糖尿病性ケトアシドーシスとは|糖尿病の急性合併症について解説

「糖尿病性ケトアシドーシス」という病気を聞いたことがあるでしょうか。この症状は、糖尿病の人に起こる急性合併症の一つです。適切な治療を早急に行わないと、昏睡状態に陥り、命に関わる場合もあります。ここでは、あまり知られていない「糖尿病性ケトアシドーシス」とはどのような状態をいうのか、症状や治療法、糖尿病性ケトアシドーシスにならないために注意しなくてはいけないことなどを詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01糖尿病性ケトアシドーシスとは
  2. 02糖尿病性ケトアシドーシスの症状
  3. 03糖尿病性ケトアシドーシスの治療法
  4. 04糖尿病性ケトアシドーシスにならないために
  5. 05まとめ

糖尿病性ケトアシドーシスとは

ここがポイント!

  • 糖尿病性ケトアシドーシスとは、糖尿病の急性合併症の一つである
  • インスリンが極度に不足する事で、体がエネルギーを取り込むために脂肪を分解してしまう
  • 脂肪を分解する際に作られる「ケトン体」が血液中に増える事で、高血糖に加えて高度の脱水状態に陥る
  • インスリンが分泌されない1型糖尿病で主に発症するが、2型糖尿病でも清涼飲料水を飲みすぎてケトアシドーシスに陥ることがある

糖尿病の急性合併症

糖尿病性ケトアシドーシスとは、「インスリン欠乏」「インスリン作用不足」「インスリン拮抗ホルモンの増加」などにより、急激に高度な高血糖に陥る糖尿病の急性合併症の一つです。インスリンが極度に欠乏すると、血糖値が急激に上昇するだけではありません。インスリンには、糖分を臓器や細胞に取り込ませる働きがあるため、インスリンが極度に欠乏すると体はエネルギーを作るために肝臓で脂肪を分解します。分解する際に、「ケトン体」という物質も一緒に作られてしまい、ケトン体が血液中に増加すると、体が酸性に傾く事で高度の脱水状態に陥ります。

1型糖尿病の人は要注意

糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリンの分泌がほとんどなくなる「1型型糖尿病」の方が陥りやすい症状です。インスリンが絶対的に欠乏している状態なので、インスリン注射を打たなかった場合や食事量や運動量が普段とは異なり、適切な量のインスリンが投与できていなかった場合に発症します。

2型糖尿病の人でも起こることがある

1型糖尿病の人に限らず、全ての糖尿病患者で発症する可能性があり、糖尿病のガイドラインには、糖尿病性ケトアシドーシスを起こした人のうち約20~30%が2型糖尿病であったと記載されています。糖質を含む 清涼飲料水を大量に摂取した際に発症する場合があり、ペットボトル飲料の過剰摂取が原因となるので、「ペットボトル症候群」や「ソフトドリンクケトーシス」と呼ばれています。
ペットボトル症候群は、自分が2型糖尿病だと自覚していない人が、「糖分」を含むペットボトルの飲料水を習慣的に飲む事により、発症するケースが多いです。また、高血糖状態では、喉が渇くため、ジュースやスポーツ飲料などで水分摂取をしてしまう方がいます。しかし、「糖分」が含まれている飲料水は、血糖値を上昇させ、さらに喉が渇いてしまうという悪循環に陥り、糖尿病を悪化させてしまいます。水分摂取は、必ず糖分が含まれていない、水やお茶で行いましょう。

高齢の人がなりやすい「高血糖高浸透圧症候群」

糖尿病の急性合併症は、糖尿病性ケトアシドーシスの他にも「高血糖高浸透圧症候群」があります。高血糖高浸透圧症候群も、血糖値が「600mg/dL以上」の高血糖を起こすこともあり、意識障害を伴うこともあり、医療機関での迅速な治療が必要です。高血糖高浸透圧症候群では、高度な脱水症状と高血糖を起こしているため、点滴治療とインスリンの補充が行われます。
高血糖高浸透圧症候群は、肺炎や尿路感染症などの他の病気がストレスが原因の一つであると考えられており、高齢者の方が発症しやすいとされています。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本内科学会雑誌|高血糖緊急症
高血圧症発症チェック

糖尿病性ケトアシドーシスの症状

ここがポイント!

