糖尿病の合併症について|放置してはいけない理由からその怖さを解説します

糖尿病を、何でもないありふれた病気だと思っている人は多いのではないでしょうか。ところが糖尿病には、怖い合併症がたくさんあります。例えば、網膜症では失明、腎症では透析、神経障害では足の切断などにより、大幅にQOL(生活の質)を下げることになる可能性があります。さらに糖尿病は、心筋梗塞などの命に関わる病気のリスクの上昇にもつながります。このように、糖尿病は、場合によっては命に関わる病気なのです。しっかりと怖さを認知して、血糖コントロールを続けていきましょう。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01糖尿病は血管障害による合併症を起こす危険な病気
  2. 02糖尿病の合併症①糖尿病性網膜症
  3. 03糖尿病の合併症②糖尿病性神経障害
  4. 04糖尿病の合併症③糖尿病性腎症
  5. 05糖尿病の合併症④大血管障害
  6. 06糖尿病の合併症⑤感染症
  7. 07 まとめ

糖尿病は血管障害による合併症を起こす危険な病気

ここがポイント!

  • 日本では、年間約1万人もの人が糖尿病で亡くなっている
  • 糖尿病による死亡の原因のほとんどは合併症である
  • 血糖値が高いと「糖毒性」によって体にダメージが生じる

糖尿病は命に関わる危険な病気

糖尿病になり、血糖値の高い状態が続くと、さまざまな「合併症」を引き起こします。合併症とは、糖尿病がもとになって起こる別の病気のことです。世界では、成人の約11人に1人が糖尿病であると言われており、厚生労働省の調査によると、日本の糖尿病患者数は、平成26年時点で約316万人という結果が出ています。また、糖尿病によって年に約1万人もの日本人が亡くなっているというデータもあります。
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糖尿病の合併症は「血管障害」が原因

糖尿病で合併症が起こる主な原因は、血管障害です。
高血糖状態が続くと、糖と細胞のタンパク質が反応して「終末糖化産物(AGE)」という物質の産生が亢進されます。この物質が血管の細胞
にある「RAGE受容体」に結合すると、血管障害を引き起こすとされています。
血管を流れる糖そのものが、血管や組織を傷つける性質を持っているため、糖尿病になると血管が次第にダメージを受けて、ボロボロになり、様々な合併症を引き起こすのです。
また、糖尿病神経障害との関係が注目されているポリオール経路の亢進や、高血糖によるプロテインキナーゼ(PKC)の活性化も影響していると考えられています。

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糖尿病の合併症①糖尿病性網膜症

ここがポイント!

  • 高血糖により網膜の血管に傷がつく
  • 糖尿病性網膜症は失明の可能性もある
  • 自覚症状に乏しいため眼科の定期検診が重要

ここからは、臓器別に糖尿病の合併症を見ていきましょう。
目に起こる糖尿病の合併症として、網膜症・白内障・緑内障が挙げられます。ここでは「糖尿病性網膜症」について説明します。

高血糖は網膜の毛細血管も傷つける

「標準眼科学」という医学書には、糖尿病を治療しないまま過ごした場合、7年で50%以上、20年以上では90%以上が網膜症を発症すると書かれています。
つまり、糖尿病を放置していると、ほぼ確実に網膜症になってしまうということです。さきほど説明したように、高血糖は血管を傷つけます。傷つけられる血管は、どこの血管と決まっているわけではなく、全身の大小さまざまな血管全てに傷が及びますが、微小な血管ほど影響を受けやすいと言われています。もちろん、目の網膜にある細い血管(毛細血管)も例外ではありません。

糖尿病網膜症とは

糖尿病網膜症は、網膜の毛細血管が傷つくことがきっかけで始まります。毛細血管に傷が付くと、血管の周囲の細胞が減少します。すると血管の壁の弱くなった部分が盛り上がり、「毛細血管瘤(もうさいけっかんりゅう)」と呼ばれる「こぶ」ができます。毛細血管瘤が何らかの原因で破れてしまうと、網膜内で小さな出血が起こります

また、血管の傷が原因で詰まると「軟性白斑(なんせいはくはん)」という白い斑点、血管から血液成分が漏れ出すと「硬性白斑(こうせいはくはん)」という白い斑点ができます。

血管壁が弱くなった部分や毛細血管瘤、白斑が目の「硝子体」という部分を引っ張ることで、目の血管は物質を通しやすい状態となってしまいます(血管透過性の亢進)。これにより血液の液体成分が血管から外に漏れ出すと、「網膜浮腫」という状態に陥ります。
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網膜剥離の原因にもなる

さらに網膜症が進行してくると、血管の詰まりによって網膜に血液が届きにくくなるため、新しい血管が作られます(血管新生)。こうして出来た血管がまた破裂して出血を繰り返すこととで、網膜を前方に引っ張っていってしまう力が働きます。
この仕組みにより、「牽引性網膜剥離(けんいんせいもうまくはくり)」という症状が発症します。

