【インスリンとは】血糖値を下げるメカニズムからインスリン治療まで徹底解説

インスリンとは、膵臓にあるランゲルハンス島という部分に存在する「β(ベータ)細胞」から分泌されるホルモンの一種です。インスリンは、健康な人の場合、食事などで血糖値が上昇すると膵臓から適量が分泌され、血糖値を下げる働きをします。しかし、糖尿病を発症すると、インスリンが出にくくなったり、効果が弱まったりするといった異常が生じ、血糖値を正常に下げることが出来なくなります。ここでは、糖尿病と深くかかわるインスリンについて、血糖値を下げるメカニズムからインスリン注射やインスリンポンプ治療についてまで詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるホルモン
  2. 02インスリン抵抗性が高まると糖尿病のリスクが上がる
  3. 03インスリンが出ないとインスリン注射が必要
  4. 041型糖尿病に用いられるインスリンポンプとは
  5. 05まとめ

インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるホルモン

ここがポイント!

  • インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンの一種
  • 血糖調節に関わるホルモンの中で、血糖値を下げる作用があるのは「インスリン」のみ
  • インスリンは血糖値が上がると、血液中のブドウ糖を「肝臓「筋肉」「脂肪組織」などに運ぶことで、血糖値を一定の濃度に保つ

インスリンとは

「インスリン」とは、膵臓にあるランゲルハンス島という部分に存在する「β(ベータ)細胞」から分泌されるホルモンの一種で、血糖値を下げる働きがあります。
食事を摂取した糖分は、体内で消化吸収され血液中に「ブドウ糖」として取り込まれます。血糖値が上がると膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンには、血液中のブドウ糖を「肝臓」「筋肉」「脂肪組織」などに運ぶ働きがあり、その働きによって血液中のブドウ糖を一定の濃度に保っています。そのため、食事によって血糖値が上昇しても、インスリンが必要量分泌されていて、しっかり作用していれば、血糖値は徐々に下がり、食後2時間程度で食前の値まで戻ります。

インスリンは血糖値を下げるただ一つのホルモン

血糖調整に関わるホルモンは、様々な種類がありますが、血糖値を下げる作用のあるホルモンは、「インスリン」のみです。そのため、インスリンの分泌機能が低下すると、血糖値が下がらず、高血糖状態が続いてしまいます。一方で、血糖値を上げる作用のあるホルモンは「グルカゴン」「カテコールアミン」「コルチゾール」「成長ホルモン」など、複数のホルモンがあります。

血糖値を下げるホルモンはインスリンのみ

参考

糖尿病治療ガイドライン2016-2017|日本糖尿病学会
インスリン|e-ヘルスネット 厚生労働省
平成28年「国民健康・栄養調査」の結果|厚生労働省

高血圧症発症チェック

インスリン抵抗性が高まると糖尿病のリスクが上がる

ここがポイント!

  • インスリン抵抗性とは、インスリンの感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態をいう
  • インスリン抵抗性が高まり、インスリンが効きにくい状態になると血糖値が下がりにくくなり糖尿病を発症するリスクが上がる

インスリン抵抗性とは

インスリン抵抗性とは、「インスリンの感受性が低下し、作用が十分に発揮できない状態」をいいます。そのため、インスリンが十分に分泌されていても、インスリンの感受性が弱まっているため、インスリンの効果が発揮されず、臓器や細胞に必要なブドウ糖が取り込まれないため、肝臓は糖の産生を続けてしまいます。
糖の産生が続くと、血糖値が下がりにくくなり、膵臓はより多くのインスリンを分泌しようとします。この悪循環により、やがて膵臓は疲弊してしまい、インスリンを分泌する機能が低下し、糖尿病の発症に繋がるとされています。

インスリン抵抗性を高める原因とは

インスリン抵抗性を高める原因としては、「遺伝」「肥満」「運動不足」「高脂肪食」「ストレス」が関連していると考えられています。このようにインスリン抵抗性を高める要因としては、生活習慣が密接に関わっています。日頃の生活習慣を見直して、規則正しい生活を心がける事が、インスリン抵抗性の改善に重要です。

