動脈硬化の予防法とは|生活習慣の改善ポイントをご紹介

テレビやネットなどでよく目にする「動脈硬化」とは、さまざまな要因により、血管の壁が厚くなり、硬くなることで本来の機能が低下してしまう状態です。その原因として、「加齢」や「性別」など避けられない要因もありますが、生活習慣が原因となる「脂質異常」「高血圧」「高血糖」も大きく影響します。ここでは、動脈硬化の原因となるこれらの生活習慣病を予防するために、今すぐ実行出来る運動や食事について、具体例を挙げながら紹介して行きます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01動脈硬化の予防・改善方法
  2. 02運動が効果的な理由とは
  3. 03動脈硬化予防に効果的な食事の取り方とは
  4. 04たばこ、ストレスには要注意
  5. 05動脈硬化の予防は具体的な生活改善から

動脈硬化の予防・改善方法

ここがポイント!

  • 動脈硬化の主な原因は、「脂質異常」「高血圧」「高血糖」
  • 動脈硬化を防ぐために7つの食生活の習慣が推奨されている
  • 食生活と運動の両輪で動脈硬化を未然に防ごう

厚生労働省の発表によると、日本人の死因の第1位はがんですが、第2位は心臓疾患、第4位は脳血管疾患となっています。心臓疾患と脳血管疾患の大多数は、動脈硬化が原因で起こります。また、心臓疾患や脳血管疾患になると、寝たきりになったり、生活が制限されたりすることが多くなります。健康な生活を続けて行くためには、これらの病気の原因となる「動脈硬化」の予防が重要なのです。

動脈硬化(主にアテローム性の動脈硬化)は、「高血圧」や「高血糖」によって血管の壁を傷付き、そこに血液中のコレステロールが沈着し生じます。動脈硬化を防ぐには、脂質異常だけではなく、血管を傷つける原因となる高血圧・高血糖への対策も必要になります

日本動脈硬化学会は、「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイド」を公開し、私たち一人一人が自分自身の血管の健康状態を理解し、生活習慣を整えていくことの重要性を訴えています。ガイドのタイトルに含まれる「脂質異常症」とは、血中のコレステロールや中性脂肪量が異常になる病気で、動脈硬化の原因になります。

それでは、動脈硬化への対策とは、具体的にどのようにすれば良いのでしょうか?動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療ガイド2013年版では、動脈硬化を防ぐために、食生活の7つの習慣が推奨されています。

1. 朝食、昼食、夕食を規則的に取る
2. 腹八分目とする
3. 就寝前2時間は摂食しない
4. よくかんで食べる
5.まとめ食べ、ながら食べを避ける
6. 薄味にする
7. 外食は出来るだけ控える

動脈硬化予防のための食生活の7つの習慣


日本先天代謝異常学会の報告によると、日本人の約100人に1人は、遺伝的に脂質異常症を起こしやすいと考えられています。家族や親戚に、「悪玉コレステロールや中性脂肪が高い」と言われている人がいる場合には特に、普段から7つの食習慣を実践して、動脈硬化の予防を心がけましょう。

また、食生活の改善と同時に重要なのが、運動です。運動をすると、コレステロールや中性脂肪を燃やすことが出来るからです。具体的にどのような運動が効果的かは、後ほど紹介します。食生活と運動は、体質改善の両輪とも言える生活習慣です。動脈硬化の危険性が高い人は、ぜひ両方に取り組んでみるようにしましょう。

そうは言っても、7つの食生活や運動などの全ての項目について、一気に取り組み始めることはそう簡単ではないと思います。項目を一つずつクリアしていくように無理の無い目標を立てながら、生活習慣を徐々に改善していくのが、効果を得るために継続していくポイントです。

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運動が効果的な理由とは

ここがポイント!

