糖尿病はなぜインスリン注射が必要なのか|種類、副作用、注意点などについて徹底解説

今や日本人の糖尿病患者数は300万人を超えており、糖尿病になるリスクは誰にでもあります。主な糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病ですが、1型糖尿病では、発症早期からインスリン薬による治療が必須です。また、2型糖尿病は進行するとインスリン薬による治療が必要になります。インスリン治療をする場合、毎日自分でインスリン薬の注射をしなければなりません。そのため、他の治療に比べて抵抗があったり、副作用に対する不安が強い人も多いのではないでしょうか。
インスリンを上手に利用して糖尿病をコントロールすることは、その後の健康や合併症の予防にとても重要です。糖尿病とうまく付き合っていくために、自分が使うインスリン薬の種類や注意点、副作用を正しく理解し、正確な知識を身につけましょう。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01インスリン製剤は作用によって5種類に分けられる
  2. 02超速効型インスリン製剤
  3. 03速効型インスリン製剤
  4. 04中間型インスリン製剤
  5. 05混合型インスリン製剤
  6. 06持続性溶解インスリン製剤
  7. 07インスリン製剤のまとめ
  8. 08まとめ

インスリン製剤は作用によって5種類に分けられる

ここがポイント!

  • 進行した2型糖尿病の治療にはインスリン薬が必要であり、インスリンは注射薬しかない
  • インスリン薬は作用のタイミングによって5つのタイプに分けられる
  • インスリン薬は剤形によって、3つのタイプのものがある

血糖値を下げる働きをするホルモンである「インスリン」は、小腸の横に存在する膵臓という臓器から分泌されます。膵臓はインスリン以外にも、小腸に消化液を分泌するとともに、グルカゴンという血糖値を上げるホルモンを分泌します。インスリンは、膵臓のβ細胞と言われる細胞から分泌されます。インスリンが分泌されなくなるか、分泌量が低下する、あるいは効果がうすれるのが「糖尿病」です。膵臓のβ細胞が何らかの原因で破壊されて、インスリンが分泌できなくなった場合の糖尿病を1型、それ以外を2型糖尿病と呼びます。日本人の糖尿病患者の95%は2型糖尿病だと言われています。
 
インスリンは膵臓から直接血液中に分泌されるホルモンであり、消化液によって簡単に分解されてしまいます。そのため、インスリン薬は飲み薬として使うことができず、現在のところ注射薬しかありません

1型糖尿病は、体内でインスリンを分泌することができないため、発症早期からインスリン薬での治療が必須となります。一方、2型糖尿病の治療はインスリン薬だけではなく、インスリンの分泌促進・糖の尿中排泄促進・インスリン抵抗性の改善などを目的とした飲み薬による治療や、運動や食事などの生活習慣の改善による治療もあります。しかし、ある程度進行した2型糖尿病の治療にはインスリンは必須になります

インスリンは、効果の持続時間によって、以下の5つのタイプに分かれます。
・超速効型インスリン製剤
・速効型インスリン製剤
・中間型インスリン製剤
・混合型インスリン製剤
・持続性溶解インスリン製剤
 
それぞれのインスリン製剤は、目的や対象となる患者さんが異なります。
通常、体の中でインスリンは、常に一定量分泌されている「基礎分泌」と、食後に血糖値が上がったのを抑えるために分泌される「追加分泌」の2つの分泌パターンを示します
超即効型および即効型インスリン製剤は主に「追加分泌」を補うためのインスリン薬で、中間型および持続性溶解インスリン製剤は主に「基礎分泌」を補うためのインスリン薬になります。

また、混合型インスリン製剤は「基礎分泌」と「追加分泌」の両方を補う目的で使用されます。人によって、血糖値の変動、インスリンの分泌量、インスリン抵抗性(インスリンの効きの悪さ)、生活リズム、食生活などはそれぞれ異なります。それに伴い、最適なインスリン製剤の種類も異なるため、よく調べ、その人ごとに最適なインスリン製剤が処方されます。また、人によって、インスリン薬を注射する必要回数も異なります。2種類のインスリン製剤を併用する場合もあります。

