【自毛植毛によるAGA治療について】植毛後の経過、費用、メリット・デメリット、失敗例など幅広く解説

自毛植毛は、AGA(男性型脱毛症)に対する治療法の1つです。日本皮膚科学会はAGAの診療ガイドラインの中で、外用薬や内服薬による治療効果が十分に得られない人に対し、選択肢の1つとして推奨する治療法としています。
自毛植毛は、その名の通り、後頭部などAGAの影響を受けにくい部分から自分自身の毛を採取して脱毛部に移植する方法であるため、拒絶反応などのトラブルが発生する可能性が低く、化学繊維で作られた人工毛を植毛する方法とは違って安全性が高い方法です。また、毛の根元にあり発毛・育毛の基となる「毛包」ごと移植するため、脱毛していた部分から新しい自分自身の髪の毛が「AGAの影響を受けにくい毛」として生え、成長していく効果が期待出来ます。
ここではまず「植毛」という治療法の種類を確認した上で、特に日本皮膚科学会が推奨している「自毛植毛」に焦点を当て、方法、種類、術後の経過などについて見ていきましょう。

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01 植毛の種類
  2. 02自毛植毛術の流れと経過~移植した髪が伸びるまで
  3. 03自毛植毛にかかる費用
  4. 04植毛は相当痛いのか
  5. 05自毛植毛の失敗について
  6. 06自毛植毛のメリット・デメリット
  7. 07自毛植毛の効果を示した英文の研究論文はあるのか
  8. 08眉毛も植毛することが出来るのか
  9. 09まとめ

植毛の種類


ここがポイント

  • 植毛には「自毛植毛」と「人工毛植毛」があり、移植する毛の種類が異なる
  • 自毛植毛は、AGAで脱毛しにくい後頭部の髪の毛を根元から取り出して、脱毛部へ移植する方法
  • 日本皮膚科学会は、薬によるAGA治療の効果が十分でなかった人に対し「自毛植毛」を推奨している
  • 人工毛植毛とは、化学繊維で作られた髪の毛を脱毛部へ移植する方法
  • 日本皮膚科学会は、人工毛植毛は術後合併症のリスクから行わないよう勧めている

まずは「植毛」の種類について確認をしていきましょう。

植毛は「自毛植毛」と「人工毛植毛」の2種類

植毛は。移植する「毛の種類」によって「自毛植毛」と「人工毛植毛」の2つの種類に分けられます。

自毛植毛:自分の髪の毛を移植する

後頭部の髪の毛は、AGAの原因となる「ジヒドロテストステロン(DHT)の影響を受けにくいため、薄毛になりにくいという特徴があります。自毛植毛はこれに着目した方法で、自分の後頭部から髪の毛を発毛と成長の基となる「毛包」ごと取り出し、脱毛部へ移植します。移植された毛包が頭皮に生着すると、脱毛していた部分から自分の髪の毛が新しく生えてきます。

人工毛植毛:人工的に作られた髪の毛を移植する

この方法では、本物の髪の毛ではなく「化学繊維で作られた髪の毛」を脱毛部へ移植します。人工的な髪の毛であるため発毛を期待するものではありません。

AGA治療法として推奨されている「自毛植毛」

自毛植毛の推奨度

AGAの治療には、植毛を含めていくつか方法があり、日本皮膚科学会は2010年に作成した診療ガイドラインの中で、それらの治療法の推奨度を次の表のように定めています。

<AGA治療における推奨度別分類>
AGA治療法 推奨分類 推奨レベル
外用薬、内服薬(男性) A 行うよう強く勧められる
自毛植毛 B 行うよう勧められる
医薬部外品や化粧品の育毛剤の一部 C1 行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない
医薬部外品や化粧品の育毛剤の一部 C2 根拠がないので勧められない
人工毛植毛、内服薬(女性) D 行わないよう勧められる

このように、植毛の中で、医学的根拠が認められ推奨されているのは「自毛植毛」だけで、「人工毛植毛」の方は行わないように勧められています。ガイドラインの中には、外用薬や内服薬による治療で、十分な改善が認められない男女に対し、自毛植毛を推奨すると記載されています。

