【糖尿病とは】糖尿病予備軍になる前に糖尿病について正しく理解しよう

「糖尿病」という病名を知らない人はいないと思います。それもそのはず、いま日本では、男性の6人に1人、女性の10人に1人程度が「糖尿病」にかかっているのです。さらに、糖尿病患者数は年々増加しています。その主な原因は、生活習慣の欧米化だと知られています。
糖尿病は、一度発症してしまうと治らず、また、放置して悪化すると、失明したり透析が必要になったりと、生活の質(QOL)が著しく低下してしまう病気です。さらに、生涯薬が手放せなくなるため、経済的負担も強いられます。今後、高齢化社会になることを踏まえ、国は国民に対し、糖尿病を予防するための対策を立てています。
「自分には関係ない」と思っているあなたも、気づかないうちに糖尿病予備軍になっている可能性はあります。ここでは糖尿病になるメカニズムから、放っておくとどうなるのかまで、糖尿病の正しい基礎知識を身につけていきましょう!

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01糖尿病大国「日本」!
  2. 02まず知ろう!「糖尿病」になる仕組み
  3. 03「糖尿病」を放置してはいけない理由
  4. 04糖尿病の4つの種類
  5. 05あなたは大丈夫?糖尿病予備軍の見分け方
  6. 06まとめ 糖尿病をあなどるなかれ

糖尿病大国「日本」!

ここがポイント!

  • 日本の糖尿病患者はむし歯患者より多い
  • 日本の男性の6人に1人、女性の10人に1人は糖尿病
  • 日本は世界で9番目に糖尿病が多い国
  • 日本は国を挙げて糖尿病を減らそうとしている

誰もが知っているほど患者数の多い「糖尿病」。まずは日本にどれだけ糖尿病患者がいるのか見ていってみましょう。

厚生労働省が3年に1回行っている「患者調査」によると、2014年に日本の糖尿病患者数は300万人を超えて、過去最高となりました。虫歯(う蝕)の患者数が約180万人、がん患者数が約160万人であるのと比較すると、いかに糖尿病患者が多いかが分かります。

糖尿病有病者の割合
さらに厚生労働省は、平成26年「国民健康・栄養調査」で、糖尿病患者の男女別・年齢別内訳を調べました。これによると、「糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者:糖尿病治療中と答えたか、血液検査HbA1cの値が6.5%以上だった人)」の割合は、男性15.5%、女性9.8%で、特に50歳を超えると増え始め、70歳以上では男性の22.3%、女性の17.0%、つまりおよそ5人に1人が糖尿病であると示されました。

ところで、世界的にみると日本はどれくらい糖尿病患者が多いのでしょうか?
国際糖尿病連合(IDF)の「糖尿病アトラス2015」によると、日本で糖尿病が強く疑われる者の総数は2015年時点で720万人とされ、世界ランキング9位と、見事にトップ10入りでした。
世界ランキング1位は中国で1億人を超えており、2位はインドで約7000万人、3位は米国で約3000万人と続きます。日本は9位ですが、国民の総人口から考えると、日本も立派な糖尿病大国と言って過言ではありません。

こうした国による糖尿病患者数の違いは、何が原因で生じるのでしょうか?
厚生労働省は、ある1つの論文に着目しました。「日本人」と、遺伝的には日本人と同じ「米国の日系移民」を比較した1992年の研究報告です。この研究結果によると、糖尿病になる人の割合は、日本人より日系移民の方が2~3倍高かったのだそうです。

つまり、この研究により、食習慣をはじめとした生活習慣の欧米化が、糖尿病の大きな要因となり得ることが示されたというわけです。
これを問題ととらえた厚生労働省は、将来の日本国民の健康維持のために早急な糖尿病対策が必要であると判断し、「21世紀における国民健康づくり運動《健康日本21》」という政策の9項目の中に「糖尿病」を含めました。糖尿病人口の減少に向けて、国を挙げての努力は日々続けられています。

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まず知ろう!「糖尿病」になる仕組み

ここがポイント!

