【糖尿病性網膜症とは】進行すると失明に至る糖尿病の合併症について解説します

糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、糖尿病神経障害と並ぶ、糖尿病の三大合併症の一つです。高血糖の状態が長くことで合併症の発症のリスクは上がります。糖尿病性合併症の危険なポイントは、発症初期では自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行している場合が多いことです。ここでは、糖尿病性網膜症について、メカニズム、症状、眼科の受診の頻度などを説明していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01糖尿病網膜症とは
  2. 02糖尿病網膜症の症状
  3. 03糖尿病網膜症が進行すると失明の原因になる
  4. 04まとめ

糖尿病網膜症とは

ここがポイント!

  • 糖尿病網膜症」は、「糖尿病神経障害」「糖尿病腎症」と並ぶ、糖尿病の三大合併症の一つ
  • 糖尿病網膜症は、日本人の失明原因で最も多い
  • 高血糖により「網膜」がダメージを受けると、網膜の細い血管は変形や詰まりが生じ「視力低下」や「失明」の原因となる

「糖尿病網膜症」は、「糖尿病腎症」「糖尿病神経症」と並ぶ、糖尿病の三大合併症の一つです。日本人の失明原因の1位が「糖尿病網膜症」です
糖尿病で高血糖の状態が長く続くと、「動脈硬化」が進行し、全身の血管がボロボロになっていきます。目の内側にも「網膜」という毛細血管が集まった薄い神経の膜があります。
網膜の細い血管が高血糖によるダメージを受けて、変形をしたり、詰まったりして「視力低下」や「失明」の原因となってしまいます。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド2016~2017
慶應義塾大学病院|KOMPAS
厚生労働省e-ヘルスネット|失明
高血圧症発症チェック

糖尿病網膜症の症状

ここがポイント!

  • 糖尿病網膜症は、自覚症状がないまま進行していくことが多い
  • 「単純糖尿病網膜症」「前増殖糖尿病網膜症」「増殖糖尿病網膜症」と徐々に進行していく
  • 「黄斑浮腫」は軽症でも発症し、視力の低下を引き起こす

「糖尿病性網膜症」は、高血糖により網膜の血管が傷つくことで発症します。ここでは、進行していくと起こる様々な症状を解説していきます。

糖尿病網膜症は自覚症状を感じない場合が多い

日本糖尿病学会の診療ガイドライン2016によると、糖尿病網膜症は、初期症状はほとんど感じることは無く、進行した段階でも自覚症状を感じないことがあると記載されています。
目に何か異常を自覚した頃には、糖尿病網膜症はかなり進行してしまっていることがあります。そのため糖尿病は、内科の受診だけではなくて、「眼科」の定期受診がとても重要になります。糖尿病が疑われている段階の人あっても、定期的な眼科の受診をすることが推奨されています

糖尿病網膜症は徐々に進行していく

眼科では顕微鏡のような機械で、「眼底(眼球の内側の部分)」に異常がないかチェックをします。糖尿病網膜症は進行度合いによって、症状や治療法も変わってきます。

(1)単純糖尿病網膜症

高血糖になると、網膜の血管の壁がもろくなっていきます。血管が破裂すると「網膜出血」が起こり、血管が詰まると「毛細血管溜」といった所見が見られるようになります。他にも、網膜に過剰に溢れた脂質が付着すると「硬性白斑」が出来ることがあります。

単純糖尿病網膜症の段階では、自覚症状はほとんど起こらないが多く、「血糖コントロール」「血圧の管理」を十分に行うことで、進行を遅らせることが出来ます。

(2)前増殖糖尿病網膜症

網膜の血管が詰まり、機能しなくなると「新生血管」という新しい血管を作り出します。新生血管は進行により増殖していきますが、もろく出血を起こしやすいです
出血が起こってしまうと網膜にかさぶたのような増殖膜が生じ、「牽引性網膜剥離」「硝子体出血」を引き起こすリスクが高くなります。

前増殖糖尿病網膜症の治療は、レーザーで焼き固めて、新生血管が出来るのを防ぐ「網膜光凝固療術」を行います。

(3)増殖糖尿病網膜症

初期の段階であれば「網膜光凝固療術」を行い進行を予防します。
しかし、すでに「硝子体出血」や「網膜剥離」を発症している場合には、「硝子体手術」が行われます。硝子体手術では、視力障害の原因となっている病変を直接除去したり剥離した網膜を元に戻したりします。しかし、場合によっては、手術が上手くいっても日常生活に必要な視力の回復が得られないこともあります。

