【ACE阻害薬について】血圧を下げる仕組みから副作用などを解説します

ACE阻害薬は、降圧薬治療の第一選択薬となる薬の一つです。血圧が高い状態が続くと次第に血管が傷つき、動脈硬化が進行し、命に関わる合併症を引き起こします。
血圧を下げるために、減塩を意識した食生活に変えたり、体重管理をしたりなど生活習慣の改善を十分に行っても血圧が下がらない場合は、降圧薬の力で血圧を下げる必要があるのです。
ここでは、降圧薬の一つである「ACE阻害薬」について、血圧を下げる仕組みや生じる可能性がある副作用などを詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01ACE阻害薬とは 
  2. 02ACE阻害薬が血圧を下げる仕組み
  3. 03ACE阻害薬の副作用
  4. 04ACE阻害薬一覧
  5. 05まとめ

ACE阻害薬とは 

ここがポイント!

  • ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)は、降圧薬治療の第一選択薬の一つ
  • ACE阻害薬は主要臓器の保護作用があり、糖尿病糖尿病(とうにょうびょう)膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンという、血糖値を下げるホルモンの分泌が減少したり、効果が弱まったりすることで、血液中のブドウ糖濃度が高くなる状態をいう。β細胞が破壊され、インスリンの分泌がほどんどなくなる1型糖尿病と生活習慣病の一つである2型糖尿病の2つに分類される。・循環器疾患・脳血管障害・腎障害などがある高血圧の人に積極的な適応がある

ACE阻害薬は降圧薬治療の第一選択薬

ACE(エース)阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)は、降圧薬治療の第一選択薬とされています。第一選択薬とは、ある病気に対して薬物治療を始める際に、一番初めに処方される薬をいいます。比較的副作用が少なく、症状の改善効果が期待できるものが指定されます。

高血圧の治療では、「カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)」「ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)」「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」「利尿薬」の4種類が第一選択薬とされています。
降圧薬について詳しくは降圧薬(降圧剤)について|知っておくべき主な4種類と効果・副作用を解説をご参照ください。

ACE阻害薬が適用される人

ACE阻害薬には、主要臓器の保護作用があり、糖尿病糖尿病(とうにょうびょう)膵臓のβ細胞から分泌されるインスリンという、血糖値を下げるホルモンの分泌が減少したり、効果が弱まったりすることで、血液中のブドウ糖濃度が高くなる状態をいう。β細胞が破壊され、インスリンの分泌がほどんどなくなる1型糖尿病と生活習慣病の一つである2型糖尿病の2つに分類される。」や「心肥大心肥大(しんひだい)心臓の壁が厚くなり、大きくなった状態をいう。」「心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。」「心不全」などの循環器疾患がある人、「脳血管障害」や「腎障害」などがある高血圧の人の治療に適している降圧薬とされています。降圧薬は、それぞれ血圧を下げる仕組みが異なるため、その人の病態や年齢などに合わせて、最も適した薬が医師の判断で処方されているのです。

血圧がどの程度だと、薬を飲んだほうがいいのか

血圧が高いからといって、すぐに降圧薬を飲み始めるわけではありません。高血圧は、生活習慣病の一つであり、血圧を下げるためには、減塩や体重管理など「生活習慣の改善」を十分に行うことが重要です。しかし、生活習慣の改善を続けても、血圧が下がらない場合もあります。その場合には、血圧を下げるために降圧薬治療が開始されるのです。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」によると、降圧薬の開始のタイミングは、リスクの重要度によって3段階に分けられています。リスク群は、血圧のレベルや他の病気の有無などから判定されます。

リスク群 降圧薬開始タイミング
低リスク 生活習慣の改善を3か月程度十分に行って、血圧が「140/90mmHg以上」の場合
中等リスク 生活習慣の改善を1か月程度十分に行って、血圧が「140/90mmHg以上」の場合
高リスク 直ちに降圧治療を開始

