肥満症の原因とは|太るメカニズムと合併症について

みなさんは「肥満症」という言葉を知っていますか。「肥満」という言葉は知っているけど「肥満症」はよく知らないという方も多いのではないでしょうか。この2つの言葉はとても似ていますが違いもあります。ここでは「肥満」から「肥満症」になってしまう過程を分かりやすく説明していきます。「太っている=不健康 」というイメージは、みなさん持っていると思いますが、「肥満症」が体に悪いのには、きちんとした理由があるのです。その仕組みを理解して、ダイエットや健康維持のモチベーションにつなげていきま
しょう。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01「肥満」と「肥満症」の違いとは
  2. 02肥満症のメカニズム
  3. 03体重増加による体への負担とは
  4. 04薬や病気により引き起こされる肥満とは
  5. 05まとめ

「肥満」と「肥満症」の違いとは

ここがポイント!

  • 日本の肥満の基準は「BMI25以上」
  • 「肥満症」とは肥満が原因で不健康になっており、医学的に減量治療が必要な状態
  • 肥満症は「肥満関連の疾患の有無」と「内臓脂肪の蓄積」から診断される

「肥満」とは単に太っている状態のことを言います。肥満は病気ではありません。肥満かどうかを判断する簡単な指標として、体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で表される「BMI(Body Mass Index)」が世界的に用いられています。
例えば体重60kgで身長170cmの人だと、BMIは60÷(1.7×1.7)≒20.76となります。

WHO(世界保健機関)による肥満の判定基準は、BMI30以上です。しかし、日本人はBMI25を超えたあたりから、「高血圧」「脂質異常症」「高血糖」などの合併症の発症頻度が高くなります。そのため、日本肥満学会は、「日本人ではBMI25以上の人を肥満とする」と定義しました。

肥満症とは「肥満が原因で不健康な状態になっている」もしくは「肥満に関連した病気になることが予測される状態」のことを言います。肥満は病気ではありませんが肥満症は病気と深く結びついている状態です。そのため、肥満症に対しては、医学的な減量治療が必要になります。「肥満症」は病気なので、医師により診断が行われます。その診断基準を見てみましょう。
肥満と肥満症の違い

肥満症の診断基準とは

日本肥満学会によって策定された「肥満症診断基準2011」によると、肥満症は、下記フローチャートに沿って診断されます。

このフローチャートで「肥満症」に行き着いた人で、下の(1)(2)を満たす人が「肥満症」と診断されます。

(1)11の肥満関連疾患のうち1つ以上の健康障害を有する

11の肥満関連疾患は、内臓脂肪蓄積による「脂肪細胞の質的異常」と皮下脂肪蓄積による「脂肪細胞の量的異常」に分けられます。


<脂肪細胞の質的異常により起こる肥満関連疾患>
「耐糖能障害」「脂質異常症」「高血圧」「高尿酸血症」「痛風」「冠動脈疾患「脳梗塞」「脂肪肝」「月経異常及び妊娠合併症」「肥満関連腎臓病」

<脂肪細胞の量的異常により起こる肥満関連疾患>
「睡眠時無呼吸症候群」「肥満低換気症候群」「整形外科的疾患」

(2)腹部CTにより測定した内臓脂肪面積が100平方cm以上の内臓脂肪型肥満

内臓脂肪型肥満かどうかを調べるために、まず腹囲の測定を受けます。腹囲(へその位置)が「男性85cm以上」「女性90cm以上」であれば、内臓脂肪型肥満の疑いとされます。疑いとなった人は、腹部CTスキャンにより、正確な内臓脂肪面積の測定を受けることがあります。内臓脂肪面積が100平方cm以上であれば、確定診断となります。

肥満症の診断基準


11の肥満関連疾患を見て分かるように、「肥満症」は多くの病気を引き起こす原因となります。肥満症の診断は、「体重を減らすことにより、健康状態が改善される人」を選び出し、減量治療を行って健康を取り戻してもらうために行われるのです。

高血圧症発症チェック

肥満症のメカニズム

ここがポイント!

