たばこの害とは|喫煙者は必ず知っておきたい健康被害のメカニズム

たばこは、「百害あって一利なし」といわれており、体に悪いことは誰もが知っている事実です。しかし、たばこには依存性があるので、体に悪いとは分かっていてもなかなか禁煙出来ない人も多いのではないでしょうか。たばこは、がんや心筋梗塞、脳梗塞などの深刻な病気を引き起こす原因にもなります。また、生活習慣病は、喫煙や飲酒などの日常の習慣と密接に関わっています。このように、喫煙が体に害を及ぼすことは、医学的にも証明されています。今回は、たばこが体にもたらす害について解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01たばこにはどんな有害物質が含まれているのか
  2. 02喫煙者よりも周囲の人の方が危険
  3. 03たばこが妊婦に与える健康被害
  4. 04たばこを吸っているとがんになりやすい
  5. 05肺がんとはどのような病気か
  6. 06たばこが引き起こすさまざまな病気
  7. 07まとめ

たばこにはどんな有害物質が含まれているのか

ここがポイント!

  • たばこには約70種類もの発がん性物質が含まれている
  • たばこの三大有害物質は「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」

厚生労働症の平成26年「国民健康・栄養調査」によると、現在習慣的に喫煙している者の割合は。19.6%でした。性別でみると男性32.2%、女性8.5%で、特に男性に喫煙者が多いことがわかります。禁煙外来の設置や分煙化が進む現代であっても、約5人に1人は喫煙者であるとわかります。

たばこの煙の中には、約数千種類の化学物質が含まれています。その中には、ダイオキシンといった「有害物質」が約200種類、「発がん性物質」が約70種類含まれています。これらのうち、たばこの三大有害物質といわれているのが、「ニコチン」「タール」「一酸化炭素」です

ニコチン

ニコチンは、依存症を引き起こす原因になる物質です。「依存症」とは、たばこを吸いたい気持ちが治まらずにたばこをやめられない状態です。ニコチンは肺に入ると、数秒で脳にまで届きます。ニコチンには、常に脳細胞がニコチンを求めるようにする働きがあります。それにより、たばこを辞めたいと思ってはいても、脳自体がニコチンを欲しがっているので欲求に勝てずなかなか止めることができないのです。また、脳だけでなくニコチンは肺から吸収され全身に広がります。
末梢血管を収縮させて、血圧を上昇させ、心臓に負担をかけてしまいます。これが、続くことで動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中、狭心症を起こしやすくなります。

タール

タールは1つの物質の名称ではありません。たばこのフィルター部分につく茶色の「ヤニ」のことです。歯や部屋の壁が茶色く変色してしまうのも、この「ヤニ」が原因です。
タールには、発がん性物質が数十種類も含まれています。代表的なものは、「ベンツピレン」「アミン類」「NNK」と呼ばれる発がん性物質です。

一酸化炭素

酸素は血液中のヘモグロビンという成分に結びついて、体中の細胞に運ばれています。一酸化炭素は、酸素よりもヘモグロビンと結びつく力が約200~250倍程度あるといわれています。そのために、酸素がヘモグロビンと結びつくのを阻害してしまい、体が酸欠状態になってしまうのです。

喫煙者の体はこれらの有害物質や発がん性物質を、継続的に取り入れているのです。
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喫煙者よりも周囲の人の方が危険

ここがポイント!

  • 主流煙よりも副流煙の方が、有害物質が多い
  • たばこの煙には「主流煙」「副流煙」「呼出煙」がある
  • たばこは、周囲の人も健康被害を受ける

たばこは、吸っている本人だけでなく、周りの人にも影響を与えてしまいます。たばこの煙は、吸っている人の口を通して吸い込まれるものを「主流煙」といい、煙草の点火部分から立ち上る煙を「副流煙」といいます。

この「副流煙」には、「主流煙」よりも多くの有害物質が含まれているのです。主流煙は、フィルターを通して吸い込むために、刺激も少なくなっています。それに比べて、副流煙はフィルターを通っていないので、有害成分の濃度が高くなってしまうのです。喫煙者の周りにいる人たちは、この副流煙を吸ってしまうので、喫煙者と同じく健康被害を受けてしまいます。厚生労働省によると、副流煙の有害物質は、ニコチンやタールで数倍、アンモニアでは数十倍になるともいわれており、発がん性物質も副流煙の方が多いことが分かっています。
副流煙を吸い込むことを「受動喫煙」といいます。
受動喫煙をしてすぐにでる症状には、心拍数が増える、咳き込む、目や喉にしみて痛むなどがあります。喫煙者と同じで受動喫煙も長期的に続けていると、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などのリスクが高まります

両親が喫煙する家庭では、両親が喫煙しない家庭に比べて、気管支炎になる確率が上昇します。家族の中で誰も喫煙しない家庭に比べ、受動喫煙をする人は肺がんになる確率が30%上昇すると言われています。受動喫煙を避けることは、人によっては難しいことかもしれません。最近では、飲食店などでも分煙(喫煙席と禁煙席を分けること)が進んでいます。飲食店では、禁煙席を選ぶ、喫煙をしている人には近づかないなど受動喫煙を避けるように気をつけましょう。

たばこが妊婦に与える健康被害

ここがポイント!