  • 糖尿病は、高血糖になる病気
  • インスリンは血液から全身の組織にブドウ糖を運ぶホルモン
  • 高血糖の原因は、インスリンの異常

糖尿病は、何らかの原因で血液中のブドウ糖が多すぎる状態(高血糖)となり、糖を多く含む尿を排せつするようになる病気です。つまり、糖尿病の人は、高血糖の状態が続いているわけです。高血糖は、よく「血糖値が高い」という言い方でも使われています。

なぜ高血糖になるのか?その原因は主に、
血糖値を下げる役割のホルモンである「インスリン」が正常に分泌されない
「インスリン」が正常に働かない
の2つであると分かっています。
ただし、「なぜ正常に分泌されなくなるのか?」「なぜ正常に働かなくなるのか?」については、世界中で研究が進められていますが、まだ完全には解明されておらず、今のところ原因ははっきりしていません。
ここで、高血糖になるメカニズムをもう少し詳しくみていってみましょう。

食べ物のうち、じゃがいも(でんぷん)や砂糖などに含まれる「ブドウ糖」は、小腸で吸収され、いったん血液に入ります。ブドウ糖が血液に入ると、すぐにすい臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。インスリンは血中のブドウ糖を筋肉や脳に運んでエネルギーにしたり、肝臓、筋肉、脂肪組織などに運んで、エネルギー源(グリコーゲン、脂肪)として蓄えたりします。

インスリンの分泌が悪かったり、インスリンがうまく働かなかったりすると、血中のブドウ糖は肝臓や筋肉などに取り込まれずに血管内に残り、次第に増えていきます。こうして慢性的に高血糖となり、糖尿病がひき起こされるわけです。
糖尿病になる仕組み


「糖尿病」を放置してはいけない理由

ここがポイント!

  • 高血糖が続くとAGEという物質ができ、血管がボロボロになる
  • 血管がボロボロになると全身が障害を受ける(合併症)
  • 三大合併症は「網膜症」「腎症」「神経障害」

高血糖になる仕組みは分かりましたが、それでは高血糖はどうして放っておいたらいけないのでしょうか?実は、高血糖が続くと、血管、神経、目、腎臓など、体のあちこちが障害を受け、取り返しがつかない大変なことになるのです。

ここでは、糖尿病によって全身が障害を受けるメカニズムを詳しくみていってみましょう。

砂糖水を想像してみてください。砂糖水は、べたべたしています。これと同じで、血糖値が高く砂糖水のような状態になっている血液も、べたべたとして流れづらい状態になっています。 するとやがて、血液中に多量に存在するブドウ糖は、赤血球に存在する「ヘモグロビン」や、血管の壁に存在する「コラーゲン」などのタンパク質と結合して「AGE(終末糖化産物)」と呼ばれる悪玉物質を作ります。

AGEが増えてくると、血管の内側の膜を作っている「血管内皮細胞」が傷ついて炎症が起こります。この炎症の影響で、血管の壁は厚く硬くなり、弾力が失われて傷つきやすくなります。これをさらに放置すると、体中の血管がボロボロになり、いろいろな臓器に障害が出てきます。
これが、高血糖を放置しておいた場合に血管や臓器に障害が出るメカニズムです。
糖尿病を放置してはいけない理由
高血糖=糖尿病が引き金となって起こる血管や臓器の障害を、糖尿病による「合併症」といいます。糖尿病による合併症のうち、特に発症しやすいものは次の3つです。これらはまとめて「三大合併症」と呼ばれています。
糖尿病の三大合併症

糖尿病性網膜症

ものを見るのに大切な「網膜」には、「毛細血管」と呼ばれる細かい血管が張りめぐらされています。糖尿病によりこれらの毛細血管が障害を受けると糖尿病性網膜症となります。眼底出血などを起こすことが原因で視力が低下し、やがて失明に至る場合もあります。

糖尿病性腎症

血中の老廃物をろ過して尿に排出する役割をもつ「腎臓」の内部には、毛細血管が球状に密集しています。糖尿病によりこれらの毛細血管が障害を受けると、ろ過がうまくできなくなり、悪化すると透析が必要になります。

