動脈硬化のなりやすさ「動脈硬化指数」とは | 悪玉コレスステロールと善玉コレステロールの役割を徹底解説

「コレステロール」という言葉を聞くと、「健康に悪い」といった漠然としたイメージを持っている方も多いと思います。では、実際にコレステロールとは何なのでしょうか。コレステロールには、「善玉コレステロール」と「悪玉コレステロール」があることが知られています。この善玉と悪玉の割合が、動脈硬化のなりやすさの指標になっており、計算された数値は「動脈硬化指数」と呼ばれます。ここでは、「動脈硬化指数」の計算方法やその意義について、解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01健診の血液検査結果から動脈硬化の「なりやすさ」が分かる
  2. 02善玉コレステロール(HDL)の役割とは
  3. 03悪玉コレステロール(LDL)はなぜ「悪」なのか
  4. 04動脈硬化指数を計算してみよう!
  5. 05動脈硬化を予防するためには、生活習慣の改善が重要
  6. 06まとめ

健診の血液検査結果から動脈硬化の「なりやすさ」が分かる

ここがポイント!

  • 血液検査でコレステロール量が分かる
  • 現在「総コレステロール量」は動脈硬化の危険度診断に用いない
  • コレステロールには、HDL(善玉コレステロール)とLDL(悪玉コレステロール)がある
  • 動脈硬化の原因の一つは、血管壁に沈着する悪玉コレステロール

健康診断の血液検査項目のうち、動脈硬化に関する項目はどれなのでしょうか。動脈硬化に関する重要な血液検査項目は、「総コレステロール」「HDLコレステロール」「LDLコレステロール」などです。コレステロールは、細胞の外側を覆う「細胞膜」を構成している成分の1種です。また、ホルモンを作ったりするためにも必要とされる物質で、肝臓で作られます。
「総コレステロール」とは、文字通り、コレステロールの総量を意味しています。従って、総コレステロールには、体に良い効果をもたらすHDLコレステロール(善玉コレステロール)と体に悪い効果をもたらすLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の両方が含まれています。

総コレステロールの値が大きいということは、善玉コレステロールと悪玉コレステロールのどちらか、あるいは両方が増えているということを意味します。善玉が増えても問題はないですが、悪玉が異常に増えると動脈硬化を進行させる危険性が高まります。

2007年以前は、この総コレステロールの値から、動脈硬化の危険度を判定していました。ところが前述のように、総コレステロールには、善玉コレステロールと悪玉コレステロールの両方が含まれているので、実際にこの値だけから動脈硬化の危険度を測るのは難しかったのです。

そこで2007年以降、特定健診の必須項目などから「総コレステロール値」が削除されました。現在は、総コレステロールのかわりに、血液検査項目では「悪玉コレステロール」の量が、動脈硬化の危険度判定に用いられるようになりました(2007年度版 動脈硬化性疾患予防ガイドラインの改定による)。

では、動脈硬化は、どのような仕組みで起きるのでしょうか。下の図に示すように、まず、血管の内側に並んでいる「内皮細胞」が傷つき、その一つ外側の筋細胞の層の間に、悪玉コレステロールが入り込み沈着します。それにより、血管の内径が狭くなります。血液の通り道が狭くなると、血流が減少したり、「血栓」が出来やすくなります。

動脈硬化になると、血管壁が柔軟性に欠けて固くなるため、高血圧などで強い圧力がかかった場合に、血管が破れやすい状態となります。この動脈硬化症状によって、各臓器への酸素や栄養分の供給、各臓器からの二酸化炭素や老廃物の回収が障害され、生命維持に必要な物質や有害物質の運搬が妨げられる「循環障害」が引き起こされることになります。

このように、悪玉コレステロール量の異常な増加は、動脈硬化の進行の原因になります。ただ、悪玉コレステロールの量「だけ」が、動脈硬化のなりやすさを決定するわけではありません。次の章では、悪玉コレステロール以外に動脈硬化のなりやすさの決定に関わっている、善玉コレステロールの働きについて見て行きましょう。

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善玉コレステロール(HDL)の役割とは

ここがポイント!

