【閉塞性動脈硬化症とは】手足の血管に起こる原因と症状などを徹底解説

動脈硬化により引き起こされる病気として有名なのは、心筋梗塞や脳梗塞です。同じく動脈硬化により引き起こされる「閉塞性動脈硬化症」を知っている人は、あまり多くありません。閉塞性動脈硬化症は、初期には歩行時に足のしびれが出現し、進行すると安静にしている時にも手足にしびれや痛みなどが出てきます。また、これらは脳梗塞や心筋梗塞の予兆としても重要なサインです。閉塞性動脈硬化症は、進行すると手や足の組織が壊死してしまい、場合によっては切断しなければならない可能性も出てくる怖い病気です。閉塞性動脈硬化症の病態と原因、予防法を知り、早期発見・早期治療につなげて行きましょう。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01閉塞性動脈硬化症とは
  2. 02閉塞性動脈硬化症のリスク因子とは
  3. 03閉塞性動脈硬化症の主な症状
  4. 04メタボリックシンドロームと動脈硬化の関係
  5. 05まとめ

閉塞性動脈硬化症とは

ここがポイント!

  • 閉塞性動脈硬化症は、「動脈硬化」が手足の血管に出現する病気
  • 手足の血管が動脈硬化により狭くなり、血流が少なくなることで症状が出現する

閉塞性動脈硬化症とは

動脈硬化という病名は、日常的によく聞くのではないでしょうか。一方で、「閉塞性動脈硬化症」という言葉に聞き覚えのない人は多いのではないかと思います。一般的にあまりなじみのない閉塞性動脈硬化症ですが、この病気は動脈硬化症によって引き起こされる「合併症」の一つであるというだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞など、初期症状の分かりにくい病気の予兆になるかもしれない重要な症状の一つでもあります。また、進行すると手足の壊死が起こってしまう可能性もある、怖い病気でもあります。まずは、閉塞性動脈硬化症はどのようなものか一緒に見ていきましょう。
閉塞性動脈硬化症とは

閉塞性動脈硬化症の原因

閉塞性動脈硬化症の原因は、脳梗塞や心筋梗塞などの原因にもなる「動脈硬化」です。動脈硬化症が心臓や脳に起きて、血栓が詰まってしまえば心筋梗塞や脳梗塞になりますし、手足の血管に発生すると、閉塞性動脈硬化症を発症します。
動脈硬化の詳しい発症メカニズムについては、動脈硬化とは |原因・危険因子・合併症などをわかりやすく解説を参照してください。ここでは、動脈硬化の中でも閉塞性動脈硬化症に関連が強い「アテローム性動脈硬化」がどのように起こるのかを説明していきます。

動脈硬化が進行するメカニズム

血管は内側から、内膜、中膜、外膜の三層構造を取っています。さらに内膜の一番内側に「内皮細胞」と呼ばれる細胞層があります。内皮細胞は血管の収縮や弛緩、血管の保護などに関わっています。この内皮細胞の隙間に「リポタンパク質」と呼ばれる、コレステロールなどの脂質とタンパク質がくっついた物質が入り込むことが動脈硬化の最初のステップになります

リポタンパク質にはLDL(低密度リポタンパク質)とHDL(高密度リポタンパク質)がありますが、LDLは悪玉コレステロールとも呼ばれ、血管に入り込みやすいリポタンパク質です。また、喫煙や高血圧により血管内皮細胞にダメージや負担がかかり続けることも、LDLが血管内膜に入りやすくなる要因の一つとなります。

血管内膜の隙間に入り込んだリポタンパク質は、もともと酸化されやすい性質である上に、血管壁に抗酸化物質がないため、血管壁で酸化されてしまいます。酸化されて性質が変化した(変性)リポタンパク質は、血管壁に炎症を引き起こし、血液中の白血球の一種である「単球」を引き寄せます。血液中の単球は血管壁に入り込むと「マクロファージ」という食細胞に変化し、酸化したリポタンパク質を食べて、脂肪の多い「泡沫細胞」になります。

