1型糖尿病が治らない理由とは|発症のメカニズムから解説

糖尿病は治らない病気というイメージが強いのではないでしょうか。日本では、男性の6人に1人、女性の10人に1人程度が糖尿病と言われています。糖尿病には、過食や肥満などの生活習慣が原因で発症する「2型糖尿病」と、それとは全く違う原因で発症する「1型糖尿病」があり、この2つは同じ糖尿病という名前ですが、治療方法や経過が異なります。実は、2型糖尿病は軽度であれば食事療法と運動療法だけで、血糖コントロールをする事が可能です。しかし、1型糖尿病の場合は、インスリン治療を継続して行かなくてはなりません。ここでは、なぜ「1型糖尿病」が治らないのか、1型糖尿病の発症のメカニズムから、インスリン治療、病気と向き合っていく上で大切なポイントまでを詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 011型糖尿病はなぜ治らないのか
  2. 021型糖尿病は治らないためインスリン治療が必要
  3. 03まとめ

1型糖尿病はなぜ治らないのか

ここがポイント!

  • 1型糖尿病は何らかの原因で、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊れ、インスリンがほとんど分泌されなくなった状態
  • 血糖値を下げる作用のあるホルモンはインスリンのみなので、インスリン注射で補充し続ける必要がある
  • 1型糖尿病は若者に多いが、どの年齢でも発症する可能性がある

インスリンを分泌する細胞が破壊されてしまう

1型糖尿病と2型糖尿病は、発症のメカニズムが全く異なります。
2型糖尿病は、肥満や生活習慣が主な原因であり、「インスリン」の分泌量が減ったり、効果が弱まったりする事が原因で高血糖状態になります
一方、1型糖尿病は免疫異常などにより、膵臓の中のインスリンを作るβ細胞という細胞が破壊され「インスリン」の分泌がほとんどない状態になります。破壊されたβ細胞は、元には戻らないので、インスリンが絶対的に欠乏していきます。血糖値を下げる作用のあるホルモンは「インスリン」のみなので、1型糖尿病を発症した人はインスリンを補うためにインスリン治療を続ける必要があります。

1型糖尿病は3つのタイプに分類出来る

1型糖尿病の原因は「特発性」と「自己免疫性」の2つに分類され、発症の仕方によってさらに3つのタイプに分類されています。

「急性発症型1型糖尿病」

急性発症型1型糖尿病では、その大半が「自己免疫性」が原因で発症すると考えられています。自己免疫性とは、本来、細菌やウイルスなどから体を守る「免疫細胞」の働きに異常が生じ、自分の細胞を敵だと誤認して攻撃してしまう「自己免疫異常」をいいます。1型糖尿病の場合、膵臓のβ細胞が攻撃対象になってしまい、細胞が破壊されてしまった状態なのです。「急性発症型1型糖尿病」は、1型糖尿病で最も頻度が高く、数週間から数ヶ月単位でインスリン治療が必要な状態になります。

緩徐進行型1型糖尿病

緩徐進行型1型糖尿病は、急性発症型1型糖尿病と原因は同様です。しかし、発症の速度が急性発症型に比べると緩やかで、数ヶ月に渡って徐々に発症するという特徴があり、発症してもすぐにインスリン治療を必要としません。また、緩徐進行型は「自己免疫性」を示す自己抗体が陽性である事が前提のため、原因は「自己免疫性」であるといえます。

劇症型1型糖尿病

劇症型の1型糖尿病は、自己免疫性との関連が不明であり、突発的に発症する事から「突発性」に分類されます。最も急激に発症し、高血糖症状出現後一週間前後で「糖尿病ケトアシドーシス(高度の代謝低下)」に陥るため、至急インスリン治療が必要になります。

1型糖尿病について詳しくは1型糖尿病について|発症原因から症状、最新の治療法までを解説をご参照ください。

子どもに多いが大人でも発症する

1型糖尿病は、小児期に発症することが多いため「小児糖尿病」と呼ばれる事もあり、比較的若年層に発症する病気だというイメージを抱いている方もいるのではないでしょうか。しかし、それはあくまでも比較であり、30代を過ぎてから1型糖尿病を発症する場合もあります。実際に、エクセター医科大学臨床科学研究所のニコラス・トーマス氏らの研究チームが、第52回欧州糖尿病学会(EASD)で、1型糖尿病の40%以上は30歳以降に発症するという調査結果を発表しています。ただし、欧米諸国に比べて日本を含むアジア諸国の1型糖尿病の発症率は低く(1/20〜1/30程度と推測)、この結果を日本にそのまま当てはめることはできませんが、日本でも成人の1型糖尿病は多く報告されています。
生活習慣病である2型糖尿病と違って、予防する事は難しいですが、年齢を重ねても発症する場合がある事を理解しておきましょう。
1型糖尿病は、子どもだけの病気ではない