  • 善玉コレステロールが少なくなると、動脈硬化になりやすい
  • 善玉コレステロールが多いと、血管壁に沈着した悪玉コレステロールが回収され、動脈硬化の予防につながる
  • 生活改善を軸にした食事療法や薬物療法で、善玉コレステロールを増やすことが出来る

悪玉コレステロール量の異常な増加は、動脈硬化の進行の原因になると説明してきました。では、善玉コレステロールは一体、どのような働きをしているのでしょうか?実は、動脈硬化になりやすくなる原因として、「善玉コレステロールが少ない」ことが挙げられます。日本動脈硬化学会は、2007年の動脈硬化性疾患予防ガイドラインにおいて、動脈硬化のリスクが上がる基準として、「善玉コレステロールが40mg/dLより少なくなること」と定めています。

どうして善玉コレステロールが少なくなると、動脈硬化になりやすくなるのでしょうか?先ほど説明したように、コレステロールは、体の各組織で細胞膜を構成したり、ホルモンを作ったりすることに用いられます。肝臓で作られて各組織へ送られるコレステロールのうち、細胞に使われず、血管壁に沈着したコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれます。

一方、善玉コレステロールは、体の各組織で使われて余ったコレステロールを肝臓に戻す働きをしています。つまり、善玉コレステロールが多いと、血管壁に沈着した悪玉コレステロールが肝臓に回収されることになり、動脈硬化の予防につながるわけです。

善玉コレステロールの値が基準値よりも低い場合は、「低HDLコレステロール血症」と呼ばれ、動脈硬化が進んで、狭心症や心筋梗塞を起こしやすくなります。HDLコレステロールが35mg/dL以下の場合、50mg/dL以上の人より、2倍以上心筋梗塞になりやすい、という研究データも報告されています。

前述したように、善玉コレステロールの正常基準範囲は、40mg/dLとガイドラインにより定められていますが、心筋梗塞のなりやすさの研究データを考えると、出来れば50mg/dL以上欲しいところです。

反対に、善玉コレステロールの値が基準値よりも高い場合は、動脈硬化が進みにくいため、心筋梗塞や脳卒中が起こりにくく、長生きする人が多いこともわかっています。

善玉コレステロールを増やすには、どうすればいいのでしょうか。大豆、トマト、青魚などに善玉コレステロールを増やす成分が豊富に含まれていることが分かっています。また、アルコールも善玉コレステロールを増やしますが、体に良いのはあくまでも適量までです。食事だけで善玉コレステロールを増やすには限界があるので、善玉コレステロールを増やすには、禁煙、運動、肥満の解消などの総合的な対策が必要となります。

このような対策をしても善玉コレステロール量が低いまま改善されない場合には、薬による治療を受ける場合もあります。多くの脂質低下薬は、善玉コレステロールを上げる作用が あり、特に現時点で使われている薬では、ニコチン酸、フィブラート、スタチンの一部が挙げられます。ただし、これらの薬も善玉コレステロールを劇的に増やすわけではなく、生活改善を行うことを前提とした上で、補助的に使われる薬とされています。また、善玉コレステロール値を上げるだけではなく、悪玉コレステロール値を下げたり、血圧をしっかりコントロールするなどの、複合的な管理が健康維持には重要になります。

悪玉コレステロール(LDL)はなぜ「悪」なのか

ここがポイント!

  • 悪玉コレステロール値140mg/dL以上が脂質異常症
  • 悪玉コレステロール値は直接測定することもできるが、計算で求めることも可能
  • 悪玉コレステロールが多いから危険、善玉コレステロールが少ないから危険、とは一概に言えない

血管壁に沈着した悪玉コレステロールは、動脈硬化の原因になります。それでは、実際に悪玉コレステロール値がどれくらいだと動脈硬化になるのでしょうか。具体的な診断の基準値を見てみましょう。

日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年版)においては、悪玉コレステロール量140mg/dL以上が、動脈硬化の進行度合を診断する脂質異常症の基準値と定められています。また、120 mg/dL以上139 mg/dL以下は「境界域」、つまり注意領域と定められています。先ほども説明しましたが、総コレステロールの代わりに、悪玉コレステロールの基準値が定められたことは、2007年以降の大きな変化と言えます。

2007年4月、日本動脈硬化学会によって、血液中の脂肪量の異常を表す病名が、「高脂血症」から「脂質異常症」に改められました。血液中の脂肪の異常状態は次の3つの項目に分けられ、動脈硬化性疾患の選別に用いられます。

