【糖尿病の治療法とは】1型糖尿病と2型糖尿病に分けて解説します

糖尿病の治療は、血糖値を下げるために行われています。生活習慣病の一つであり、薬による単独の治療だけでなく、日頃から「食事療法」や「運動療法」を併用して行うことが重要になります。ただし、糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の2種類があり、1型糖尿病は生活習慣とは関係のない自己免疫の異常が原因であるとされています。
ここでは、糖尿病のタイプと症状によって行われている治療法について、ガイドラインに沿って詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 011型糖尿病の治療法とは
  2. 022型糖尿病の治療法とは
  3. 03糖尿病を治療する目的と目標
  4. 04糖尿病を治療しないとどうなるのか
  5. 05まとめ

1型糖尿病の治療法とは

ここがポイント!

  • 1型糖尿病は「インスリン注射」による治療が必要
  • 1型糖尿病は、免疫の異常による自己抗体が原因で、インスリンが出せない状態になる病気

1型糖尿病は、糖尿病全体の約5%以下とされています。実は、生活習慣病と言われる糖尿病ですが、1型糖尿病は生活習慣とは関係なく発症する病気なのです。ここでは、「1型糖尿病」のメカニズムと治療法について解説していきます。

1型糖尿病とは

1型糖尿病とは、血糖値を下げる「インスリン」を分泌する膵臓にある細胞が、何らかの原因で破壊され、インスリンがほとんど分泌出来なくなる状態をいいます。2型糖尿病のように、生活習慣が原因ではありません。そのため、1型糖尿病の方は、若年層で痩せ型の型が多い傾向にあります。
インスリンが出ない事により、糖をエネルギーとして利用できなくなると、糖が血管内に増加して「高血糖」の状態になります。高血糖状態が続くと、血管がダメージを受けて、命に関わる合併症を引き起こします。
また、1型糖尿病に多く見られる、急性の合併症に「糖尿病ケトアシドーシス」があります。糖尿病ケトアシドーシスとは、インスリンが著しく不足し、身体が必要なエネルギーを細胞内ができなくなった状態であり、ひどい場合には、昏睡(こんすい)や意識障害などを引き起こします。

<1型糖尿病と2型糖尿病の比較>
1型糖尿病 2型糖尿病
割合 5%以下 90%以上
主な発症年齢 若者が多い 中年・高齢者が多い
主な誘因 免疫の異常による自己抗体 遺伝、過食、肥満、運動不足、 ストレスなど
特徴 インスリンが出ない インスリンが出にくい、働きが悪い
症 状 のどの渇き、多飲・多尿、倦怠感、体重減少、高血糖による意識障害など 自覚症状が無く、自分自身で気づきにくい
体 型 やせ型が多い 肥満型が多い
治療方法 インスリン注射が不可欠 食事療法と運動療法が基本。コントロール不良の場合、経口薬やインスリン注射を併用する

1型糖尿病はインスリン注射による治療が必要

「インスリン」とは、血糖値を下げる働きがあるホルモンです。1型糖尿病の場合、膵臓のインスリンを出す細胞が破壊され、自分自身ではインスリンを出すことが出来ない状態になるので、インスリンを体に取り入れる必要があります。インスリン治療を中断すると、体が高血糖状態で意識障害を引き起こし、生命に関わります。そのため1型糖尿病の人は、インスリン注射による治療が必要不可欠なのです。

経口薬による治療

「2型糖尿病」で使用される経口薬には「インスリンの分泌を促進させる」ものや、「インスリンの効果を高める」「糖の吸収・排泄を調整する」ものがあります。しかし、1型糖尿病の場合は、インスリン自体がほとんど分泌されないので、定期的にインスリン注射薬を使用して、体内の血糖値のコントロールをする必要があります。

低血糖に注意が必要

糖尿病の方は、薬によって「低血糖」を起こす可能性があり注意が必要です。脳のエネルギー源は、ブドウ糖なので極端に不足すると意識障害を起こすこともあります。
低血糖は、インスリンが効きすぎていたり、いつもより食事量が少ないとき、運動量が多いときなどに生じることがあります。低血糖になっていないか、自分で血糖値を測定し確認することが大切です。低血糖の症状であるだるさ、冷汗、動悸、ふるえ、顔面蒼白などがみられた場合には、すぐにブドウ糖や糖分の入ったジュース・お菓子などを摂るとうにしましょう。
1型糖尿病について詳しくは1型糖尿病について|発症原因から症状、最新の治療法までを解説をご参照ください。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療のエッセンス2017|日本医師会(pdf)
高血圧症発症チェック

2型糖尿病の治療法とは

ここがポイント!

