【SGLT2阻害薬】尿から余分な糖が排出される糖尿病の新薬を徹底解説

「SGLT2阻害薬」は、2型糖尿病の新しい治療薬として現在注目されています。この薬が作用するメカニズムは、従来用いられてきた糖尿病治療薬とは大きく異なります。
国内で販売が開始されたのは2014年です。現在では6成分7商品のSGLT2阻害薬が販売され、実際に多くの2型糖尿病の治療に使われています。
SGLT2阻害薬は、開発されてからまだ日が浅く、明らかになっていない部分もある薬ですが、従来の糖尿病治療薬よりも「安全」に「無理なく」血糖のコントロールが出来るため、今後の糖尿病治療において重要視されている薬です。「SGLT2」とはどのようなもので、「SGLT2阻害薬」は糖尿病にどのような効果があるのでしょうか。薬の作用のメカニズムや、実際の薬の種類や注意すべき点などについて、詳しく説明していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01SGLT2とは?
  2. 02SGLT2阻害薬の効く仕組み
  3. 03SGLT2阻害薬一覧
  4. 04副作用と注意点
  5. 05SGLT2阻害薬の利点
  6. 06まとめ

SGLT2とは?

ここがポイント!

  • SGLTは、「ナトリウム・グルコース共役輸送体」というタンパク質のこと
  • グルコースの吸収に関わるSGLTは、2種類存在する
  • SGLT2は、腎臓で糖(グルコース)を再吸収する働きがある

2014年に日本で販売が開始された「SGLT2阻害薬」は、その名の通り「SGLT2」という物質の働きをブロックする薬です。「SGLT」は、このタンパク質の英語名「sodium glucose transporter」の頭文字を取った省略であり、日本語では「ナトリウム・グルコース共役輸送体」と呼ばれています。「SGLT」は細胞の表面に存在しているタンパク質で、血液中のナトリウムやグルコース(ブドウ糖)を細胞内に取り込む働きに関わっています。グルコース(ブドウ糖)の吸収に関わっている「SGLT」は「SGLT1」と「SGLT2」の2種類あります。「SGLT1」は小腸でグルコースを吸収する働きに関わっており、「SGLT2」は腎臓の近位尿細管という部分でグルコースを吸収する働きに関わっています。

人体は食べ物を消化してグルコースを体内に取り込み、エネルギー源として活用しています。大切なエネルギー源であるグルコースを無駄なく吸収するために、体には「再吸収」という仕組みが備わっています。再吸収とは、グルコースが体外に排出されないように、排出されるルートに送られたグルコースを再度血液中に戻すという働きです。このグルコースの「再吸収」の仕組みで働いているタンパク質が、「SGLT」なのです。「SGLT1」は小腸で、「SGLT2」は腎臓の近位尿細管で「再吸収」を行います。グルコースの再吸収の90%は腎臓の近位尿細管で行われており、残りの10%が小腸で行われているとされています。

通常、この「再吸収」の仕組みが働いていることにより、グルコース(ブドウ糖)が体外に排出されることはありません。ところが、血液中のグルコースの量が過剰になった状態である「高血糖」では、再吸収が間に合わず、処理し切れなかったグルコースが尿中に排出されます。これが「尿糖」と呼ばれるもので、糖尿病の代表的な症状の1つとされています。

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SGLT2阻害薬の効く仕組み

ここがポイント!

  • SGLT2阻害薬は、腎臓でSGLT2の働きを阻害し、意図的に尿糖を作らせる
  • 過剰なグルコースを尿糖として排出することで血糖値を下げる薬
SGLT2阻害薬の作用
腎臓の「近位尿細管」という部分では、血液中のグルコースの再吸収が行われています。その「再吸収」に関与しているのが、「SGLT2」というタンパク質です。
人体は摂取した食べ物を、消化によりさまざまな形に分解して、栄養源として活用しています。分解後に不要となった物質は、体外に排出されます。全身を巡っている血液から、不要なものを分別し、水分と一緒に尿として排出する働きをしているのが「腎臓」です。
腎臓に流れ込んだ血液はまず、「糸球体(しきゅうたい)」という部分でろ過されます。このろ過作用により、不要な物質と必要な物質が分別されます。ろ過されたものは「原尿」と呼ばれていますが、この「原尿」の中にはまだ必要なものが残っています。原尿の最終的な分別は、腎臓の「尿細管」という部分で行われます。
「尿細管」は、「近位尿細管」「ヘンレ係蹄下行脚」「ヘンレ係蹄上行脚」「遠位尿細管」「集合管」の5つに分けられて、それぞれの部分で「再吸収」が行われます。「近位尿細管」ではグルコース、アミノ酸、電解質、水分の再吸収が行われます。「ヘンレ係蹄下行脚係蹄下行脚」では水分、「ヘンレ係蹄上行脚」では電解質、「遠位尿細管」では電解質と水分、「集合管」では電解質と水分の再吸収が行われます。これらの再吸収を経て、最終的に不要となったものが、「尿」として体外に排出されます。「糸球体」や「尿細管」など、血液のろ過をおこなう部分は「ネフロン」とも呼ばれて言われています。