  • 肥満になり脂肪細胞が増加すると、「アディポサイトカイン」の分泌が異常になる
  • アディポサイトカインの分泌異常が病気の原因につながる
  • アディポサイトカインには「善玉」と「悪玉」がある

肥満症は、脂肪の蓄積によって引き起こされるものなので、まずは「脂肪を溜めない」ことが大切です。それでは、なぜ体に脂肪が溜まってしまうのでしょうか。
脂肪は体にとって、決して悪いだけのものではありません。むしろ適当な量の脂肪は、体にとって必要不可欠なものです。

私たちの体は、エネルギーを使って歩いたり、脳や内臓を動かしたり、体温を保ったりしています。脂肪はとても大切なエネルギー源です。一方で、エネルギー源であるがために、体は飢餓状態に備え脂肪を蓄える仕組みを持っているのです。食べ物から取り入れた「摂取エネルギー」と生きるうえで必要な「消費エネルギー」が同じであれば、太ることはありません。消費エネルギーよりも摂取エネルギーが上回っていると、体は余ったエネルギーを脂肪として蓄えてしまうのです。

脂肪には、内臓の周りに付く「内臓脂肪」と皮下に付く「皮下脂肪」の2種類があります。「肥満症」の原因のほとんどは「内臓脂肪」によるものだといわれています。それは内臓脂肪が生活習慣病の発症の原因になる物質を多く分泌していることにあります。


脂肪細胞からは、「アディポサイトカイン」という物質が分泌されています。内臓脂肪が蓄積し、脂肪細胞が肥大・増殖すると「アディポサイトカイン」の分泌のバランスが異常になってきます。この異常は、動脈硬化の促進や、生活習慣病の発症に結びつきます。すなわち、アディポサイトカインの分泌異常は、「肥満」から「肥満症」になってしまう原因の1つでもあるわけです。

アディポサイトカインは、体に良い働きをする「善玉アディポサイトカイン」と、逆に体に悪い働きをする「悪玉アディポサイトカイン」に分けられます。通常は、善玉と悪玉のバランスが取れており健康が保たれています。しかし肥満になり脂肪が増えると、善玉の量が少なくなり悪玉の量が増えてしまうためバランスが崩れてしまいます
アディポサイトカインとは

「悪玉アディポサイトカイン」「善玉アディポサイトカイン」が体に及ぼす影響について、もう少し詳しく見ていってみましょう。

悪玉アディポサイトカインにはたくさんの種類があります。主な悪玉アディポサイトカインと、それぞれが体に与える影響は、以下です。

<悪玉アディポサイトカイン>

・アンジオテンシノーゲン
血圧を上昇させる作用のある「アンジオテンシン」の分泌を高めます。内臓脂肪の増加とともに分泌も増加するため、高血圧の原因となります。

・TNF-α
血糖値を下げる効果を持つインスリンというホルモンを効きにくくし、糖尿病になりやすくしてしまいます。

・アンジオポエチン様タンパク質
TNF-αと同じくインスリンの効果を弱くするのに加え、血管にダメージを与えて動脈硬化を引き起こしてしまいます。

・PAI-1
血栓と呼ばれる血の塊をできやすくします。その結果、血管が詰まりやすくなってしまい脳梗塞や心筋梗塞の危険を高めます。

簡単にまとめまると、悪玉アディポサイトカインの効果は「血圧を高くし、動脈硬化を起こし、糖尿病のリスクを上げ、血管を詰まりやすくする」ということになります。これらはたくさんの病気の原因となるので、悪玉アディポサイトカインは万病のもとと言っても過言ではないでしょう。

一方、善玉アディポサイトカインには次のようなものがあります。

<善玉アディポサイトカイン>

・アディポネクチン
血糖値を下げるインスリンを効きやすくし糖尿病になりにくくします。血管のダメージを減らし動脈硬化を起こしにくくします。

・レプチン
満腹を感じさせて食欲を減らします。

肥満になり脂肪が増えると、善玉アディポサイトカインが減り、悪玉アディポサイトカインが増えてしまいます。こうして善玉と悪玉のバランスが崩れ「脂肪の質的異常」によりどんどん不健康な方へ進んで行き、「高血圧」「糖尿病」「心筋梗塞」「脳梗塞」などのさまざまな病気を発症し、「肥満症」になってしまうというわけです。

体重増加による体への負担とは

ここがポイント!

