【糖尿病は治るのか】 血糖コントロールにより治る可能性について解説します

糖尿病には「治る」という概念はなく、良好な血糖値をコントロールするためには、治療を継続する必要があります。しかし、症状によっては「食事療法」と「運動療法」だけで、血糖コントロールが出来る方もいます。ここでは、糖尿病が治る可能性はあるのか、糖尿病と上手に付き合っていくポイントなどを詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01糖尿病は治る病気ではない
  2. 02糖尿病は薬物治療を続けなくてはならないのか
  3. 03境界型糖尿病は完治する可能性がある
  4. 04糖尿病にならないために出来る事
  5. 05まとめ

糖尿病は治る病気ではない

ここがポイント!

  • 糖尿病は、血糖値を下げるインスリンの作用不足により慢性的に高血糖状態になってしまう病気であり、完治する事はない
  • 高血糖状態が続くとさまざまな合併症を引き起こし、動脈硬化の進行によって心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まる
  • 血糖値を下げる治療を続けて、合併症を予防することが大切
  • 糖尿病になっても、初期段階で血糖値が比較的低い場合には、食事療法と運動療法で血糖コントロールをする事も可能

糖尿病は完治が困難

糖尿病は、薬を飲んだからといって治る病気ではありません。日本糖尿病学会のガイドラインでは、糖尿病を「インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群である」と記載しています。高血糖状態が続くと、命に関わる合併症を引き起こすため、「適切な治療」や「自己管理」を継続しなければならないのです。そのため、糖尿病は状態が良くなる事はあっても、基本的に完治(完全に治る)する事はありません。特に、1型糖尿病は何らかの理由でインスリンを分泌する膵臓の細胞が破壊されてしまい、インスリンの分泌がほとんどない状態なので、治療としてインスリン注射を継続する必要があります。
糖尿病は発症すると完治することは困難

合併症の発症予防と進展阻止のために、治療の継続が必要

糖尿病は、一度発症すると高血糖状態が慢性的に続く病気です。治療を受けずに、血糖値が高い状態が続くと、全身の血管がダメージを受けて、命に関わる様々な合併症を引き起こします。
糖尿病特有の合併症には、手足などの末梢血管が傷つく事で、運動神経・感覚神経、自律神経に障害が生じる「糖尿病性神経障害」、網膜にある毛細血管が傷つくことにより、白内障や失明の危険がある「糖尿病性網膜症」、腎臓の濾過機能の役割を果たしている糸球体という細い血管が傷つく事で、腎機能が低下する「糖尿病性腎症」があります。
糖尿病が進行すると動脈硬化が進み、血液循環が悪くなるだけではなく、免疫力も低下し、足先などで組織が腐って死んでしまう状態である「壊疽(えそ)」を発症する場合もあります。また、動脈硬化の進行によって、「虚血性心疾患」「脳血管障害」「閉塞性動脈硬化症」の発症リスクが高くなる事も明らかになっています。

糖尿病を完全に完治することは困難ですが、これらの合併症の発症予防と進行を阻止することを治療の目標として、継続的に治療を行う事が重要です。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療のエッセンス2017|日本医師会(pdf)
高血圧症発症チェック

糖尿病は薬物治療を続けなくてはならないのか

ここがポイント!

  • 1型糖尿病は膵臓の細胞が破壊されインスリンが出なくなるため、インスリン治療が必要不可欠で中止することは出来ない
  • 2型糖尿病は、十分な「生活習慣の改善」をすることで血糖コントロールが良好になれば、薬を中止する事が可能である

1型糖尿病はインスリン治療が必要不可欠

1型糖尿病は、2型糖尿病とは原因や治療法が異なります。1型糖尿病になると、膵臓にあるβ細胞が何らかの原因で破壊され、「インスリン」が出なくなります。「インスリン」とは、血糖値を下げる働きがあり、生きていくために必要なものです。
インスリンが出ない状態になると、血糖値を下げることが出来ず「高血糖」の状態になります。のどの渇きや、体の倦怠感といった症状が現れ、意識を失ってしまうこともあります。破壊された膵臓の細胞が治ることは無いので、注射によるインスリン治療が必要不可欠です。

