【脂肪細胞とは】肥満症の定義から脂肪細胞のもつ役割まで徹底解説

痩せたいという願望をもつ人、自分が「太っている」と悩んでいる人は多いかもしれません。しかし、実際にBMIや体脂肪を測定して「肥満」と判定される方は、悩んでいる方の中の一部しかいません。悪者にされがちな「脂肪細胞」について正しい知識を持っていますか。適度な脂肪細胞は、生きていく上で必要不可欠なものです。ここでは、脂肪細胞や肥満症について医学的根拠に基づいて解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01日本人女性に多い「肥満恐怖症」とは
  2. 02自分が太っているかどうかチェックする方法
  3. 03過剰な内臓脂肪蓄積によって引き起こされる病態
  4. 04男女でことなる肥満体型
  5. 05内臓脂肪・皮下脂肪の大切な役割
  6. 06脂肪を代謝する「脂肪細胞」とは

日本人女性に多い「肥満恐怖症」とは

ここがポイント!

  • 女子中高生の8割は「やせ願望」を持っている
  • 痩せる必要がないのに、ダイエットをする女性が多い
  • 本当に自分は痩せる必要があるのかを知ることが大切

日本学校保健会が以前に行った調査によると、女子中高生の8割以上、小学3~4年生でも約4割が「やせ願望」を持っていたのだそうです。一方で、厚生労働省の平成26年「国民健康・栄養調査」によると、やせている日本人女性の割合は、この10年間で顕著に増加しており、20代女性の17.4%が「やせ」であるという結果が出ました。

つまり、日本人女性は「やせているのにやせたいと思っている人」が多いというわけです。人間には適正体重があり、太りすぎていても痩せすぎていても、健康的ではありません。そもそも本当にやせる必要があるのでしょうか、まずはチェックしてみることが大切です。

肥満恐怖症とは

高血圧症発症チェック

自分が太っているかどうかチェックする方法

ここがポイント!

  • 適正体重はBMIを使って調べることができる
  • 体脂肪が男性25%、女性30%以上で「肥満」
  • 女性のうち本当に「肥満」の人は2割程度しかいない

自分が太っているのかやせているのかは、どのようにして判断すればよいのでしょうか。肥満や低体重に判定には「BMI(Body Mass Index)」と呼ばれる数値が用いられます

BMIは、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出されます。
たとえば、体重50kg、身長160cmのAさんは、
BMI=50÷(1.6×1.6)=19.5となります。

BMIが25以上の人は「肥満」、19.5未満の人は「やせ」と判定されます。したがって、Aさんは現在「標準体重」とみなされます。BMI値から逆算すると、Aさんの体重が48.6kg未満になれば「やせ」、64.0kg以上になれば「肥満」と判定されることになります。
肥満度は、BMI値にしたがって、下の表のように分けられています。

<BMIの基準値>
BMIの基準 判定
18,5未満 やせ
18,5~24,9 ふつう
25,0~29,9 肥満度1
30,0~34,9 肥満度2
35,0~39,9 肥満度3
40,0~ 肥満度4

平成26年「国民健康・栄養調査」によると、男性の肥満者(BMI≧25)は28.7%、女性は21.3%でした。この割合は、10年間ほとんど変わっていないそうです。 一方で、「やせ」の人(BMI<18.5)は男性5.0%、女性10.4%でした。つまり、女性の10人に1人は「やせ」、2人は「肥満」、残りの7人は「標準」であると分かりました。

BMIについて一つ気をつけておきたいのは、「BMIは身長と体重から単純に計算された値である」ということです。

一般に、アスリートなどの筋肉質の人は体重が重いので、実際に肥満でなくてもBMIから肥満と判定されてしまう場合があります。また、BMIで肥満と判定されなくても、体脂肪率が高い「隠れ肥満」も最近の若い女性には多く見られます。
体脂肪率は、男性25%以上、女性30%以上で「肥満」と判定されます。BMIでは肥満でなかった人も、「隠れ肥満」が心配な場合は、こまめに体脂肪チェックするとよいでしょう。

過剰な内臓脂肪蓄積によって引き起こされる病態

ここがポイント!

