【1型糖尿病】原因から症状、最新の治療法までを解説

糖尿病は年をとって、太ってからなるものだと思っている人が多いかもしれません。しかし、中には若くてやせているのに糖尿病になってしまう場合もあります。糖尿病の大半を占める2型糖尿病に対して、若くてやせていてもかかる可能性がある1型糖尿病とはどのようなものなのでしょうか。詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01若者がなる「1型糖尿病」ってどういう病気なの?原因はなに?
  2. 021型糖尿病の発症や症状の特徴、診断に必要な検査について
  3. 031型糖尿病で行われる治療:なぜインスリン治療を優先するの?
  4. 04まとめ

若者がなる「1型糖尿病」ってどういう病気なの?原因はなに?

ここがポイント!

  • 日本人に多いのは2型糖尿病だが、1型糖尿病という病気もある
  • 1型糖尿病は膵臓の細胞が壊れることでインスリンが出せなくなってしまう病気
  • 1型糖尿病の約8割は免疫の異常による自己抗体が原因
  • 1型糖尿病は若者に多いが、必ずしも若者だけがなるわけではない

「糖尿病は中年以降の肥満体型の人が発病する病気」だと思っていませんか。実際、それは間違いではありません。糖尿病の大半(95%以上)は、食べ過ぎ、運動不足、加齢、そしてそれらの積み重なりによる肥満が原因となって発症した人で占められています。このような原因で発症する糖尿病は「2型糖尿病」と分類されています。

2型という名称から、もしかしたら1型もあるのかもしれないと思った人もいるでしょう。その通りです。2型に比べると数は少ないのですが、1型糖尿病は比較的若年から発症する糖尿病として知られています。

まずは1型糖尿病と2型糖尿病を、並べて比較してみましょう。
糖尿病は、血糖値が高くなりすぎてしまったことで、体にさまざまな異常が起こってしまう病気です。

人間の体を維持するには、ブドウ糖、すなわちグルコースが必要であると知られています。なぜなら人間の機能を支えている中心である脳はグルコースしか栄養として利用できないからです。そのため、人間はさまざまな方法で血液中のグルコース、すなわち「血糖」を維持するように調整されています。血糖値が高くなりすぎず、低くなり過ぎないようにバランスをとるような仕組みが人体には組まれているのです。

体に必要なグルコースの多くは食事で取り込みます。食べ物として摂取された糖質を、消化の働きにより分解して、脳の栄養であるグルコースを作り出します。
日本人に多い2型糖尿病は、食事の際に過剰に栄養を取り過ぎてしまい、結果的に高血糖が続いてしまうことで引き起こされる病気です。

体が高血糖状態であればあるほど、高血糖を解消して適正な血糖値に保とうとする働きが人体には起こるので、そう簡単には糖尿病になることはありません。2型糖尿病が比較的ゆっくりと進行してから発症することが多い病気だと言われるのはそれが理由です。

体が高血糖状態になったとき、血糖値を下げて高血糖を解消しようとする働きで活躍するホルモンを「インスリン」といいます。インスリンは膵臓から放出されて血糖を下げます。2型糖尿病は、インスリンが効かなくなるほどに高い血糖値の状態が続くことで起こる病気です。そのため、高血糖状態を元に戻そうとする能力である「耐糖能」を基準にして、2型糖尿病を「耐糖能機能の破綻」と呼ぶこともあります。

一方、インスリンが「効かない」ではなく、「出せない」状態となる場合もあります。インスリンが出せないことが原因で高血糖状態が続く糖尿病のことを「1型糖尿病」といいます。1型糖尿病は膵臓の細胞が壊れてインスリンを「出せない」ことが原因で起こる病気だと知られています。この点は、インスリンが「効かない」2型糖尿病との決定的な相違点です(ただし、2型糖尿病でも、インスリンの分泌が低下することで発症する場合もあります)。膵臓の細胞が破壊される原因の8割は、人体の自己免疫機能の暴走(自己免疫反応)であり、残り2割は原因不明(特発性)と言われています。

1型糖尿病は、インスリン分泌の主役である膵臓の細胞が破壊されることで起こるため、病気の経過や治療方針から日々の生活まで、いろいろなことが2型糖尿病と違います。そのため、1型糖尿病の検査は、「起こっている糖尿病が2型ではなく1型であるということを明らかにする」ことを主な目的として行われます。

1型糖尿病には、2型糖尿病のようにゆっくりと数年間をかけて発症する「緩徐進行型」というものもあります。比較的高齢で糖尿病が発症したとしても、きちんと1型と2型の違いを見分ける必要がある理由の1つがこのようなタイプの1型糖尿病もあるためです。

高血圧症発症チェック

1型糖尿病の発症や症状の特徴、診断に必要な検査について


ここがポイント!