  • たばこの煙は胎児にも影響をあたえる
  • たばこの煙は低出生体重児や奇形児が生まれる原因になる
  • 経口避妊薬を飲むときは必ず禁煙をしよう

妊婦に与える健康被害

たばこの煙は、妊婦やお腹の中の赤ちゃんにも影響を与えます。
妊娠をしているのにたばこを吸っていたり、家族にたばこを吸っている人は周りにいないでしょうか。妊婦が喫煙すると胎児の器官形成に影響を与えます。特に、妊娠5週から10週までは「器官形成期」とよばれ胎児の器官形成が行われる非常にデリケートな時期になります。この時期にたばこの有害物質に、胎児がさらされると奇形を誘発します。

タバコに含まれる「ニコチン」や「一酸化炭素」は母体を通った後、胎盤を通って胎児の体に入ります。そのためタバコに含まれるニコチンや一酸化炭素などの化学物質も胎児に影響を与えます。喫煙する妊婦からは、奇形を伴った胎児や低出生体重児が生まれやすく、流産や早産が起こる頻度も高くなります
最近では、タバコの箱にも妊婦が喫煙を行うことのリスクが書かれていることも多いです。妊娠したらタバコを吸うことを控え、受動喫煙も避けましょう。そうすることで、出産に伴うリスクを減らすことができます。

妊婦だけではなく、「経口避妊薬」を飲んでいる女性もたばこは要注意です。経口避妊薬には副作用として、「血栓症」があります。数十万人に1人程度の稀な副作用ですが、命に関わる危険なものです。そのため、経口避妊薬は、35歳以上で1日15本以上たばこを吸う人への処方は薦められていません。経口避妊薬と喫煙が両方揃うことで、さらに「血栓症」のリスクを高めてしまうからです。

血栓症とは

血栓症とは、血管内に血栓という血の塊ができ、臓器に血流が届かなくなるために生じる病気のことです。経口避妊薬を服用することで生じる血栓症として心配されるのは、「深部静脈血栓症」という病気です。
足の太い静脈の血流が悪くなり、血液の塊ができて血管がつまってしまう病気です。この状態では命に関わることはありません。しかし、この血液の塊が、何かの拍子に血流にのって心臓まで流れ、その先の肺の動脈まで到達し、肺動脈がつまってしまうと「肺塞栓(はいそくせん)」と呼ばれる、命に関わる状態になってしまいます
「肺塞栓」は、肺の血管がつまり肺で酸素を受け取ることができなくなってしまう、命に関わる危険な病気です。

肺塞栓が、航空機で長時間旅行するときに発生した場合には「エコノミークラス症候群」とも呼ばれます。長時間同じ姿勢で座る場合には、下肢に血栓ができやすくなりますから定期的にトイレにいったり足を動かしたりして予防しなければなりません。近年では、災害時に車内で避難生活を送る人の中にもこのエコノミークラス症候群で亡くなった人がいます。ただ、座っているだけなのにと思うかたもいると思いますが、自分で思っているよりも血栓はできやすいのです。

稀な副作用であっても、命の危険があるものですから、経口避妊薬を飲む場合は必ず禁煙するようにしましょう。また、本数が少なくてもたばこを吸っているうちは経口避妊薬を飲むのは控えた方がいいでしょう。

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たばこを吸っているとがんになりやすい

ここがポイント!

  • 喫煙者は非喫煙者に比べてがんになるリスクが高い
  • 喫煙者は非喫煙者に比べてがんになった時の死亡率が高い
  • 肺は他の臓器に比べて、たばこによる害を受けやすい

発がん性物質を多く含むたばこですが、吸わない人に比べてどの程度がんになりやすいのでしょうか。

国立がん研究センター予防研究グループは、「たばこを吸ったことがない人」、「やめた人」、「吸っている人」を3グループに分けて約10年間のがん全体の発生率を比較しました。たばこを吸っているグループは、吸ったことがないグループに比べて、「がん発生率が男性では1.6倍、女性では1.5倍に高くなるという」結果がでました。吸っているグループの中でも、1日あたりの喫煙本数や喫煙年数が多い人ほど結果はより高くなりました。

たばこをやめたグループでも、吸ったことがないグループに比べると男性では1.4倍、女性では1.5倍高くなるという結果がでており、たばこは長年吸っているとやめても影響が残ることもわかりました。

たばこは、がん発生率が高くなるだけではありません。
厚生労働省による「がん部位別にみた死亡についての相対危険度(日本)」(非喫煙者を1とした時の喫煙者の危険度)によると、全部位で男性は1.65倍、女性は1.32倍危険性があるという結果がでました。

部位別ですと、男性は肺が4.45倍と一番高く、次いで咽頭・口腔の3倍、食道の2.24倍という結果になりました。女性も肺が2.34倍と一番高く、次いで膀胱の2.29倍、食道の1.75倍という結果がでました。
たばこはがんが発生しやすくなるだけではなく、がんになった時の死亡率もあがるのです
男女ともに「肺がん」が1位であることから、たばこによる害は、肺が一番受けやすいことが分かります。

肺がんとはどのような病気か

ここがポイント!

