内臓脂肪型肥満について | 内臓脂肪がさまざまな病気の原因になる理由を徹底解説

脂肪は人間が生きていくために必要な「エネルギー」です。一方で、体内に過剰に蓄積されてしまうと「肥満」になり、健康に様々な悪影響を及ぼしてしまいます。
そんな「肥満」には、「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」の2種類があるのを知っていますか。「内臓脂肪型肥満」の原因となる「内臓脂肪」とは、一体どのようなものなのでしょうか。ここでは、内臓脂肪が増えるメカニズム、内臓脂肪の蓄積によって引き起こされる病気、内臓脂肪の解消方法など、詳しく説明していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01内臓脂肪型肥満とは何かーメタボリックシンドロームとの関係ー
  2. 02内臓脂肪が増えるメカニズムとは
  3. 03内臓脂肪が引き起こすさまざまな病気とはーメタボリックシンドロームと内臓脂肪の関係ー
  4. 04動脈硬化から引き起こされる「重篤な病気」にならないためにできることとは
  5. 05まとめ

内臓脂肪型肥満とは何かーメタボリックシンドロームとの関係ー

ここがポイント!

  • 内臓脂肪は、内臓の周り(腸間膜)に蓄積した脂肪
  • 内臓脂肪型肥満は40代以降の男性に多い
  • メタボリックシンドロームと内臓脂肪は密接に関係している

食事などで過剰に摂取し余った中性脂肪は、エネルギー源として利用されず、脂肪細胞に取り込まれて貯蔵されます。中性脂肪が蓄積されると脂肪細胞のサイズが大きくなります。そして、蓄積した「脂肪」が基準値を超えた状態が「肥満」とよばれます。「肥満」は、「皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満」の2種類に分けられます。その文字通り、「皮下脂肪型肥満」はおなか、腰、お尻、太ももなどの「皮下」に脂肪が過剰に溜まっている状態です。主に下半身に脂肪が付き「洋なし」のように見えることから、「洋なし型肥満」とも呼ばれています。

一方、「内臓脂肪型肥満」は主に、「腸間膜」といいおなかの中で小腸を支えている膜や、内臓の周囲に脂肪が過剰に溜まっている状態です。「内臓脂肪型肥満」はお腹がぽっこり膨らんで見えるため、「りんご型肥満」と呼ばれています。

皮下脂肪にも内臓脂肪にも、それぞれ大切な役割があります。「皮下脂肪」には体温を保つ目的や、外的衝撃から体を守る目的があります。「内臓脂肪」には内臓の位置を正しく保つ目的や、内臓を衝撃から守る目的があります。

体内のエネルギーが不足した場合、これらの蓄えられた「脂肪」は、エネルギー源として使われます。このとき、速やかに体にエネルギーを補給するのが可能な脂肪は「内臓脂肪」です。一方、「皮下脂肪」は、どちらかというとすぐにはエネルギーに変わりづらく、長期間の蓄えとして貯留しています。ホルモンや体質の関係で、女性の場合は皮下脂肪が付きやすく、男性の場合は内臓脂肪が付きやすいと言われています

皮下脂肪も内臓脂肪も人間が生きていくためには必要なものですが、脂肪が体内に過剰に蓄えられてしまうと体重が増加し「肥満」になってしまいます。この「肥満」の基準となるのがBMI(Body Mass Index)です。BMIは「体重」÷「身長(m)」÷「身長(m)」の数値で算出され、肥満の判定に利用されています。日本肥満学会は、BMIが25を超えた場合を肥満とし、さらに肥満の程度を4段階に分けています。

「肥満症」とは、BMIが25を超え、肥満が原因となる健康障害に1つでもあてはまるか、その合併が予測される場合で、医学的に減量を要する病態をいいます。健康障害とは、「耐糖能障害」「2型糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」「高血圧」「高尿酸血症」「痛風」「脂肪肝」「冠動脈疾患」「脳梗塞」「骨関節疾患」「睡眠時無呼吸症候群」「月経異常」です。