  • 激しい口渇、多飲、多尿、倦怠感、体重減少などの高血糖による症状が現れる
  • 消化器症状として、悪心、嘔吐、腹痛などが生じる場合もある
  • 脱水状態が進行すると、血圧低下や頻脈といった症状が現れ、意識障害を引き起こす場合もある

糖尿病性ケトアシドーシスは、重症化すると「意識障害」を起こし「昏睡」といった命の危険の関わる症状を引き起こすことがあります。ここでは、糖尿病性ケトアシドーシスの症状を確認していきましょう。

高血糖症状

血糖値が「250mg/dL」を超えると口渇、多飲、多尿、倦怠感といった高血糖症状が起こりやすくなります。

消化器症状

高血糖症状以外にも、悪心、嘔吐、腹痛といった消化器症状を伴うこともあります。
嘔吐は、電解質異常や脱水症状をさらに進行させてしまいます。

脱水症状

嘔吐に加えて、水分が摂取出来ない状態が続くと、脱水症状が進行し、血圧低下や頻脈といった症状が現れます。また、糖尿病性ケトアシドーシスは多尿の症状も現れるので、十分な水分補給が必要になります。

糖尿病性ケトアシドーシスの症状

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド2016~2017

糖尿病性ケトアシドーシスの治療法

ここがポイント!

  • 糖尿病ケトアシドーシスは、医療機関での緊急治療が必要
  • 脱水状態であるため、点滴治療で失われた水分を補充する
  • 血糖値を下げるため、インスリン投与が行われる

糖尿病ケトアシドーシスは、高血糖と高度の脱水状態に陥っており、医療機関で点滴による脱水症状の改善と、インスリンの補充が至急必要となります。

脱水症状への治療

「糖尿病ケトアシドーシス」を起こしている時は、強い脱水の状態のため、直ちに生理食塩水を中心とした点滴治療が行われ、失われた水分を補充します。また、発症前後の体重変化でおおよその脱水状態を推定し、全身状態を確認しながら輸液量を調整していきます。

インスリン投与

糖尿病ケトアシドーシスは、極度にインスリンが不足している状態のため、インスリンの補充も必要になります。「速効型のインスリン」を少量ずつ、持続静注により投与されます。インスリンは自己注射では皮下注で行われますが、脱水によりインスリンの吸収が不安定になっているので、糖尿病ケトアシドーシスの治療では、静脈内に持続的に投与されます。

糖尿病性ケトアシドーーシスの治療法

家族や身近な人にも、糖尿病ケトアシドーシスが起こった時の対処法を知ってもらおう

糖尿病ケトアシドーシスは、早急に適切な治療をしないと、命に関わる危険な状態です。
しかし、重症化すると意識障害を起こし、自分で医療機関へ行けないということも起こります。家族や身近な人とは、何かあればすぐに医療機関へ代わりに連絡をしてもらうといった、いざという時の対応を事前に話し合っておくといいでしょう。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド2016~2017
高血圧症発症チェック

糖尿病性ケトアシドーシスにならないために

ここがポイント!

  • インスリンは自己判断で中断したりせずに、必ず医師の指示のもと用法用量を守る
  • 食事を取れない場合の対応は、自己判断せず医療機関に確認する

インスリンの自己中断をしない

糖尿病ケトアシドーシスは、インスリンが不足することで起こるため、インスリンを安定して補充することが重要になります。
糖尿病ケトアシドーシスの症状は、1型糖尿病の治療中の人が、インスリン注射を医師の指示ではなく打たなかった時などに多くみられます。担当の医師から処方されたインスリンは、決して自己中断せず、必ず指示された用法・用量を守って使用しましょう。

シックデイの時もインスリンを止めてはいけない

「シックデイ」とは、糖尿病の人が発熱や下痢や嘔吐といった体調不良により食事が摂れない時のことをいいます。インスリン治療を行っている人は、食事の量や時間に合わせてインスリンを打ちます。シックデイで食事を摂れない場合でも、インスリン注射を自己判断で止めてはいけません。体調がおかしいなと感じた時は、医師と連絡を取り、医療機関を受診するようにしましょう。

糖尿病性ケトアシドーシスの原因は極度のインスリン不足です。シックデイの時は、血糖コントロールが乱れやすく、糖尿病ケトアシドーシスに注意が必要になります。体調が悪く食事が取れない時、どのような対応をしたらいいのかは、事前に担当の医師の指示を受けるようにし、自己判断でインスリンを打たないということは、絶対に避けましょう。
シックデイとは

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド2016~2017

まとめ

糖尿病性ケトアシドーシスは、すべての糖尿病の人に起こる危険性がある症状です。インスリンの欠乏は、意識障害や昏睡といった命に関わる事態を引き起こします。インスリン欠乏に十分注意をすることも重要ですが、早く自分の体調の異常に気づき、医療機関で治療を受けることが必要です。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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