【糖尿病性腎症とは】ステージごとの症状や治療法から人工透析まで解説

糖尿病性腎症は、糖尿病特有の合併症です。糖尿病は、血糖値を下げるホルモンの分泌や効果に異常をきたし、血糖値が高い状態が続いてしまいます。血糖値が高い状態が続くと、血管が次第にダメージを受け、様々な合併症が生じます。腎臓にも血管が走っているので、腎臓の血管が傷つくことで、腎機能が低下してしまうのです。ここでは、意外と知らない糖尿病と腎臓の関連について、ガイドラインに沿って詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01糖尿病性腎症とは
  2. 02糖尿病性腎症はステージによって症状や治療法が異なる
  3. 03厚生労働省が策定した「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」とは
  4. 04まとめ

糖尿病性腎症とは

ここがポイント!

  • 糖尿病性腎症は「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」の並ぶ糖尿病の三大合併症の一つである
  • 高血糖状態が続き、腎臓にある「糸球体」という毛細血管が傷つき、ろ過機能が低下する事が糖尿病性腎症の原因であると考えられている
  • 糖尿病性腎症を発症すると、徐々に腎機能が低下し、最終的には「透析療法」が必要になる
  • 糖尿病性腎症は、透析導入の原因疾患の約半数をしめている

糖尿病性腎症とは、糖尿病の三大合併症の一つです。糖尿病の方であれば、誰でも発症するリスクがあります。ここでは、糖尿病性腎症になるメカニズムや症状について解説していきます。

糖尿病性腎症を発症するメカニズム

糖尿病は、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの分泌や効果が弱まることで、血糖値が高い状態が続いてしまう病気です。血糖値が高い状態が長期間続くと、全身の血管が次第にダメージを受けてボロボロになり「動脈硬化」が進行していきます。
腎臓は、毛細血管が毛糸の玉のように網目状に集まっている「糸球体」で、血液のろ過をして、不要な老廃物や塩分を尿として体外へ排出したり、体に必要な水分などの再吸収する働きがあります。この働きがないと、体に老廃物が溜まっていき、生きていく事ができません。糖尿病により高血糖状態が続くと、ろ過を行う「糸球体」がダメージを受け、ろ過機能が低下して糖尿病性腎症を発症すると考えられていますが、はっきりとした原因は明らかになっていません。糖尿性腎症は、重症化すると腎臓が機能しなくなり、機械を通じて血液のろ過を行う「透析治療」が必要になります。

糖尿病性腎症とは.png

また、糖尿病性腎症以外の糖尿病特有の合併症には、手足などの末梢血管が傷つく事で、運動神経・感覚神経、自律神経に障害が生じる「糖尿病性神経障害」、網膜にある毛細血管が傷つくことにより、白内障や失明の危険がある「糖尿病性網膜症」があります。
糖尿病の合併症について詳しくは、糖尿病の合併症について|放置してはいけない理由からその怖さを解説しますをご参照ください。

糖尿病性腎症の診断方法

糖尿病性腎症を発症しているかどうかは、尿中の「アルブミン排出量」または「タンパク排出量」と「推算糸球体濾過量(eGFR)」から判定されます。糸球体濾過量は、血清クレアチニンという値から算出されるため、尿検査だけではなく採血検査も必要となります。
糖尿病性腎症は、進行度から第1期~第2期まで5つのステージに分類されています。次に、このステージについて説明していきましょう。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013|日本腎臓学会(pdf資料)
高血圧症発症チェック

糖尿病性腎症はステージによって症状や治療法が異なる

ここがポイント!

  • 糖尿病性腎症は進行度合いから「腎症前期」「早期腎症期」「顕性腎症期」「腎不全期」「透析療法期」と、5つのステージに分けられる
  • 第1期~第2期頃までは、ほとんど自覚症状が現れないので、早期発見のためには定期的に検査を受ける必要がある
  • 第4期頃より、「むくみ」「全身倦怠感」「貧血」などの症状が現れる
  • 第5期になると慢性腎不全となり「透析療法」が必要になる
  • 血糖コントロールと血圧コントロールが進行予防に効果的であるとされている