泡沫細胞の一部は再び血中に入り、肝臓などで壊されますが、血管に入り込んでくるリポタンパク質が多いと、出ていく泡沫細胞よりも作られる泡沫細胞の方が多くなります。すると、泡沫細胞とリポタンパク質が溜まって、脂肪線条と言われる斑点状の部分が出来上がります。これが大きくなるとアテロームと言われる塊となって、血管壁の内側にせり出すようになります。このアテロームは、血流を阻害するだけでなく、そこから出血したり血流を乱したりして血栓ができやすい環境を作り出してしまいます。

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閉塞性動脈硬化症のリスク因子とは

ここがポイント!

  • 閉塞性動脈硬化症のリスク因子は、動脈硬化のリスク因子と同じである
  • 高脂血症・糖尿病・高血圧・喫煙などが動脈硬化のリスク要因である
  • 運動不足や喫煙は手足の血行を悪くすることで、閉塞性動脈硬化の発症に関わる

閉塞性動脈硬化症はなぜ起こってしまうのでしょうか。閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が原因で発症すると説明しました、よって、そのリスク因子も動脈硬化症とほぼ同じです。つまり、高脂血症・糖尿病・高血圧・喫煙などの生活習慣病や、加齢・性別(男性、閉経後の女性)が挙げられます。これらの病気では、動脈硬化が全身に起きやすくなるので、当然手足の血管にも同様の変化が起こりやすくなります。
それでは、動脈硬化のリスク要因を具体的に見ていってみましょう。

LDL(悪玉コレステロール)の高値

LDLは、アテロームを作り、動脈硬化を発生させる一番の原因物質です。

HDL(善玉コレステロール)の低値

HDLは、血管壁からリポタンパク質を除去する作用があります。そのため、HDLの値が低下すると、血管に溜まったLDLが除去されず、アテローム性動脈硬化が進行してしまいます。

中性脂肪の高値

中性脂肪の値が高くなると、LDLが増加し、HDLが減少する傾向にあります。中性脂肪の値は肥満、特に内臓脂肪型の肥満の人で上がりやすい傾向にあります。

糖尿病

糖尿病になると、中性脂肪やLDLの値が上がりやすくなるとともに、「AGE(終末糖化産物)」と呼ばれる物質が出来ます。これらは血管壁のダメージや血栓の出来やすさの原因になります。糖尿病の人の多くは、動脈硬化とそれによる合併症で亡くなっています。

高血圧

高血圧になると、血圧が上がる分、血管の負担が大きくなります。高血圧は動脈硬化の進行要因になるだけでなく、弱った血管からの出血を引き起こし、重大な合併症の原因になる場合もあります。

喫煙

たばこに含まれる有害物質により血管内皮細胞が傷付けられ、LDLが血管内に入り込みやすくなります。また、たばこの代表的な有害物質である「ニコチン」は、HDLを低下させる要因となります。喫煙は動脈硬化症の重大なリスクの一つだと知られています。さらに、喫煙により手先や足先(末梢)の血管が収縮し、血行不良から血栓形成を促進してしまいます。

運動不足

さらに運動不足も閉塞性動脈硬化症を起こしやすい原因の一つです。運動不足によって手足を動かす機会が減ると、手足の血流が滞りがちになり、これが閉塞性動脈硬化症の原因となります。血流が一定の速度で早く流れている部位では、血流が血管に与える「ずり応力」が高くなります。ずり応力とは、血液が血管内を流れるときに血管壁に与える力のことです。ずり応力が高い部位では血小板が粘着凝集しにくくなるので、血栓が出来にくくなります

出来た血栓はアテロームに組み込まれたり、炎症を引き起こしたりし、アテロームをさらに大きくする原因となります。動脈硬化とは少し違う病気ですが、エコノミークラス症候群も脚の血流が停滞することで血栓ができて、それが静脈に詰まってしまう病気です。手足の血行不良は、血栓症の重要なリスク因子なのです。

このように、全身的に動脈硬化が起きやすいような血液の状態に、手足の血行不良による血液循環不全が重なって、閉塞性動脈硬化症は発症します

閉塞性動脈硬化症の主な症状

ここがポイント!