植毛以外の治療法について詳しくは「【AGAの治療について】3つの治療方法・期間・薬の効果と副作用から保険適用まで網羅的に」をご参照下さい。

自毛植毛の方法~FUT法とFUE法

自毛植毛の方法は1通りではなく、医療機関によって行っている方法が異なります。ここでは基本的な2つの方法をご紹介します。
1)FUT法(Follicular Unit Transplantation)
後頭部の頭皮をメスを使って帯状に切り取った後、髪の毛が数本生えた状態の毛包を1つずつ採取します。その後脱毛部にメスで移植するための穴を開け、毛包単位で植毛します。
この方法はメスを使用するため、縫合が必要ですが、いくつかのクリニックのホームページでは生着率がFUE法より高いと書かれています。
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2)FUE法(Follicular Unit Extraction)
特殊な機器を使用して毛包を1つずつくり抜き、また脱毛部への移植の際にも特殊な機器を使って穴を開けてそこに採取した毛包を植えていきます。メスを使わず皮膚を切らないため、縫合をする必要性が無く、傷跡が出来ないという特徴があります。
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上記の2つの方法以外にも、FUT法とFUE法の良い部分を足し合わせた方法など、医療機関が開発して独自の名称を付けているものも多数あります。受診を考えている医療機関がどのような方法で植毛を行っているのか、事前に確認しておくと良いでしょう。

自毛植毛を推奨されるのは薬によるAGA治療が効果なかった人

日本皮膚科学会がAGA治療の第一選択(最初に行う治療法)として挙げているのは「外用薬や内服薬」です。そのため、自毛植毛を希望して病院を訪れても、まだAGA治療薬を試していない人は薬による治療を勧められる場合があります。
最初に薬による治療が行われる理由は医学的根拠、治療効果、安全性に関する論文報告が十分であることと、植毛術は体に傷を付ける方法(侵襲性が高い)であるからです。診療ガイドラインにはAGA治療薬による効果が1年経過しても見られない場合に、次の選択肢として自毛植毛もしくはかつらによる治療が推奨される旨が記載されています。その際、十分な経験と技術を有する医師による植毛を受けるのを勧めるとも記載されています。

人工毛植毛が危険な理由

自毛植毛がAGA治療法として推奨されている一方で、同じ植毛でも人工毛植毛の推奨分類は「行わないよう勧められる」のDである理由をお話しします。
人工毛植毛は、髪の毛に人工毛を結びつけるなどする増毛やかつらとは異なり、人工毛を穴を開けた頭皮へ移植します。すると、体は人工毛を異物と判断して拒絶反応を起こすため、移植部分に炎症が起こったり、移植した人工毛が抜け落ちたりしてしまいます。

ニューヨーク州立大学の研究グループが、100例の人工毛植毛術後の合併症を調査した結果を論文報告しています。この調査結果から、人工毛植毛は危険で無駄な治療法であるため、すぐにでも禁止されるべきだと結論付けられ、これを受けて、米国の食品、医薬品、化粧品の管理などを担当している米国食品医薬品局(FDA)は、人工毛自体を有害な医療器具として指定し、米国内での人工毛植毛術を禁止しました。

参考


自毛植毛術の流れと経過~移植した髪が伸びるまで

ここがポイント

  • 自毛植毛によるAGA治療を希望する場合は、受診前にホームページや電話で実施可能か確認をする
  • 医療機関を受診すると、まず自毛植毛術の説明を受ける
  • 手術自体は3~5時間で終わるため、通常は日帰りとなる
  • 術後数週間で傷口は回復し、個人差はあるが、術後6カ月で発毛を感じられるようになる
  • 術後は洗髪・整髪、運動、睡眠、かつらなどの日常行動にに気を付けましょう

ここでは、自毛植毛を行っている医療機関を確認した上で、手術の流れと術後の経過について見ていきましょう。

自毛植毛術を受けられる医療機関

AGA治療は皮膚科診療領域であるため、基本的に皮膚科のある病院で受けることが出来ますが、脱毛症やAGAの専門外来のある病院やクリニックで、より専門的なAGA治療を受けることが出来ます。しかし、AGA治療を行っている医療機関であればどこでも自毛植毛を受けられるわけではなく、自毛植毛術は専用の医療器械や医師の高度な技術を必要とするため、対応していない医療機関もあります。自毛植毛を希望する人は、病院やクリニックを受診する前に自毛植毛術を実施しているかをホームページや電話で確認することをお勧めします。