高血圧の基準値について詳しくは「高血圧の診断基準を知ろう|自分の血圧は正常な数値か確認しよう」をご参照ください。

なぜ薬の力で血圧を下げる必要があるのか

血圧を下げる主な目的は『命に関わる合併症の発症、進展、再発の防止』です。そのため、生活習慣の改善を十分に行っても血圧が下がらない場合には、薬の力で血圧を下げているのです。

血圧が高いと合併症の発症リスクが高まる


血圧が高い状態が長く続くと、血管の壁が傷つき「動脈硬化」が進行していきます。血管は、全身に張り巡らされているため、動脈硬化が進行すると脳、心臓、腎臓などに血液を送る血管が狭まったり、詰まったりすることで、「心筋梗塞心筋梗塞(しんきんこうそく)心臓に必要な酸素や栄養素を送る血管が、詰まったり、血管径が細くなることで、送られる血液量が減り、心臓を動かす筋肉が死んでしまった状態。典型的な症状としては、締め付けられるような胸の痛みが30分以上持続する。高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病や喫煙が危険因子とされている。」「脳卒中脳卒中(のうそっちゅう)脳卒中は、脳内の血管が破れたり詰まったりして、神経細胞が障害される病気をいう。脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」に分類される。脳卒中により年間約11万人が死亡しており、国内の死因割合で4位となっている。(平成27年度)」「腎不全」などの命に関わる危険な合併症を発症します。合併症を予防するために、降圧薬治療を受けている方は、自分の判断で薬を中断したり、量を変更したりせず、医師の指示のもと正しく服用するようにしましょう。

参考


高血圧症発症チェック

ACE阻害薬が血圧を下げる仕組み

ここがポイント!

  • ACE阻害薬は、血圧を上昇させる働きがある「アンジオテンシンII」を減らして血圧を下げる作用がある
  • アンジオテンシンⅡには血管を収縮させたり、血液量を増やしたりする働きがある
  • アンジオテンシンIIは、肝臓で作られた「アンジオテンシンI」という物質が「ACE」という酵素の働きにより変化したもの
  • ACEの働きを阻害することで、アンジオテンシンⅡの産生がされなくなり、血圧が下がる

ACE阻害薬は、血圧を上昇させる働きがある「アンジオテンシンII」という物質を減らす事で血圧を下げる薬です。

アンジオテンシンⅡは、肝臓で作られた「アンジオテンシンI」という物質が「ACE」という酵素の働きにより変化した物質です。血管を収縮させたり、血液量を増やしたりする働きによって、血圧を上昇させます。
ですから、ACE阻害薬によってACEという酵素が働きが阻害されることで、「アンジオテンシンII」が作られることが無くなるため、血管が拡がり、血圧が下がるのです。

参考

ACE阻害薬の副作用

ここがポイント!

  • ACE阻害薬の副作用で最も多いのは「空咳(痰の絡まない乾いた咳)」がある
  • ACE阻害薬の服用により、稀に「血管浮腫」が出現する場合もある
  • ACE阻害薬の服用を始めて体調不良を感じたら、すぐにかかりつけ医を受診しよう

どのような薬でも病気に対する治療効果が期待できる反面、副作用が起こる可能性はあります。ここでは、ACE阻害薬の副作用と使用している方が注意するポイントについて触れていきます。

ACE阻害薬の主な副作用

空咳

ACE阻害薬の副作用で最も多いのは「空咳(からぜき)」です。
空咳とは、痰が絡んでいない乾いた咳をいいます。ACE阻害薬には、血圧を上げる物質を作る酵素の働きを阻害する作用がありますが、気道を刺激する「ブラキニン」の分解も抑えてしまいます。そのため、気道が刺激されやすくなり、空咳が出てしまうのです。

空咳は「ACE阻害薬を飲んでいる方の20~30%に、服用開始から1週間から数か月程度で出現する」とされています。ただし、薬を中止すれば速やかに止まると、高血圧診療ガイドラインには記載されています。

