糖尿病性足病変とは|足の壊死、切断を防ぐためのフットケア法や治療法を解説

糖尿病の合併症の一つに、足や手などの運動神経や感覚神経が障害される「糖尿病神経障害」があります。糖尿病神経障害になると、足にしびれや痛みを感じたり、逆に感覚が鈍くなり足の小さな傷に気づきにくくなります。ちょっとした怪我から感染症を起こし、最悪の場合、足が壊死し切断しなくてはならない場合もあります。ここでは、糖尿病の方が気を付けなければいけない「足の病気」について、説明していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01糖尿病足病変とは
  2. 02糖尿病足病変が進行すると下肢切断に至ることもある
  3. 03糖尿病足病変予防のためにフットケアをしよう
  4. 04糖尿病足病変(足潰瘍)の治療はできるのか
  5. 05まとめ

糖尿病足病変とは

ここがポイント!

  • 糖尿病足病変とは、糖尿病の人に発症する「足の様々なトラブル」のこと
  • 糖尿病の人は、怪我などの小さな傷がきっかけになり様々な足の病気が起こる
  • 糖尿病足病変は進行すると、足の潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)になり、最悪の場合足の切断が必要になる

糖尿病足病変の定義

糖尿病足病変とは、糖尿病特有の合併症の一つである「糖尿病性神経障害」が主な要因となって起こる「足の様々なトラブル」のことを言います。糖尿病の人は「糖尿病性神経障害」「動脈硬化の進行」により、血液の流れが悪くなり「血流障害」も生じます。
「糖尿病性神経障害」により手や足などの末端の神経の感覚が鈍くなっていきます。そのため、足に靴ずれや深爪などの小さな傷が出来ても自分で気づきにくくなります。そして、糖尿病の人は免疫機能が低下しているので、小さな傷から感染が進行しやすく、足に潰瘍(かいよう)が出来やすいです。血流障害があるため傷が治りにくく、皮膚の組織が壊死してしまう壊疽(えそ)に進行すると、最悪の場合、足を切断しなければならないケースもあります。

糖尿病神経障害の症状とは

足のトラブルの主な要因である「糖尿病神経障害」になると、感覚神経、運動神経に障害が生じます。手足に、痛み、痺れ、感覚が鈍くなるなどの症状が現れます。また、手足だけでなく、自律神経の異常、起立性低血圧、発汗異常、便秘や下痢などの消化管異常、膀胱の機能障害、勃起障害など様々な症状が現れると特徴があります。

足のトラブルには様々な種類がある


糖尿病足病変が悪化しないためにも、早期に発見する事が重要です。
ここでは、主な糖尿病足病変に関わるトラブルを見ていきましょう。

足の変形

合わない靴を履いていたり、ハイヒールをよく履く人の中には、外反母趾になっている方もいるでしょう。外反母趾のように足が変形すると、靴によっては足が圧迫され痛みを感じます。しかし、糖尿病神経障害の方は痛みが感じにくいので、足の変形による圧迫の痛みに鈍感になり、自分でも気がつかないうちに傷や潰瘍になってしまうことがあります。

陥入爪(かんにゅうそう)、巻き爪

陥入爪とは、深爪などが原因で爪が皮膚に食い込んでしまう状態です。巻き爪も爪の切り方や、合わない靴などが原因で、爪が皮膚に食い込み、傷つく事で感染の原因となります。

爪白癬(つめはくせん)・足白癬(あしはくせん)

爪白癬とは、爪に感染した水虫です。皮膚糸状菌というカビによって生ずる感染症で、爪が白色から黄色に濁って厚くなり、ボロボロになっていきます。足白癬とは、足の皮膚に水虫が感染した状態です。足の指の間の皮膚がむける、痒くなるなど症状がでます。誰でも感染する可能性はありますが、糖尿病の方は免疫機能が低下しているので症状が悪くなることがあります。

胼胝(べんち)、鶏眼(けいがん)

一般的には、胼胝(べんち)とは、たこのことで、鶏眼(けいがん)はうおのめのことです。これらは、皮膚の表面が角質化して厚く固くなったもので、足の裏や靴が当たる箇所などに出来やすくなります。厚く盛り上がっていくことで、靴の中でさらに圧迫されてしまうため、潰瘍に進行する危険があり、適切な処置が必要になります。

皮膚の乾燥、亀裂

足病変では、足の皮膚の乾燥も注意する必要があります。乾燥した皮膚に亀裂が入り、その小さな傷から細菌が侵入し、感染症を起こす危険があります。足を洗った後には、保湿をするなどして乾燥を防ぐことが必要です。

このような足のトラブルは、最初は小さな傷でも、感染などによって足の潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)に進行し、足の切断まで悪化してしまうことがあります。そうならないためには、日常から自分の足をよく観察する習慣をつけることが大切です。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド2016~2017
日本皮膚科学会|皮膚科Q&A
高血圧症発症チェック

糖尿病足病変が進行すると下肢切断に至ることもある

ここがポイント!