  • 軽い有酸素運動(ウォーキング等)で、脂肪を燃焼させるのが効果的
  • まずは、1日30分歩いてみる。目標は、1日1万歩!
  • 運動は、ホルモンの働き、骨密度、脳機能を高める効果もある

動脈硬化の予防に運動が効果的な理由は、余分なコレステロールや中性脂肪を燃焼させ、体内に留まるのを防ぐ効果があるからです。では具体的に、どのような運動が効果的なのでしょうか。

日本動脈硬化学会が一般の人向けに公開しているウェブサイトでは、次のような運動が推奨されています。

1日1万歩が目標

「1日1万歩」と聞くと、「そんな時間的余裕も体力もない!」と思ってしまう人もいるかも知れません。そんな風に苦痛に感じてしまいそうな人は、自分で楽しく継続できるように工夫してみませんか。例えば、愛犬の散歩をしたり、仲間を見付けて一緒にジョギングをしたり、咲いている花を楽しみながら公園を一回りしたりするなど、工夫のしかたはいろいろあります。軽い有酸素運動が動脈硬化の予防となるので、激しい運動をする必要はないのです。まずは、楽しめるように工夫をしながら、出来る範囲でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

まずは、1日30分歩くことから

ウォーキングは、時と場所を選ばないので、運動の初心者でもすぐに始められる、手軽な運動です。運動を開始すると、先に筋肉や血液中のブドウ糖が消費されます。脂肪の消費は後回しとなっており、脂肪が消費され始めるまでには、運動開始から20分~25分程度かかると言われています。そのため、ウォーキングならば、30分以上歩くことによって初めて、脂肪を消費し始めることが出来ます。

毎日のウォーキングが難しければ、まずは週3回以上とか、1週間で合計3時間以上という風に、出来そうな範囲での目標を決めて始めてみるように推奨されています。忙しくてそれも難しいという人は、空いた時間に1回10分程度のウォーキングを何回か繰り返すだけでも、運動をしないよりは効果があると言われています。時間が無くても、まめに歩く習慣をつけるのが良いでしょう。

有酸素運動が効果的

有酸素運動が効果的な理由は、ゆっくりと多くの酸素を取り込むことによって、より多くの脂肪を燃焼させることが可能だからです。特に、太ももの筋肉やお尻の筋肉などの「大きな筋肉」を大きく動かすようにして運動するのが、効果を十分に得るポイントです。例えば、早歩き、水中運動、サイクリング、ラジオ体操、スロージョギング(歩く速さ程度のゆっくりとしたジョギング)がオススメです。

適度な運動強度の目安は、「いつもよりやや早く歩いている感覚で、ちょっと息が弾むけれども笑顔でいられる程度」です。「5分程度で汗ばむ」「10分程度で軽くすねに筋肉痛を感じる」なども良い目安です。

こうした軽い有酸素運動により、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らすことができます。軽い有酸素運動の効果はそれだけでなく、他にもインスリンと呼ばれる血糖値を下げるホルモンの働きを高めたり、ストレスを解消し、骨密度や脳機能を高めたりする効果もあります。また運動は、動脈硬化性疾患(狭心症や心筋梗塞など)の予防だけでなく、メタボリックシンドロームの改善にも効果があります。

動脈硬化予防には有酸素運動が効果的


動脈硬化予防に効果的な食事の取り方とは

ここがポイント!

  • 動脈硬化の予防には、伝統的な日本食がおすすめ
  • 食べ過ぎを控え、肥満を防止しよう
  • コレステロールや飽和脂肪酸を摂り過ぎないように気を付けよう
  • 食物繊維を十分に取ろう

動脈硬化予防への対策の一つに食生活の改善が挙げられます。基本的には、伝統的な日本食が、動脈硬化疾患の予防に有効と言われています。ここでは、日本動脈硬化学会で推奨されている、良い食習慣のポイントを紹介します。

食べ過ぎない

肥満は、脂質異常・高血圧・高血糖など多くの動脈硬化の原因につながります。そのため、食べ過ぎは控えるようにしましょう。動脈硬化予防のために、目標にすべき1日の摂取エネルギー量は、次の式で計算出来ます。

1日の目標エネルギー摂取量(kcal)= 標準体重(kg)×25〜30(kcal)

例えば、体重50kgの人ならば、1日の摂取エネルギー量は、1250〜1500(kcal)程度が適切ということになります。ぜひ参考にしてみてください。

ショートケーキ1個は約300kcalもありますが、食物繊維が多く含まれている野菜や海藻は、カロリーも少なく、悪玉コレステロール値を下げる効果もあるので、多めに取るように心掛けると良いでしょう。