1. 悪玉コレステロールが多いこと
2. 善玉コレステロールが少ないこと
3. 中性脂肪が多いこと

冒頭でも述べましたが、総コレステロール量には、善玉コレステロールと悪玉コレステロールが含まれています。そのため、悪玉コレステロールは多くないのに善玉コレステロールが多いことにより、総コレステロール量が多いと診断され、治療が行われていたケースも以前はありました。現在は、健診の必須項目から「総コレステロール値」が削除されているのでこのようなことはありません。

では、悪玉コレステロール値の求め方を見てみましょう。悪玉コレステロール値は、直接測定される場合や、以下の計算式を用いて求められます。

悪玉コレステロール値 = 総コレステロール値 – 善玉コレステロール値 – 中性脂肪の値×0.2

この式からも、総コレステロール値には、善玉コレステロール値と悪玉コレステロール値と中性脂肪の値が含まれていることが理解できます。

また、動脈硬化のなりやすさの指標となる上の3つの項目の基準値は、以下のとおりです。

1:悪玉コレステロールが140mg/dL以上(高LDLコレステロール血症)
2:善玉コレステロールが40mg/dL未満(低HDLコレステロール血症)
3:中性脂肪が150mg/dL以上(高トリグリセライド血症)

このように、動脈硬化のなりやすさには、悪玉コレステロールの量だけでなく、善玉コレステロールや中性脂肪の量も関わっています。最近の研究では、悪玉コレステロールが140mg/dL未満の人でも急性心筋梗塞で倒れるケースが少なくなく、また、善玉コレステロールが多い人でも動脈硬化性疾患を起こす例があると報告されています。つまり、悪玉コレステロールが多いから危険、善玉コレステロールが少ないから危険、とは一概に言えない、ということが分かっています。

それでは、より正確に動脈硬化のなりやすさを判断するためにはどのような指標を基準にすれば良いでしょうか。次の章では、動脈硬化のなりやすさの指標である「動脈硬化指数」について紹介します。

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動脈硬化指数を計算してみよう!

ここがポイント!

  • 動脈硬化指数の計算式は、2007年のガイドライン改訂で変更された
  • 動脈硬化指数とは、善玉コレステロール量に対する悪玉コレステロール量の比率(LH比)である
  • 動脈硬化指数は2.0以下に、糖尿病や高血圧などの方は1.5以下に抑えることが推奨されている

前章で、動脈硬化のなりやすさには、悪玉コレステロールの量だけでなく、善玉コレステロールや中性脂肪の量も関わっているということを説明しました。ここでは、より正確に動脈硬化のなりやすさを判断するために、専門医により提唱された動脈硬化指数について説明をしていきます。

2007年以前は、動脈硬化指数は以下の式で求められていました。
動脈硬化指数 (2007年以前)
=(総コレステロール量 − 善玉コレステロール量)÷ 善玉コレステロール量

2007年のガイドラインの改訂によって、総コレステロール量に代わって、悪玉コレステロール量が直接測定されるようになり、計算式が次のように変更されました。

動脈硬化指数(2007年以降)
= 悪玉コレステロール量 ÷ 善玉コレステロール量

見て分かるように、2007年以前に比べ、より簡単に求められるようになりました。

現在用いられている動脈硬化指数とはつまり、善玉コレステロール量に対する悪玉コレステロール量の比率を表し、LDL/HDL比(LH比)と呼ばれます。例えば、悪玉コレステロール量が120 mg/dL、善玉コレステロール量が60 mg/dLだと、動脈硬化指数(LH比)は、2になります。動脈硬化指数が低ければ低いほど、動脈硬化になりにくいということになります。

動脈硬化指数の考え方では、善玉コレステロール、あるいは悪玉コレステロールの絶対量だけから動脈硬化のなりやすさを判断するのではなく、善玉コレステロール量と悪玉コレステロール量の比率から動脈硬化のなりやすさを判断する、というわけです。絶対量ではなく比率で判断する「動脈硬化指数」が提案された背景には、悪玉コレステロール量が基準値以下であっても、心筋梗塞を発症している例があったことが挙げられます。