  • 糖尿病性神経障害がある人は、足の感覚が低下していて、怪我をしても気づきにくい
  • 足の小さな傷は、放置すると潰瘍になることがある
  • 足潰瘍は放置すると、周囲の組織が死んでしまう「壊疽(えそ)」になり、足の切断が必要なこともある

切断に至るメカニズムとは

糖尿病足病変は、
1)神経障害によって感覚が鈍くなる
2)足の小さな傷に気がつきにくくなる
3)小さな傷に細菌が感染し、免疫機能が低下していることにより感染症が増悪する
4)血流障害があることで傷が治りにくくなり、小さな傷が潰瘍になる
5)最終的には周囲の組織が壊死する

足病変は、糖尿病のいろいろな症状によって形成されます。早めに気がついて対処しないと、最終的には「壊死」しまいます。特に、感染症が合併していると進行が早くなります。足の組織は一度壊死してしまうと回復できないため、最終的には切断が必要になることがあります

糖尿病足病変が進行すると

アメリカでは足潰瘍の人の7~20%が下肢切断に至る

糖尿病診療ガイドライン2016によると、地域差はあるが「糖尿病足潰瘍」を発症している人の割合は、1.5%~10%程度とされています。特に、欧米白人に多くみられるとの報告があります。一方、日本人は比較的少なく、平成19年度に実施された「国民栄養調査」では、糖尿病の方のうち、0.7%が足潰瘍を発症しているという結果が出ています。発症率で比べると、欧米人よりも少ないですが、日本人でも0.7%の方は、足潰瘍を発症しているのです。足潰瘍は、再発するリスクが高く治りにくいため、7~20%の方が下肢切断に至ってしまいます。足の切断という最悪の事態にならないためにも、早期に足の異変に気づき、正しい治療をすることが重要なのです。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016

糖尿病足病変予防のためにフットケアをしよう

ここがポイント!

  • 糖尿病足病変の予防には、足に異常がないか観察し、早期発見することが重要
  • 足を清潔にしたり、爪を正しく切るなど、日常生活でフットケアを実践しよう
  • 糖尿病足病変のリスクが高い人は、フットケアの専門外来を開設している医療機関に相談しよう

足に異常がないか毎日観察しよう

糖尿病の人は、足病変を発症するリスクが高いため、足に異常がないか観察することが必要になります。外出からの帰宅時や入浴後など、足の皮膚に傷が出来ていないか、爪に異常がないかなどチェックするようにしましょう。足の裏など見えにくい場所のチェックには、鏡を使うといいでしょう。

足を清潔に保とう

毎日石鹸を使用して足を洗い、清潔に保つことが大切です。力強くゴシゴシ洗うと皮膚が傷ついてしまうので、優しく洗うようにしましょう。特に、足の指の間は水虫が起こりやすい部位です。足の指の間もしっかり洗うようにしましょう。

爪を正しく切ろう

陥入爪(かんにゅうそう)や巻き爪の予防のために、正しい爪の手入れが必要です。足の爪のカットは、深爪に注意して、爪の先がまっすぐになるようにストレートカットに切りましょう。切った後の爪は、四角になるように(スクエアカット)しましょう。

自分に合った靴を選ぼう

糖尿病の人にとって靴選びは、足を守る上でとても重要です。合わない靴を履いていると靴ずれを起こしたり、胼胝(たこ)が出来る原因になります。自分のサイズや足の形に合った靴を選びましょう。

やけどには注意しよう

神経が鈍くなっているため、熱湯には注意が必要です。湯ぶねに入る前には、必ず手で湯加減を確かめるようにしましょう。低温やけどにも注意が必要になるため、あんかや湯たんぽの使用は糖尿病の治療ガイドラインでも禁止されています。