  • 1型糖尿病は、発症の仕方によって「3つのタイプ」に分けられる
  • 1型か2型糖尿病かをしっかり診断することは、その後の治療方針に関わるため大切

1型糖尿病は、発症の仕方により「急性発症型」「緩徐進行型」「劇症型」の3つのタイプに分けられます。発症する前の様子や、どのくらいの期間で発症したかを知ることで、2型糖尿病と区別できることがあります。
1型糖尿病は、免疫系の暴走による自己抗体により自分の膵臓を攻撃してしまいインスリン分泌細胞が破壊され糖尿病が発症するタイプ(自己免疫性)と、原因がはっきりしないタイプ(特発性)に分けられると先ほど説明しました。「急性発症型」と「緩徐進行型」自己免疫の関与が言われており、「劇症型」は特発性と言われています。ここでは、それぞれのタイプの特徴をみていきましょう。
1型糖尿病の発症のタイプ

1)急性発症型の1型糖尿病

急性発症型の1型糖尿病は、1型糖尿病の中で最もよくみられるタイプです。数週間から数ヶ月単位で症状が進行すると言われています。
喉が乾きやすい(口渇)、おしっこが多い(多尿)、体重が減ってしまう(体重減少)などの糖尿病の症状が出現してから、数ヶ月以内でインスリンの分泌が完全になくなってしまいます。急激にインスリンの分泌が低下していき、症状も進んでいくた意識障害(糖尿病ケトアシドーシス)を発症してしまうケースもあります。急性発症型の1型糖尿病は自己免疫性であり、「膵島関連自己抗体」が陽性であることも特徴です。これは、体の中に、間違って自分の膵臓の細胞を攻撃して破壊してしまう「抗体」というタンパク質が存在する状態です。

2)緩徐進行型の1型糖尿病

緩徐進行型の1型糖尿病は、30〜50歳代に多く、緩やかに進行していきます。2型糖尿病にとても似ていて誤診されるケースもあります。しかし、このタイプも自己免疫性であり、膵臓を攻撃する自己抗体が陽性になり、明確に2型糖尿病とは区別されます。2型糖尿病では発症早期は、食事・運動療法を行ったり、飲み薬で治療をすることがありますが、緩徐進行型の1型糖尿病と診断された場合は、早期からインスリンが開始されることがあり、その後の治療方針が異なることから、発症時に正確に区別する必要があります。

3)劇症型の1型糖尿病

これまでの2つのタイプと異なり、自己免疫が関与せず、原因がはっきりわからない特発性の糖尿病です。「劇症型」という名前の通り、最も急激に発症するタイプです。喉の痛みや発熱などの風邪症状や、お腹の痛みなどの腹部症状があったのち、数日のうちに発症します。発症して数日以内にインスリンの分泌がなくなり、意識障害が出現することがあります。

最近、様々な悪性腫瘍で効果があるとされている「免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボなど)」による劇症型1型糖尿病の副作用の報告があります。時には、致死的になる可能性もあり、使用する際は十分に注意をはらう必要があります。

糖尿病であると決まった人に対して、次に行われるのが「病型診断」、つまり糖尿病の原因が1型なのか2型なのかを区別する検査と診断です。

さまざまな方法で1型なのかどうかを調べていくのですが1型と判断する最後の決め手になるのは、間違って自分の細胞を攻撃して殺してしまう「自己抗体」というタンパク質が体内に存在するかどうかだと言われています。特に多く見られる自己抗体は、「GAD抗体」「膵島細胞抗体<ICA>」「インスリン自己抗体<IAA>」「IA-2抗体」などと呼ばれるものです。これらの抗体が見つかったら1型糖尿病の可能性は非常に高くなります。