血糖値を下がりにくくしてしまう「インスリン抵抗性」

糖尿病予備群は約1,000万人と推計されている

厚生労働省による「平成28年国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病を発症している人と糖尿病の可能性を否定できない糖尿病予備群はいずれも約1,000万人と推計されています。増加の背景には、食生活の欧米化やストレス社会など生活習慣や社会環境の変化
があるとされています。

参考

糖尿病治療ガイドライン2016-2017|日本糖尿病学会
インスリン抵抗性|e-ヘルスネット 厚生労働省

インスリンが出ないとインスリン注射が必要

ここがポイント!

  • 1型糖尿病は、膵臓からインスリンが分泌されなくなるため、インスリン注射が必要不可欠である
  • 2型糖尿病でも、高度な高血糖の人や血糖コントロールが困難な人はインスリン注射を行う
  • インスリンを注射する量を決めるためには、「血糖自己測定(SMBG)」が必要
  • 食事量、運動量、体調などによってインスリンが効き過ぎてしまい、低血糖を引き起こす可能性がある
  • インスリン治療を受けている人は誰でも低血糖を起こすリスクがあるため、日頃からブドウ糖や甘いお菓子などを持ち歩くようにする

「インスリン注射」は、糖尿病の治療方法一つ

糖尿病はインスリンの分泌が低下したり、インスリンの効果が弱まったりする事で
血糖値が下がりにくくなり、高血糖状態が続く病気です。糖尿病の治療法の中には、インスリンを直接注射する「インスリン治療」があります。また、インスリン治療の他には、食事療法、運動療法、飲み薬による治療があります。

インスリン注射が必要なケース

小小見出し:1型糖尿病の人は必ず必要
1型糖尿病の人は、インスリンの分泌がほとんどありません。そのため、インスリン注射にて、直接インスリンを体に補充をして、血糖コントロールを行う必要があります。このような状態を「インスリン依存状態」といい、1型糖尿病は、発症当初から「インスリン注射」を行う必要があります。

2型糖尿病の人でもインスリン注射が必要な場合がある

2型糖尿病の場合は、食事療法、運動療法、飲み薬による治療を受けても、血糖値が目標値まで下がらなかった場合に「インスリン治療」が必要とされています。

インスリンを打つ量(単位)は、人によって異なる

インスリンが医師から処方されると「〇〇単位打ってくださいね」と、「単位」という表現で使用量の指示を受けます。「単位」が大きいほど、インスリンを打つ量が多くなります。医師は、糖尿病の状態や、体重、年齢、生活スタイルなどを考慮して、高血糖や低血糖にならないようインスリンの単位を調整します。
単位は、インスリン注射を行う際に自分で調整する必要があるため、間違った単位を注射しないよう注意が必要です。必ず、医師の指示した時間や単位を守るようにしましょう。

インスリン治療をする人は自己血糖測定(SMBG)が必要

血糖値は、食事や運動などで随時変化し、いつも同じ値ではありません。糖尿病の治療をしている人は、さらに血糖値の動きが複雑になります。糖尿病の治療の目的は、血糖を適正にコントロールし、命に関わる合併症を防ぐ事です。良好な血糖コントロールをするために、自分の血糖値がしっかり適正な値になっているか、チェックする必要があります。しかし、頻回に医療機関で採血することはできません。そこで、簡単な医療機器を使って、自分で血糖を測定する「血糖自己測定(SMBG)」が行われています。食事やインスリンなどの治療によって自分の血糖値がどのように変動するか、チェックすることは大切であり、また、血糖値の記録をつけておくことで、医師が治療方針を決める参考にもなります。
自己血糖測定は、比較的簡単な操作であり、練習をすれば多くの方が一人で行える作業です。しかし、毎回小さな針を刺し、指先から血を出して血糖を測定するのは、とても気が滅入る作業になります。毎回そのような作業をしなくても血糖値が測定できる「持続血糖測定(CGM)」という医療機器が、2017年9月より公的な医療保険で使用できるようになりました。