黄斑部が剥がれると失明に繋がる

網膜には、物をみる中心の部分である「黄斑(おうはん)」があります。
黄斑部分が網膜剥離により剥がれた場合には、失明につながります。
このように、糖尿病網膜症は最悪の場合、失明に繋がるにも関わらず、自覚症状が乏しく、気付かないうちに進行していく可能性があります。したがって、糖尿病の人は、何も症状を感じなくても、眼科で継続的に網膜の状態をチェックしてもらうことが必要なのです。
光凝固治療
眼科の検査で、網膜に異常が発見された場合には、進行を抑えるために光凝固治療を行う場合があります。光凝固治療とは、網膜にレーザーを当てて新しい血管が作られないようにする治療法です。

糖尿病の合併症②糖尿病性神経障害

ここがポイント!

  • 糖尿病による糖尿病性神経障害では、運動神経・感覚神経ともに鈍くなる
  • けがなどに気付かない結果、足の切断につながることもある


糖尿病性神経障害も、高血糖により毛細血管が傷つくことが原因となって起こる合併症です。神経細胞そのものに直接障害が引き起こされるのですが、その細かなメカニズムはまだはっきりとは分かっていません。

糖尿病性神経障害とは

糖尿病性神経障害は、足に症状が出やすく、左右対称性に感覚神経と運動神経の両方が鈍くなるのが特徴です。腸や膀胱の機能障害やインポテンツを引き起こすような障害、突然の足や腕の脱力などが起こります。

足の切断に繋がるケースもある

足の感覚が鈍くなった結果、けがをしてしまっても気付かずに放置してしまい、やがて患部に壊死や感染が起こり、足の切断を余儀なくされる場合もあります。足を切断した場合、その後の生活はとても不自由になります。
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糖尿病性神経障害の合併症が現れた場合、治療の選択肢はあまり多くありません。大切なことはやはり血糖コントロールをしっかり行うことです。薬だけに頼らず、食事を気をつけたり、喫煙をやめたり運動習慣を身につけたりするなどの生活習慣の改善も、血糖コントロールと一緒に行いましょう。

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糖尿病の合併症③糖尿病性腎症

ここがポイント!

  • 糖尿病性腎症は、腎臓の血管に傷がつくことで起こる
  • 透析が必要になれば、QOLが著しく低下する

糖尿病で腎臓に起こる合併症を「糖尿病性腎症」といいます。
糖尿病性腎症により腎不全に至るケースも多く、糖尿病による死亡原因は、心筋梗塞に次いで腎不全が2位となっているのです

糖尿病が腎臓に与える影響とは

糖尿病により、腎臓には次の3つの病変が起こります。

1)糸球体(しきゅうたい)の病変

糸球体は、血液をろ過して尿にする部分で、その実体は毛細血管の塊です。糖尿病は、糸球体の近くに存在する「メサンギウム細胞」が増加する「びまん性メサンギウム硬化症」や、糸球体周辺にボール状の沈着物が見られる「結節性糸球体硬化症」などの病変を起こします。この状態になると、腎臓の実質部分に血が通いづらくなり、腎臓に悪い変化をもたらします

2)腎臓の血管の動脈硬化症

腎臓の血管、特に糸球体に血液を送り込む細動脈に、「腎アテローム性動脈硬化症」という病変が起こります。これは、目の血管でもそうだったように、高血糖による全身性の血管障害の1つです。腎臓は高血糖によって、高い頻度で損傷を受けます

3)腎盂腎炎

腎盂腎炎は、腎盂(じんう)という、生成された尿が膀胱に行く前に集まってくる場所の炎症です。腎盂腎炎は糖尿病ではない人でも起こりますが、糖尿病の人で発症しやすく、一度発症すると重症になる傾向があります

3つの病変が糖尿病性腎症につながる

このように、糖尿病により腎臓の病変が起こっている人では、タンパク尿、低アルブミン血症、浮腫などが見られ、やがて糖尿病性腎症を発症してしまいます。
肝臓などは、一度脂肪肝などになっても元に戻る可能性がある、再生力の強い臓器です。ところが腎臓は、いったん構造が破壊され機能が衰えてしまうと、もう元には戻りません
腎症によって、腎臓本来の役割である「血液を越し取り、尿を生成する」機能がうまくいかなくなると、体内の老廃物を外に出すことができなくなり、体は非常に危険な状態になります。

糖尿病性腎症により腎機能障害が進行した場合、最終的には人工透析を受けなければいけないことになります。
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糖尿病性腎症が進行すると透析治療が必要になる

透析とは、老廃物を出す機能を失った腎臓の代わりに、機械で血液をきれいにする治療です。
人によって頻度は違いますが、透析は1週間に3回程度、数時間にわたる治療が必要になり、一生受け続ける必要があります。どんなことがあっても、透析を受け続けなければ、体に老廃物がたまってしまい、命に危険が及ぶ状況になってしまいます。この1週間に3回という頻度は、仕事や旅行へ行く際にもかなり煩わしいもので、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の低下を招きます。

糖尿病の合併症④大血管障害

ここがポイント!