  • 脂肪が蓄積して肥満になると、膝の関節や腰椎が変形してしまう
  • 首まわりの脂肪の蓄積により、睡眠時無呼吸になることがある

皮下脂肪の蓄積により、体重が増加することが原因で起きる肥満症もあります。
脂肪が増え、体重が増えると、重い体を支えることになります。この状態が長期間続くと、重さに耐えられなくなった腰痛が変形したり圧迫骨折を起こしたりする「変形性腰椎症」、膝関節の軟骨が擦り減ってしまい動かすときに痛みを生じる「変形性膝関節症」などの整形外科的疾患を引き起こします。

整形外科の病気のほかにも、「睡眠時無呼吸症候群」「肥満低換気症候群」などの呼吸器の病気も引き起こします。

睡眠時無呼吸症候群

「睡眠時無呼吸症候群」とは、顎の下あたりに脂肪がつくことで、舌の付け根が喉の方に押されて、「気道」と呼ばれる空気の通り道が狭くなり、眠っている間に呼吸が止まってしまう病気です。起きている間は重力によって脂肪は地面の方に引っ張られているので、気道が狭くなったり塞がれたりはしません。しかし、就寝中はたいてい仰向けで寝ています。そのため、重力で顎下の脂肪と舌の付け根が喉の方に押し込まれてしまい、気道が狭くなり大きないびきをかくようになります。さらにひどくなると気道が塞がって一時的に呼吸が止まってしまうのです。
「10秒以上の気流停止」を無呼吸とし、「一晩に(7時間の睡眠中)30回以上」もしくは「一時間あたり5回以上」あれば睡眠時無呼吸と診断されます。

睡眠時無呼吸症候群とは

呼吸が止まると当然苦しくなります。何度も呼吸が止まると苦しさで眠りが浅くなってしまい、昼間異常な眠気が現れたり、集中力低下などが起きたりしてしまいます。これらの症状だけを聞くとひどい寝不足と同じようなイメージを持ってしまうかもしれません。しかし、睡眠時無呼吸症候群は単純な寝不足とは違い呼吸が止まっています。そのため、体が酸素不足の状態になるので、体内のバランスが崩れてしまいます。

睡眠時無呼吸症候群の治療法には、症状を緩和させるものとして、「CPAP療法」があります。CPAP療法は、鼻にマスクを装着し、エアチューブから絶えず空気を送り続けることで気道が塞がらないようにしておく方法です。また、「マウスピース」をはめて下あごを上あごよりも前に出すことで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸を防ぐ方法もあります。

過食による肥満が原因で無呼吸状態になっている場合には、「肥満低換気症候群」といわれます。重度の肥満の場合は、呼吸困難や心不全の症状がみられることもあります。肥満が原因である「肥満低換気症候群」は、「減量療法」「減量手術」が必要な場合があります。

このように、肥満症は脂肪の質の変化だけではなく、量の増加によってももたらされます。「内臓脂肪」「皮下脂肪」ともに、多すぎることで肥満になり、やがて病気を発症し「肥満症」になってしまいます。とは言っても、脂肪は体にとって大切なエネルギー源です。大切なのは、自分にとって適切な体脂肪を維持することです。脂肪は多すぎても、少なすぎても体には良くないのです。

高血圧症発症チェック

薬や病気により引き起こされる肥満とは

ここがポイント!