厚生労働省が実施している平成26年「国民健康・栄養調査」によると、肥満者(BMI≧25)の割合は、男性28.6%、女性20.3%と報告されています。

さらに年齢別に肥満者の割合を見てみると、男性は40〜49歳が34.9%と最も多く、以後順に50〜59歳が31.1%、60〜69歳が28.7%、70歳以上が27.6%、30〜39歳が25.4%、20〜29歳が21.8%となっています。女性は70歳以上が27.1%と最も多く、50〜59歳が21.9%、60〜69歳が21.5%、40〜49歳が14.8%、30〜39歳が13.3%、20〜29歳が10.7%となっています。

この調査結果から、日本人男性の4人に1人以上、女性は5人に1人が肥満で、女性に比べて男性の方が肥満の比率が高く、さらに40歳以降の男性が特に注意が必要であると分かりました。

肥満に関連して、現在注目されているのが「メタボリックシンドローム」です。平成20年の健康保険法の改正に伴い「特定健康診査」が実施されるようになりました。「特定健康診査」は別名「メタボ健診」とも呼ばれ、メタボリックシンドロームの対象者に対して「特定保健指導」を行い、状態改善と健康的な生活に向けたサポートを行うことを目的としています。

メタボリックシンドロームの基本的な考え方は、「内臓脂肪が100㎠を超えた状態では、さまざまな疾患を引き起こす可能性が高くなる」という科学的根拠に基づいています。メタボ判定の必須項目は「腹囲:男性≧85cm、女性≧90cm」となっていますが、この腹囲測定は単に腹囲の大きさを見るのではなく、腹囲を大きくさせている「内臓脂肪」の状態を見ています。同じ脂肪であっても、「皮下脂肪」ではなく「内臓脂肪」は、生活習慣病の発症に強く関連し、過剰に溜まると将来さまざまな病気の原因となり、時には命を脅かす場合もある、「溜まりすぎたら恐ろしい脂肪」なのです。

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内臓脂肪が増えるメカニズムとは

ここがポイント!

  • 内臓脂肪の正体は「中性脂肪」
  • 年を重ねるとエネルギー消費量が減るため、内臓脂肪型肥満になりやすくなる

「内臓脂肪」はどのようにして増えるのでしょうか。食事で過剰に摂取されたエネルギーは、「中性脂肪」として脂肪細胞に蓄積されます。内臓脂肪の正体は、この蓄積された中性脂肪です。人は食事によって栄養分(糖質、タンパク質、脂質など)を補給しています。それでは、中性脂肪を蓄積しないためには、脂質だけを制限すればいいのでしょうか。実は三大栄養素である「糖質・タンパク質・脂質」は互いに変換されて利用されるため、脂質のみ制限すれば良いというわけではありません

糖質は体内で「グルコース」に分解されます。吸収された「グルコース」は肝臓に運ばれ、必要な栄養源として利用されます。エネルギー源として利用されず余ったグルコースは、肝臓で「グリコーゲン」という物質に変換され貯蔵されます。さらに、肝臓では余剰なグルコースから中性脂肪も合成されて、血液中に放出されます。その肝臓から血中に放出された中性脂肪が、脂肪組織に取り込まれ蓄積されていきます。

タンパク質は筋肉や骨の栄養源として使われます。使われなかったタンパク質は体内で「ブドウ糖」に分解され、糖質と同様に「中性脂肪」に合成されます。タンパク質は優先的に栄養源として使われるため、糖質に比べて「中性脂肪」にはなりにくいといわれています。

脂質は体内に取り込まれると、「遊離脂肪酸」と「グリセロール」という物質にいったん分解され、再度「中性脂肪」に合成されます。糖質、タンパク質と同様に「中性脂肪」となった脂質も、使われなかった分は内臓脂肪や皮下脂肪として蓄えられています。

「中性脂肪」と聞くと、「脂質」を控えれば大丈夫!と思ってしまいがちですが、主に糖質、脂質が「中性脂肪」に合成されます。体内の脂肪細胞は成人でおよそ250億〜300億個といわれていますが、その大部分が「白色脂肪細胞」です。内臓の周囲、下腹部、背中、お尻、太もも、腕などに多く存在する白色脂肪細胞は、使われなかった「中性脂肪」を蓄積する倉庫の役割をしています。

