【高度肥満症は病気なのか】その原因や治療法について徹底解説

身長170cmの人が体重101kg以上になれば「高度肥満症」と診断されます。身長160cmの人なら約90kgで「高度肥満症」です。テレビなどで時々、そのくらい太っていそうな人を見ることもあると思います。高度肥満症の定義は、よく耳にする肥満症やメタボリックシンドロームの定義と少し違っています。また、高度肥満症では、薬を飲んだり、場合によっては手術をするなど、特別な治療を行うこともあります。高度肥満症とはどのような病気なのか、そして、どのような治療法があるのかなどを、詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01高度肥満症とは
  2. 02高度肥満症の危険性
  3. 03高度肥満症のさまざまな治療
  4. 04まとめ

高度肥満症とは

ここがポイント!

  • BMI(肥満度を判定する指数)が35以上の人が、「高度肥満症」と判定される
  • 高度肥満症は肥満者の増加などを背景に、2011年に定められた考え方
  • 日本では約400万人が高度肥満症か、その一歩手前の状態にある

肥満とは「脂肪組織が過剰に蓄積した状態」のことを言います。一方、肥満症は病気であり、医学的な治療を必要とする状態のことを言います。肥満と肥満症の違いについては「肥満症の原因とメカニズムについてー肥満との違いや合併症まで徹底解説ー」に詳しく書いてありますので、そちらをご参照ください。
肥満か肥満でないかは、体脂肪の量で決まります。体脂肪量を測定する方法はいくつかありますが、正確に測定するためには専門の機器が必要です。一方で、簡単に肥満かどうかを判定する方法として、「BMI(Body Mass Index)」という指標が利用されています。BMIは身長と体重を使って肥満度を表す数値のことです。次の計算式で求めることができます。

BMI=体重(kg) ÷(身長(m) × 身長(m))

日本ではBMI22が標準であり、25以上になると「肥満」と判定されます。日本肥満学会では、BMI25以上の肥満をさらに、肥満1度〜肥満4度の4段階に分けています。
「高度肥満症」とは、4段階のうちの肥満3度と肥満4度を指します。つまりBMI35以上の人を高度肥満症と言います。


高度肥満症とは

この「高度肥満症」という言葉や定義は、2011年に日本肥満学会によって定められました。その背景には、日本における肥満者数の増加と、肥満が重大な病気につながり死亡リスクを高めているという点がありました。
日本における高度肥満者のはっきりとした人数は発表されていませんが、厚生労働省の調査によると、平成22年の日本人の中でBMI30以上の人は全体の3.4%に上っていました。ここから推定すると、ざっと約400万人が高度肥満症の一歩手前の状態か、あるいは既に高度肥満症になっていると言えます。
今後も肥満症と高度肥満症の人の割合は増加していくと推定されており、国を挙げての対策は続けられる見通しです。

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高度肥満症の危険性

ここがポイント!

  • BMIが25以上になると、死亡率が上がる
  • 高度肥満症は糖尿病、高血圧、心臓病、高尿酸血症、睡眠時無呼吸症候群などの病気を合併するリスクが上がる
BMI22の人は1番病気になりづらく、また死亡率も低いため、BMIの標準値は22と定められています。BMI35以上である「高度肥満症」の人の明確な死亡率は発表されていません。しかし、BMI25以上になると死亡率が増加していることから、高度肥満症の人の死亡率が、基準値の人に比べて高いことは間違いないでしょう。

肥満症はさまざまな病気の原因となります。例えば、糖尿病、高血圧・心臓病、高尿酸血症、睡眠時無呼吸症候群、胆石症、脂質代謝異常、肝機能障害、うつ病などです。高度肥満症の人も、同様の病気になるリスクがあります。またBMIが高い分、そのリスクも高いと考えられます。

高度肥満症のさまざまな治療

ここがポイント!

  • 高度肥満症に対しては、食事療法、薬物療法、手術などの治療が行われる
  • 食事療法では、食事内容や食事方法に関する栄養指導が行われる
  • 日本で使える肥満治療薬は「マジンドール」と「セチリスタット」
  • 手術には術式が複数あり、手術を受けるためにはさまざまな条件を満たす必要がある

高度肥満症の人に対して、近年専門的に治療を行う病院や診療所が出てきています。そのような専門科では、主に食事療法と薬物療法(薬での肥満治療)が行われます。また病院によっては手術を行うところもあります。

高度肥満症の食事療法(栄養指導)とは

肥満症は、生活習慣が大きく影響してします。中でも食べ過ぎなどの不適切な食生活は、特に肥満を招く原因となっています。そのため肥満治療では、食事による摂取エネルギーを抑えることが重要になります。そこで行われるのが「食事療法」です。食事療法では主に、栄養指導を高度肥満症の人、もしくは家族などの関係者に対して行われます。具体的には、メニューを考える際に糖質と脂肪の摂取量をできるだけ減らし、一方で骨格や筋肉、各種代謝を維持するために必要なタンパク質やビタミン、ミネラルの摂取量を確保するというような内容です。
食事習慣を変更し、我慢しなければいけないのはそう簡単なことではなく、最初は苦痛を感じることもあるかもしれません。そのため、栄養指導では単に食事内容の指導が行われるだけではなく、本人のライフスタイルに合わせた食事内容のアドバイスや、ストレスへの対処法も教えてくれます。