自毛植毛は、AGAの診療ガイドラインでは薬による治療が効果的でなかった場合に推奨されていると先ほどお話しをしましたが、医療機関によっては医師の判断により、薬の治療を行わずに自毛植毛を行う場合があります。ここでは、自毛植毛の実際の流れの例を見てみましょう。

手術までの流れ:受診・カウンセリング

自毛植毛の説明を受ける

自毛植毛を目的として受診をした場合には、まず自毛植毛術の方法、効果や副作用、経過などの説明を受けます。後で詳しくお話ししますが、自毛植毛にはメリットだけではなくデメリットもあります。それを理解した上で手術を行うかどうかを決断します。

手術実施のための検査を受ける

手術を受けると決めたら感染症の確認のため、血液検査を行います。血液検査以外の検査を提案されることがあるかもしれませんが、その内容や必要性を十分確認してからそれらの検査を受けるかどうかを判断しましょう。

移植範囲を決める

個人の脱毛状態や希望のデザインに合わせて、具体的に移植する範囲を決めていきます。移植する範囲によって費用が異なるため、この時点で必要な費用が確定します。

これらの後に、自毛植毛を行うかどうか、最終的に決定をします。

以上が自毛植毛術までの流れです。治療などに関して疑問や不安がある場合は医師や専門スタッフに確認しておきましょう。医療機関によっては初回に無料カウンセリングを行っており、そこで自毛植毛術について詳しく説明が受けられるところもあるので、ホームページや電話であらかじめ確認するようにお勧めします。

手術の実施

手術自体は移植する範囲に応じて3~5時間(休憩を含む)で終わるため、多くの場合日帰り手術となるようです。それでは自毛植毛術当日の流れの例を見てみましょう。

手術当日の流れ
1、医療機関に到着したら、着替えをする
2、手術部位に局所麻酔を受ける
3、後頭部からグラフト(髪の毛と毛包)が採取される
4、手術前に打ち合わせたデザインになるように、脱毛部に採取した毛包を植えるための穴が形成される
5、上記の穴に採取したグラフトが植え込まれ移植されていく
6、手術終了後は手術による傷があるため、包帯や帽子などで保護してもらい帰宅となる

医療機関によってはグラフトの採取などの後に休憩をはさむケースもあります。

術後の経過と効果

ここでは、術後はどのような経過で傷口が回復していくのか、また効果が現れるまでどのくらいの時間がかかるのかについて見ていきましょう。

手術直後~術後数日

手術直後は出血する可能性があるため、包帯やガーゼなどを傷口に当ててその上からバンダナや帽子などで
目立たないようにしておきます。
翌日には傷口にかさぶたが出来てきます。かさぶたを無理にはがそうとすると、再度出血してくる可能性もあるので注意してください。

術後1~2週間

術後1週間程度で傷口のかさぶたが取れてきて、さらに術後2週間程度経つと、かさぶたはほとんどなくなり、頭皮の下に埋まっていた髪の毛が出てきます。

術後1~3カ月

術後1カ月経つと、手術の傷口はほどんと気にならなくなるため、日常生活での制限は特になく手術前と同じ、普段通りの生活を送れるようになります。この時期は移植した毛包内で新しい髪の毛が作られ始めている段階であるため、まだ新しい髪の毛は生えてきていません。

術後6~12カ月

早い人で術後6カ月程度で、まだ短い状態ですが移植した毛包から新しい髪の毛が生えそろいます。後頭部から採取した毛包であるため、新しい髪の毛はこれまでように細いものではなく太い毛です。そしておよそ12カ月後には移植して生着した全ての毛包から太くて長い髪の毛が生えそろいます。

術後に気を付けるポイント

自毛植毛後は、移植した毛の生着率を上げるために生活面で注意すべきポイントがありますので確認をしておきましょう。

洗髪・整髪

洗髪は手術の翌日の夜から可能ですが、術後1週間は移植した部分をこするのではなく、お湯で流して洗うようにしてください。洗髪の後はドライヤーで乾かしても構いませんが、温風の場合は頭皮が熱くなり過ぎないようにしましょう。手術の1週間後くらいからは優しい力であればこすり洗いも可能になり、また整髪料の使用も出来るようになります。
手術前と同じ具合に洗髪が出来るようになるのは手術の2週間後以降が目安と考えてください。