糖尿病性神経障害

高血糖が原因で手足の細い血管が障害を受けると、血行不良となり、神経の細胞に十分な栄養が送れなくなります。すると、何もしていないのにぴりぴりする「しびれ」が起きたり、痛みや熱さを感じにくくなったりします。けがややけどに気づかず治療が遅れ、潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)を起こし、切断に至るケースもあります。

なぜこの3つの合併症が多いのかというと、全て細い血管の障害で起きるものだからです。太い血管よりも細い血管の方が傷つきやすいことは、感覚的にも分かりやすいと思います。

糖尿病を正しく治療しない状態で放っておくと、やがて太い血管にも障害が起きてきます。高血糖がひき起こした動脈硬化が原因で高血圧になったり、心臓を取り巻く太い血管が詰まって心筋梗塞を起こしたり、脳の血管が詰まって脳卒中を起こしたりします。こうなると一瞬で命を奪われる可能性も出てきます。

その他、肺炎、インポテンツ、脂質異常症など、糖尿病の合併症は多数あります。糖尿病の合併症は、初期には自覚症状がないものが多いので、病院で治療を受けつつ、定期検診も欠かさないことが重要となります。

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糖尿病の4つの種類

ここがポイント!

  • 1型糖尿病は、インスリンを分泌するβ細胞が破壊されて発症する
  • 2型糖尿病は、「遺伝」と「生活習慣」が引き金となって起こる
  • 2型糖尿病の発症原因は「β細胞の働きが悪くなる」「インスリンの働きが悪くなる」「インスリンの効きが悪くなる」の3パターン
  • 日本人のほとんどは2型糖尿病なので、単に「糖尿病」といったら2型を指す場合も多い

糖尿病の細かな原因はまだはっきりしていませんが、遺伝的な体質が影響していること、また、「肥満」「運動不足」「ストレス」などの生活習慣が糖尿病のリスクを上げる要因になっていることが、科学的に示されています。

糖尿病は、大まかな原因から、次の4種類に分けられています。
糖尿病の4つの種類 (1)

1型糖尿病

インスリンは、すい臓のランゲルハンス島という部分に存在する「β(ベータ)細胞」によって産生されます。何らかの原因で、β細胞が破壊され、体内でインスリンを作ることができなくなり発症するのが1型糖尿病です。
子どもや若いうちに発症する場合が多く、体を守る免疫システムの異常で起きているもの(自己免疫性)と、原因が全く不明なもの(特発性)とに分類されています。
1型糖尿病について詳しくは「【1型糖尿病】原因から症状、最新の治療法までを解説 」をご参照ください。

2型糖尿病

高脂肪食、肥満、運動不足、ストレスなどの生活習慣が引き金となり、(1)すい臓β細胞からのインスリンの分泌が少なくなったり、(2)インスリンの働きが悪くなったり、(3)臓器がインスリンの作用を受けづらくなったりして発症するのが2型糖尿病です。中高年に多い病気ですが、近年、若者の発症も増加しています。
2型糖尿病の人は、親や親戚など、血のつながった人も糖尿病を発症している場合がしばしばあり、2型糖尿病の発症には、生活習慣などの「環境要因」に加え、遺伝的な影響も関与していることが、これまでの研究で複数報告されています。

妊娠糖尿病

妊娠中の検査で初めて発見された、高血糖などの糖代謝異常を「妊娠糖尿病」と呼びます。妊娠中の高血糖は、おなかの赤ちゃんに影響を与えるため、糖尿病に至ってなくても「糖尿病」と呼びます。明らかな糖尿病は、「妊娠糖尿病」には含めません。
妊娠中に胎盤から出るホルモンに、インスリンの働きを抑える作用があったりするのが、妊娠糖尿病の原因になると知られています。
妊娠糖尿病について詳しくは「」

その他特定の原因による糖尿病

遺伝子の異常、肝臓やすい臓の病気、免疫の異常など、明らかに原因が特定できる糖尿病もあります。他の病気の治療のために用いた薬が原因で起こる場合もあります。

日本の糖尿病患者の9割以上は、生活習慣が大きな原因である「2型糖尿病」だと知られています。そのため、2型糖尿病を単に「糖尿病」という場合も多くあります。

あなたは大丈夫?糖尿病予備軍の見分け方

ここがポイント!