もちろん、体重、年齢、日々の運動量、糖尿病などの持病等の条件によって、1日に必要な栄養の量は一人一人異なります。食事の始めに季節の生野菜を、ドレッシング無しで食べたいだけ食べるなど、自分に合った方法で、摂取カロリーのコントロールを続けていってみましょう。食塩やアルコールも取り過ぎないように気を付けましょう。

コレステロールや飽和脂肪酸を過剰摂取しない

「飽和脂肪酸」を多く含む肉、卵、乳製品、菓子類などの取り過ぎは、控えるように推奨されています。なぜなら、飽和脂肪酸は常温では固体で存在し、温度が高くないと溶けないため、体内で固まりやすいからです。また、飽和脂肪酸は、中性脂肪やコレステロールを増加させる作用もあるので注意が必要です。

一方で、魚などに含まれる「不飽和脂肪酸」は、多く摂取するように推奨されています。ただし、魚の卵や内臓などはコレステロールが高いので、取り過ぎには注意が必要です。飽和脂肪酸とコレステロールの含有量が少ない低脂肪乳は、普段取りたい飲料として推奨されています。一方、バター、ラード、ココナッツ油は飽和脂肪酸が多いため、取りすぎには注意が必要です。
コレステロールや飽和脂肪酸を過剰摂取しないようにしよう

食物繊維を十分に取る

食物繊維は、コレステロールの排泄を促す作用があります。大豆製品、海藻、野菜類など食物繊維を豊富に含む食べ物は、積極的に取るようにしましょう。1日の摂取目安量は、生野菜なら両手に山盛り、加熱した野菜なら片手に山盛りです。
また、穀類では、白米よりも玄米、七分づき米、雑穀類が推奨されています。パンであれば、白パンよりも全粒穀パンなどの方が、食物繊維が多く含まれるために推奨されています。ただし、腎臓病の人は、野菜類の摂取から、カリウムの過剰摂取にならないように注意が必要です。

その他

また、病気の治療のために薬を飲んでいる人は、薬と食物との相互作用に注意が必要な場合もあります。例えば、脳卒中予防などのためにワルファリンカリウム(ワーファリン)という血液をサラサラにする薬を内服している人は、ビタミンKを多く含む納豆、青汁、海草類の摂取は控えるように注意します。

高血圧症発症チェック

たばこ、ストレスには要注意

ここがポイント!

  • 喫煙は、血管内皮細胞を傷つける
  • 喫煙は、血糖値の調節を障害する
  • 喫煙は、脂質量の調節を障害する
  • 喫煙は、血液の凝固を促進する
  • ストレスは、高血圧や高血糖の引き金となる

動脈硬化とは、動脈の血管壁に悪玉コレステロールが溜まることにより、血管壁が厚く硬くなり、血液が通りにくくなるなど、本来の機能が低下する状態です。動脈硬化が悪化すると、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気の原因となります。

JACC (米国心臓病学会誌)に掲載された研究によると、喫煙は、動脈硬化を促進し、動脈硬化性疾患のリスクを高めることが報告されています。日本人9万5,000人を対象として10年間の追跡調査を行ったところ、喫煙者は非喫煙者に比べて心臓疾患全体の死亡リスクが1.6〜2.0倍に上がっていました。また、脳卒中も、喫煙者の方が1.4〜2.0倍、リスクが上がります。脳卒中の中でも「くも膜下出血」の原因の約3割は、喫煙であるとされています。

喫煙により動脈硬化が促進されるメカニズムには、次の4つが挙げられます。

喫煙が動脈硬化を悪化させる理由

血管内皮細胞が傷つく

たばこの煙に含まれる一酸化炭素は、血管を広げる物質の産生を低下させます。そのため、喫煙をすると血管が狭くなり、血管内皮細胞が傷つけられます。さらに、喫煙すると体に「酸化ストレス」という有害な作用が生じます。すると、悪玉コレステロールは性質が変わり、マクロファージと呼ばれる免疫細胞によって食べられます。悪玉コレステロールを食べたマクロファージは泡沫(ほうまつ)細胞となります。泡沫細胞は、血管内皮細胞を破壊し、動脈硬化の原因となります。

血糖値の調節障害

血管が傷付きやすくなる高血糖状態は、動脈硬化の原因になると先ほどお話ししましたが、たばこを吸うと、アドレナリンなどのストレスホルモンの分泌が高まり、血糖値が上昇します。また、たばこの有害成分は、膵臓のβ細胞を傷害して、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を低下させます。たばこを吸うと、このように血糖値の調節が障害され、動脈硬化の原因となります。