運動

激しい運動は傷口の刺激になり、炎症などの合併症につながる可能性があるため、手術の5日後くらいからを目安にしてウォーキングなどの軽い運動から始めてください。

睡眠の方法

術後早期には移植したグラフトが生着していないため、移植部分をこすると抜けやすい状態になっています。そのため、術後3日~1週間は柔らかい枕は使用せず、硬めの枕を使って仰向けで寝ましょう。

かつら

かつらは傷口への刺激となるため、術後3日間程度はつけないようにしましょう。それ以降は移植部分にかつらを固定するテープなどが当たらないようにして使用してください。
オンラインで医師の診療が受けられるAGA治療

自毛植毛にかかる費用

ここがポイント

  • 手術にかかる基本料金は20万円程度
  • それに加えて移植範囲に応じてかかる費用は1毛包あたり1000円程度
  • 上記以外に必要となる主な費用は医療機関へ通院するための交通費や宿泊費
  • 医療機関ではモニター割引、紹介割引などの割引制度を設定している施設もある

自毛植毛にかかる費用には医療保険が適用されません。そのため費用は医療機関ごとに異なります。自毛植毛の費用は、大きく分けると「手術費用」「移植範囲に応じた費用」「その他の費用」です。それぞれの費用の目安を見ていきましょう。

手術にかかる基本料金

手術費用には診察料なども含めている医療機関が多く、費用の目安は20万円程度です。使用する医療機器や術式などで変化するようです。

移植範囲に応じてかかる料金

手術費用に加えて、植毛する範囲に応じた費用がかかります。FUT法でもFUE法でも毛包単位で移植するため、多くの場合1毛包当たり、もしくは1平方センチメートル当たりと設定されています。1毛包あたりの費用の目安は1,000円程度であるため、それに移植する毛包数をかけ合わせた料金となります。
ちなみに毛包には髪の毛が1本だけでなく数本生えている場合もあります。そのため、移植する毛包数と毛髪数は同じではないことを覚えておきましょう。

AGAによる脱毛の部位と移植する毛包の目安をまとめました。

脱毛の部位と状態 移植する毛包の目安 費用の目安(移植範囲に応じた料金のみ)
生え際の後退 400~600 40万~60万円
生え際の後退と頭頂部の薄毛 800~1,200 80万~120万円
頭頂部が広く脱毛している 1,000~1,500 100万~150万円
前頭部から頭頂部にかけて脱毛 2,000~3,000 200万~300万円
上記の金額はあくまでも目安であり、毛包数が多くなればなるほど割引などで高額になり過ぎないように料金設定している医療機関もあるため、一度電話、もしくはカウンセリングで確認してみると良いでしょう。

その他必要な費用

多くの医療機関では、自毛植毛に必要な費用は基本的に手術費用と植毛範囲に応じた費用としており、手術前のカウンセリングや術後の診察は手術費用に含めるなどして無料としているようです。
そのため、手術費用や診察費用とは別に必要となる主な料金としては、通院費が挙げられます。特に遠方から治療のために通院する人は交通費に加えて宿泊費が必要になる場合もあります。

自毛植毛術後は費用が掛からないのか

自毛植毛の費用は最低でも数十万円かかり、高額です。一方で、「一度植毛してしまえば、それ以降は治療をする必要がないから長期的に見れば安い」と考える人もいるかも知れません。確かに植毛した毛包から生えてくる髪の毛については特別なメンテナンスをする必要はありません。しかし生え際や頭頂部にもともと生えていた髪の毛はAGAの影響による薄毛が徐々に進行していきます。そのため、自毛植毛をしても再度薄毛になる可能性があり、そのような進行を防ぐために術後も薬によるAGA治療を継続していく必要があります。
つまり、自毛植毛術後は、AGA治療薬の費用が必要となります。

自毛植毛を少しでも安く行うために

高額な自毛植毛を少しでも安く受けるためには、医療機関が設定している割引制度を利用する方法があります。例を挙げると、モニター割引(治療の経験者として治療の様子や経過の情報をクリニックのホームページなどで公開する)、紹介割引、植毛する毛包数に応じた割引、交通費・宿泊費の割引などがあります。
治療する医療機関を選択する時にどのような割引があるのか確認しておくと良いでしょう。

植毛は相当痛いのか

ここがポイント

  • 自毛植毛術では「局所麻酔」を使用し、頭皮の感覚をなくすため、意識はあるが痛みは感じない
  • ただし麻酔薬を頭皮に注射する時には痛みを感じることがある
  • 麻酔が切れた後は痛みなどを感じる可能性があるため、痛み止めの内服薬が処方される