一方で、免疫の暴走が原因ではなく、自己抗体が作られない1型糖尿病も20%存在しています。つまり1型糖尿病になった人の5人に1人は、原因不明で膵臓の細胞が破壊され、インスリンが出なくなってしまった人なのです。急性発症1型糖尿病診断基準(2012)によると、自己抗体が見つからなくても、膵臓からインスリンが出ていないか出ていても非常に少ないことが証明された場合には、1型糖尿病の可能性が高いと考えるとされています。
膵臓から分泌されているインスリンは、分泌された後すぐに代謝されてしまうので、採血で測定することができません。膵臓からインスリンが分泌される時に、同時に同じ量分泌される「Cペプチド」という成分を測定することにより、分泌されたインスリン量を推定することができます。この物質は尿でも測定できるため、頻用されています。尿中や血中のCペプチド量を測定し、非常に低値であれば1型糖尿病と診断できるのです。

膵臓からインスリンが出ているかどうかを確認するためには「経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)」と呼ばれる検査を行います。医師は、この検査の結果を手がかりにして、1型糖尿病かどうかを判断します。

1型糖尿病であるかどうかを調べる際には、年齢も参考になります。1型糖尿病の多くの人は子ども時代から若者時代までに発症すると知られています。元Jリーガーの杉山新選手は23才のときに1型糖尿病を発症し、糖尿病を患いながらもプロサッカー選手として活躍していたことで知られている選手です。多くの1型糖尿病は杉山選手と同じ、もしくはもっと若い時期に発症してしまう場合が多いと言われています。一方、2型糖尿病は肥満などを原因として中高年になってから発病しやすいことで知られています。しかし、比較的高齢になってから1型糖尿病を発症する人もいるため、一概に年齢で分類しきれないのも事実です。

糖尿病は、1型と2型のどちらであるかによってその後の治療方針が異なります。また、治療の違いにより生活スタイルも変わってきます。糖尿病の検査を行って1型と2型のどちらなのかを診断するのは、治療を行ったり病気と付き合いながら生活していったりする上で、非常に重要です。

1型糖尿病で行われる治療:なぜインスリン治療を優先するの?


ここがポイント!

  • 1型糖尿病は、インスリンが絶対的に欠乏しているためインスリン注射は必須
  • 持続皮下インスリン注射、持続血糖モニタリングなどの新しい治療法でより適正な血糖コントロールが可能になってきている
  • 治療法の進化により、1型糖尿病のでも健常な人と同じような生活ができるようになってきている

治療をするならできるだけ手軽な方法がいいと思うのが当たり前だと思います。だからこそ、1型糖尿病でも飲み薬を中心に治療をしたいと思う人もいるのではないでしょうか。しかし、1型糖尿病は、インスリンが絶対的に不足する状態です。よって飲み薬という選択肢はありません。1型糖尿病の治療の基本は「インスリン薬の自己注射」となります。
1型糖尿病の人はインスリン治療が必要

現在、2型糖尿病の治療に使われている飲み薬は、インスリンの分泌を促進させることや、糖の分解や吸収を遅らせる効果を持っています。このことにより、体内のインスリンを効率的に利用して糖尿病の症状を改善しようとしているのです。簡単にいうなら体内で作られたインスリンを効率よく利用することを目的としています。
しかし1型糖尿病は、インスリンを出す膵臓の細胞が破壊されてしまう病気です。体内インスリンがないため、定期的にインスリン薬を自分で注射して補充するしか基本的な選択肢がないのです。

人間の体は食事などの反応に合わせてインスリンを適宜放出しています。それにより体内の血糖値を一定に保つので、健康な生活を送ることができます。インスリン薬を用いた治療では、基本的に健常者のインスリン分泌のパターンを再現することが目標となります。

体が常に少しずつ出しているインスリン(基礎分泌)を再現するために、比較的効果の持続が長いインスリン薬(中間型あるいは特攻型インスリンと呼ばれる薬)を1日1~2回注射します。一方、食事などのときに一気に出されるインスリン(追加分泌)を再現するために、食事などの前に「速攻型インスリン」と呼ばれる薬を注射します。これを強化インスリン療法といいます。

インスリン注射は、今のところ、打てば打つほどに皮膚が固くなっていってしまうため、注射がしづらくなることが問題となっています。また、1日に何度も注射をする必要となることも大変です。こういった問題を克服するため、何回も注射をする必要がない「持続皮下インスリン注入(CSII)」というものがあります。これは別名「インスリンポンプ」とも呼ばれ、体に携帯電話くらいの小型のポンプを付け、おなかにつけたままの注射針から基礎分泌に相当するインスリンを皮下に持続的に注入する機械です。しかも、毎食前にポンプの速度を変えて追加分泌に相当するインスリンを注入することができます。ポンプの交換頻度も数日に1回ですみ、毎日何回も注射する手間が省けます。