糖尿病網膜症の症状

網膜症が軽症でも視力が低下することがある

網膜の中には「黄斑(おうはん)」という部分があり、私たちが物を見る上で重要な役割をしています。この「黄斑」にむくみが起きることがあり、これを「黄斑浮腫」といいます。黄斑浮腫は、先ほどまでの網膜症の進行度合いに関係なく、軽症段階でも発症することがあり、糖尿病の人の視力低下に大きく関係します。
糖尿病の黄斑浮腫は、「ステロイド」や「抗VEGF抗体」と呼ばれる薬剤を硝子体に注入する薬物療法や「局所光凝固術」の治療をして、視力低下を抑制します。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本糖尿病学会|糖尿病治療ガイド2016~2017
慶應義塾大学病院|KOMPAS
公益財団法人 日本眼科学会

糖尿病網膜症が進行すると失明の原因になる

ここがポイント!

  • 糖尿病網膜症が進行すると「牽引性網膜剥離」を起こし、失明の原因になる
  • 「視力低下」や「失明」を防ぐためには、「眼科」の定期受診が重要
  • 網膜症が無くて、血糖コントロールが良好な人でも、糖尿病の人は半年~年に1度は眼科を受診しよう

糖尿病網膜症は、牽引性網膜剥離の原因になる

糖尿病網膜症は徐々に進行していき、重症化した状態を「増殖糖尿病網膜症」といいます。増殖糖尿病網膜症では、「牽引性(けんいんせい)網膜剥離」を引き起こすことがあります。
牽引とは「引っ張る」という意味を持ちます。牽引性網膜剥離は、増殖糖尿病網膜症の際に出来た「増殖膜」によって、網膜が引っ張られて剥がれてしまう症状です。牽引性網膜剥離を起こしてしまうと、物を見るために必要な「黄斑部」という部分が剥がれてしまい、失明の原因となります。黄斑部が剥がれる前に、「硝子体手術」を行う必要があります。

糖尿病性網膜症は失明の第1位の原因

日本では、成人の失明原因の第一位が「糖尿病性網膜症」です。
厚生労働省の健康日本21によると、1988年の厚生省「視覚障害の疾病調査研究」では、糖尿病性網膜症により年に約3,000人が視覚障害となっていると発表しています。
このことからも、糖尿病が重症化して失明してしまういう人がとても多いことがわかります。糖尿病網膜症を発症させないためには、「内科」で血糖コントロールをするだけではなく、「眼科」にも通い定期的な診察を受けることが重要なのです。

糖尿病性網膜症は失明原因の上位

眼科はどのくらいの頻度で受診すればいいのか

糖尿病と診断されたら必ず「眼科」を受診し、網膜症の合併症が起こっていないか、検査を受けることが重要です。糖尿病網膜症は、「視力低下」や「失明」の原因となる恐ろしい合併症ですが、初期の頃はほとんど自覚症状は起こりません。今、何も感じないからといって、放っておいていいわけではないのです。

血糖コントロールが良好であっても、半年~年に1度は眼科を受診して眼底のチェックを受けることが日本糖尿病学会の診療ガイドライン2016でも推奨されています。
「単純糖尿病網膜症」を発症している人は3~6カ月に1度、「前増殖糖尿病網膜症」を発症している人は1~2カ月に1度、「増殖糖尿病網膜症」を発症している人は2週間~1か月程度の頻度での外来受診が推奨されています。この頻度はあくまで目安なので、受診した眼科の医師の指示通りに通院をするようにしましょう。

糖尿病網膜症の状態 推奨 受診頻度
網膜症無し 半年~年
単純糖尿病網膜症 3~6カ月
前増殖糖尿病網膜症 1~2カ月
増殖糖尿病網膜症 2週間~1か月

糖尿病連携手帳

日本糖尿病協会から「糖尿病連携手帳」が発行されています。
糖尿病の治療は、内科と眼科の連携が重要になるため、このような手帳が作られました。糖尿病連携手帳は無料で配布されています。通院されている医療機関にも置いていないか、受診した際などスタッフに聞いてみるといいでしょう。

参考

日本糖尿病学会|診療ガイドライン2016
日本医師会|糖尿病治療のエッセンス2017
厚生労働省|健康日本21
公益社団法人 日本糖尿病協会
高血圧症発症チェック

まとめ

糖尿病網膜症は、自覚症状がないまま進行し、「視力低下」や「失明」に至るケースも少なくありません。糖尿病の方は、内科だけではなく、定期的に「眼科」の診察を受けましょう。今はまだ、網膜症でない人でも年に1度は受診するようにし目の健康を守りましょう。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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