2型糖尿病は、生活習慣の改善により血糖コントロールができれば、薬を中止できる

2型糖尿病は、生活習慣の乱れが主な原因で発症する「生活習慣病」の一つです。インスリンの分泌量が減ったり、インスリンの効果が弱まったりする事で、高血糖状態になります。2型糖尿病の治療法には「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3種類がありますが、糖尿病の状態によっては薬物療法を行わず、食事や運動など生活習慣の改善に努力する事で、血糖コントロールをする事が可能です。

また、「経口薬」や「インスリン注射」の治療をしていても、生活習慣の改善を十分にし、良好な血糖コントロールが出来れば、徐々に薬の量を減らすことも出来ます。日本糖尿病学会のガイドラインにも『「体重減少」や「生活習慣の改善」により薬による治療を中止することが可能である』と記載されています。
しかし、血糖値は常に変動しているので、薬物治療を中止出来たとしても油断していると、再度悪化してしまう場合もあります。生活習慣の改善は継続し、定期的に医療機関を受診し検査を受けましょう

糖尿病とうまく付き合っていくポイント

継続することが大切

糖尿病は一生、もしくは長期間の治療が必要になります
そのためにも、自分に合った「食事療法」や「運動療法」を継続していくことが、糖尿病とうまく付き合っていくポイントになります。無理をしすぎると、途中で断念してしまうことがあります。大切なことは、継続していくことなので、自分の実践しやすい方法や手段を選び、取り組んでいきましょう。

目標を持って治療に取り組もう

糖尿病の治療の目的は血糖値を下げて命に関わる合併症を予防する事です。治療を前向きに続けていくために、目標値を知っておく事もポイントです。日本糖尿病学会のガイドラインによると、合併症を予防するための具体的な目標値は「HbA1c7.0未満」、食事や運動などの生活習慣の改善により、血糖の正常化を目指す目標値は「HbA1c6.0未満」と記載されています(HbA1cとは、約2ヶ月間の平均血糖値のこと)。

また、糖尿病で気をつけたいのは血糖値だけではありません。体重やコレステロールなどもそれぞれ目標値が設定されています。

<目標値>
・HbA1c「6.0未満」
・標準体重の維持「BMI22」前後
(BMIとは肥満度を現す数値で[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出する)
・血圧 130/80mmHg未満(家庭血圧で125/75mmHg未満)
・LDLコレステロール 120mg/dL未満(冠動脈疾患があるときは100mg/dL未満)
・HDlコレステロール 40mg/dL以上
・中性脂肪(早朝空腹時) 150mg/dL未満
・non-HDLコレステロール 150mg/dL未満(冠動脈疾患があるときは130mg/dL未満)

これらの目標値は、治療ガイドラインに記載されているあくまでも一般的な目標値です。糖尿病の状態やその他の病気の有無などにより、目標値はそれぞれ異なる場合があります。主治医と相談しながら、自分に合った目標を持って生活習慣の改善や薬物治療を継続的に行う事が重要なのです。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療のエッセンス2017|日本医師会(pdf)

境界型糖尿病は完治する可能性がある

ここがポイント!

  • 境界型糖尿病とは、糖尿病の診断にはならないが、血糖値が正常範囲よりは高い状態のこと
  • 境界型糖尿病は、早い段階から食生活・運動習慣・体重管理などの十分な「生活習慣の改善」に取り組んでいけば血糖値を正常な状態に戻す事ができる

そもそも境界型糖尿病とは

糖尿病は発症すると完治は困難ですが、もし糖尿病になる前の早い段階で、病気に気づき、対策に取り組めたならば、正常な段階まで血糖値をコントロールすることができます。糖尿病の診断にはならないが、血糖値が正常範囲よりは高い状態を「境界型糖尿病」といいます。
「境界型糖尿病」の診断となる血糖値の目安は、空腹時血糖値が、110~126mg/dLです。空腹時血糖値が100~109mg/dLの場合は、正常値の範囲内ですが、この後に解説する「OGTT検査」を行うと異常が見つかることが多いため、この範囲は「正常高値」と分類され区別されます。

<境界型糖尿病の空腹時血糖値の目安>
分類 空腹時血糖値
糖尿病 126mg/dL以上
境界型糖尿病 110~126mg/dL
正常高値 100~109mg/dL
正常値 100mg/dL以下