  • 肥満は「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」の原因になる
  • 内臓脂肪蓄積によって、メタボリックシンドロームが引き起こされる
 
肥満に関連する病態として、注目されているのは「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」などの生活習慣病です。これらは、メタボリックシンドロームの診断基準にもなっています。特に、内臓脂肪が増加すると、脂肪細胞から分泌される生理活性物質である「アディポネクチン」が減ることで、糖尿病、高血圧、脂質異常症が発症しやすくなると考えられています。メタボリックシンドロームの診断基準では、ウエストサイズによって内臓脂肪の蓄積量を簡易的に判断しています。内臓脂肪の蓄積は、さまざまな病気の引き金として重要視されています。

生活習慣病になってもやせる努力をせずに放置しておくと、やがて症状が進み、血管がぼろぼろになって「動脈硬化」になります。さらにこれが引き金となり、心筋梗塞脳卒中など、命に関わる病気に発展することがあります。

肥満は、関節の激痛を起こす「痛風」、肝臓に脂肪やコレステロールが貯まる「脂肪肝」、突然死の原因となる「睡眠時無呼吸症候群」などの発症にも深く関係します。さらに、国立がん研究センターから、肥満は「肝がん」「大腸がん」「乳がん」のリスクも高めるという報告もされています。

高血圧症発症チェック

男女でことなる肥満体型

ここがポイント!

  • りんご型肥満は男性に多く、「内臓脂肪」が多い
  • 洋ナシ型肥満は女性に多く、「皮下脂肪」が多い
  • 生活習慣病の関連しているのは、「内臓脂肪」
  • メタボ健診でメタボと診断されたら、特定保健指導が実施される


肥満体型には2つのタイプがある

肥満体型は、「リンゴ型」と「洋ナシ型」の2つのタイプに分けられます。これは見た目のシルエットから名づけられたもので、お腹周りが太いタイプがリンゴ型、お尻や太ももなどの下半身太りタイプが洋ナシ型にあてはまります。

リンゴ型肥満と洋ナシ型肥満の違い

リンゴ型肥満

リンゴ型肥満は男性に多く見られます。医や腸などの内臓の周りにつく「内臓脂肪」が多く、お腹の皮は比較的薄いという特徴があるため、一見太って見えない場合もあります。

洋ナシ型肥満

洋ナシ型肥満の方は、女性に多く見られます。こちらは「皮下脂肪」、いわゆる「つまめる脂肪」がつきやすく、ついた脂肪がなかなか落ちにくいという特徴があります。

リンゴ型肥満は生活習慣病のリスクが高い

同じBMI値の「リンゴ型肥満の人」と「洋ナシ型肥満の人」がいたとします。どちらの人の方が、生活習慣病のリスクが高いでしょうか。答えはは「リンゴ型肥満の人」です。
リンゴ型肥満の人に多くついている「内臓脂肪」は、蓄積しすぎると生活習慣病のリスクが上がると知られています。また、先ほど説明したように、生活習慣病からの動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中のリスクも上がることになります。

「メタボ」と呼ばれる「メタボリックシンドローム」は、リンゴ型(内臓脂肪型)肥満の人が、「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」のうち2つ以上を併発している状態をいいます。ちなみに、リンゴ型肥満かどうかは、おへその位置での腹囲で判定します。現在の基準では、男性85cm以上、女性90cm以上でリンゴ型肥満と判定されます(女性は皮下脂肪が多いという想定で、男性よりも大きく設定されています)。

厚生労働省は、リンゴ型肥満が病気リスクを上げていることを問題と捉え、日本国民が一生健康に過ごせる社会にしていくために、平成20年からメタボ健診(特定健診・特定保健指導)を開始しました。特定健診でメタボと判定された人には、保健師と一緒にライフスタイルを振り返って改善目標を立てていく「特定保健指導」が実施されることになっています。


皮下脂肪は多いけれど内臓脂肪が少ない洋ナシ形肥満は、こうした病気の原因になる可能性は低いとされています。女性は、洋ナシ形肥満が多いからと安心してはいけません。リンゴ型肥満は、女性でも年齢とともに増加し、特に閉経後の女性で増える傾向があります。

内臓脂肪・皮下脂肪の大切な役割

ここがポイント!