特に男性の場合は、白色脂肪細胞が内臓周囲に多く蓄積すると言われており、それが内臓脂肪の原因となります。中性脂肪は絶えずエネルギー源として使われていますが、必要とする使用量を上回る量の栄養素を摂取すると、中性脂肪として蓄えられ、その量が増えると「肥満」となってしまうわけです。

また加齢とともに基礎代謝が低下することも中高年の肥満の増加の原因といえます。「基礎代謝」は、人間が生きていくために必要なエネルギーの消費です。加齢で身体機能が低下すると共に、基礎代謝も低下します。同じ量の食事をしていても、基礎代謝が高い人に比べ、基礎代謝が低い人では、基礎代謝の差分の運動やエネルギー消費をしない限り、中性脂肪は多く蓄えられ増えていってしまうということになります。

内臓脂肪が引き起こすさまざまな病気とはーメタボリックシンドロームと内臓脂肪の関係ー

ここがポイント!

  • 内臓脂肪は、様々な生活習慣病の原因になる
  • 内臓脂肪型肥満は、メタボリックシンドロームと強い関連がある
  • 内臓脂肪は命に関わる病気の原因にもなりえる

肥満症はさまざまな病気の原因となるといわれています。特に内臓脂肪が多く蓄積する「内臓脂肪型肥満」は、さまざまな病気を引き起こすといわれており、その対策が重要視されています。

内臓脂肪が多い状態では、「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」などの「生活習慣病」が発症するリスクが高くなることがこれまでの研究により明らかになっています。これらの病気は、血液中の中性脂肪やコレステロールの量が多いと発症のリスクが高くなる病気です。そして「内臓型脂肪肥満」は、まさに血液中の中性脂肪やコレステロールが過剰な状態であるといえます。

内臓脂肪の蓄積に伴い、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンいう物質(生理活性物質)が減少し、TNF-αなどの分泌が増加します。それにより、インスリン抵抗性が増し、糖尿病になりやすくなったり、血圧が上がりやすくなります。さらに、内臓脂肪が多く、血液中の中性脂肪やコレステロールの数値が高いということは「脂質異常症(高脂血症)」の状態であるといえます。

「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症(高脂血症)」は、それぞれ1つでも罹患していると、「動脈硬化」を引き起こす要因になります。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積により、上記で説明した機序により、これらの病態が組み合わさって出現している状態です。よって、動脈硬化の進展により一層つながるのです。動脈硬化とは、血管の内側の壁が厚くなって、血管内の血液の通り道が細くなり、さらに血管の弾力性や伸縮性が低下してしまった状態です。血管に不具合が生じた状態である「動脈硬化」は多くの病気の原因になります。

動脈硬化により細くなった血管は、血流を悪くします。また血管内に付着したコレステロールは、血管を詰まらせる「血栓」の原因となります。さらに伸縮性や弾力性を失った血管はもろく、破損しやすい状態です。こういった状態が引き金となり、動脈硬化は、高血圧、糖尿病、腎障害、肝障害、末梢循環障害、さらには「脳血管疾患」「脳出血」「心筋梗塞」「狭心症」などの命に関わる恐ろしい病気を引き起こす原因にもなり得ます。

これらの恐ろしい病気は、生活習慣病とも関連性が高いといわれています。つまり内臓脂肪は、生活習慣病によって動脈硬化を引き起こし、脳血管疾患、脳出血、心筋梗塞、狭心症に至るまで、さまざまな病気の引き金となるのです。
人間の体はどこかに異常が起これば、それに伴いさまざまな病気を発症してしまいます。初めは目に見えず、大きな症状はない「内臓脂肪型肥満」ですが、だからと言って放置しておくと、生活習慣病や動脈硬化をひきおこし、さらには命に関わる恐ろしい病気の原因となってしまうということを、ぜひ心に留めておきましょう。

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動脈硬化から引き起こされる「重篤な病気」にならないためにできることとは

ここがポイント!