  • 肺がんは、細胞の形によって4つのタイプに分けられる
  • 肺がんは他のがんに比べて生存率が低い
  • たばこを吸わないだけでも、肺がん予防につながる

たばこの煙によって、引き起こされやすい肺がんとはどのような病気なのでしょうか。

肺がんはかつて女性よりも男性に多く発症していました。しかし、女性の喫煙の増加により最近では女性でも多くなっています。肺がんによる女性の死亡は、乳がんによる女性の死亡よりも多くなっています。

肺がんは、出現する部位や性質によって4つのタイプに分けられます。肺の組織を顕微鏡でみた時の細胞の形によって、「小細胞がん」「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」の4タイプに分けられます。腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんをまとめて「非小細胞がん」とも呼びます。どのタイプでも、喫煙は発症のリスク因子になりますが、この中でも、最も喫煙が影響するタイプはは扁平上皮がんです。肺がんのタイプによっては、喫煙とは関係なく発症するものもあります。肺がんは、タイプによって症状や、治療方法や予後が大きく異なるので、まずはどの種類かを確定することが重要になります。

治療法は、がんが転移する前であれば、がんのある肺の一部を切除する手術が行われます。転移後であれば、化学療法や放射線治療などが行われます。
治療法はあるものの、肺がんの治癒率は非常に低いです。国立がん研究センターの統計によると、肺がんの10年生存率は、2006年~2008年では、「男性が27.0%、女性が43.2%」という結果がでています。胃がんや大腸がんは60%を超えていることからも、肺がんの10年生存率がいかに低いかわかります。そのため、まずはがんにならない予防が非常に大事になります。肺がんは、たばこを吸わないだけでもがん発生率を下げることができます。

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たばこが引き起こすさまざまな病気

ここがポイント!

  • 肺がんだけでなく、その他の肺疾患も引き起こす
  • たばこは動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞の原因になる
  • 経口避妊薬を飲んでいる時は、必ず禁煙しよう

たばこは、がんだけでなくさまざな病気を引き起こします。
肺がんだけではなく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)とよばれる肺の病気の原因にもなります。この疾患は、従来「肺気腫」と「慢性気管支炎」と呼ばれていた病気の総称です。慢性閉塞性肺疾患(COPD)になると気道に過剰な膿が溜まり、咳が頻繁にでるようになります。また、呼吸機能も徐々に失われていきます。

喫煙は心臓にも影響を与えます。
喫煙をするだけで、心疾患になる可能性は2倍に増加します。心疾患は主に「高血圧」、「高コレステロール血症」、「運動不足」などが原因になりますが、喫煙もこの原因のうちのひとつです。たばこの煙に含まれる有害物質によって、血液をドロドロにする血中成分が増量したり、善玉コレステロールが減少したりすることで動脈硬化が促進され、虚血性心疾患を発症するリスクが高くなります。
また、脳にも血管がありますので、動脈硬化により「脳梗塞」や「脳血栓症」のリスクも高まります。

まとめ

たばこは、吸っている人だけではなく、受動喫煙として周囲の人にも健康被害を及ぼします。
厚生労働省の「21世紀における国民健康づくり運動」にて、「たばこは、肺がん、心筋梗塞等の虚血性心疾患、肺気腫等の慢性閉塞性肺疾患など多くの疾病や、低出生体重児、流・早産など妊娠に関連した危険因子」であるとしています。たばこが原因で、がんや心筋梗塞、脳梗塞などになりやすいことは分かっています。また、がんになった場合も喫煙者の方が死亡率は高いです。たばことの関係が深い肺がんは、がんの中でも生存率が低いがんであるといえます。禁煙するだけでも、肺がん予防につながります。

近年は、たばこの害についてとても注目されるようになりました。分煙化も進み、会社や病院では喫煙スペースは減ってきています。禁煙外来も設置されるようになり、禁煙をはじめる環境は昔に比べると整ってきているといえます。たばこは、自分だけでなく、周りの家族や友達にも害を及ぼしてしまいます。自分のためだけではなく、周りの大切な人のためにも禁煙を始めてみませんか。

参考

どうして「たばこ」を吸ってはいけないの?~中学生のみなさんへ~|東京都多摩立川保健所
Inoue M et all.Impact of tobacco smoking on subsequent cancer risk among middle-aged Japanese men and women: data from a large-scale population-based cohort study in Japan--the JPHC study.2004
国立がん研究センター
国立循環器病研究センター|循環器病情報サービス
肺の寿命の延ばしかた|日本呼吸器学会
喫煙の健康影響について|厚生労働省
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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