  • 2型糖尿病は「食事療法」や「運動療法」で血糖コントロールが出来る場合がある
  • 食事療法は、適正なエネルギー量を把握する事が重要
  • 運動療法では、「有酸素運動」と「レジスタンス運動」を効果的に行う事で血糖値を下げる効果がある
  • 十分な生活習慣の改善をしても血糖コントロールが困難な場合、「薬物療法」が開始される

2型糖尿病は、遺伝的要素や、過食・肥満・運動不足などの「生活習慣」が原因となります。ここでは、2型糖尿病の治療法について解説してしていきます。

食事療法

糖分は食事から摂取するので、「食事療法」は治療の基本となります。糖尿病の食事療法は「食事制限」をするという意味ではなく、「適正な食事量」に抑えることを目標とします。血糖値の上がり過ぎを抑え、正常な状態を目指すために、まずは自分が1日に必要なエネルギー量がどの程度なのか確認しておきましょう。

適正なエネルギー量は、「エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量」で算出できます。
標準体重は、「標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22」で算出でき、身体活動量は、以下の3タイプの目安があります。

・軽労作(デスクワークが多い職業など)   25〜30kcal/kg(標準体重)
・普通の労作(立ち仕事が多い職業など)   30〜35kcal/kg(標準体重)
・重い労作(力仕事が多い職業など)     35〜 kcal/kg(標準体重)

性別、年齢や合併症などによって、目標とする適正量は違ってきますが、
例えば160cmで立ち仕事の人で、エネルギー摂取量の目安を算出すると、
160cmの標準体重が、1.6m×1.6m×22=56.32kg
摂取カロリーの目安が、 30〜35kcal/kgになり、
35kcal×56.32kg=1971kca/1日となります。

暴飲暴食は、膵臓に負担をかけてしまうことになります。必要なエネルギー量を知ることで、それ以上の余分なエネルギー量を摂らないようにすることが大切です。
食事療法について詳しくは糖尿病予防の食事とは|食事の注意点やおすすめレシピまでご紹介をご参照ください。

運動療法

「有酸素運動」と「レジスタンス運動」は、血糖値を下げる効果があると糖尿病の診療ガイドラインに記載されています。運動の頻度は、少なくとも週に3~5回、1日20~60分程度の運動をすることが、推奨されています。

「有酸素運動」は、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳、自転車などの運動です。「レジスタンス運動」とは、腹筋・スクワット・腕立て伏せ・ダンベル体操などの、筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動です。これらの運動療法は、インスリンの抵抗性を改善して、血糖値を下げる効果があることが証明されています。

糖尿病を改善するためには、ややきつい程度の運動が効果があるとされており、無理のない程度で「継続」して取り組むことが大切です。2型糖尿病の人は、「肥満」や「高血圧」「脂質異常症」を伴っていることが多いので、「運動療法」の効果は、これらの病気に対しても有効とされています。

しかし、いくら血糖値を下げるためといっても、無理をし過ぎることは危険です。自分自身の体力・年齢・体重・健康状態などを踏まえて運動量を調整することが大切です。
高齢の人や糖尿病の合併症が現れている人は、激しい運動が制限されることがあります。また、薬による治療をしている人も、薬の作用によっては運動をすることで血糖値が上がったり、反対に低血糖を起こしたりする事もあり注意が必要になります。
自分にとっての適度な運動の目安は、担当の医師と相談するといいでしょう。
運動のポイントについて詳しくは【糖尿病予防の運動方法とは】今日からできる運動のポイントをご参照ください。

薬物療法

2型糖尿病では、一般的に2~3ヶ月程度の食事療法と運動療法を継続しても、目標の血糖コントロールを達成出来ない場合に「薬物療法」が開始されます。血糖コントロールの目標値は、糖尿病の状態によって異なりますが、一般的にはHbA1c7.0%以上が続けば(HbA1cは、過去1~2ヶ月間の血糖値の平均の値)、薬物治療を考慮すべきと、糖尿病診療ガイドラインに記載されています。ただし、重度な高血糖の場合などでは、早い段階で薬物治療が開始されることもあります。

2型糖尿病の治療薬には、「経口薬」と「注射薬」の2種類があります。

経口薬

糖尿病の経口薬は、血糖値を下げる仕組みの違う3つのタイプがあります。
<インスリン分泌促進系>
2型糖尿病はインスリンの分泌量が不足したり、働きが悪くなっている状態なので、
分泌機能の低下した膵臓を刺激し、インスリンの分泌を促す薬です。
<インスリン抵抗性改善系>
インスリンに対する反応を良くして、膵臓から分泌されたインスリンが、体の各臓器や器官に取り込まれ、インスリンの効果を発揮しやすくする薬です。
<糖吸収・排泄調整系>
糖が体で消化、吸収されるスピードを遅らせたり、尿からの糖の排出を促進させることで血糖を低下させる作用がある薬です。

