たばこが原因となる病気とは|喫煙が体に与える悪影響について徹底解説

喫煙は、「百害あって一利なし」と言われるほど、さまざまな病気の原因として知られています。たばこの煙は肺に入るため、肺がんになりやすいのは想像がつきやすいのではないでしょうか。しかし喫煙が健康に及ぼす悪影響は、直接煙が入る肺だけに留まらず、全身に及びます。その理由は、たばこの煙に含まれる有害物質が、口やのど、肺を通るときに唾液や血液中に溶け込んで、全身を巡るからです。
喫煙が原因で生じる病気とリスク、そしてたばこがそれらの病気を引き起こすメカニズムについて、わかりやすく説明していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01たばことがん(悪性腫瘍)
  2. 02たばこと心臓病(循環器疾患)
  3. 03たばこと脳卒中(脳血管疾患)
  4. 04たばこと喘息など(呼吸器疾患)
  5. 05たばこと生殖器疾患
  6. 06たばこと歯周病
  7. 07まとめ

たばことがん(悪性腫瘍)

ここがポイント!

  • 喫煙により、全身のさまざまな臓器でがんが発生するリスクが高まる
  • たばこの煙には、多くの発がん性物質が含まれる
  • 発がん性物質が、細胞の遺伝子に異常な変化を起こし、がん化させる

喫煙が原因でかかりやすくなるがんとしては、肺がんが最も有名です。しかし喫煙者は、肺がん以外にも、下の図にあるような数多くのがんにかかりやすくなります。

喫煙者のがんリスク

国立がん研究センターが日本人を対象に行った研究によると、喫煙者ががんになるリスクは非喫煙者に比べ、男性で約1.6倍、女性で約1.5倍と高くなっています。また、喫煙者ががんによって死亡するリスクも非喫煙者に比べ、男性で1.8倍、女性で約1.6倍と高くなっています。この結果から、たばこはがんになる可能性やがんで死亡する可能性を高めていることが分かります。
また、がんの種類別に見ても、喫煙者は非喫煙者に比べて死亡するリスクが高く、男性では肺がんが約4.5倍、咽頭・口腔がんが3倍、食道がんが約2.2倍、女性では肺がんと膀胱がんがともに約2.3倍となっています。

喫煙とがんのメカニズム

ではなぜたばこを吸うことが、がんを引き起こしてしまうのでしょうか。
それは、たばこの煙には「発がん性物質」という、がんを誘発する化学物質が約70種類も含まれているからです。
発がん性物質は、体内に入ると、細胞で遺伝子を保っている「DNA」と結合して、細胞分裂などの際に遺伝子に異常な変化を引き起こします。もともと細胞には「がん遺伝子」と「がん抑制遺伝子」が存在します。がん遺伝子は、細胞分裂を促進させるときに働く遺伝子で、がん抑制遺伝子は逆に、細胞分裂をストップさせるときに働く遺伝子です。
発がん性物質によって、これらの遺伝子に異常な変化(突然変異)が引き起こされると、細胞分裂しなくてもいいときに細胞分裂を続けたり、細胞分裂が止まらなくなったりしてしまいます。こうして正常な細胞は、「がん化」してしまうのです。
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たばこと心臓病(循環器疾患)

ここがポイント!

  • 喫煙をすることで、狭心症や心筋梗塞などの心臓病になりやすくなる
  • たばこの煙に含まれる有害物質は体に有害な変化を起こす
  • 有害物質によって動脈硬化が進み、心臓病に至ってしまう

喫煙が原因となって起こる心臓病には、虚血性心疾患大動脈瘤などがあります。ここでは「虚血性心疾患」について説明していきます。
虚血性心疾患とは、動脈硬化によって形成されたプラーク(血管壁が肥厚した部分)が一部壊れ、そこに血栓ができることによって心臓の血流が滞る状態をいいます。分かりやすく言うと、血管から剥がれ落ちたカスによって心臓の血管が詰まって、心臓に十分な血液が行き届かなくなってしまった状態です。
虚血性心疾患は、その血流の途絶え方によって「狭心症」と「心筋梗塞」の2つに分けられます。血管が狭くなるものの、完全には血流が途絶えないものが「狭心症」です。狭心症では、心臓の筋肉は壊死しません。一方、「心筋梗塞」は血管が閉塞して血流が完全に途絶え、心臓の筋肉が壊死している状態をいいます。心臓の筋肉が壊死、つまり死んでしまうと、心臓の収縮力が落ち、血液を全身へ送るという心臓の機能が十分に果たせなくなってしまいます。

喫煙と心臓病のリスク

国立がん研究センターの調べによると、日本の喫煙者は非喫煙者に比べて、虚血性心疾患になるリスクが約3倍高くなります。また虚血性心疾患の中でも心筋梗塞に限った場合は、男性で約4倍もリスクが高くなると分かっています。