糖尿病性腎症は、状態によって第1期〜第5期までに分類されます。
ここでは、ステージ別に診断基準、症状、治療法などを解説していきます。

初期段階では自覚症状がほとんどない

糖尿病性腎症は、第1期ではほとんど自覚症状が現れません。
第2期になると、わずかにアルブミンが排出されるようになります。そのため、尿中のアルブミン量を調べる事で、糖尿病性腎症の早期発見に繋がると考えられているのです。そして、第3期頃になると、尿検査で「尿タンパク」が検出されるようになり、むくみ、息切れ、食欲不振などの自覚症状も現れてきます。
第4期頃まで糖尿病性腎症のステージが進行してしまうと、「むくみ」「全身倦怠感」「貧血」「皮膚のかゆみ」「手足の痛み」などの自覚症状が出てきます。この時期は、腎臓の働きはかなり低下してしまっている状態です。第5期に入ると、「腎不全」となり腎臓の機能がほとんど働いていない状態となり、「透析治療」が導入され、生命予後も悪いとされています。そのため、第1〜2期の段階で早期発見をして、生活習慣の改善や適切な治療を受ける事が重要です。

糖尿病性腎症の5つのステージ

ここでは、腎機能が低下していく段階ごとの診断基準や治療を解説していきます。各ステージは、アルブミン尿(mg/gCr)と糸球体濾過量(ml/分/1.73m2)の値によって分けられています。

第1期(腎症前期)

<診断基準>
正常アルブミン尿「30未満」
GFR(eGFR)「30以上」

<治療>
・血糖コントロール
血糖コントロールをすることで、糖尿病性腎症の発症や進行を抑制することが出来るため、十分な「食事療法」に取り組み、適正な血糖値を維持することが大切。第1期~第5の全てにおいて「HbA1c 7.0 %未満」を目標値とする。
・高血圧治療
血圧のコントロールをすることで、糖尿病性腎症の発症や進行を抑制することが出来るため、第1期~第5期の全てにおいて「130/80mmHg未満」への降圧も目標とする。
糖尿病性腎症における第一選択薬には、「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬」「アンジオテンシンII受容体阻害薬(ARB)」が推奨されており、これらの薬には、血圧を下げる効果だけではなく、「微量アルブミン量」「尿タンパク」を減少させ、腎臓の保護効果が期待できる。他にも、「脂質管理」「禁煙」などが治療のポイントとなる。

第2期(早期腎症期)

<診断基準>
微量アルブミン尿「30~299未満」
GFR(eGFR)「30以上」

<治療>
腎機能が更に低下している状態になるので、第1期の治療に加え腎臓に負担を掛ける「たんぱく質」の過剰摂取を控える。

第3期A(顕性腎症期)

<診断基準>
アルブミン尿「300以上」
GFR(eGFR)「30以上」

<治療>
第2期の治療に加え、第3期になると、「たんぱく質」の制限をする必要がある。
1日のたんぱく質の摂取量は、「0.8~1.0g/kg体重/日」以内とする。

第4期(腎不全期)

<診断基準>
GFR(eGFR)「30未満」

<治療>
第4期では、更にたんぱく質の制限が必要になり、1日のたんぱく質の摂取量は、「0.6~0.80g/kg体重/日」以内となる。また、貧血の症状が現れる場合があり、適切な治療が行われる。また、第4期では、糖尿病治療薬の「SU薬」や「ビグアナイト薬」は使用できないため、インスリン療法への切り替えが必要になります。

第5期(透析療法期)

<治療>
第5期では、慢性腎不全(CKD)となりほとんど腎臓が機能しなくなっている状態で、生命の維持に関わるため、「透析療法」または「腎移植」が必要になる。


糖尿病性腎症の5つのステージ

ステージが進行すると透析治療が必要になる


糖尿病性腎障害は、進行すると最終的には「透析治療」が必要となります。ここでは、「透析治療」について詳しく解説していきます。

透析には「血液透析」と「腹膜透析」がある

<血液透析>
血液透析とは、血管にポンプを繋いで血液を体外に取り出し、透析の機械で血液中の老廃物などを濾過し、血液を綺麗にして体内へ戻す方法です。週に3回程度、1日につき約4~5時間の治療が必要になります。また、自宅に血液透析の機械を設置して、病院に通わず透析治療を行うことが出来る、在宅血液透析という選択もあります。