脂質量の調節障害

体内の善玉コレステロール、悪玉コレステロール、中性脂肪などの脂質量のバランスが崩れると、動脈硬化になりやすくなります。喫煙は、悪玉コレステロールや中性脂肪を増加させ、善玉コレステロールを減少させる作用があります。そのメカニズムの1つとして、喫煙により、脂質を分解する酵素(リポプロテインリパーゼ)の働きが弱くなることが挙げられています。

血液の凝固を促進

たばこに含まれる有害物質の「ニコチン」によって血液を固まらせる成分である血小板が凝集しやすくなり、血栓が出来やすくなります。血栓は、血流が悪くなり、高血圧を起こし、動脈が傷つく原因となります。

喫煙に並び、動脈硬化を促進する重要な原因として「ストレス」が挙げられます。
心理的ストレスは、血液や血圧をコントロールしている交感神経を活性化します。また、ストレスは、煙、飲酒、睡眠不足など、生活習慣の乱れを引き起こします。ストレスによりこのような状態が続くと、結果的に、高血圧や高血糖状態が引き起こされます。
裏を返せば、心理的ストレスを溜め込まないことは、交感神経の働きの安定化や生活習慣の改善につながり、引いては高血圧や高血糖の予防につながります。このように、ストレス管理も動脈硬化予防にはとても重要なのです。

動脈硬化の予防は具体的な生活改善から

ここがポイント!

  • 年を取ると血管が老化するため、よりダメージを受けやすくなる
  • 喫煙者や高血圧、糖尿病、脂質異常症を合併している人は、生活習慣の改善がより重要
  • 食事の改善と運動で動脈硬化の改善効果が得られなかった人は、薬物治療の適応になる

動脈硬化は、血中のコレステロールや中性脂肪量の異常が原因で起こりますが、血管の壁を傷付ける原因は、高血圧や高血糖の状態です。そのため、動脈硬化を防ぐには、高血圧・高血糖への対策も必要です。

高血圧になると、普通の人の2〜3倍、心筋梗塞を起こしやすくなります。逆に、血圧が正常値に近いほど、心臓病や脳卒中になりにくいと日本高血圧学会から報告されています。

「血圧」は、心臓から全身に血液が送り出されるときに動脈の血管の壁にかかる圧力です。年を取ると血管も老化し、傷付いたり固くなったりしてきます。そのような状態の血管で、若い頃と同じように全身に血液を送るためには、血圧を上げる必要があります。そのため、年を取ると血圧が上がる人が多いのです。
老化した血管の内側は傷が多く、血管壁に悪玉コレステロールが溜まりやすくなり、血液の通り道が狭くなってしまう、つまり「動脈硬化」になってしまうわけです。

若い頃から高血圧気味の人、喫煙する人、脂質異常症や糖尿病を合併している人、内臓肥満を伴っている人は、老化との相乗効果でさらに動脈硬化になりやすくなります。脳や心臓の血管は、壁が薄く詰まりやすいため、特に脳卒中や心筋梗塞が起こりやすくなります。このような人たちは、高血圧や高血糖を予防するために、先ほどお話ししたような食生活の改善、運動の習慣化、禁煙、ストレスを溜め込まないことなどが、より重要となります。

食事の改善や運動を3カ月から半年くらい続けても、動脈硬化の改善効果が見られなかった人の場合、医師の判断により、危険度に応じて薬を飲み始める場合もあります。また、再発を予防する目的で、生活習慣の改善に加えて薬が出されることもあります。

薬による治療も選択肢の一つではありますが、基本は食事の改善と運動を中心とした生活習慣の改善となります。一般的に、動脈が傷んで来るのは40歳代からと言われています。今日からでも、食事や運動を中心とした生活習慣の改善を、出来るところから始めることによって、動脈硬化を予防する一歩を踏み出しましょう。


動脈硬化を予防するための生活改善

参考

動脈硬化の病気を防ぐガイドブック|日本動脈硬化学会
Kannel WBet all.Smoking and hypertension as predictors of cardiovascular risk in population studies. 1990
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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