参考

日本糖尿病学会|糖尿病診療ガイドライン2016
糖尿病治療のエッセンス2017|日本医師会(pdf)
糖尿病情報センター
Thomas NJ et all.Frequency and phenotype of type 1 diabetes in the first six decades of life: a cross-sectional, genetically stratified survival analysis from UK Biobank. 2017
高血圧症発症チェック

1型糖尿病は治らないためインスリン治療が必要

ここがポイント!

  • 1型糖尿病はインスリンの分泌がほとんど無い状態のため、インスリン注射が必要である
  • インスリンは作用時間の違いにより、「超速効型」「速効型」「中間型」「混合型」「持効型」「配合溶解型」の6つのタイプに分類される
  • インスリン製剤の種類、タイミング、回数、量は、糖尿病の状態や食事量、運動量、体重、生活パターンなどから医師が判断する
  • 体調が優れず食事を摂れない「シックデイ」であっても、インスリンは自己中断せず、必ず主治医に対応を確認する

インスリン注射でインスリンを補う必要がある

前の章で説明しましたが、1型糖尿病は、膵臓の中のインスリンを作るβ細胞という細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されない状態です。インスリンが分泌されないと、血糖値が下がらず高血糖状態が続いてしまいます。そのため、インスリン注射によってインスリンを補わなければならず、生きていくためにインスリン治療が必要な状態を「インスリン依存状態」といいます。
2型糖尿病は生活習慣病の一つであり、インスリンの分泌量が減ったり、インスリンの効果が弱まったりする事で血糖値が高くなります。そのため、生活習慣の改善や内服薬による治療から開始される事が多いですが、1型糖尿病では「インスリン依存状態」になって
いるので、インスリン注射が必ず必要になります。

インスリンの種類

インスリンには、いくつかの種類があり、糖尿病の状態や食事量、運動量、体重、生活パターンなどに合わせて、医師の判断により、いくつかのインスリンを組み合わせて、適正な量を使用していきます。

インスリンの作用時間

インスリン製剤は作用時間の違いにより「超速効型」「速効型」「中間型」「混合型」「持効型」「配合溶解型」の6つのタイプに分類されます。
「超速効型」は食後の血糖値の上昇を抑えるために、食事の直前(もしくは食直後)に、「速効型」は食事の30分前に皮下に注射します。
一方で「中間型」や「持効型」は、食後に上がってしまった血糖値を抑える目的で1日1回~2回程度使用します。そして、「混合型」のインスリンは、これらの効果をを補う目的で使用されます。「配合溶解型」は、「超速効型」と「持効型」インスリンを混合したもを言います。

注射器の形状

インスリン注射製剤には、形状が異なるいくつかの種類があります。
インスリン注射器の形状
1)プレフィルド製剤は、あらかじめインスリンの薬液が「ペン型」の注入器にセットされている使い捨てタイプの注射器です。
2)カートリッジ製剤の場合は、「カートリッジ」を取り替える必要があり、専用カートリッジと専用注入器の組み合わせが決まっているため、間違えた組み合わせで使用してはいけません。
3)バイアル製剤は、使用の際に薬液を注射器に吸い上げる事が必要になります。インスリン専用シリンジが別で必要になります。