  • 健診結果の「尿糖」「空腹時血糖」「HbA1c」「腹囲」は糖尿病の目安になる
  • 異常値でなくても値が近かったら気をつけておくに越したことはない

あなたは毎年健康診断を受けていますか?健康診断の結果として受け取った紙には、さまざまな検査結果の数値がずらりと並んでいます。たいていの人は、異常値がないかどうかだけチェックして終了、だと思います。

健康診断の検査項目には、異常値であれば「糖尿病の疑いあり」となるものが含まれています。それらの項目がギリギリ基準値であった場合、結果用紙に異常値マークが付きません。これをそのまま見過ごしてしまうと、将来糖尿病になってしまう可能性があります。ですが、逆に見落とさなければ、自分が糖尿病に向かって歩みつつあるかどうかに気づくことができます

ここで、糖尿病かどうかの目安になる主な検査項目4つを確認していきましょう。
糖尿病予備軍の目安となる検査項目

尿糖

尿検査の結果、糖が検出されると、その名のとおり糖尿病の可能性があります。

空腹時血糖

食事前の空腹時に採取した血液で検査したとき、血糖が基準値より高いと糖尿病の可能性があります。血糖値は食べるとすぐに上がるので、「空腹時」を調べるのがポイントです。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)

こちらも血液検査の項目で、1,2カ月前の血糖値の状態が調べられる検査です。HbA1cは、赤血球のタンパク質である「ヘモグロビン」がブドウ糖と結合し、先ほど説明した「AGE」に変化する一歩手前の状態の物質です。この値は、直前の食事などに影響されません。HbA1cが基準値より高いと糖尿病の疑いが濃厚であるといえます。

腹囲

立った状態で軽く息を吐き、おへその高さで測った腹囲が基準値を超えると、内臓脂肪が蓄積した「メタボリックシンドローム(メタボ)」の可能性があります。メタボは糖尿病のリスクが高いため、糖尿病が疑われます。

検査方法 検査項目 基準値 備考
血液検査 空腹時血糖 110mg/dL未満 100~109mg/dLは正常高値、126mg/dL以上で糖尿病と判定
血液検査 HbA1c(国際基準値:NGSP) 6.2未満 6.5以上で糖尿病と判定
身体測定 腹囲 男性:85cm未満、女性:90cm未満

空腹時血糖が110mg/dL以上126mg/dL未満、HbA1cが6.2%以上6.4%未満だった人は、糖尿病への道を歩みつつある「糖尿病予備軍(境界型糖尿病)」とされます。

直近の健康診断の結果が手元にすぐ出てくる人は、この機会に自分の結果と基準値を、もう一度照らし合わせてチェックしてみてはいかがですか?

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まとめ 糖尿病をあなどるなかれ


野菜は嫌いだから食べない。甘いものが好きだからおやつは必ず食べる。毎晩飲み会だけど仕事のつきあいだから仕方が無い。運動するくらいなら家でテレビを見ていたい。買い物に出るのが面倒だからネットショッピングで済ませちゃおう。
こういった生活習慣が引き金となり発症する「糖尿病」。便利な世の中の恩恵を受けるのは良いことですが、一方で、あまり動かない上に食べたいものを食べたいように食べていると、糖尿病への道をまっしぐらに歩むことになります。
赤信号の検査結果を見て見ぬふりをしているとやがて発症し、放置すると恐ろしい合併症が待っている不治の病、「糖尿病」。自覚症状がないだけに、発症しないための日ごろの心がけがいかに大切かということが、分かっていただけたと思います。
例えば、今日はおやつを我慢する。たまには1駅分歩いてみる。
決して難しいことではないはずです。
糖尿病は、日本国民にとって、もはや他人事ではありません。健康に長生きするために、できることから1つずつ、ぜひ心がけていきたいですね!

参考

Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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