、標準体重と身体活動量から算出できます。

エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量

<標準体重の求め方>
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
例えば身長が、160cmの人は、1.6m×1.6m×22=56.32kg となります。

<身体活動量による摂取カロリーの目安>
軽労作(デスクワークなど)   25〜30kcal/kg(標準体重)
普通の労作(立ち仕事など)   30〜35kcal/kg(標準体重)
重い労作(力仕事など)     35〜 kcal/kg(標準体重)

よって、身長160cmでデスクワークの人の摂取カロリーは、30kcal×56.32kg=1689kca/日となります。

実際の食事の内容

このように計算されたエネルギー量の中で、炭水化物、たんぱく質、脂質のバランスを取りながら、栄養バランスをよく摂取することが大切です。糖尿病だけではなく、脂質異常も合併している場合は、飽和脂肪酸やショ糖などを控えたり、コレステロールを多く含む食品を控えるといった工夫も必要です。また、高血圧を合併している場合は、食塩の1日6g以下に抑える食事が推奨されており、各々の疾患に合わせた食事の工夫が必要になります。
その他にも、「順番ダイエット」「低GI食」「地中海食」などの食事法が選択可能とされています。食事の内容は、一人ひとりの文化的・経済的・社会的背景によってさまざまです。そのため、「これを食べてください」とメニューが決まっている食事療法は存在しません。専門のスタッフと一緒に、本人が最も幸せに継続できる食事法を見つけていく方法で、食事療法は進められていきます

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糖尿病の運動療法

ここがポイント!

  • 適度な運動は2型糖尿病の改善に効果的
  • 病院ではメディカルチェックの結果を基に、一人ひとりに合った運動量が指導される
  • 多くの人は「ややきつい運動を毎日1時間弱程度」が推奨される
  • 主な運動は「今より10分多く動く」「有酸素運動」「筋トレ」「ストレッチ」
  • 体調により運動量に上限を設けられている人は、必ず上限を守る

食事療法について分かったところで、今度は運動療法では実際どのような指導が行われているのかを見ていってみましょう。

2型糖尿病の人が適度な運動を続けると、心肺機能が高まり、血糖値や血中コレステロール値、中性脂肪の値などが改善され、インスリンの効きも良くなる(インスリン感受性改善)ことが、これまでの調査により認められています。

さらに、適度な運動には、骨粗しょう症、認知症、がんなどの発症予防効果もあると期待されています。

運動療法を始める前に、病院では「メディカルチェック」が行われます。メディカルチェックは、その人の年齢、これまでの運動習慣、体力、血圧や脈拍、糖尿病合併症の有無、病歴、服薬状況などを、医学的に評価することです。

メディカルチェックが終わると、その人に合った強さでの運動指導が行われます。具体的には、一人ひとりの状態に合わせて、軽く息がはずむ程度の運動をするように勧められます。
多くの人は、「ややきつい」と思うくらいの運動を、できれば毎日、少なくとも週3~5回、1回20分~60分で行うように勧められます。

運動療法では、主に次のような運動が勧められます。

1)身体活動量(生活活動量)の増加

厚生労働省は、「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動指針-」の中で、「糖尿病リスクを下げるために今より10分多くからだを動かしましょう」と呼びかけています。
例えば散歩、ラジオ体操、家事などで、今より10分多く、座っている時間を減らすのが有効とされています。

2)有酸素運動

有酸素運動は、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などで、体の大きな筋肉を使った運動です。脂肪燃焼に効果的です。

3)レジスタンス運動

レジスタンス運動は、ダンベル、ウエイトリフティング、スクワット、チューブなどによる筋肉トレーニングです。この運動を続けると、筋肉の量が増え、基礎代謝が上がる効果があります。有酸素運動と組み合わせるとより効果的と言われています。

4)ストレッチ運動

腕や足を中心にいろいろな方向に動かし、筋肉や関節をほぐす運動です。硬くなった関節の動く領域が広がる上に、体も温まります。

運動療法は、薬での治療と同じように、やり方を間違うと副作用が出てしまいます。その人の状態によっては、無理にきつい運動をすると、低血糖を起こしたり、網膜症や腎症などの合併症が悪化したりする恐れがあります。運動量の上限を言われている人は、必ず指示に従いましょう。
自主的に行う場合も、「無理をしない」ということが、運動を継続し、血糖値を下げるための、何よりの秘訣なのかもしれません。

努力を継続させるには

ここがポイント!

  • 生活改善は「継続」が最大の鍵
  • 努力なくして血糖値の改善はない
  • 空腹に負けないためにカロリーオフ&糖質オフ食品を準備するのも一つの手
  • くじけそうになったら仲間を見つけ、努力を楽しむのも一つの手

食事療法と運動療法をざっと見てきましたが、どちらも共通して「継続する」のが最大の鍵となります。自分にとって、楽でないことを継続するのはとても大変です。

しかし、努力の継続なくして血糖値の改善はあり得ません!ここでは、継続するためのヒントをいくつかご紹介します。

どうしてもおなかが空いてしまったら

食事療法の最大の敵は「空腹感」です。空腹に負けてついおやつをたくさん食べてしまい、制限カロリーをオーバーし反省する、という経験のある人は大勢います。
それをなるべく避けるために、ふだんから、どのような低カロリー食品、低糖質食品があるか、調べておき、空腹時にそれを口にできるよう、購入して準備しておくのが有効です。
スーパーやコンビニエンスストアには、カロリーオフ商品や糖質オフ商品が取り揃えてあります。それらを試し、食べ応えがあっておいしいものを見つけ出すのも1つの楽しみになるかも知れません。

くじけそうになったら

自分と同じように、食事療法や運動療法を行っている仲間を見つけてみましょう。
「わたしはこういうふうにやっている」と経験談を語り合うと、自分もそれをやってみようかなと思えるようなアイデアがお互いに見つかり、つらい努力が楽しみに変わる場合もあります。
また、例えば愛犬を仲間にして散歩を日課にするなども、苦にならず運動する一つの手段となります。

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まとめ  


健康診断で「糖尿病疑い」と判定され、病院へ行ったらどうなるか。その答えは、「病院スタッフを味方につけ、糖尿病にならないために努力・改善することができる」でした。
病院は、薬をもらうだけの場所だと思ってしまいがちですが、そうではなく、あなたの味方です。
また、大切なのは、改善のためにはあなたの強い意志と努力が必要だということです。
二度と戻れない「糖尿病」になってしまう前に、そして来年の健康診断では引っかからないために、「糖尿病疑い」と判定されたら、ぜひ早めに病院を訪れて受診するようにしましょう。

参考

今日の治療指針2015|山口徹・北原光夫監修|医学書院
e-ヘルスネット|糖尿病を改善するための運動|厚生労働省
健康づくりのための身体活動基準・指針|厚生労働省
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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