それぞれのインスリンの特徴は、以下の表にまとめています。

分類名 作用発現時間 作用持続時間 使用のタイミング 効果 副作用 商品名
超速効型 約10〜20分 約3〜5時間 食直前、又は食直後 インスリンの分泌を補充・作用時間が最も短い 注射後に食事をとらないと、低血糖を起こす ノボラピッド注フレックスペン、ノボラピッド注フレックスタッチ、ノボラピッド注イノレット、ヒューマログ注ミリオペン、アピドラ注ソロスターなど
速効型 約30分 約5〜8時間 食事の30分前 インスリンの分泌を補充・超速効型インスリンよりも少し時間をかけて緩やかに効く 注射に食事をとらないと、低血糖を起こす ノボリンR注フレックスペン、ヒューマリンR注ミリオペンなど
混合型 約30分~1時間 約18〜24時間 朝1回、又は朝夕2回の食直前 一本で調整することができる 時間や用量の調節が難しい ノボラピッド30・50・70ミックス注フレックスペン、ノボリン30R注フレックスペン、イノレット30R注、ヒューマログミックス25注ミリオペン、ヒューマログミックス50注ミリオペン、ヒューマリン3/7中ミリオペンなど
中間型 30分〜3時間 約18〜24時間 1日2回注射が基本 空腹時の血糖値を下げるために使用 夜に注射をする場合には、夜間に低血糖を起こすリスクもあり、作用時間を考慮する ノボリンNフレックスペン、ヒューマログNミリオペン、ヒューマリンNミリオペンなど
持効型 約1〜2時間 約24~42時間 1日1回 24時間作用が持続する 食後の高血糖に注意が必要 レベミル注フレックスペン、レベミル注イノレット、ランタス中ソロスター、トレシーバ注フレックスタッチなど
配合溶解 10~20分 42時間超 1日1回 「超速効型」と「持効型」インスリンを混合したもの 作用発現が速いため、食事の直前に投与すること ライゾデグ配合注 フレックスタッチなど
インスリン療法について詳しくは、糖尿病の治療薬「インスリン注射薬」ー種類、副作用、注意すべきことについて徹底解説ーをご参照ください。

初診時からインスリン治療が開始される場合もある

1型糖尿病は、インスリンがほとんど出ない状態です。最も頻度の高い急性発症型1型糖尿病では、数週間から数ヶ月単位でインスリン治療が必要な状態になることが多いです。しかし、初診時の進行度合いによっては、すぐにインスリンを補充を開始しないと命に関わる場合もあります。特に、「劇症型1型糖尿病」は、発症1週間程度でインスリンが枯渇し、意識障害などの命に関わる症状が出現することがあります。すぐにインスリン治療を開始し、専門医のいる医療機関での治療が必要となります。

1型糖尿病と診断され、インスリン治療が開始されると、それを継続して行かなくてはなりません。毎日、自分で血糖測定を行い、インスリン注射を打ち、血糖値のコントロールをしていかなくてはなりません。そのために、糖尿病の治療について十分な理解が必要です。これだけ聞くと不安に感じる方もいらっしゃると思いますが、「インスリン自己注射の方法」「自己血糖測定器の取り扱い」「低血糖の対処法」などを、医師、看護師など医療スタッフが詳しく指導し、サポートをします。インスリン治療をしっかりと行い、血糖コントロールをすれば、食事や運動に大きな制限なく過ごす事が出来ます。不安は、決して1人で抱え込まず、家族や医療スタッフに相談するようにしましょう。

1型糖尿病はインスリンを中止してはいけない

糖尿病の方が、糖尿病の治療中に発熱下痢、嘔吐、食欲不振などによって、食事ができないときの状態のことを「シックデイ」といいます。糖尿病の治療薬は「血糖値を下げる働き」がありますので、食事を摂っていない場合に投与しても大丈夫なのか不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
しかし、体調が悪くて食事が摂れない状態でも、自己判断でインスリン注射を中止してはいけません。シックデイの時は、必ず主治医に連絡をして、どのような対応を取れば良いか確認しましょう。

参考

日本糖尿病学会|糖尿病診療ガイドライン2016
日本糖尿病学会|インスリン製剤一覧表

 1型糖尿病と向き合うポイント

ここがポイント!

  • 1型糖尿病は、インスリン治療を行えば、健康な人と変わらない生活を送ることが出来る
  • 自己管理が出来ない子どもは、家庭や学校の周囲の大人の協力が必要
  • 学校の先生や友達に、1型糖尿病についてしっかり話しておきましょう

1型糖尿病は、若者に多く発症する事が知られており、まだ自己管理ができない子どもでも発症する場合があります。大人でもインスリン注射を続けていく事は、とても大変な事ですから、子どもの場合にはより周囲の協力が必要とされます。
ここでは、1型糖尿病と向き合っていくポイントを紹介します。

