糖尿病は高血圧を合併すると予後が悪化|糖尿病における高血圧治療の重要性について解説

糖尿病で血圧が高い場合は、早期の段階で降圧治療が開始されます。なぜなら糖尿病と高血圧が併発すると、動脈硬化の進行が速くなるため、合併症の発症リスクが高まるのです。ここでは、糖尿病の人が高血圧を発症しやすい理由から、糖尿病における高血圧治療の重要性や合併症を発症させないための予防法などについて詳しく解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01糖尿病になると高血圧を発症しやすい
  2. 02糖尿病に高血圧を併発すると予後が悪化する
  3. 03糖尿病に合併した高血圧の治療開始時期とは
  4. 04高血圧の治療は糖尿病の合併症予防に有効である
  5. 05まとめ

糖尿病になると高血圧を発症しやすい

ここがポイント!

  • 高血糖状態が続くと動脈硬化が進行するため、血圧が上昇しやすくなる
  • 糖尿病性腎症を発症すると、体液量が増え、心臓の負担も大きくなるため血圧が上がる
  • 糖尿病と高血圧は、ともに生活習慣病であり、発症要因が共通しているため、併発するケースが多い

糖尿病と高血圧の合併率する率が高いことが明らかになっています。
その理由には、高血糖がもたらす体への影響や糖尿病の発症要因などが関係しています。ここでは、糖尿病になると高血圧を発症しやすい理由について解説していきます。

高血糖状態が続くと動脈硬化が進行する

糖尿病は、血糖値を下げるホルモンの分泌や効果に異常が生じ、血糖値が高くなる状態を言います。高血糖の状態が長く続くことで、血管が次第にダメージを受けて、動脈硬化を進行させます。動脈硬化によって、血管が硬くなったり、血管の幅が狭まったりすることで血圧が高くなります。そのため、糖尿病が進行すると高血圧を発症する場合が多いのです。

糖尿病の合併症は血圧をさらに上昇させる

血糖値の高い状態が続くと動脈硬化の進行により、血管が狭まり血流が悪くなります。それが、腎臓の血管で起こると、腎機能が徐々に低下していき、糖尿病腎症を発症します。
腎臓は、血液中の老廃物や不要な水分を尿として排出する働きがあるため、腎機能の低下することで、尿が出にくくなり、体内の水分量が増えてしまいます。

体内の血液量が増加すると、血管の壁にかかる圧力が高くなると血圧が上昇します。また、心臓の負担も大きくなるため、その状態が長く続くと心臓病のリスクが高まります。

糖尿病と高血圧は発症要因が共通している

糖尿病と高血圧は、両方とも生活習慣病であり、メタボリックシンドロームの症状に含まれています。いずれも、生活習慣の乱れからインスリン抵抗性が増加することが、発症の共通要因として考えられています。

糖尿病の方が高血圧を併発している割合は、糖尿病でない方に比べて約2倍高いことがわかっています。一方、高血圧の方が糖尿病を併発している割合も、高血圧でない方に比べて2~3倍高いのです。このように、糖尿病と高血圧は発症要因が共通していることも、併発するケースが多い理由であるといえます。

糖尿病と高血圧は併発している場合が多い

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014
厚生労働省e-ヘルスネット|メタボリックシンドロームの危険性
肥満症診療ガイドライン2016 |日本肥満学会

高血圧症発症チェック

糖尿病に高血圧を併発すると予後が悪化する

ここがポイント!

  • 糖尿病と高血圧は、どちらも動脈硬化を進行させる
  • 糖尿病と高血圧を合併すると、「脳卒中」「虚血性心疾患」「末梢閉塞性動脈疾患」などの大血管疾患の発症、および死亡のリスクを上げる
  • 糖尿病と高血圧の合併は「糖尿病腎症」「糖尿病網膜症」「糖尿病神経障害」といった細小管症も進行させる

糖尿病と高血圧はどちらも「動脈硬化」を進行させるため、糖尿病と高血圧を併発している場合には、合併症の発症リスクがさらに高まると考えられています。
ここでは、発症リスクのある合併症を「大血管疾患(太い血管の病気)」と「細血管疾患(細い血管の病気)」にわけて解説します。