さらにインスリン薬は、構造から「ヒトインスリン製剤」と「インスリンアナログ製剤」に分けられます。ヒトインスリン製剤は、微生物にヒトインスリン遺伝子を導入して、遺伝子工学の手法を用いて産生された薬です。人の膵臓から取り出す訳ではありませんが、健康な人が体内で分泌するのと全く同じ構造のインスリンです。

一方、インスリンアナログ製剤は、ヒトインスリンの構造を一部変化させて、効果が速く現れるように改造した薬です。ヒトインスリン製剤が吸収されて効果を示すのに最低30分かかるのに対し、インスリンアナログ製剤の多くは10~15分程度で効果が表れます。

また、インスリン製剤は全て液体ですが、剤形によって3つのタイプがあります。
プレフィルド/キット製剤:インスリン製剤と注入器が一体のタイプ。
カードリッジなどを交換する手間が省ける使い捨てタイプです。
カードリッジ製剤:専用のペン型注入器と組み合わせて使うタイプ。
注入器によって注入量を調節して使います。
バイアル型:専用のビン(バイアル)に入ったタイプ。
バイアルにインスリン専用注射器を刺して、必要単位数を吸い取って注射するタイプ。

さまざまな種類のインスリン製剤が販売されていますが、一番知っておかなければならないのは、作用の持続時間の違いによる5つのタイプのインスリン製剤の使い方とその副作用などの注意点です。それぞれの特徴と注意点を順番に見ていってみましょう。

高血圧症発症チェック

超速効型インスリン製剤

ここがポイント!

  • 超速効型インスリン製剤は、作用時間が最も短く、追加分泌を補うためのインスリン製剤
  • 注射後10~20分で作用が表れ、3~5時間持続する
  • 通常、中間型あるいは持続性溶解インスリンと併用する
  • 注射後糖質を含む食事をとらないと低血糖のリスクがある

超速効型インスリン製剤は、作用時間が最も短いインスリン製剤です。インスリンアナログ製剤なので、効果は注射後約10~20分で現れます。作用の持続時間は3~5時間です。食後高血糖を抑えるために、インスリンの追加分泌を補うためのインスリン薬であり、健康な人の追加分泌(食後分泌)パターンに限りなく近い働きをします。

注射してから効果が出るまでが速いため、食事の直前に皮下注射することができるのが、超即効型インスリン製剤の特徴です(効果の発現が遅いインスリン製剤は、食事の30分前に注射する必要があります)。作用時間が短い反面、血糖降下作用が強いインスリンです。基礎分泌を補うことはできないインスリン製剤なので、ほとんどの場合、中間型あるいは持続性溶解インスリン製剤と併用します

このタイプのインスリン薬を用いた治療を行っている際に、食後1~2時間の血糖値よりも、次の食前の血糖値の方が高くなる場合には、追加分泌ではなく、基礎分泌が不足している可能性があります。その場合には、必要に応じて持続型または中間型インスリンが増量されます。
使用上の注意点は以下です。
インスリン注射後には必ず食事を取りましょう。
コース料理で前菜などの糖質の少ない食事からゆっくり取る場合や、糖質を大幅に制限した食事の場合は、低血糖のリスクがあることを理解しておき、気を付けるようにしましょう。
注射後30分以内は運動しないようにし、注射後の運動は糖分補給の準備をして行いましょう。
これらの注意点を頭に入れて使用するようにしましょう。

速効型インスリン製剤

ここがポイント!

  • 速効型インスリン製剤は、インスリンの追加分泌を補うためのインスリン製剤
  • 超速効型インスリンよりも少し時間をかけて緩やかに効く
  • 単独注射もしくは持続性溶解インスリン製剤と併用で使用する
  • 食事の30分前に注射するのが原則
  • 食事のタイミングによって低血糖や高血糖のリスクがあるので注意する

速効型インスリン製剤も、超速効型インスリン製剤と同じく、食後の高血糖を防ぐためのインスリンの追加分泌を補うインスリン製剤です。超速効型インスリンと異なり、ヒトインスリン製剤なので、効果が現れるまでの時間がやや長く、作用時間もやや長めになります。超速効型インスリン製剤に比べると少し緩やかに効くというイメージです
 