子どもの治療には、周囲の大人の協力が必須

1型糖尿病は、インスリンがほとんど分泌されない状態なので、インスリンを補うために「インスリン注射」を続けていく必要があります。子どもの場合、病気や薬の効果について十分に理解出来ない場合がありますので、本人だけでなく、家族や周囲の大人が病気について理解しサポートする事が必須になります。
各々の症状にもよりますが、インスリン治療によって良好な血糖コントロールが得られていれば、学校生活に制限が必要な場合は少ないでしょう
ただし子どもの場合、食事がいつもより食べられなかったり、運動量がいつもより多かったりすると、「低血糖」を起こしやすくなる危険があります。例えば、遠足や修学旅行などでは、食事の時間が変わるか、いつもより運動量が多くなるかなど、事前にスケジュールを確認するようにしましょう。また、インスリンの用意や、血糖測定セット、低血糖を起こしてしまった際のブドウ糖など、いつもより余裕をもって用意するといいでしょう。学校生活は家族の目が離れることが多いため、担任の先生や保健の先生などとしっかり情報共有を行い、協力していくことが大切なポイントになります。

低血糖の症状を理解しておこう

血糖値が下がりすぎると低血糖状態になり、「眠気」「発汗」「動悸」「脱力」などの症状が起こることがあります。低血糖を起こしたら、速やかにブドウ糖やジュース・お菓子などを摂る必要があります。子どもの場合は、自分自身で低血糖症状に気づく事が難しい場合もあるので、低血糖の対処法を先生や友達、近所の人など身近な人に伝えておきましょう。
また、重度の低血糖では意識がなくなり、早急に適切な処置をしなければ死亡することもある危険な状態です。ジュース・お菓子を摂らせることが難しい状況なら、応急処置として、ブドウ糖や砂糖などを口唇と歯肉の間に塗り、すぐに医療機関を受診しましょう。

学校の先生と確認しておくべきポイント

1)インスリン注射や血糖測定をする場所を相談しておこう
保健室、教室、職員室など、いつどこでインスリン注射や血糖測定を行ったらいいか決めておきましょう。
2)低血糖時の「症状」や「対処方法」について、先生や身近な方に知ってもらう
3)低血糖を予防するための補食(おやつ)
低血糖を予防するために、体育や部活動などの運動に前に、補食(おやつ)を食べたりすることがあることを周りの人に知ってもらおう
4)1型糖尿病について、友達に何をどこまで話すか、決めておこう
ほかの子どもと変わらない学校生活を送るためには、これらを学校や周りの人に理解してもらうことが必要になります。
1型糖尿病について学校の先生と話し合っておこう

成長と共に向き合い方を変えていく

子どもの成長に合わせて、治療方針や内容は変わっていきます。思春期になると、成長ホルモンが増加し、インスリンが効きづらくなる事が明らかになっています。特に女性の場合は、月経が始まり、血糖値に影響がでる場合もあります。また、思春期は成長盛りであり、食事で摂取するべきエネルギーは最大となります。子どもの発育に合わせて、食事摂取量やインスリンの量も変化していくのです。

家庭での向き合い方

食事療法は、食事制限の必要は基本的にはありません。過度な過食などは、避けるべきですが、子どもの成長発育に必要な、バランスの良い食事を摂るようにしましょう。
1型糖尿病は急に発症し、2型糖尿病に比べて発症している人も多くありません。本人も、家族も、「何を気をつければいけないのか」「何を頑張ったらいいのか」わからないことだらけではないでしょうか。
不安な時は一人で悩まず、まずは担当の医師に相談してみましょう。病院によっては、患者様とその家族の細やかなケアを行う目的で、看護師、薬剤師、管理栄養士などで「糖尿病のチーム医療」に取り組んでいることもあります。食事や運動などの日々の生活の悩みも、積極的に相談し、医療者と家族でサポートしていく事が重要です。

参考

日本糖尿病学会|糖尿病診療ガイドライン2016
東京女子医科大学|糖尿病センター
糖尿病情報センター
日本糖尿病協会
日本医師会|病気がみえるvoL3
高血圧症発症チェック

まとめ

1型糖尿病は、インスリンがほとんど分泌出来ない状態なので、インスリンの自己注射を続ける必要があります。ですが、インスリン治療を継続し、良好な血糖コントロールをしていけば、1型糖尿病の方は、食事や運動などを厳しく制限することはありません。周りの人と変わらない生活を送ることが出来ます。自分の生活スタイルに合わせて上手に糖尿病の治療と付き合っていきましょう。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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