注射薬

飲み薬だけでは血糖コントロールが十分に出来ない場合には、インスリンを直接体内に注入する「インスリン治療」が開始されます。

インスリン注射には、以下の種類があります。

<超速効型インスリン製剤>
食直前、又は食直後に使用し、約10〜20分で効果が現れ、約3〜5時間持続する。
<速効型インスリン製剤>
食事の30分前に使用し、約30分で効果が現れ、約5〜8時間持続する。
<中間型インスリン製剤>
多くは1日2回で使用し、30分〜3時間で効果が現れ、約18〜24時間持続する。
<混合型インスリン製剤>
多くは朝1回、又は朝夕2回の食直前に使用し、約30分~1時間で効果が現れ、約18〜24時間持続する。
<持続性溶解インスリン製剤>
多くは1日1回使用し、約1〜2時間で効果が現れ、約24~42時間持続する。
<配合溶解>
多くは1日1回使用し、10~20分で効果が現れ、42時間以上持続する。

薬の効果には個人差があり、病態もそれぞれ異なるので、医師の判断によってその人に合った注射薬が処方されます。糖尿病の治療薬は、低血糖を引き起こす可能性もありますので、必ず医師の指示を守りましょう。
インスリン注射薬について詳しくは、糖尿病の治療薬「インスリン注射薬」ー種類、副作用、注意すべきことについて徹底解説ーをご参照ください。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療のエッセンス2017|日本医師会(pdf)
e-ヘルスネット|レジスタンス運動
e-ヘルスネット|糖尿病を改善するための運動

糖尿病を治療する目的と目標

ここがポイント!

  • 糖尿病治療の目標は、高血糖による合併症を予防すること
  • 糖尿病の三大合併症には「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」がある
  • 高血糖は、動脈硬化を進行させ心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクも高める
  • 糖尿病治療ガイドには、合併症を予防するための血糖コントロールの目標値をHbA1c7.0%未満としている
  • 血糖コントロール目標指標は、HbA1c以外にも体重、血圧、コレステロール、中性脂肪などがある

糖尿病は、初期段階では自覚症状ほとんどないため、長期間放置されてしまうこともあります。しかし、血糖が高い状態を放置しておくと、血管がダメージを受けて「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」などの合併症に繋がります。また、高血糖は「動脈硬化」を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクも高めます。
高血糖の期間が長い程、合併症の発症リスクは高まりますので、糖尿病も早期発見・早期治療が重要なのです。

また、合併症を予防を目的とした血糖コントロールの目標値は「HlA1c7.0%未満」と糖尿病診療ガイドラインに記載されています。ただし、HbA1cのみ注意が必要というわけではありません。他にも治療の目安となる数値は以下にまとめています。

<その他の目標値>
・標準体重の維持「BMI22」前後
(BMIとは肥満度を現す数値で[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出する)
・血圧 130/80mmHg未満(家庭血圧で125/75mmHg未満)
・LDLコレステロール 120mg/dL未満(冠動脈疾患があるときは100mg/dL未満)
・HDlコレステロール 40mg/dL以上
・中性脂肪(早朝空腹時) 150mg/dL未満
・non-HDLコレステロール 150mg/dL未満(冠動脈疾患があるときは130mg/dL未満)

糖尿病の治療は、命に関わる合併症を引き起こさないように、これらの目標値を目指して、血糖コントロールをしながら病気と向き合っていく事が重要です。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療のエッセンス2017|日本医師会(pdf)
高血圧症発症チェック

糖尿病を治療しないとどうなるのか

ここがポイント!

  • 高血糖の状態が続くと、さまざまな合併症を引き起こす
  • 1型糖尿病の場合はインスリンの分泌がほとんどない状態なので、治療をしないと意識障害などの生命に関わる状態になりうる
  • 糖尿病は自覚症状がなく自分自身では気づきにくいので、年に一度は健康診断で検査をすることが大切

血糖値が高い状態を放置していると、全身で様々な合併症が起こります。自分自身の生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を落とすばかりでなく、「動脈硬化性疾患」になるリスクが上がり、悪化すると「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」などの重大な合併症を起こします。
先ほども解説しましたが、1型糖尿病の場合はインスリンが出せない状態なので、インスリン注射が必要不可欠になります。インスリンを打たないと、体が高血糖状態で意識障害を引き起こし、命に関わります。

しかし、糖尿病になっても、「食事療法」や「運動療法」「薬物療法」によって、血糖をきちんとコントロールし、合併症を予防することによって、健康な人と変わらない日常生活を送ることができます。そのためにも、早い段階で糖尿病に気づくことが重要になります。初期の糖尿病は自覚症状がほとんどないため、年に一度は、健康診断を受けるようにしましょう。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療のエッセンス2017|日本医師会(pdf)

まとめ

糖尿病の治療は、血糖値を下げて命に関わるような合併症を予防する目的があります。1型糖尿病は、インスリンがほとんど分泌されないため「インスリン治療」が必要です。しかし、2型糖尿病は、生活習慣病の一つなので早期であれば「食事療法」と「運動療法」で血糖コントロールをする事が可能ですが、生活習慣の改善を続けても血糖値が改善しない場合には経口薬やインスリン治療が必要となります。糖尿病は、「完治する」ことが難しいので、治療を継続して行かなければなりません。しかし、血糖コントロールがしっかりできていれば、普通の人と変わらない生活を送る事ができます。まずは、自分の病気とゆっくり向き合う事が重要なのです。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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