低血糖とは|眠気が生じるメカニズムなどを解説します

低血糖は、糖尿病と深い関わりがあります。糖尿病の薬物治療では、血糖値を下げる効果がある薬を使用するため、「低血糖」症状が現れるリスクが常にあります。そのため、糖尿病の方は、低血糖になったらどのような症状が出るのか、どのような対処法を取れば良いのかを事前に知っておくことが重要です。ここでは、低血糖の原因、症状、対処法などを具体的に紹介していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01低血糖になる原因とは
  2. 02低血糖になると起こる症状
  3. 03低血糖に効果的な薬はあるのか
  4. 04まとめ

低血糖になる原因とは

ここがポイント!

  • 糖尿病の「薬物治療」や「インスリン治療」などで、血糖値が下がりすぎてしまうと、低血糖を起こす
  • 「スルホニル尿素(SU)薬」と「グリニド薬」は、低血糖を起こしやすいので注意が必要

糖尿病でなくても低血糖にはなるのか

血糖値は、食事量だけではなく、運動量や体調の変化などでも変動します。しかし、健康な人が「低血糖」に陥ることは、極めて稀です。低血糖は、糖尿病の治療を受けている方によく起きる症状です。糖尿病の治療薬は、「血糖値を下げる作用」があるため、血糖値が下がり過ぎてしまい、低血糖に陥る可能性があるのです。

糖尿病の薬を飲んでいる人は要注意

先ほども説明しましたが、糖尿病の治療薬には「血糖値を下げる作用」があります。そのため、低血糖は糖尿病の薬物治療を受けている人に、よく起こる症状です。
特に、経口薬である「スルホニル尿素(SU)薬」は、膵臓に直接作用しインスリンを出しやすくする薬なので、他の経口薬と比べて、低血糖を起こしやすい特徴があります。
低血糖を防ぐためにも、糖尿病の治療薬は、医師の指示の下、用法・容量・服用のタイミングなどを必ず守りましょう。

インスリン治療をしている人も注意が必要

糖尿病の治療薬は、飲み薬だけではありません。インスリンを直接皮下に注射するインスリン治療を受けている方も、「低血糖」に注意が必要です。
インスリン注射薬は、作用時間のタイミングによって6つのタイプに分けられていますが、「超速効型」「速効型」のインスリン注射を打った後は、血糖値を下げる効果が直ぐに現れるため、直ちに食事を摂らないと低血糖を起こしてしまいます。また、中間型のインスリンを夜に注射をする場合には、夜間に低血糖を起こすリスクもあり、作用時間を調整する必要があります。
インスリン治療中に少しでも違和感や異常を感じたら、すぐにかかりつけ医に相談するようにしましょう。
低血糖になる原因

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本糖尿病協会
日本内科学会雑誌|低血糖性昏睡
高血圧症発症チェック

低血糖になると起こる症状

ここがポイント!

  • 「動悸」「発汗」「脱力」などの低血糖に起因する症状があり、少なくとも「血糖値が70mg/dL以下」の時に低血糖と診断される
  • 急激な血糖値の低下は、意識レベルが下がり昏睡状態になる危険もある
  • 低血糖を起こしたら、速やかにブドウ糖か糖分の入ったジュース・お菓子などの摂取が必要である
  • 意識障害が生じると自分での対処が困難なため、家族や周囲の人に低血糖について理解してもらい、症状が現れた際に適切な対処が取れるよう話し合っておこう

血糖値が低くなると、体に様々な症状が現れます。低血糖の症状を理解しておくことで、早期に低血糖状態に気がつき、対処する事が出来ます。ここでは、低血糖で起こりうる症状について説明していきます。

そもそもどこからが低血糖なのか

いつもより血糖値が低めだから、「低血糖」状態であるとは限りません。低血糖は、血糖値が急激に降下し「動悸」「発汗」「脱力」など低血糖症状があり、少なくとも「血糖値が70mg/dL以下」の場合に診断されると、糖尿病の治療ガイドライン2016-2017に記載されています。

低血糖により起きる症状

血糖値が正常値の範囲を超えて急速に降下すると、体に何らかの「低血糖症状」が現れることがあります。血糖値が70mg/dL以下になると、「発汗」「不安」「動悸」「頻脈」「手指振戦」「顔面蒼白」などの交感神経刺激症状が起こる場合があります。さらに、血糖値が50mg/dL程度に低下すると、「眠気」「脱力」「めまい」「疲労感」「集中力低下」などの中枢神経症状が起こりえます。脳は、ブドウ糖をエネルギー源としているため、血糖値が50mg/dL以下になると、「意識レベル低下」「異常行動」「痙攣」を起こし昏睡状態に陥る可能性があります。

<低血糖で起こりうる症状>
正常値 100mg/dL以下
低血糖(交感神経症状) 70mg/dL以下
低血糖(中枢神経症状) 50mg/dL程度
低血糖(昏睡状態になることも) 50mg/dL以下

低血糖の症状
低血糖の自覚症状は、個人差があり、先ほど紹介したような症状がまったくでない人もいます。「自律神経障害」がある場合や、繰り返し低血糖を起こしている人は、これらの自覚症状が乏しくても、意識レベルが低下してしまうこともあります。自分自身が低血糖の時にどのような症状が起こるか、少しずつ理解し対処できるようにして行きましょう。

低血糖を起こしやすい時

先ほど、低血糖の症状は個人差があると触れましたが、よく起こすタイミングも人それぞれ違います。自分自身がどのタイミングで低血糖を起こしやすいのか把握し、低血糖を起こした際に適切な対応が取れるようにしましょう。
ここでは、一般的に低血糖を起こしやすいとされている時を紹介します。