自毛植毛は手術であり、方法によってはメスを使う場合もあるため手術中に痛みがあるのではないかと不安に思う人もいるかも知れません。ここでは、手術中や手術後の痛みについてお話しします。

麻酔をかけるので術中は痛くない

自毛植毛術では、「局所麻酔」という、体の一部に対して痛みなどの感覚をなくす麻酔が使われるため、意識は残っていますが、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。
局所麻酔は薬を直接頭皮へ注射するため、その注射の際に痛みを感じることがありますが、麻酔が効き始めれば安心して手術を受けることが出来ます。

麻酔が切れた後は痛いのか

麻酔が切れると徐々に感覚が戻ってくるため、痛みや突っ張るような感覚が出てくる場合があります。そうした術後の痛みを抑えるために、通常は痛み止めの内服薬が処方されます。

痛みは何日くらい続くのか

術後1週間後には傷口のかさぶたが取れてきます。これは手術による炎症が収まって来ている証拠であるため、この頃には痛みも治まってきていると考えられます。それ以前であっても内服薬を利用すれば痛みを最小限に抑えることが出来るでしょう。

全身麻酔していれば、植毛をする時に痛みはありません。しかし、術後に麻酔が切れた際には、埋め込まれた1000本ほどの毛根の部分や、毛根をとってきた後頭部が痛むことはあります。

自毛植毛の失敗について

ここがポイント

  • 術者の技術不足や傷口の状態などによって移植した毛包が生着しない場合がある
  • ケロイド体質や傷口の感染などによって傷跡が残るケースがある

自毛植毛が失敗するケースについて原因も含めて確認しておきましょう。

失敗例1:移植した髪の毛が生着しない

自毛植毛では移植した毛包が脱毛部に生着して新しい髪の毛が発毛することを期待します。そのため、毛包が生着しなければ新しい髪の毛は生えてこず、失敗となります。生着率が低下する原因はいくつかあるようですが、術者(医師)の技術不足、もともと頭皮に傷跡がある、術後に傷口が炎症を起こしてしまう、などが挙げられています。また前の章でもお話ししましたが、術後すぐに移植した部分をこすると毛包が生着する前に抜けてしまうなどのトラブルが起きる場合があります。

失敗例2:傷跡が残る(特にケロイド体質)

手術をした時に出来る傷が、術後も残ってしまうケースもあります。特に「ケロイド体質」という特徴を持つ人は、比較的頭部には発生しにくいとされていますが、傷口が盛り上がったり硬くなったりしやすい傾向があります。ケロイド体質以外に傷跡が残る原因としては、傷口が感染してしまうケースなどがあります。
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参考


オンラインで医師の診療が受けられるAGA治療

自毛植毛のメリット・デメリット

ここがポイント

  • 主なメリットは「植毛部位の指定や日帰り手術が可能であること」と「自分の髪の毛が生えること」
  • 主なデメリットは「高額であること」「術後に生活する上での制限があること」「傷跡が残ること」

最後に自毛植毛のメリットとデメリットをまとめましたので、治療を選択する際の参考にしてみてください。

メリット

・髪形・スタイルをデザインすることが出来る
・薬を飲む以外の特別なメンテナンスは必要ない
・日帰りで手術出来る
・生着した毛包から自分の髪の毛が生えてくる

デメリット

・費用が高額になる
・麻酔時や術後に痛みを感じる場合がある
・手術後、日常生活に影響がある
・傷跡が残る可能性がある
・一度に手術出来る部分が限られている


自毛植毛の効果を示した英文の研究論文はあるのか

ここがポイント

  • 皮膚科学会が作成したガイドラインには、英文の論文が引用されている
  • その英文の論文によると、自毛植毛の生着率は82.5%以上
  • ガイドラインに引用されている論文以外にも、多くの英文の研究論文がある
これまで説明してきたように、自毛を用いた植毛術は、日本皮膚科学会が作成した「男性型脱毛症のガイドライン」においても、外用薬や内服薬による治療で十分な改善が認められない男女に対し、推奨されている治療方法です。ガイドラインでは治療法を推奨する際に、必ずその根拠となる医学論文が引用されています。自毛植毛においても、根拠として2つの英文の医学論文が引用されています。1つ目は、世界全体で年間225,800件の実施例(男性86.2%,女性13.2% ) をまとめて、2007年に報告したものです。2つ目は、過去の複数の症例を検討した論文で、自毛植毛術は 82.5% 以上 という高い生着率が得られることが記載されています。いずれも海外からの英文での報告ですが、国内でも膨大な診療実績があることから、推奨される治療法となっています。