喫煙による心臓病の発症メカニズム

たばこの煙を吸うと、ニコチンが体内に吸収されます。ニコチンは副腎という臓器に働きかけてカテコールアミンというホルモンを放出させます。カテコールアミンには血管収縮、血圧上昇および脈拍増加作用があります
また喫煙によってフリーラジカル※という物質が体内で増えます。フリーラジカルは、動脈硬化を促すLDLコレステロールを増やす作用があります。加えて血管の内側に存在する「内皮細胞」を傷つけます。喫煙によるこのような作用の結果、動脈硬化が進み、血液の流れる部分が狭くなることで、虚血性心疾患を起こしてしまいます。
ニコチンやフリーラジカルによる影響以外にも、たばこには心臓病を悪化させる原因があります。ニコチンと同じく、たばこの煙に含まれる有害物質の1つである一酸化炭素です。一酸化炭素は、赤血球に含まれている「ヘモグロビン」というタンパク質と結合しやすい性質を持っています。ヘモグロビンは、本来は酸素をくっつけて赤血球が体の隅々まで酸素を運ぶ手伝いをするタンパク質です。一酸化炭素は、ヘモグロビンが酸素をくっつけるための部分を塞いでしまいます。そのため、喫煙によって一酸化炭素が体内に増えるほど、酸素を運ぶヘモグロビンの数が減少してしまいます。その結果、血液中の酸素が減少し、それを補うために心臓はいつも以上に働かなければならず、負担がかかってしまうのです。
※フリーラジカル:電子が1つしかない不安定な原子のこと。物質の最小単位である原子は、本来2つの電子を持つことで安定しています。そのためフリーラジカルは他の原子と結びつくときに、相手の電子を1つ奪おうとします。代表的なフリーラジカルは「活性酸素」。

たばこと脳卒中(脳血管疾患)

ここがポイント!

  • 喫煙により脳梗塞や脳出血など、脳血管障害が起こりやすくなる
  • たばこの煙に含まれる有害物質が動脈硬化を進める
  • 動脈硬化により、脳の血管が詰まったり破れやすくなったりする

喫煙が原因となる脳の主な病気は、脳卒中です。脳卒中とは、脳の血管に関連する病気のことを指します。脳卒中には、主に脳の血管がつまってしまう脳梗塞と、脳の血管が破れて出血する脳出血やくも膜下出血の2つがあります。
脳出血は、脳の内部へ血液を運ぶ細い血管が切れて、脳の内部が出血する病気です。一方、くも膜下出血は、脳の表面を覆う膜の1つである「くも膜」で出血が起こる病気です。くも膜下出血は、脳の血管に動脈瘤という、血液の溜まるこぶのようなものができ、そこが破裂し出血することで起こります。

喫煙による脳卒中の発症リスク

国立がん研究センターが日本人を対象に行った研究によると、喫煙者が脳卒中を発生するリスクは、非喫煙者に比べて、男性で1.3倍、女性で2倍高いという結果が出ています。また、脳卒中の1つである「くも膜下出血」については、喫煙者は非喫煙者よりも男性であれば約3.6倍、女性であれば約2.7倍なりやすく、たばことの関係性がより強く示されています。

たばこによる脳卒中の発症メカニズム

喫煙が脳卒中につながるメカニズムは、基本的に心臓病と同じです。ニコチンにより血管収縮や血圧上昇、脈拍増加が招かれます。また、フリーラジカルによってLDLコレステロールが増え、さらに血管の内皮細胞が傷つけられて動脈硬化が進みます。その結果、脳の血管が詰まりやすく、破れやすくなり、脳卒中が発生します。
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たばこと喘息など(呼吸器疾患)

ここがポイント!

  • 喫煙が原因の呼吸器の病気は、COPD、気管支喘息、感染性肺疾患など
  • 特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は喫煙との関係性が強い
  • たばこに含まれる有害物質が原因で、気管支の空気の通り道が狭くなる
  • たばこに含まれる有害物質が原因で、酸素の取り入れと二酸化炭素の排出を行う「肺胞」が破壊されてしまう

たばこが原因の呼吸器疾患について見ていってみましょう。たばこが原因で発症しやすくなる呼吸器疾患には、COPD、気管支喘息、感染性肺疾患(気管支炎、肺炎、結核など)があります。今回はたばこと関係の強い「COPD」について注目していきます。
COPDは、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)を省略した名称です。以前は、肺気腫や慢性気管支炎とも呼ばれていました。COPDは、酸素を体に取り入れて二酸化炭素を体外へ出す「ガス交換」という働きを行っている「肺胞」や、空気の通り道である「気管支」がダメージを受けることで起こる病気です。主な症状は、息切れや咳などです。

喫煙による呼吸器疾患の発症リスク

厚生労働省の調査によると、日本人喫煙者がCOPDになるリスクは、非喫煙者に比べて約3倍高くなっています。また、COPDになった人の約90%が喫煙している、もしくは喫煙歴があることから、COPDは別名「たばこ病」とも呼ばれています。
さらに気管支喘息に関しても、喫煙が原因の一つであり、病状を悪化させるリスク要因となることが分かっています。

喫煙によるCOPDの発症メカニズム

たばこの煙に含まれている「カドミウム」や「二酸化窒素」は、気管支や肺胞の内側の細胞に作用し、傷つけます。
傷つけられた気管支では炎症が起き、それが悪化すると気管支が分厚くなります。加えて、気管支から出る分泌物が多くなるため、結果的に空気の通り道が狭くなってしまいます。
また、ガス交換を行っている肺胞が傷つけられ壊されると、ガス交換が十分に行えなくなってしまいます。すると、息苦しさなどの症状が出現します。

たばこと生殖器疾患

ここがポイント!