  • 内臓脂肪、皮下脂肪はどちらも体に必須なもの
  • 脂肪は少なすぎても体に悪影響がある

ここまででは、脂肪細胞は悪いことばかりだと感じる人もいるかもしれません。しかし、**内臓脂肪も皮下脂肪も過剰な蓄積が問題なのであり、どちらも体にとって不可欠な、大切な役割があります。

内臓脂肪・皮下脂肪の役割

内臓脂肪の主な役割

  • 内臓を正しい位置にキープする
  • 内臓を衝撃から守る(クッションになる)
  • エネルギーを一時的に蓄える

皮下脂肪の主な役割

  • 体温を保つ
  • 内臓を(特に外部からの)衝撃から守る(クッションになる)
  • エネルギーを長期的に蓄える
ここで注目すべきは、エネルギーの蓄え方の違いです。
「内臓脂肪」は、毎日の活動に使われるエネルギーをスピーディーに出し入れしています。言い換えると、食べ過ぎたらすぐ溜まるし、動けば割と速く消費する脂肪です。つまり内臓脂肪は、病気のリスクに結びついている一方で、日ごろの食事内容を見直したり運動習慣をつけたりすれば、その効果が比較的速やかに現れ、減りやすい脂肪だというわけです。

「皮下脂肪」は病気のリスクには直結しないものの、内臓脂肪に比べて燃焼しにくい、つまり、ダイエットの努力が報われにくい脂肪です。しかし、女性の場合は妊娠・出産にも重要であると知られており、やはり過度なダイエットでの皮下脂肪の減らしすぎには注意しましょう。
体脂肪は多すぎず、少なすぎず、適度についていることが健康を維持する上で大切です。

高血圧症発症チェック

脂肪を代謝する「脂肪細胞」とは

ここがポイント!

  • 体の脂肪のほとんどが「白色脂肪細胞」
  • 「褐色脂肪細胞」には、脂肪を燃やして熱を産生する働きがあることが、近年明らかになっている

ここまで説明してきた肥満に関連する体脂肪を構成している脂肪細胞は、「白色脂肪細胞」と言われるものです。この脂肪細胞は、エネルギー源となる脂肪の蓄積と生理活性物質を分泌する役割があります。これに対し、「褐色脂肪細胞」と呼ばれる存在が、近年明らかになっています。褐色脂肪細胞は、体温調節のため、脂肪を分解しエネルギーを消費することで、熱を産生する機能が知られています。この褐色脂肪細胞による脂肪代謝の働きは、肥満や糖尿病などの生活習慣病に関連があることが注目されています。
脂肪細胞とは

白色脂肪細胞は皮下や内臓に広く分布しますが、褐色脂肪細胞は、首や肩甲骨の一部など、体の限られたところにしか存在しないと言われています。脂肪を燃焼する作用をもつ褐色脂肪細胞は、肥満症などの生活習慣病の治療への応用が期待されています。

まとめ

ここでは、肥満症の定義、脂肪細胞の役割や種類などを説明しました。米国で400万人以上を対象に、BMI値と死亡率の関係を調べた報告によると、BMI値が低いやせた人は、肺炎や結核などの感染症にかかる割合が多く、BMI値が高い太った人は、糖尿病や心臓病になる割合が多かったという結果がでました。ここでも説明した通り、脂肪細胞は多くても少なすぎても健康的ではありません。特に、女性は「肥満症」に対して過度に心配する傾向があります。自分の適正な体重をしっかり知り、健康的な生活を送るようにしましょう。

参考

Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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