体がインスリンを放出する自然なリズムに近い形でインスリンを出してくれるため、好きな時に運動や食事ができるメリットがあります。加えて、インスリンポンプを使うと、糖尿病の合併症として知られる糖尿病網膜症や糖尿病神経障害、糖尿病腎症の発症率が少ないことが知られています。
インスリンポンプとは

インスリンを自己注射する際は、自己で血糖を測定します。この測定も患者さんにとっては大変なことです。指先に小さい針を刺し、出血させて血糖値を測ります。これを1日何回も行うことは苦痛を伴うものです。そこで、出血させずに皮下の間質液の糖分を測定することで、血糖値を導きだすことが可能となりました。センサーを腕に装着し、14日間連続で血糖値を測定することができます。毎日何回も針を刺さずにすみ、連続した細かい血糖測定が可能になりました

また、持続皮下インスリン注入と持続血糖モニターを組み合わせて、より適正な血糖コントロールを行うSAP療法という治療方法もあります。いずれも保険適応で可能な治療になります。

糖尿病専門医による治療を行っても、血糖コントロールが不良な1型糖尿病の患者さんには、膵臓移植という方法もあります。多くの患者さんは腎機能障害も伴っていることから、膵臓と腎臓の同時移植が行われることが多いです。移植後は免疫抑制剤を飲まなければなりませんが、移植しなかった患者さんに比べて寿命が長くなったという報告があります。

膵臓移植のほかに、膵島(すいとう)移植という方法があります。膵臓という臓器の中で、インスリンを作っている組織は膵島という部分で、それは膵臓のわずか1%程度と言われています。膵臓全部を移植する手術は、全身麻酔が必要で体への負担が大きくなります。提供された膵臓の中からインスリンを作る膵島だけを取り出して、肝臓の血管から移植する方法が、膵島移植です。膵臓移植に比べて患者さんにかかる負担は少なくなります。
膵臓移植、膵島移植とも施行できる施設は限られており、適応される患者さんも限られています。

その他にも人工膵臓などの研究も進められています。例えば、2016年5月27日には、厚生労働省がこれまで禁止していた人間とブタの膵細胞の移植を条件が満たした場合に認める方針を発表しました。このことにより、今まで移植治療ができる人数が限られていたことが、近い将来に改善されるかもしれません。
また、大塚製薬から、ブタの膵臓から取り出したインスリンを分泌する細胞を「マイクロカプセル」と呼ばれる小さな容器に包んで移植する「マイクロカプセル化ブタ膵島細胞移植」の開発成功も発表されています。これにより、今まで問題になっていた、動物細胞の人体移植による免疫拒絶反応や感染が大幅に軽減できることが期待されます。

また、1型糖尿病の多くは免疫系の異常によって生じるため、その免疫系の異常を治療対象とした「免疫療法」があります。これまで、いくつかの免疫系に作用する薬が試されていますが、1型糖尿病の完治には至っていない状況です。

現時点では技術的および法的な観点から実用化の目処は経ってはいませんが、自身の膵臓を再生する研究もすすめられています。ES細胞やiPS細胞を用いて自分の膵臓をブタの体内などで作り出し移植する研究や、神経ネットワークを刺激することで体内の膵臓を再生する研究があります。

高血圧症発症チェック

まとめ


ここでは、全糖尿病の5%以下である比較的めずらしい1型糖尿病について、症状、原因、診断・治療方法などのを説明しました。1型糖尿病は、若い人に急速に生じるタイプと、高齢になりゆっくり発症するタイプがあります。いずれもインスリンの絶対的欠乏という状態に変わりはなく、食事や運動療法で改善できる病気ではなく、インスリンの注射が必須になります。発症すると、毎日何回も血糖測定やインスリン注射をしなければならなく、負担はとても大きいものです。しかし、最近は持続的に血糖測定やインスリン注射ができるキットがあり、血糖値の正確なコントロールができるようになっています。

<参考>
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2016
・内科学書 改定第7版|中山書店
・臨床雑誌 内科
糖尿病ネットワーク インスリンポンプ情報
東北大学(神経ネットワーク)
日本IDDMネットワーク
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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