  • 糖尿病が原因で、大きな血管にも傷がつく
  • 糖尿病は、心筋梗塞・脳梗塞・肺梗塞など危険な病気にも繋がる

糖尿病による高血糖は血管を傷つけると説明して来ましたが、それはどんなに細い血管にも起こりますし、逆に非常に太い血管にも起こります。糖尿病による死亡原因の1位となっている「心不全」は、糖尿病による大血管障害により引き起こされます。ここでは、「大血管障害」について解説します。

なぜ糖尿病により大血管障害が起きるのか

血管は内側から、内皮細胞、内膜、中膜(平滑筋)、外膜という層構造で成り立っています。糖尿病になり高血糖状態が続くと、内皮細胞が次第にダメージを受けて傷ついていきます。傷がつくと、血管に修復物質を届けるために「血管透過性の亢進」が起こり、傷を治すためにやってきた「白血球の接着」が起こります。

次いで、「マクロファージ」という免疫細胞の活性化が起こります。マクロファージは、血管の膜に存在する脂質などを食べた後で死に、その場に沈着します。
すると、血管を取り巻いている平滑筋細胞が増殖し、コラーゲンなどいろいろな物質が増えたり沈着したりしていきます。こうして血管の内腔は狭まっていきます。このようにしてできた血管の詰まりを、プラークと言います。

プラークが心筋梗塞や脳梗塞の原因になる

プラークは脂質などによってできているので、柔らかく剥がれやすい側面を持っています。また、プラーク自体が大きくなる性質を持っているので、血管の内腔を塞いでしまうこともあります

例えば、このプラークが心臓の冠動脈にできた場合、プラークが大きくなりすぎると、心臓へ血液を送りにくい状態となり、心筋梗塞が引き起こされる可能性があります。
また、腹部にある大血管や首の大きな血管にできた場合、プラークが剥がれ血流に流されていった結果、脳の血管に詰まれば脳梗塞、肺に詰まれば肺梗塞という結果になり、命に関わる場合もあります。
糖尿病の合併症で大血管障害が起こる仕組み

 大血管の血管壁が弱り動脈瘤を形成する

血管がダメージを受け続けると、プラークができるだけでなく、大血管の血管壁も弱くなってきます。血管壁が弱ったことが原因で、おなかの一番奥底にある「腹部大動脈」などの心臓に直接繋がる大動脈に「動脈瘤」という「こぶ」が出来ることもあります。もしも動脈瘤が破裂すると、おなかの中で大出血を起こし、命に関わります。

このように、糖尿病による大血管障害は命に関わるものが多く、実際に糖尿病による死亡原因第1位なのです。
これらの病気のリスクは、糖尿病以外にも、脂質異常症や喫煙などの生活習慣で上がります。命に関わるこれらの怖い病気を予防するために、血糖コントロールをしながら他の生活習慣も改善するように心がけましょう。
高血圧症発症チェック

糖尿病の合併症⑤感染症

ここがポイント!

  • 糖尿病の人は感染症にかかりやすい
  • 糖尿病の人が感染症にかかると、治りにくく、悪化しやすい

糖尿病になると、感染症のリスクも上昇します。
糖尿病は、血管に傷害が起こっているので、血流が悪くなり、組織の治癒能力が低下します。感染を防ぐ「好中球」などの免疫細胞の力も弱くなっていることが、これまでの研究により知られています。
さらに、病原体の感染によって深部の臓器に病変があっても、末梢神経傷害などにより、なかなかその感覚が伝わらず、病気に気付くのが遅くなることもあります。

こうした理由により、糖尿病の方は、感染症にかかりやすく、気付きにくく、治りにくく、悪化しやすいのです。「感染症かな?」と思ったら、自分で市販薬を飲んで治そうと考えず、医療機関を受診するようにしましょう。

まとめ

糖尿病のさまざまな合併症は、基本的に高血糖が血管や組織を傷つけること(糖毒性)によって起こります。網膜症では失明の危険、神経障害では足などの切断のリスク、腎障害では透析などQOLを著しく下げる病態を引き起こします。また、大血管障害は即座に命に関わる病気につながります。

糖尿病は、長く付き合っていかなければならない病気です。高血糖である期間が長ければ長いほど、合併症のリスクは増加します。

合併症を起こさないためには、まずは血糖コントロールに注意し、できるだけ血管に傷をつけることを防ぎましょう。そして、何も自覚症状がなくても、目や腎臓、心臓については定期的に専門の外来を受診し、定期検診をすることで、合併症の兆候があった場合に、なるべく初期のささいな段階で見つけてもらえるようにしましょう。

参考

京都大学内分泌科
ロビンス 基礎病理学(丸善出版)
病気が見える 糖尿病・代謝・内分泌(メディックメディア)
標準眼科学(医学書院)
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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