効果が出るのに30分~1時間ほどかかるため、食事の「約30分前」に自分で皮下注射をする必要があります。超速効型インスリン製剤と違い、食事の「直前」に注射できないという難点があります。作用の持続時間がやや長いため、速効型インスリン製剤単独で治療することもありますが、通常、多くの場合は、持続性溶解インスリンなど基礎分泌を補う他のインスリン製剤と併用します。
以下の注意点を理解して使用するようにしましょう。
注射してから30分後に忘れずに食事を取ってください。注射してから食事までの時間が長くなってしまうと低血糖のリスクがあります。そのため、食事の時間が計算できない、または、食事の30分前に注射を打てないなどの事情がある人は、超速効型インスリン製剤への変更を考慮する必要があります。
作用のピークは注射の2~3時間後ですが、持続時間が5~8時間と長いため、食間や次の食事までの間に低血糖を起こすリスクがあります。その場合は、間食が必要になる場合もあります。
食事時間が不規則になり、食事の間隔が短くなる場合は、前回に注射したインスリンの効果が残っていることがあります。その場合、低血糖のリスクが上がるので、超速効型インスリン製剤への変更が必要になる可能性があります。
注射後2~3時間は運動を控えた方が無難です。運動をする場合には、低血糖のリスクがあるため、糖分補給の準備をしておく必要があります。
高血圧症発症チェック

中間型インスリン製剤

ここがポイント!

  • 中間型インスリン製剤は、インスリンの基礎分泌を補うためのインスリン製剤
  • 効果は注射後1~3時間で発現し、18~24時間持続する
  • 1日1回が基本だが、1日2回注射する場合もある
  • インスリンの効果が時間とともに変化することを意識して、注射回数や食事のタイミングを考える必要がある

超速効型や即効型インスリン製剤のような追加分泌を補うインスリン製剤と違い、中間型インスリン製剤は、インスリンの基礎分泌を補うためのインスリン製剤です。空腹時の血糖値を下げるために使うインスリン薬であるため、原則1日1回朝食の30分前~直前に自分で皮下注射を行います。効果は1~3時間で発現し、18~24時間持続します

作用時間が短い場合は、夜間に高血糖になってしまうため、注射回数を1日2回に増やすなど、注射回数の調節が出来るのも特徴の1つです。基礎分泌を補うもう1つの種類である持続性溶解インスリン製剤との大きな違いは、中間型インスリン製剤の場合は注射後4~6時間に作用のピークがあり、その後徐々に効果が下がってくるという点です。中間型インスリン製剤単独使用での血糖コントロールが難しい場合は、他のインスリン製剤を併用する場合もあります。
心得ておくべき注意点は以下です。
中間型インスリン製剤は、注射後の時間経過に伴い、インスリンの効果の強さが変わってくることを頭に入れて食事や運動を行ってください。
夜に注射をする場合には、夜間に低血糖を起こすリスクもあります。作用時間を考慮して注射する必要があります。

混合型インスリン製剤

ここがポイント!

  • 混合型インスリン製剤は、中間型インスリン製剤と超速効型あるいは速効型インスリン製剤を組み合わせた製剤
  • 基礎分泌と追加分泌を同時に補うためのインスリン製剤
  • 1日2回注射が基本だが、血糖の変動によって、1日1~3回の間で注射する

混合型インスリン製剤は、中間型インスリン製剤に超速効型あるいは速効型インスリン製剤を組み合わせたインスリン製剤です。一本で基礎分泌と追加分泌を同時に補うために開発されたインスリン製剤です。多くの場合、朝と夜の1日2回注射となりますが、その人の状態や製剤の種類によっては、1日1回注射あるいは1日3回注射となる場合もあります。

超速効型インスリン製剤が含まれている場合は食直前、速効型インスリン製剤が含まれている場合は、食前30分以内に自分で皮下注射をします。上手に使うと糖尿病のコントロールが非常にしやすいインスリン製剤ですが、時間や用量の調節が難しいタイプの製剤でもあります。
頭に入れておくべき注意事項は以下です。
1日2回注射では、昼食のための追加分泌の補充がありません。そのため昼食後や夕食前の血糖値が上がりやすくなることを理解して、昼食の時間や内容を考える必要があります。
1日1回注射では、朝食後に低血糖のリスクがあり、夜間に血糖値が上がりやすくなる場合があるため、そういった時間帯の血糖値に注意し、必要に応じて注射回数やインスリン製剤を変更する必要があります。
1日3回注射の場合は、食事時間が不規則になると、食前の血糖値がばらつくため、低血糖や高血糖のリスクが増えます。食事時間が不規則な人は、使用するインスリン製剤を考え直す必要があるかもしれません。
高血圧症発症チェック

持続性溶解インスリン製剤

ここがポイント!