高度肥満症の薬物療法(薬による治療)とは

肥満治療ではまず食事の改善と運動による治療を行い、その効果が十分でない人に対して肥満治療薬を使った治療を行う場合もあります。現在国からの認可が降りている肥満治療薬は「マジンドール」「セチリスタット」の2種類です。


高度肥満症の治療薬

マジンドール

「マジンドール」は、食欲に関する神経に働きかけて、食欲を抑える作用があります。また代謝を良くすることで消費エネルギーを増やし、体重を減らします。内服期間は最長で3カ月に限定されています。また、対象者は、食事療法や運動療法の効果が十分でない高度肥満症の人となっています。副作用は依存性があること、口の渇き、便秘などがあり、使用に関しては多くの注意点があるため、保険診療上では厳しく使用が制限されています。

セチリスタット

「セチリスタット」は、脂質の吸収を抑えることによって内臓脂肪を減らし、体重を減少させます。健常成人でセ チリスタットを内服すると、糞便中の脂肪排出量が増加します。糖尿病や脂質異常症を発症していて、食事療法や運動療法を行っても効果が不十分な肥満者を対象にした薬です。副作用としては、脂肪便・下痢がみられます。

高度肥満症の手術とは

高度肥満症の治療では、手術が行われる場合もあります。
「肥満に対する手術」と言うと、脂肪吸引といったものを想像するかもしれません。しかし高度肥満治療のために行われる手術は、美容のために行う手術とは違います。
手術の方法は数種類あるので、一部をご紹介します。

高度肥満症の手術とは
1)スリーブ胃切除術:胃の一部を切り取って、胃を筒状にします。そうすることで摂取エネルギーを減らすことができます。
2)胃バイパス術:胃を小さくし、加えて消化吸収の役割のある小腸をショートカットで通過するようにルートを変更します。これにより、摂取エネルギーの減少と消化吸収の抑制が期待されます。
3)スリーブバイパス術:スリーブ胃切除術に加えて小腸のルート変更(ショートカット)も行う術式です。胃バイパス術と同様に摂取エネルギーの減少と消化吸収の抑制をすることができます。
4)胃バンディング術:胃の上の方にバンドを巻いて締め付け、胃を上下に分ける方法です。食事の摂取量が減少する効果が期待できます。
5)胃バルーン留置術:胃の中にバルーン(風船)を留置する方法です。これにより食事摂取量が減少し、体重の減少につながります。

本邦では、2014年4月にスリーブ状胃切除術が腹腔鏡下の肥満外科手術として初めて保険適応となりました。しかし、手術にはリスクが伴うため、手術を受ける患者サイドには決められた条件をクリアする必要があり、また施行する施設にも細かい基準があります。
患者サイドの条件として、「18歳〜65歳の人であり、6 カ月以上の内科的治療で効果不十分なBMI 35 kg/m2以上で,2型糖尿病, 高血圧または脂質異常症のうち1つ以上を合併した患者」と決められています。また、実施にあたり「高血圧症,脂質異常症又は糖尿病の治療について5年以上の経験を有する常勤の医師が、治療の必要性を認めていること」も挙げられています。一方、施設基準として,「腹腔鏡を使用した胃の手術が年間 20 例以上実施されていること」や「常勤の内科医,麻酔科医,管理栄養士の配置」によるチームでの肥満診療体制が整っていること、などが挙げられています。

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まとめ

高度肥満症という言葉は2011年に定められたため、知らなかった人もいるのではないでしょうか。高度肥満症の治療は簡単ではありません。その理由の1つは、肥満は自覚症状に乏しいことです。肥満は、外見的な変化はあっても、体の中での異変についてはなかなか自覚できません。そのため食事や運動などの生活習慣を改善したり、病院を受診したりする必要性を感じにくく、そのままの生活を送ってしまいがちです。こうして治療の機会を逃している間にも体の中では、血管や心臓などが徐々に、そして着実に傷ついてしまいます。そしていつの間にか、重大な病気を発症して命を失ってしまうかもしれない状態となってしまいます。
高度肥満症を改善するためには、「1人での治療」は難しいと言えます。生活習慣を改善していくのは根気が必要であり、継続することはとても難しいことです。もし高度肥満症に当てはまっていると思ったら、医療機関へ相談してみるのはいかがでしょうか。医師、看護師、栄養士などの医療チームと一緒に治療を続けることが大切です。

参考

eヘルスネット|厚生労働省
日本肥満症予防協会
肥満症の薬物治療
サノレックス R 適正使用ガイド
オブリーン錠 添付文書
日本における高度肥満症に対する安全で卓越した 外科治療のためのガイドライン(2013 年版)
肥満外科治療
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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