このように、腎臓には不要物をろ過する働きがありますが、特に「SGLT2阻害薬」と関係が深いのは「近位尿細管」です。近位尿細管ではグルコースの再吸収が行われます。この働きで重要な役割を果たしているのが、近位尿細管に存在している「SGLT2」というタンパク質です。血糖値が「SGLT2の再吸収機能」を上回った状態になると、尿中にグルコースが排出されて、尿糖となります。

糖尿病の人の体は、尿中にグルコースが流れてしまうのを食い止めようとするために、糖尿病でない人に比べて「SGLT2」の働きが亢進しています。しかし、この機能亢進は、結果的に血液中のグルコースをさらに増加させ、高血糖状態を促進してしまうという悪循環につながっているのです。

「それならば、SGLT2の機能を抑え、尿中にグルコースを意図的に排出すさせれば、血液中のグルコースは減り、血糖値が低下するのではないだろうか?」そのような発想から誕生したのが、「SGLT2阻害薬」です。SGLT2阻害薬は、SGLT2によるグルコースの再吸収を阻害し、尿中に多くのグルコースを排出させ、その結果「血糖値」を下げるという仕組みを持つ治療薬なのです

グルコースは、腎臓だけで吸収されている訳ではありません。胃や腸などでも吸収されているので、SGLT2阻害薬により体中の全てのグルコースの再吸収が妨げられる訳ではありません。あくまでも、不要な分のグルコースが排出されるというイメージです。
従来の糖尿病の治療薬を用いる場合は、インスリンの量に注意する必要がありましたが、「SGLT2阻害薬」は「インスリン」とは全く関係のない仕組みで働く薬です。そのような点でも、SGLT2阻害薬は、糖尿病の治療薬として画期的な新しい薬であるといえるでしょう。

SGLT2阻害薬一覧

ここがポイント!

  • 現在日本で販売されているSGLT2阻害薬は、6種類7商品
  • 名前に「グリフロジン」と付いているのが特徴
  • 基本的に、1日1回服用

「SGLT2阻害薬」は、現在日本では、「イプラグリフロジン」「ダパグリフロジン」「ルセオグリフロジン」「トホグリフロジン」「カナグリフロジン」「エンパグリフロジン」の6種類7商品が販売されています。名称に「グリフロジン」と付くのが「SGLT2阻害薬」の特徴で、薬剤の効果はどれも同様です。

① イプラグリフロジン
 ・スーグラ錠(25mg/50mg)アステラス製薬
  50mgを1日1回、朝食前または朝食後に服用
  (効果が不十分な場合は、医師の判断により、100mgを1日1回まで服用可能)

② ダパグリフロジン
 ・フォシーガ錠(5mg/10mg) ブリストル、マイヤーズ(株)
  5mgを1日1回、服用
  (効果が不十分な場合は、医師の判断により、10mgを1日1回まで服用可能)

③ ルセオグリフロジン
 ・ルセフィ錠(2.5mg/5mg)  大正製薬(株)
  2.5mgを1日1回、朝食前または朝食後に服用
  (効果が不十分な場合は、医師の判断により5mgを1日1回まで服用可能)

④ トホグリフロジン
 ・アプルウェイ錠(20mg) サノフィ(株)
  20mgを1日1回、朝食前または朝食後に服用

 ・デベルザ錠(20mg) 興和(株)
  20mgを1日1回、朝食前または朝食後に服用 

⑤ カナグリフロジン
 ・カナグル錠(100mg)  田辺三菱製薬(株)
  100mgを1日1回、朝食前または朝食後に服用

⑥ エンパグリフロジン
 ・ジャディアンス錠(10mg/25mg)   日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
  10mgを1日一回、朝食前または朝食後に服用
  (効果が不十分な場合は、医師の判断により、25mgを1日1回まで服用可能)

どの「SGLT2阻害薬」も1日1回の服用となっていますが、添付文書ではダパグリフロジン(商品名:フォシーガ錠)に関しては、「朝食前または朝食後に」という、服用のタイミングに関する文言はありません。また、薬の効果により増量が可能なタイプとそうでないタイプがあります。薬剤量の増量は、慎重に行わなければいけません。勝手な自己判断ではなく、きちんと担当医師と相談し、指示通りに内服しましょう。

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副作用と注意点

ここがポイント!