自己血糖測定(SMBG)

副作用とは

インスリン注射の主な副作用は「低血糖」です。インスリンには血糖値を下げる作用があるので、インスリンが効き過ぎて、血糖値が下がり過ぎてしまう事があります。血糖値は、食事量、運動量、体調などによって変動しますので、インスリン治療を行っている人であれば誰もが起こりうる症状です。
低血糖ではどのような症状が現れるのか、自分がどのような時に低血糖になるのかを把握しておきましょう。また、低血糖には早急な対応が重要ですので、普段から「ブドウ糖」を持参し、低血糖症状を感じたら、ブドウ糖や、持参していない場合にはおかし・甘いジュースなどを摂取しましょう。
低血糖の症状と対応について詳しくは、低血糖の原因とは|眠気・めまいなどの症状は起きるのかをご参照ください。

参考

糖尿病治療ガイドライン2016-2017|日本糖尿病学会
インスリン注射ガイド|日本糖尿病協会
高血圧症発症チェック

1型糖尿病に用いられるインスリンポンプとは

ここがポイント!

  • 「インスリンポンプ」とは、インスリンを皮下に持続的に注入する治療法
  • 普段よりも食事量が少ない、食事のタイミングが違う、運動量が多いなどの場合に、「低血糖」を起こしやすい
  • 食事前のインスリンの注入忘れ、食事量に対してインスリン量が少ない、ポンプの異常(チューブが外れた・詰まった・壊れた)などの場合には、高血糖になりやすく注意が必要

インスリン治療は、直接インスリンを体内に注入する治療法です。
注入方法には、注射器によるものと、皮下に柔らかい針を留置して、持続的にインスリンを注入するポンプ式があります。ここでは、持続的に注入する「インスリンポンプ」について説明していきます。

インスリンを皮下に持続的に注入出来る

インスリンポンプは、「持続皮下インスリン注入(CSII)」といって、腹部などにインスリンの注入器を取り付け、インスリンを皮下に持続的に注入する治療法です。1型糖尿病の人や、小児の1型糖尿病に使用されることが多く、インスリン治療をしていても血糖コントロールが困難な場合や、より厳密な血糖コントロールが必要な場合にも使用されます。また、体がインスリンを放出する自然なリズムに近い形でインスリンを出してくれるため、好きな時に運動や食事ができるメリットがあり、1日に何回も注射をする手間を省く事が出来ます。

インスリンポンプ治療中の注意点

いつもより食事量が少なかった、食事のタイミングが遅れてしまった、いつもより運動量が多かった時などには、「低血糖」を起こすリスクが高くなるので注意が必要です。
反対に、食事前のインスリンの注入忘れや、食事に比してインスリン量が少なすぎた時、ポンプの異常(チューブが外れた・詰まった・壊れた)などが起こると、インスリンが効かず、「高血糖」に陥る場合があります。
インスリンポンプの使用方法は、使用前に医療機関でしっかりと指導してもらえますが、使用中に何か不具合があったり、疑問や不安を感じたりした場合には、医師に相談する事をおすすめします。


インスリンポンプを使用している人の注意点

参考

糖尿病治療ガイドライン2016-2017|日本糖尿病学会
インスリンポンプってなあに?~インスリンポンプ使用中の注意点~|日本糖尿病協会

まとめ

インスリンには、血糖値を下げる働きがあります。健康な人は、食事などで血糖値が上がっても、インスリンが適宜分泌され、血糖値を下げる事ができます。しかし、糖尿病を発症するとインスリン分泌に異常をきたしてしまうため、血糖値が下がらず、高血糖状態が続いてしまうのです。そのため、状態によっては、インスリンを直接体内に注入するインスリン治療を行う場合があります。インスリン注射により、良好な血糖コントロールが出来れば、糖尿病の人でも健康な人と変わらない生活をする事が可能です。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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