  • 内臓脂肪は皮下脂肪より減量しやすい
  • まずは体重の5%減量を目標にしよう
  • 「食生活改善+有酸素運動+筋トレ」を続けよう

内臓脂肪はさまざまな病気の原因になるということを説明してきました。自分は「内臓脂肪型肥満」や「メタボリックシンドローム」に当てはまり、これから病気になってしまわないだろうか、と不安に思った方はいませんか。そのように不安に感じた方は、まず日々の生活習慣から見直すことが必要です。ここでは、明日からでも実践できる生活習慣の改善についてみていきましょう。

厚生労働省は「メタボリックシンドローム改善のための基本戦略」を提案しています。その中で、メタボ改善のためにはまず現在の体重の5%を減量することを目標とするように推奨しています。内臓脂肪蓄積の原因は、「過食」と「運動不足」です。現在の生活習慣を振り返ると、暴飲暴食になっていませんか。また、適度な運動はできていますか。年を重ねると、身体能力が低下し、基礎代謝も低下します。若い頃と同じ量の食事を取っても、脂肪として蓄えられてしまう可能性が高くなってしまいます。それに加えて、運動不足が続くと、内臓脂肪がたまりやすい状態になってしまいます。

厚生労働省が掲げる5%の減量という目標は決して難しいことではありません。例えば体重80kgの人が5%減量するということは、4kg減量することになります。その4kgを3〜6カ月の期間で減量した場合、1カ月に1kg程度の減量で目標は達成できるのです。減量に伴い、腹囲、血圧、血糖、中性脂肪などは正常値に近づいていくでしょう。

けれど5%減量すればそれで終わりというわけではありません。内臓脂肪を減らすためには、食生活を改善し、適度な運動を継続することが大切です。具体的には以下の3点を心がけてみましょう。

【1】現在の食生活を見直す

バランスの良い食事を心がけ、1日の必要摂取カロリー(成人男性であれば1800〜2200kcal)を目標にして、食事を工夫してみてください。カロリーの高い食事を減らすのも効果的ですが、炭水化物の摂取しすぎにも気をつけてください。また食事のたびにカロリー計算なんてできない、という人は、まず「腹八分目」を心がけてみてください。

【2】有酸素運動をおこなう

酸素を十分に吸い込みながらおこなう運動「有酸素運動」は内臓脂肪の燃焼に効果が高いと言われています。運動不足を補うために無理な運動を行う必要はありません。ウォーキングやジョギング、サイクリングや水泳などが有酸素運動として一般的ですが、大切なのは継続して運動を行い、運動不足の状態を改善することです。

内臓脂肪を減らすには摂取カロリーを減らすか、消費カロリーを増やすしか方法はありません。1日30分からでも、ぜひ運動を始めてみましょう。

【3】筋肉をつける

最後の対策は基礎代謝を上げる方法です。加齢と共に低下する基礎代謝を向上させるために、筋肉トレーニングは有効な手段であると言われています。筋肉が増えれば、そこで消費されるエネルギーが増え、結果的に内臓脂肪の低下につながります。自宅で今すぐにでもできる腹筋、背筋、腕立て伏せなどの筋肉トレーニングで十分です。ぜひ始めてみてはいかがでしょうか。

内臓脂肪を減らすということは、日常生活をより健康的に過ごすことにつながります。そして、内臓脂肪を減らすための努力は、必ず成果が見えるとも言われています。成果が見えれば、さらに工夫や努力をすることができ、継続することができるのです。自分自身の日常生活を、今一度振り返り、生活習慣を改善してみましょう。

まとめ

内臓脂肪型肥満は、さまざまな病気の原因となる「内臓脂肪」が過度に貯蓄されている状態であり、放置すると危険な合併症が出現するリスクがあります。しかしその内臓脂肪は、自分自身の生活習慣を改善することで、必ず減らすことができます。症状がないから大丈夫ではなく、症状が出る前に改善することが大切です。

特に中高年以降の男性は、内臓脂肪型肥満のリスクが高くなります。自分自身のために、また自分を大切に思ってくれる家族のために、内臓脂肪を減らし、健康的な生活を目指しましょう。また、生活習慣の改善は長く継続することが大切です。無理のない範囲で、毎日少しずつ継続することが重要と言えます。

参考

厚生労働省|e-ヘルスネット|メタボリックシンドローム
厚生労働省|e-ヘルスネット メタボリックシンドローム改善の基本戦略
厚生労働省|e-ヘルスネット 脂質異常症
平成26年国民健康・栄養調査の結果
国立循環器病センター|いまなぜ肥満が問題なのか?
肥満さよなら医学
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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