  • 閉塞性動脈硬化症の症状は、重症度によって「Ⅰ期~Ⅳ期」に分類されている
  • Ⅳ期まで進行してしまうと、手足の切断が必要になる可能性がある
  • 動脈硬化の状態によって、症状や進行のスピードが変わってくる

閉塞性動脈硬化症は、手足の血管に動脈硬化が起こることで、血管が狭くなったり詰まってしまう病気です。症状は手足を中心に現れます。突然動脈が完全に詰まってしまうような急性閉塞性動脈硬化症の場合には、症状がかなり急に出てきます。一方で、徐々に動脈が狭くなり、詰まっていく慢性閉塞性動脈硬化症の場合には、症状は徐々に進行してきます。急性、慢性、どちらも重症度によってⅠ~Ⅳ期に分類されています。

Ⅰ期

初期症状、つまり最初に現れる症状です。動脈の血流が少なくなることによる「感覚の障害」、具体的には手足のしびれや冷感などがメインとなる症状です。この時点では運動神経に障害はないため、手足を動かすのに支障はありません。閉塞性動脈硬化症を引き起こしやすい糖尿病でも「末梢神経障害」という合併症による感覚異常が出る場合があるため、糖尿病患者では糖尿病による末梢神経障害なのか閉塞性動脈硬化症を起こしたのか、鑑別が難しい場合もあります。

Ⅱ期

症状が進行してくると「体を動かしたときだけ」痛みや動きに支障が出る「間欠的跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれる症状が出ます。手足を動かすと、安静にしているときに比べ、手足に10~20倍の血流が必要であると言われています。安静にしているときには、動脈硬化による血流減少があっても特に問題とならない場合でも、手足を動かすことで、血流が不十分となって痛みや足の引きずり(跛行)などを引き起こす原因になります。しばらく休むと痛みや跛行がましになるというのが間欠的跛行の特徴です

Ⅲ期

さらに症状が進行した状態になると、安静にしていても血流が不足して痛みなどが出てきます。手足の血流はさらに悪くなり、冷えや皮膚の色調の悪さも目立ってきます

Ⅳ期

さらに血流が悪くなると、組織を維持するための栄養や酸素も足りなくなってしまいます。こうなると、ちょっとした傷の治りも悪くなります。また、足の一部に傷が出来てそれが大きく深くなれば、潰瘍を形成します。さらに、大きな血管が詰まってしまい、ほぼ血流が途絶えてしまうと、手足の組織が死んでしまう「壊死(えし)」という状態を引き起こします。壊死を起こしたまま血流を回復させることができないと、手や足の切断をしなくてはならない場合もあります

このように閉塞性動脈硬化症は、重症度によって段階的に病期が分けられていますが、症状の進行のスピードは、血栓の詰まり方によって変わります。大きな血栓が一番大きい動脈に詰まってしまった場合には一気にⅣ期まで進んでしまう場合もあります。

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メタボリックシンドロームと動脈硬化の関係

ここがポイント!

  • 動脈硬化を早期に予防するために、「メタボリックシンドローム」の概念が出現した
  • メタボ改善のためには、まずは「体重5%減」を目標にしよう
  • 米国の専門機関は、毎日最低30分の運動を推奨している

加齢が大きな原因の1つである「動脈硬化」は、既に10代の頃から始まっていると言われています。ただし、重症な動脈硬化が起こらなければ、大半の人は寿命を迎えるまで動脈硬化による合併症を引き起こすことはありません。つまり、できるだけ動脈硬化を進行させないような生活を心がけることが、閉塞性動脈硬化症のみならず、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化による怖い合併症を予防するための重要なポイントとなります。

動脈硬化の進行にブレーキをかけ、生活習慣病を未然に防ぐために、「メタボリックシンドローム」という概念が誕生しました。「メタボリックシンドローム診断基準検討委員会」によるとメタボリックシンドロームの診断基準は以下の通りです。