糖尿病の検査には、「空腹時」に採血をして血糖値の数値を調べるものと、「ブドウ糖摂取後」に採血をして血糖値の変化を調べるものがあります。
境界型糖尿病の場合は、食後にインスリン不足になり、血糖値が上昇するので、診断には空腹時にする採血のみではなく、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)が行われます。
「OGTT」とは、食後の血糖値の変化を調べる目的で行う採血検査です。採血の際に、ブドウ糖を摂取して、その後の血糖値の上下を観察するために30分毎に数回採血をします。

「空腹時血糖値110~125mg/dL」「HbA1cの値が6.0~6.4」の場合は、OGTT検査が強く推奨され、「空腹時血糖値100~109mg/dL」「HbA1c5.6~5.9」の場合も、家族に糖尿病の人がいたり、自身が肥満体形である場合などは、OGTT検査を行うことが、日本糖尿病学会で推奨されています。

<OGTT検査が推奨される場合>
強く推奨される場合 行うことが望ましい場合
空腹時血糖値 110~125mg/dL 100~109mg/dL
HbA1c 6.0~6.4 5.6~5.9
その他の要因 随時血糖値が110~125mg/dL 家族に糖尿病がいる、肥満体形
空腹時血糖値および経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の判定区分と判定基準
境界型糖尿病は、早い段階から食生活・運動習慣・体重管理などの十分な「生活習慣の改善」に取り組んでいけば、血糖値を下げることが出来ます。しかし、境界型糖尿病の状態を放置していると、糖尿病になる危険が高くなり、「動脈硬化」も進行してしまいます。
OGTTは健康診断では測定しないため、気になる場合は「内科」や「糖尿病内科」を受診して一度相談してみてはいかがでしょうか。

高血圧症発症チェック

糖尿病にならないために出来る事

糖尿病にならないためには、「体重の管理」「食生活の改善」「運動習慣」「節酒」「禁煙」「ストレスを溜めない」などを気を付けることが大切です。
例えば、「食生活の改善」では、過食や不規則な時間の摂取は控えましょう。過度な節制も栄養不足となるので、「糖質」「タンパク質」「脂質」をバランスよく摂ることが、ポイントになります。外食やコンビニ食が多い人は、カロリーや脂質や脂肪が高くなりがちです。バランスをよくするためにも1品で済ませないで、野菜のおかずを追加したりしましょう。糖尿病の食事については、糖尿病予防の食事とは|食事の注意点やおすすめレシピまでご紹介をご参照ください。

適度な運動も血糖値を下げる効果があり、肥満の解消にもなります。糖尿病の診療ガイド
ラインでも「有酸素運動」と「レジスタンス運動」の糖尿病改善の効果は証明されています。「有酸素運動」は、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳、自転車などの運動です。「レジスタンス運動」とは、腹筋・スクワット・腕立て伏せ・ダンベル体操などの、筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動です。ポイントは、ややきついと感じる程度で、少なくとも週に3~5回、1日20~60分程度の運動をすることが、推奨されています。運動のポイントについて詳しくは【糖尿病予防の運動方法とは】今日からできる運動のポイントをご参照ください。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
食事バランスガイド|農林水産省
e-ヘルスネット|糖尿病を改善するための運動

まとめ

ここでは、糖尿病は完治が困難な病気であると説明してきました。発症してしまったら、長く付き合っていかなければならないので、正しい知識をもって治療を続けていく必要があります。無理な食事管理や運動をしても、長く継続していかなければ意味がありません。担当の医師、看護師、栄養師などの医療スタッフと相談し、治療の計画を立てて、自分に合った方法で血糖コントロールを継続していきましょう。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

この記事の情報の信憑性について

オンラインクリニックでは、医療従事経験者による記事編集、専任の監修医を設けることにより信頼性のある情報提供を心がけておりますが(詳細は「運営方針」をご確認ください)、ユーザーの方ご自身、またはご家族の具体的な医療上の問題を解決する必要がある場合には、医療機関へ相談されるか、または受診をするようにしてください(詳細は「利用規約」をご確認ください)。

記事についてのお問い合わせ