血管浮腫

ACE阻害薬の服用により、稀に「血管浮腫」が出現する場合もあるようです。血管浮腫とは、急に皮膚が腫れてしまう症状です。急に、くちびる、まぶた、舌、口の中、顔、首などが大きく腫れるため注意が必要です。

ACE阻害薬による血管浮腫は、顔面や頚部に好発し、のどがはれると息がしづらくなり、呼吸困難を引き起こすことがあります。 「のどのつまり」「息苦しい」「話しづらい」といった症状が現れたら、直ちに医療機関で適切な処置を行うことが必要になります。

副作用が起こったら、すぐにかかりつけ医に相談しよう

ACE阻害薬を服用してから、体調不良を感じたら、すぐにかかりつけ医に相談するようにしましょう。副作用が起こっていた場合、薬の量の調整や他の薬への変更が必要になります。
処方薬は、その人の血圧の状態や他の病気の有無を調べた上で、適切な種類と量が選ばれています。飲む量や飲む時間を、自己判断で変更するの危険なのでやめましょう。

ACE阻害薬を服用する際の注意事項

妊娠している人にACE阻害薬は使用できない

妊娠中のACE阻害薬使用による胎児への影響が報告されており、催奇性や腎の形成不全、羊水過少症などが起こる危険があるため、妊婦、または妊娠している可能性がある女性へのACE阻害薬の使用は禁忌とされています。
また、使用中に妊娠が判明した場合にも、薬を中止する必要があるため、速やかににかかりつけ医や産婦人科医に伝えるようにしましょう。

高血圧以外の病気の治療をしている人は医師に必ず伝えよう

薬の飲み合わせによっては、体に悪い作用を与えたり、薬の効果に影響を与えてしまうことがあります。高血圧のほかに病気がある場合、病気によっては使ってはいけない降圧薬、あるいは慎重に使わなければならない降圧薬があります。持病がある方は、自分が飲んでいる薬については、主治医に正確に伝えるようにしましょう。

参考


医師に高血圧の相談をしませんか?高血圧のお悩みを募集しています

ACE阻害薬一覧

日本で販売が許可されている降圧薬の一覧をご紹介します(2018年6月時点)

一般名 商品名
カプトプリル カプトプリル/カプトプリルR
エナラプリルマレイン酸塩 レニベース
アラセプリル セタプリル
デラプリル塩酸塩 アデカット
シラザプリル水和物 インヒベース
リシノプリル水和物 ロンゲス・ゼストリル
ベナセプリル塩酸塩 チバセン
イミダプリル塩酸塩 タナトリル
テモカプリル塩酸塩 エースコール
キナプリル塩酸塩 コナン
トランドラプリル オドリック/プレラン
ペリンドプリルエルブミン コバシル

参考


まとめ

ACE阻害薬は、高血圧の降圧治療に用いられている薬の一つです。降圧薬にはいくつか種類がありますが、血圧の状態、年齢、その他の病気の有無などから、どの薬を使用するか医師が判断します。ACE阻害剤の副作用として、空咳、血管浮腫があります。飲み始めてから「咳が増えた」「顔が腫れる」などの症状がでたら、ACE阻害剤の副作用の可能性があります。必ず、主治医に相談しましょう。自己判断で薬を中断したり、量を変更したりせず、医師の指示のもと正しく服用し、合併症の発症を予防していきましょう。

Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

この記事の情報の信憑性について

オンラインクリニックでは、医療従事経験者による記事編集、専任の監修医を設けることにより信頼性のある情報提供を心がけておりますが(詳細は「運営方針」をご確認ください)、ユーザーの方ご自身、またはご家族の具体的な医療上の問題を解決する必要がある場合には、医療機関へ相談されるか、または受診をするようにしてください(詳細は「利用規約」をご確認ください)。

記事についてのお問い合わせ