フットケアのポイント

フットケア外来を行っている医療機関もある

「フットケア」を教育をすることは、足病変の予防に有効であり、糖尿病の診療ガイドラインでも推奨されています。
糖尿病足病変の予防で重要なのは、足の異変に早期に気付くことです。早期発見、重症化防止のため、通常の糖尿病外来とは別に「糖尿病フットケア外来」などの専門外来を開設している医療機関もあります。このような専門外来には、医師や糖尿病看護認定看護師など複数の医療従事者がチームを組んで、足にたこや傷などの病変がないか、また正しい爪の切り方など、フットケアの方法を指導しています。

足の処置は必ず医療機関で行おう

足に「たこ」や「うおのめ」などが出来たときに、自分で削るなどの処置を行うのは危険です。処置が正しくできていないと、傷口から細菌が入り、感染が悪化する場合があります。足に異常があるときは、医療機関へ行き、医師又は看護師に処置をしてもらいましょう。
すべての病院にフットケアの専門のチームがあるわけではありませんので、主治医に相談してみることをおすすめします。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド2016~2017
慶応義塾大学病院|KOMPAS|フットケア外来
高血圧症発症チェック

糖尿病足病変(足潰瘍)の治療はできるのか

ここがポイント!

  • 足潰瘍の治療法には、全身状態コントロール、局所処置、感染治療、下肢の血流障害の改善、足への負担を軽減する靴や装具の作成、歩行リハビリ、栄養指導などがある
  • 足潰瘍の治療は、複数の専門医や看護師、管理栄養士、理学療法士など他職種が関わるチーム医療が重要である
  • 血糖コントロールだけでなく、血液中の脂質や血圧管理などの全身のコントロールが重要である

ここでは、糖尿病足病変の中でも、治りにくく下肢の切断に至るケースもある「足潰瘍」の治療法について解説して行きます。

足潰瘍はチーム医療が重要

糖尿病足病変の治療方法は、全身状態コントロール、局所処置、感染治療、下肢の血流障害の改善、足への負担を軽減する靴や装具の作成、歩行リハビリ、栄養指導などがあります。そのため、足潰瘍の治療は、糖尿病内科だけでは対応できず、皮膚科や整形外科、形成外科、血管外科などと連携し、看護師、管理栄養士、理学療法士など他職種が関わるチーム医療を行う事が重要であると考えられています。

糖尿病足病変のチーム医療

全身状態のコントロール

糖尿病の足潰瘍の発症や下肢切断の予防には、そもそもの原因である糖尿病の治療が重要です。厳格な血糖コントロールに加えて、血液中の脂質や血圧の管理など、全身状態のコントロールが重要であると考えられています。

局所治療

局所治療とは、足潰瘍が起きている部分に対して、局所的に行われる治療です
治療法

デブリードマン 壊死してしまった組織をメスなどを使って除去して、傷の清浄化をする治療法
ドレッシング ドレッシングとは、ガーゼのようなドレッシング材を使用して傷自体を覆い、外部からの刺激や細菌の汚染などを防ぐ方法
陰圧閉鎖療法 傷をドレッシング材で多い、陰圧をかけ、創傷の治癒を促す方法

血流障害の治療

足病変の原因の一つに「血流障害」があります。足の傷や潰瘍に血流が届かないと、傷はなおらず、悪化してしまいます。血流障害がある足は、血液が届いていないため、冷たく感じます。そこで、動脈硬化などで狭くなったり、途切れてしまった血管を再建する「血行再建術」という血流を改善させる治療が行われます。血流が改善すると、足はポカポカ暖かくなり、傷に血液が届くため治りやすくなります。

足への負担を軽減する

足への負担が大きくなるほど、足潰瘍の再発リスクが高まることは明らかになっています。そのため、足潰瘍の治療中には、足への負担を軽減する事が重要です。そのため、移動のときには、松葉杖や車椅子などを使用したり、足の負担を軽減するための靴や装具など作成が行われます。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本褥瘡学会|褥瘡予防・管理ガイドライン(第 4 版)(PDF)
日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド2016~2017

まとめ

糖尿病神経障害では、足の小さな怪我に気づきにくく、足潰瘍を起こすリスクが高いです。足潰瘍は、治りにくく、再発のリスクも高く、進行すると足の切断が必要になる場合もあります。足潰瘍にならないためにも、足の異常を早期発見出来るよう、日頃からフットケアを行って行きましょう。本人が高齢の場合などでは、自分自身でフットケアが出来ない場合もあり、家族のサポートが必要になります。フットケア外来などは、家族も一緒に来院し、正しい方法を学ぶ事も重要です。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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