<腹膜透析>
腹膜透析とは、腹部に管を通し透析液を注入し、溜まった老廃物を透析液に移して血液を浄化する方法です。1日に4回程度、管に取り付けた透析液を自宅などで自分で交換する必要があり、腹部に雑菌が入り感染が起こることを防ぐために消毒を適宜行い清潔に保ちます。
腹膜透析は、通院の回数が血液透析に比べ少ないというメリットがありますが、腹膜の機能が徐々に低下してしまうため、長年の使用は出来ません。その後は、血液透析に切り替えるか、腎移植などの他の方法をとります。

一生透析をしなければならないのか

透析治療は、腎臓を治療しているのではなく、失った腎臓の機能の代わりを透析療法によって補っているに過ぎません。腎機能はある程度悪化してしまうと、回復する事はありません。そのため、病気の進行を防ぐ治療は出来ても、完治する事はありません。そのため、定期的な透析治療は生きるために欠かせないものであり、一生続けていく必要があります。

参考

日本透析医学会|血液透析患者の糖尿病治療ガイド 2012
順天堂大学医学部付属順天堂病院|腎・高血圧内科
日本透析医学会|2009年版腹膜透析ガイドライン

厚生労働省が策定した「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」とは

ここがポイント!

  • 厚生労働省、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議が、糖尿病の重症化予防のための「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定した
  • 糖尿病の治療をしていない人や中断してる人へ医療機関への受診を勧告し、「かかりつけ医」をもつようにサポートする
  • 生活習慣の改善が困難な人には、かかりつけの医と連携し食事や運動の実践的な指導をする
  • 2 型糖尿病で、「空腹時血糖 126mg/dl (随時血糖 200mg/dl)以上又は HbA1c 6.5%以上」「過去に糖尿病薬使用歴又は糖尿病治療歴がある」「腎機能が低下している」人がプログラムの対象になる

糖尿病性腎症重症化予防プログラムとは

糖尿病は、ほとんど自覚症状がないため、糖尿病の人でも十分に血糖コントロールをしていなかったり、通院を自己中断してしまっている人が多くいます。
自分で症状を感じ危機感を持って医療機関を受診する頃には、すでに糖尿病がかなり進行して合併症を起こしているということが多く、「糖尿病の重症化予防」のための取り組みを全国的に広げるために、厚生労働省、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議は「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定しました。

糖尿病は継続した通院が重要

行政と医療機関が連携を取り、糖尿病治療を受けていない方、中断されている方に対して、手紙や電話にて医療機関を受診するように勧告をし、それでも医療機関の受診がなければ訪問にて医療機関への受診を推奨します。
糖尿病は継続して治療していく事が重要になります。そのため通いやすい「かかりつけ医」を持つことが推奨されています。しかし、すべての医療機関に糖尿病の専門医がいるわけではありません。「かかりつけ医」と「糖尿病の専門医」が連携を取り、必要に応じて専門医への受診ができる体制を取っています。
CKD 診療ガイド 2012では、「高度の尿蛋白 尿蛋白/Cr 比 0.50g/gCr 以上または2+以上」「蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上)」「GFR50 未満」に当てはまる人は腎臓専門医へ紹介することを推奨しています。

プログラムの対象になる人

2 型糖尿病で、「空腹時血糖 126mg/dl (随時血糖 200mg/dl)以上又は HbA1c 6.5%以上」「過去に糖尿病薬使用歴又は糖尿病治療歴がある」「腎機能が低下している」、これらに該当する場合「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」の対象になります。
糖尿病性腎症を治療をしている人には、日常生活における実践的な指導が必要になるため、かかりつけの医療機関と連携して、食事や運動などの生活習慣の見直しをサポートし「腎不全」の悪化や「透析療法」になってしまう人を減らすことを目標としています。

参考

糖尿病性腎症重症化予防プログラム|厚生労働省
CKD 診療ガイド 2012|日本腎臓学会
高血圧症発症チェック

まとめ

糖尿病は、ほとんど自覚症状がない病気です。自覚症状を感じるときには、すでに糖尿病が進行し合併症を起こしている可能性が高いです。また、腎臓の機能は、一度悪くなると治すことが出来ません。糖尿病性腎症は進行すると、人工透析が必要になります。人工透析は一生続けなければならず、その後の生活に強く影響します。糖尿病と診断された場合は、合併症を予防するためにも、定期的な通院が必要になります。まずは、通院しやすいかかりつけ医を持ち、食事や運動などを含めた治療を続けていきましょう。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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