・内服薬、インスリンの使用量を間違えた、種類を飲み間違えた
・食事のタイミングが遅れた
・食事がいつもより少ない
・運動量がいつもより多い
・飲酒
・入浴

低血糖の対処法

低血糖には素早い対処が不可欠です。
いざという時のために、対処方法は必ず確認しておきましょう。

経口摂取が可能な場合

直ぐにブドウ糖(10g)または、ブドウ糖を含む飲料(150~200ml)を摂取しましょう。
ブドウ糖は、ショ糖(砂糖)などほかの糖に比べて吸収が早く、直ぐに効果が期待できるため、低血糖の対処に適しています。
ブドウ糖が無い場合、砂糖であればブドウ糖の倍量を飲む必要がありますし、甘いジュースやお菓子などでも対処出来ますが、ブドウ糖に比べると効果が出るのに時間が掛かります。低血糖対策のためにも、糖尿病の方は「ブドウ糖」を携帯しておく事が重要です。
特に、「α-グルコシターゼ阻害薬」を服用中の人は、砂糖などでは吸収がさらに遅れてしまうので、必ずブドウ糖を飲む必要があります

経口摂取が不可能な場合

意識を失ってしまうような重度な低血糖が起きて、ブドウ糖を摂取することが不可能な場合は、応急処置として、ブドウ糖や砂糖などを口唇と歯肉の間に塗り、すぐに医療機関を受診しましょう。
手元にグルカゴン(血糖を上昇させるホルモン剤)があれば、救急車を待つ間に家族などに1バイアル(1mg)注射してもらうと、血糖値が上昇し意識の回復につながります。1型糖尿病の場合は、低血糖の対処としてグルカゴン注射液を用意しておき、家族には使用方法を医療機関で教えてもらっておくと良いでしょう。

周りの人に助けてもらおう

低血糖が起きた時、いつも自分で対処出来るとは限りません。
いざという時、周りの人に助けてもらうことを考えておくことも大切です。
あらかじめ、身近な人たちに低血糖について理解してもらい、対処ができるように注射の仕方やブドウ糖の携帯場所の共有など、話し合っておくといいでしょう。

自分が糖尿病で治療中であることを知らせるための、「糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)」という物もあります。「日本糖尿病協会」から発行されていて、使用している薬や量、かかりつけ病院の連絡先などが記入出来るようになっています。このカードは無料で入手出来るので、医師に相談してみてはいかがでしょうか。

参考

[糖尿病治療ガイドライン2016-2017|日本糖尿病学会]
日本糖尿病協会

低血糖に効果的な薬はあるのか

ここがポイント!

  • こまめに「自己血糖測定」をして、低血糖を起こしていないか管理することが大切
  • 低血糖を起こしてしまったら、早急にブドウ糖を摂取するなどの対処をしましょう
  • 「DPP-4阻害薬」や「GLP-1受容体作動薬」といったインクレチン関連薬や、「SGLT2阻害薬」は、単独で使用する場合、他の治療薬より低血糖を起こすリスクが少ないとされている

「低血糖に効果的な薬」は無い

糖尿病はインスリンの働きが不十分なので、症状によっては薬を用いて血糖コントロールをする必要があります。糖尿病の薬は、血糖値を下げる作用があるので、薬物治療を受けている人にとって、「低血糖」は切っても切れない関係であると言えます。
ですから、低血糖の予防のを目的とした薬はありません。それよりも、糖尿病の治療薬の種類や量を調節しながら、血糖コントロールを行っていく事が重要です。
血糖値は常に変動していますので、食事や運動の前後などこまめに「血糖自己測定」を行う事で、自分の血糖値の変化を理解出来、血糖コントロールがより良好に出来るようになります。また、測定した血糖値はノートなどに記録しておきましょう。主治医が、薬やインスリンの調整をする際の参考になります。

低血糖を起こしにくい治療薬

糖尿病の治療薬は「血糖値を下げる作用」があると説明しました。血糖値を下げるメカニズムは薬によって異なり、その中でも「インクレチン関連薬」と「SGLT2阻害薬」は低血糖を起こしにくい治療薬であるとされています。
ここでは、それぞれの薬について見ていきましょう。

低血糖を起こしにくい治療薬

インクレチン関連薬

「DPP-4阻害薬」や「GLP-1受容体作動薬」といったインクレチン関連薬は、他の治療薬より低血糖を起こすリスクが少ないとされています。
インクレチンとは、インスリン分泌を促進するホルモンのことです。食後、血糖値が上がると小腸から分泌されるため、血糖値が低い時にはインスリン分泌を促進しません。そのため、低血糖が起こりにくい特徴があります。しかし、「スルホニル尿素(SU)薬」と併用すると、インクレチンがSU薬の効果を増大させインスリンの分泌が増えるので、低血糖に注意が必要になります。

SGLT2阻害薬

過剰な糖を尿と一緒に体外へ排出する働きがある薬です。
単独で使用する場合、極めて低血糖を起こす危険性が少ないとされています。しかし、他の糖尿病治療薬(血糖降下薬、インスリン分泌促進薬、インスリン注射)を併用する際には、低血糖への注意が必要となります。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
高血圧症発症チェック

まとめ

糖尿病の薬物治療をしている人は、低血糖に十分注意していかなければいけません。
糖尿病は、自己管理をしっかりとしていくことが大切です。ですが、何を準備したらいいのか、気をつけることは何なのか、わからない事も多いと思います。自己管理に必要な知識・対応方法などわからない事や心配な事は、担当医師や看護師から十分に指導を受け、いざという時のためにしっかり備えましょう。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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