動脈硬化指数が2.0以上になると血管内の悪玉コレステロールの塊が大きくなり、動脈硬化指数が1.5以下になると塊が小さくなるという研究報告があります。この研究結果を踏まえて、動脈硬化指数を2.0以下に抑えるように推奨されています。ただし、糖尿病や高血圧などの動脈硬化の危険因子を持っている人は、さらに厳しく、動脈硬化指数を1.5以下に抑えるように推奨しています。つまり、悪玉コレステロール量を善玉コレステロール量の2.0倍あるいは1.5倍以下にしましょう、ということになります。

もし、善玉コレステロール値と悪玉コレステロール値が両方基準値内であったとしても、善玉コレステロール値が下限一杯、悪玉コレステロール値が上限一杯だと、動脈硬化指数 = 悪玉コレステロール値÷善玉コレステロール値なので、動脈硬化指数は大きくなってしまいます。

最近では、健診や人間ドッグの検査データにも、動脈硬化指数が載るようになりました。一方で、医療機関によっては、善玉コレステロールと悪玉コレステロールの量だけを載せている場合もあります。そのような場合は、上で紹介した式を使って動脈硬化指数を計算してみてください。自分で簡単に動脈硬化のなりやすさを知ることが出来ます。

動脈硬化を予防するためには、生活習慣の改善が重要

ここがポイント!

  • 動脈硬化の原因は、脂質異常だけではない
  • 高血圧、糖尿病も動脈硬化の原因になる
  • 脂質異常・高血圧・高血糖の対策には、まず食事内容の改善と適度な運動の継続が大切

動脈硬化は、善玉コレステロール値と悪玉コレステロール値の異常が原因だと説明してきました。しかし、それだけではありません。メタボリックシンドロームの診断基準にも含まれているように、「高血圧」や「高血糖」状態も、動脈硬化のリスク因子になります。脂質異常、高血圧、高血糖の状態が合併していると、動脈硬化の進展が一層早くなります。これらは、いずれも食生活を気をつけたり、適度な運動を取り入れるなどの生活習慣を見直すことで、改善することができます。
では、具体的にどのようにすれば良いでしょうか。
一つは、食事に気を配ることです。以下に、日本動脈学会で推奨されている、食事のポイントについてまとめました。

<食べ過ぎない>

太ることにより高血圧となるため、食べ過ぎは控えた方がよいでしょう。肥満を解消するには、エネルギー摂取量(kcal)= 標準体重(kg)×25〜30(kcal)を目指すように推奨されています。

<コレステロールや飽和脂肪酸を過剰摂取しない>

飽和脂肪酸を多く含む肉や卵、乳製品、菓子類の取り過ぎを控え、魚類などから不飽和脂肪酸の摂取を増やすことが推奨されています。ただし、魚の卵や内臓など、コレステロールの高い食物の取り過ぎには注意が必要です。

<食物繊維を十分に摂る>

食物繊維は、コレステロールの排泄を促します。そのため、大豆製品、海藻、野菜類など食物繊維を豊富に含む食物を積極的に取ると良いでしょう。生野菜なら両手に山盛り、加熱した野菜なら片手に山盛りが一日摂取量の目安です。ただし、腎臓病の人は、野菜類の摂取によるカリウムの過剰摂取にならないように注意が必要です。

<その他>

この他にも、食塩やアルコールの過剰摂取を控えることが推奨されており、伝統的な日本食が、動脈硬化疾患の予防に有効と言われています。

また、薬物療法を行っている人は、食物との相互作用に注意する必要があります。「ワーファリン」などの血液をサラサラにする薬を内服している人は、ビタミンKを多く含む納豆や青汁、海草類の摂取は控えた方が良いとされています。

また、毎日の適度な運動は、狭心症や心筋梗塞の予防になります。特に、大腿筋や大臀筋などの大きな筋肉を動かす有酸素運動(早歩き、水中運動、サイクリング、ラジオ体操)が推奨されます。
食事や運動を中心に、日ごろから生活習慣の改善を心がけ、動脈硬化指数を低く抑えて、動脈硬化を予防していきましょう。

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まとめ

ここでは、悪玉コレステロールと善玉コレステロールのそれぞれの役割と、それらの比である「動脈硬化指数」について説明しました。健康診断で、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの値を調べている人は、自分の「動脈硬化指数」をぜひ計算してみてください。年々増加している方は、一度自分の食事や運動などの生活習慣を見直してみるといいでしょう。

参考

動脈硬化疾患予防ガイドライン 2007年版(日本動脈硬化学会)(pdf資料)
日本動脈硬化学会
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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