  • 利尿剤や他の糖尿病治療薬と併用する場合には注意が必要
  • 尿路感染症、性器感染症のリスクが上がるので注意が必要
  • 頻尿、多尿がみられることがあるため、適度な水分摂取が必要
SGLT2阻害薬の副作用と注意点
SGLT2阻害薬は近位尿細管での「再吸収」を阻害するという特徴から、尿量が増加するとされています。この尿量の増加に伴い、「脱水」を起こしてしまう可能性があります。特に腎機能が低下している場合や高齢者では、体内の水分バランスが崩れ、危険な状態になる可能性もあるため注意が必要です。
心臓の疾患などに対して「利尿剤」の内服治療をしている人も注意が必要になります。過剰な「利尿作用」となってしまう危険性があるためです。利尿剤の内服治療を行っている人は必ず、主治医に報告して相談するようにしましょう。
他の糖尿病の飲み薬(血糖降下薬など)や、インスリン薬の注射などとの併用した場合に、低血糖となる可能性があるという報告があるため、注意が必要です。
他にもこの薬の副作用として、コレステロールや体重の減少が報告されていますが、肥満や脂質異常症(高脂血症)の人の場合には、逆にメリットとも言えるかも知れません。一方、瘦せ型の人などでは注意が必要になります。

また、尿中に糖が多くなるということは、細菌などにとっては繁殖するための栄養分が豊富な状態になるということになります。このため膀胱や尿管などに、「尿路感染症」を発症するリスクが高くなります。さらに女性の場合は性器の構造上、さまざまな細菌などによる「性器感染症」のリスクも高くなると言われており、注意が必要です。諸外国ではこのような尿路感染や性器感染の報告が多いと知られていますが、日本では生活習慣(入浴頻度、温水洗浄便座の使用)などの違いから衛生状態が保たれやすく、諸外国に比べて感染の危険性は低いといわれています。

SGLT2阻害薬には、皮膚関連の副作用もあります。例えば、赤い皮疹(紅斑)などの症状が出現する場合があるとされています。皮膚症状は、内服を開始して1〜2週間以内に出現する場合が多いとされています。万が一症状が出現した場合には、内服を中止して主治医に相談しましょう。
その他、「口渇」「頻尿」「多尿」などの副作用の報告もありますが、これは尿量の増加に伴うものです。服用中は特に適度な水分摂取を心がけましょう。

内服時は以上の副作用に十分注意するとともに、何らかの症状、異変が見られた場合には、速やかに内服を中止して、主治医に相談するようにしましょう。

SGLT2阻害薬の利点

ここがポイント!

  • SGLT2阻害薬は、単剤使用で低血糖が起こりにくい
  • 不要なグルコースを尿中に排出して血糖値を下げる
  • 体重減少効果やコレステロールを下げる作用もある

ここまでに説明してきたように、「SGLT2阻害薬」は、SGLT2の再吸収機能を阻害することで、尿中に多くのグルコースを排出して血糖値を下げるという薬です。「SGLT2阻害薬」の最大の利点は、従来の糖尿病治療では必ず注意が必要となる「低血糖」が起こりにくいというです。「低血糖」は時に重篤な状態にもつながるため、低血糖のリスクが少ないということは安全面でも素晴らしい薬であると言えます。しかし、低血糖が起こりにくいのは、SGLT2阻害薬「だけ」を服用する治療の場合であり、他の糖尿病治療薬(血糖降下薬、インスリン分泌促進薬、インスリン注射)を併用する際には、低血糖への注意が必要となります

また、グルコースの「再吸収」を抑えるという点は、肥満の患者さんであれば、血糖コントロールとともに体重減少が期待できるという利点があります。また、高脂血症の患者さんであれば、血中のコレステロールや中性脂肪の低下にもつながるとされています。
SGLT2阻害薬の利点

低血糖が起こりにくい糖尿病の治療薬としては「DPP-4阻害薬」が「SGLT2阻害薬」と同様に注目されています。外国ではこの「DPP-4阻害薬」と「SGLT2阻害薬」の両方の効果を持った薬剤が既に承認され、使用されています。
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まとめ

増え続ける「糖尿病患者」に対して、その治療法の研究も日々進歩しています。「SGLT2阻害薬」や「DPP-4阻害薬」は低血糖のリスクが少なく、糖尿病治療をより安全に、負担なく行うために有効な薬です。「DPP-4阻害薬」と「SGLT2阻害薬」の配合剤も、諸外国ではすでに使用されており、さらに有効性や安全性が高まる薬として注目されます。

しかし、どんな薬であっても、何らかの副作用の可能性は必ずあります。薬を正しく理解して、服用中に何か体調に変化があれば、速やかに主治医に相談することも、安全に治療をおこなうためには重要なことであるということを頭に入れておきましょう。
研究の成果により、素晴らしい薬が次々と開発されてきていますが、まずは糖尿病などの生活習慣病にならないように普段から心がけることが大切です。糖尿病などの生活習慣病は、最初の頃は症状がありませんが、将来的に命に関わる大きな疾患の原因となってしまう場合があります。現在糖尿病の治療を受けている人も、治療できちんと血糖コントロールをしながら、生活習慣に気をつけて暮らしていれば、将来的な病気の原因を排除することは可能です。自分自身のためにも、またあなたを大切に思ってくれる家族やパートナーのためにも、健康的な生活を目指しましょう!

<参考>
日本糖尿病学会 SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会著・編 2016-2017
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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