1.ウエスト周囲径
男性≧85cm 女性≧90cmを満たしており、かつ下2~4のうち2つを満たしている。
2.高脂血症
中性脂肪(トリグリセリド=TG)≧150㎎/dl
かつ/またはHDL(善玉)コレステロール<40㎎/kg
3.高血圧症
収縮期(最大)血圧≧130mmHgかつ/または拡張期(最小)血圧≧85mmHG
4.高血糖
空腹時高血糖≧110㎎/dl

この診断基準からもわかるように、「メタボリックシンドローム」は、一人の人に同時には複数の生活習慣病(高脂血症、高血圧、糖尿病)が出現している状態です。これらの疾患は、いずれも動脈硬化のリスク因子です。メタボリックシンドロームの診断基準は、それぞれの病気の診断基準に比べると、より厳しく設定されています。なぜなら、1つの病気であれば軽症であっても他の病気を併発していることで、動脈硬化は進みやすくなるからです。

メタボリックシンドロームを改善することは、そのまま動脈硬化の進展予防につながります。メタボリックシンドロームを改善させるためには、「食事・運動療法」が大切になります。詳しくは、メタボリックシンドロームの予防・改善策について|まずは体重5%減を目指そうを参照にしてください。

食事療法については、栄養バランスに気をつけて、カロリーを取りすぎないようにすることが大切です。メタボリックシンドロームの元凶は「内臓脂肪」と言われていますが、内臓脂肪は皮下脂肪に比べて「つきやすいが落ちやすい」といわれています。日本糖尿病学会は、体重5~10%の減量により、メタボリックシンドロームの有意な改善が認められると発表しており、まずは体重5%の減少を目指しましょう

食事療法以外にも、運動もメタボリックシンドローム、動脈硬化を予防するための非常に重要です。運動は、高脂血症や肥満の予防や解消だけでなく、手足の血流を改善することで動脈硬化の進行を防ぎ、閉塞性動脈硬化症の予防につながります。

米国衛生研究所(NIH)や米国心臓病協会なども、肥満を予防するために「毎日30分以上の中等度の運動を行う」ように推奨しています。筋肉トレーニングによって筋肉量を増やし、基礎代謝を上げることで太りにくい体を作るとともに、ジョギングや水泳などの有酸素運動によっておなかに付いた内臓脂肪を落とす努力をしましょう。
もちろん、喫煙者は出来る限り禁煙すべきです。先ほど説明したように、喫煙は閉塞性動脈硬化症の非常に強いリスク要因だからです。

まとめ

動脈硬化は、本人が気付かない間にじわじわと体を蝕んでいます。同じ動脈硬化による合併症でも、閉塞性動脈硬化症は脳梗塞や心筋梗塞などと違い、段階を踏んで症状が徐々に悪化するケースが多いため、致命的な状態になる前に発見することが可能な病気でもあります。時々手足がしびれる、違和感が出るなどの気になる症状があれば、閉塞性動脈硬化症が発症している可能性もあり、早めに主治医に相談するようにしましょう。早めに発見して、早期に治療していくことで脳梗塞や心筋梗塞などの重症の合併症を予防につながります。また、手足の潰瘍や壊死など、重度の閉塞性動脈硬化症の状態まで進行して取り返しが付かない状態になるのを未然に防ぐことも出来ます。

 生活習慣と密接な関わりを持つ「閉塞性動脈硬化症」。薬に頼らなくても自分自身で予防や改善のために出来ることが多い病気でもあります。逆に何もしなければ、どんどん動脈に負担がかかり続け、後戻りできない状態まで病気が進行してしまう可能性もあります。普段から正しい生活習慣を心がけ、高血圧、糖尿病、高脂血症など動脈硬化の原因となる基礎疾患の改善を目指しましょう。

参考

ハリソン内科学
国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス
末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン
日本生活習慣病予防学会
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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