  • 「抗うつ薬」「ステロイド薬」などの副作用で肥満になる場合がある
  • 病気が原因で肥満になる場合は、病気を治療する必要がある

ここまで、肥満により健康を害し「肥満症」になるという話をしてきました。肥満は、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣だけが原因でなるわけではありません。病気や薬の副作用が原因で、肥満になってしまう場合もあるのです。それらの代表例をご紹介したいと思います。

薬の副作用による肥満

副作用で体重増加してしまう薬には、主に「抗うつ薬」「ステロイド」などがあります。

抗うつ薬

「抗うつ薬」には「抗ヒスタミン作用」「代謝抑制作用」があります。抗ヒスタミン作用とは、ヒスタミンという物質の働きを抑える作用のことです。「ヒスタミン」には食欲を抑える働きがあるため、「ヒスタミン」の働きが抑えられることで食欲が上がってしまい、体重増加につながるのです。また、「抗うつ薬」には気持ちを安定させるために、セロトニンの分泌を増やす作用もあります。セロトニンが増えるとリラックス作用はありますが、エネルギー消費は抑えられてしまうために、太りやすくなるのです。

ステロイド薬

「ステロイド薬」も肥満をひきおこします。ステロイド薬は、さまざまな副作用のある薬です。「ステロイド」は、私たちの体の中で作られている「副腎皮質ホルモン」という物質です。ステロイド薬は、この「副腎皮質ホルモン」の成分をもとに作られた薬です。体の炎症を抑える作用があるので、免疫異常などの病気に用いられています。
ステロイド薬は、幅広い作用がある一方で、感染症にかかりやすくなったり、骨祖しょう症や胃潰瘍の原因になったりするなど、多くの副作用もあると知られています。
肥満に関連した副作用としては、「食欲の亢進」と「脂肪の代謝障害」により、顔・首まわり・肩・腹部に脂肪がつく「中心性肥満」や、顔に脂肪がつくことで顔が丸くなる「ムーンフェイス(満月様顔貌)」などがあります。しかし、これらの症状は一時的なもので、薬の減量とともに改善されます。薬の作用によるものなので、予防は難しいですが内服中はカロリーに気をつけるなどで管理していきましょう。

薬の副作用による肥満

病気により引き起こされる肥満

病気によって肥満になってしまう場合もあります。体重が増える代表的な病気には、「甲状腺機能低下症」「クッシング症候群」などがあります。なぜ、これらの病気は肥満になってしまうのでしょうか。

病気により引き起こされる肥満

甲状腺機能低下症

「甲状腺機能低下症」とは、甲状腺機能が低下し甲状腺ホルモンが少なくなってしまう病気です。甲状腺ホルモンには、体の新陳代謝を促進する作用があります。そのため、甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、全身の代謝が低下し、体にさまざまな不調が現れるのです。代謝が落ちるので、太りやすく体重が増加してしまいます。甲状腺機能低下症は、肥満になる他にも、肌がかさかさになったり、髪の毛が抜けやすくなったりと全身に症状があらわれる病気です。

クッシング症候群

「クッシング症候群」とは、副腎から分泌されている「コルチゾール」というホルモンが慢性的に過剰に分泌されてしまう病気です。コルチゾールには、ステロイド剤と同じ作用をがあるので、この病気は、肥満やムーンフェイスが主な症状です。手足は細く中心性肥満の症状が現れます。

薬を飲み続けなければならない状況である場合には、その副作用とうまく付き合っていく必要があります。食欲が出てしまうのであれば、カロリーの低いものを多く食べるようにしましょう。また、病気による肥満は生活習慣の改善や減量ではなく、原因となっている病気の治療が必要です。

まとめ

厚生労働省の平25年「国民健康・栄養調査」によると、「男性の肥満者の割合は28.6%、女性の肥満者の割合は20.3%」でした。肥満は病気ではありませんが、病気の原因になり、やがてさまざまな病気を引き起こして「肥満症」になります。日常生活を見直し、自分にとって適切な体重を維持するように心がけましょう。また、薬や他の病気から肥満になっている場合もありますので、なぜ太ってしまったのかその原因を知ることは大切です。生活習慣は変わっていないのに、急激に体重が増えている場合などは、病気が隠れている可能性もありますので、医療機関へ相談するようにしましょう。

参考

肥満症予防協会
日本肥満学会
一般社団法人日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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