  • 持続性溶解インスリン製剤は、インスリンの基礎分泌を補うためのインスリン製剤
  • 24時間ほとんど効果のピークがなく、作用が持続する
  • 食事のタイミングに関係なく1日1回注射をする場合が多い
  • 追加分泌を補うことができないため、食事療法、あるいは、他のインスリン製剤や経口血糖降下の併用が必要

持続性溶解インスリン製剤は、注射後の効果の減弱が少なく、効果が長く持続するため、インスリンの基礎分泌を補うために用いられるインスリン製剤です。注射後1~2時間で作用を示し、ほぼ24時間効果が持続します。食事のタイミングと関係なく1日1回の皮下注射である場合が多く、その場合は夕食前や就寝前など毎日時間を決めて注射します。

1日2回注射をする場合もあります。低血糖のリスクがほとんどなく、また体重増加のリスクも少ない上に、食事のタイミングに関係なく注射出来るので、使いやすいインスリン製剤であると言えます。効果のピークはほとんどありませんが、製剤によっては注射後3~14時間の作用がやや強くなるものもあります。
心得ておくべき注意点は以下です。
食後高血糖を抑えることはできないため、出来るだけ食後高血糖を起こしにくいような食事(低GI値)を選択するように心がけましょう。
それでも食後高血糖が持続する場合は、追加分泌を補うために超速効型インスリン製剤や経口血糖降下薬などの併用が必要になります。

インスリン製剤のまとめ


インスリン製剤とその特徴を1つずつ見てきました。
健康な人では、食事などによる血糖値の変動に体が反応して、膵臓がインスリンの分泌量を決めてくれます。インスリン製剤を使う必要がある糖尿病の人は、そういった機能が衰えたり失われたりしています。インスリン製剤を使う際は、自然なインスリンの分泌に近い形でインスリンを補うために、作用の発現までの時間・作用持続時間・作用のピーク時間などを考えて、自分自身でインスリンの注射をする必要があります

低血糖気味になった場合は、体から血糖値を上げるようなホルモンが分泌されますが、そうなると糖尿病のコントロールがうまくいかなくなる場合があります。また、インスリンが効き過ぎてしまえば低血糖症のリスクも出てくるので、インスリン治療は適切な量で行うことがとても重要となります

インスリン製剤を使用する際には、自分自身の糖尿病の状態のみならず、食事内容やタイミング、ライフスタイルに合ったインスリン製剤を適切に使用することが重要なのです

高血圧症発症チェック

まとめ

糖尿病治療に欠かせないインスリン製剤について、作用時間により分類し説明してきました。インスリンの種類や必要量は、人それぞれ異なりますし、同じ人でもその時の状況によって変わってきます。定期的な検診はもちろんのこと、何か不調を感じた場合は早めに病院を受診することが大切です。また、動脈硬化や腎不全など非常に怖い合併症を引き起こさないようにするためには、インスリン製剤をうまく使い、適切な血糖のコントロールを続けることが大切です。糖尿病の人にとっては、良好な血糖コントロールが健康的に長く生きるための重要なポイントになります。インスリンはうまく使用すれば、適正に血糖をコントロールすることができます。正確な知識を身につけて、糖尿病と上手に付き合っていきましょう。


<参考>
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療ガイド 日本糖尿病学会著・編 2016-2017
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

この記事の情報の信憑性について

オンラインクリニックでは、医療従事経験者による記事編集、専任の監修医を設けることにより信頼性のある情報提供を心がけておりますが(詳細は「運営方針」をご確認ください)、ユーザーの方ご自身、またはご家族の具体的な医療上の問題を解決する必要がある場合には、医療機関へ相談されるか、または受診をするようにしてください(詳細は「利用規約」をご確認ください)。

記事についてのお問い合わせ