  • 喫煙によって妊娠しづらくなる
  • 妊娠した場合も早産などの異常が発生する確率が高くなる
  • 妊娠中の喫煙は、胎児の発育に悪影響を与え、出生後の死亡リスクにもつながる

喫煙によって、男性も女性も生殖機能が低下します。たばこの有害物質により、女性であれば、卵巣機能に影響を及ぼすと言われています。また男性であれば、精子の数の減少や運動性の低下などが招かれます。その結果、子どもを望んでも、妊娠しづらかったり、流産のリスクも高くなります。
妊娠した場合も、喫煙をしていると、赤ちゃんへ栄養や酸素を与える胎盤が剥がれやすくなったり、胎盤が正しい位置ではなく、赤ちゃんの出口を塞ぐ位置に出来たりする「胎盤異常」のリスクが高くなったりしてしまいます。加えて喫煙によって赤ちゃんと羊水を包んでいる羊膜が破れるリスクが非喫煙者よりも2〜3倍高まるため、早産につながってしまう可能性が高くなります。
喫煙が及ぼす健康への悪影響は喫煙者だけに起こるわけではありません。たばこの害は赤ちゃんにまで影響してしまいます。両親の吸ったたばこに含まれる有害物質が胎盤やへその緒を通して赤ちゃんへ移動してしまうからです。これまでの研究から、両親が喫煙していると、産まれてくる赤ちゃんは出生体重が3000gを下回る「低出生体重児」になりやすいということが分かっています。たばこの有害物質であるニコチン、一酸化炭素などが血管収縮や低酸素を招き、赤ちゃんの発育を邪魔するのです。出生時の体重が3000gを下回っていると、おなかの中で十分に成熟してない場合もあり、生まれた後に死亡してしまうリスクにつながります。
また、喫煙は、乳幼児突然死症候群とも関連性があるとされています。乳幼児突然死症候群は、元気だった赤ちゃんが突然死する病気です。厚生労働省の研究では、両親が喫煙する場合、喫煙しない両親に比べて約4.7倍も乳幼児突然死症候群の発症リスクが高くなるという報告があります。
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たばこと歯周病

ここがポイント!

  • 喫煙により歯周病になりやすく、また重症化しやすくなる
  • 歯周病は口腔内にとどまらず、他の臓器(心臓や肺など)の病気の原因にもなる

歯周病とは、歯垢(プラーク)中に存在する細菌が産生する物質により、歯を支える歯肉(歯茎)や歯槽骨(歯の周りの骨)が壊されていく病気です
ここで言う「プラーク」とは、先ほど動脈硬化の説明で出てきたプラークとは異なり、「歯の表面にこびりついている細菌の塊」のことです。喫煙すると、ニコチンの影響により、体を外敵から守るための免疫能力が落ちるため、細菌が口の中で増殖しやすくなって、歯周病になりやすくなるのです。また、歯周病の症状の1つに「歯肉からの出血」がありますが、喫煙者はニコチンの血管収縮作用により歯肉からの出血が抑えられるため、歯肉の異常に気付きにくく重症化しやすいとも知られています。

歯周病は口の中の病気ですが、その影響は口だけに留まらず、全身に及びます。これが歯周病において気を付けなければならないポイントです。例えば、口の中の細菌が血液中に侵入し、心臓にたどり着けば「感染性心内膜炎」といった心臓病に、また細菌が気道を通って肺へたどりつけば「肺炎」にかかってしまうリスクにつながります。

まとめ

喫煙は、たばこの煙が通る口の中や肺だけでなく、全身の臓器に影響を及ぼしてさまざまな病気を招きます。喫煙は、肺がんを始めとしたさまざまな病気にかかるリスクを上げるだけでなく、さらに、それらの病気にかかった結果、死亡するリスクも高めると分かっています。自分自身の人生を無駄にしないために、そして家族や周りの人を悲しませないためにも、禁煙を始めてみませんか。また、周りに喫煙している人がいるのであれば、禁煙を勧めてみるのはいかかでしょうか。人によっては、「ニコチン依存症」になっている可能性もあり、喫煙者本人の努力だけで禁煙をするのが難しい場合もあります。そういった場合には病院や診療所の禁煙外来を利用するのがよいでしょう。

参考

国立がん研究センター
喫煙者の健康影響について|厚生労働省
人口動態統計|厚生労働省
eヘルスネット 喫煙と呼吸器疾患|厚生労働省
循環器病情報サービス|国立循環器病研究センター
公益財団法人 喫煙科学研究財団
肺の寿命の延ばしかた|日本呼吸器学会
禁煙ガイドライン
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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