ガイドラインに引用されている報告以外にも、多くの英文での論文はあります。古くは1959年にNew York 大学のOrentreichが、AGAに対して行ったパンチ植毛術について報告しています。この論文は、植毛術の普及に貢献したと言われています。また、2009年に発表された論文では、「自毛植毛は医師・患者ともに満足度の高い治療法であり、積極的に推奨できる」との報告がされています。
自毛植毛に対する英文の論文は、現在まで多数報告されており、今後も新しい知見の報告が期待されています。

参考

眉毛も植毛することが出来るのか

ここがポイント

  • 眉毛の植毛術に対する論文報告は、頭部の植毛術に比べてとても少ない
  • 主に汎発性円形脱毛症の症例や、外傷による瘢痕性脱毛症で報告されている

AGAの症状の特徴は、前頭部と頭頂部の薄毛であり、眉毛など頭部以外の薄毛は基本的には見られません。よって、AGAに対する眉毛の植毛術は、ほとんど実施されていません。
眉毛など頭部以外の毛が抜けてしまう病気でもっとも多いものが、汎発性の円形脱毛症です。汎発性の円形脱毛症とは、頭部だけではなく、眉毛、まつげ、脇の毛、手足の毛など全身の毛が抜けてしまう脱毛症を言います。自己免疫の機序(自分の免疫の力で自分の毛を攻撃して、抜けてしまうこと)が原因として考えられています。よって、免疫を抑制する治療(ステロイド療法など)が行われ、脱毛が改善することがあります。全身の毛が抜けているような状態で、眉毛だけ植毛することは困難です。眉毛の植毛が行われる時は、頭部を含めたその他の部位の脱毛が改善したにも関わらず、眉毛だけ改善しない場合に限られます。実際に、治療によって眉毛以外の部位に発毛が得られた汎発性の円形脱毛症の男性患者に、頭部の毛を移植位し、成功したとする報告があります。

また、外傷や熱傷によって眉毛に瘢痕性脱毛が生じた場合に、美容を目的として頭部から眉に植毛を行ったとする報告がいくつかあります。しかし、どの病態であっても症例数が少なく十分な根拠のある治療法とは言えず、副作用についてもあまり知られていません。国内でも施行している施設は少ないでしょう。

参考

オンラインで医師の診療が受けられるAGA治療

まとめ

「自毛植毛」を中心に、植毛についていろいろ見てきました。
自毛植毛は、生え際や頭頂部などのAGAによる脱毛部に、AGAの症状が出にくい後頭部の髪の毛を毛包ごと移植する方法で、自分自身の髪の毛が再び生えてくることが期待出来ます。自毛植毛はAGAの診療ガイドラインで、治療の選択肢の1つとして推奨されている一方で、同じ植毛でも人工毛植毛は安全性の面から行わないように推奨されています。
自毛植毛には、メスを使ったFUT法や、メスを使わないFUE法など、さまざまな方法があるため、術後の経過や費用などの違いを確認しておくと良いでしょう。手術の時間は3~5時間程度のため、通常日帰りで行うことが出来ますが、術後一定期間は洗髪や運動などの面で注意すべきポイントがあります。間違った過ごし方をすれば治療の効果を低減させるだけでなく、頭皮を傷つけることにもつながるため注意しましょう。
自毛植毛では自分の希望に合った髪形をある程度指定出来る、自分の髪が生えてくるというメリットがある一方で、費用面や傷跡などのデメリットもあります。こうした両面をしっかり理解して踏まえた上で、自毛植毛を選択しましょう。
また、自毛植毛に対する海外からの英文での論文報告は多数あり、国内での膨大な診療実績も合わせると、それなりに確立した治療法と言えます。そして、頭部の植毛に比べると圧倒的に報告数は少ないですが、眉毛に対する植毛術を行っている施設もあります。
ここで説明したような自毛植毛に対する現状を理解し、治療を受ける前は主治医としっかり相談するようにしましょう。

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Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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