大血管疾患

1型糖尿病・2型糖尿病共に、糖尿病で高血圧が合併すると大血管疾患の発症、および死亡のリスクが上がります。アメリカの研究では、男性34万人を平均12年間追跡した結果、大血管疾患死亡率は糖尿病でない人に比べて約3.7倍高くなったとの報告もあります。
ここでは、主な大血管疾患をみていきましょう。

<主な大血管疾患>
脳卒中
脳の血管が詰まる脳梗塞、血管が破れて出血するくも膜下出血、脳出血といった脳血管障害を引き起こす
脳卒中の症状は突然現れることが多いが、頭痛・めまい・舌のもつれ・手足のしびれなどの前ぶれ症状が起こることもある

虚血性心疾患
心臓の周りにある冠状動脈の硬化による狭心症・心筋梗塞といった心臓疾患
心筋梗塞や脳卒中が起こったら、至急医療機関で治療を受ける必要がある

末梢閉塞性動脈疾患
手や足の血管で動脈硬化が進行して血液が流れにくくなると、糖尿病性足病変の要因となる閉塞性動脈硬化症(ASO)や手や足の神経障害を引き起こす

足潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)といった「足病変」は糖尿病の人に多い疾患で、早期の段階で治療を行わないと最悪の場合足の切断となってしまうこともある
糖尿病性足病変について詳しくは、糖尿病性足病変とは|足の壊死、切断を防ぐためのフットケア法や治療法の解説をご参照ください。

細血管疾患

高血糖や高血圧が続くと、徐々に全身の毛細血管や細小動脈にダメージが蓄積されていきます。
糖尿病の三大合併症と言われる「糖尿病腎症」「糖尿病網膜症」「糖尿病神経障害」は細小管症の代表的な合併症です。これらの臓器はとても細い血管が密集しているため、特に影響を受けやすいのです。
糖尿病の三大合併症について詳しくは、糖尿病の合併症について|放置してはいけない理由からその怖さを解説しますの解説をご参照ください。

特に糖尿病腎症では血圧管理が必要

腎臓は、細い血管の複雑な塊である「糸球体」により、血液をろ過して体に不要な老廃物を尿として排泄する働きがあります。糖尿病特有の合併症である「糖尿病腎症」は、ろ過の役割をしている糸球体がダメージを受けるため、腎臓の機能が低下していきます。
腎機能がある程度まで低下しないと尿たんぱくやむくみといった症状は現れません。そのため、これらの症状に気が付いたときには、すでに症状が進行してしまっているケースもあります。

血圧管理は腎不全への進展を防ぐために重要

糖尿病腎症が進行すると、塩分やタンパク質の摂取量が厳しく制限された食事療法が必要になり、さらに「慢性腎不全」まで症状が進むと、生きていくために、機械で血液をろ過する「人工透析」を受け続けるか「腎移植」といった治療が必要になってしまいます。
このような状態を防ぐため、特に糖尿病腎症の方は症状を悪化させる高血圧の改善が重要なのです。
糖尿病腎症について詳しくは、【糖尿病性腎症とは】ステージごとの症状や治療法から人工透析まで解説をご参照ください。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014
国立循環器病研究センター|循環器情報サービス
厚生労働省e-ヘルスネット|脳血管障害・脳卒中

糖尿病に合併した高血圧の治療開始時期とは

ここがポイント!

  • 糖尿病で高血圧を併発すると、合併症のリスクが高くなるため早期の治療が必要
  • 糖尿病に併発した高血圧の場合は、診察室血圧で「130/80mmHg以上」の場合に降圧薬治療が開始される
  • 治療は、減塩・体重管理・運動・節酒・禁煙といった「生活習慣の改善」と「降圧薬」の内服が基本となる

前の章で説明したように、高血圧は糖尿病の合併症を進行させる危険性があります。そのため、治療の開始基準が単独の高血圧の場合とは異なるのです。ここでは、糖尿病に合併した高血圧の治療開始時期を確認していきましょう。

通常よりも早期に治療が開始される

そもそも、高血圧の治療には血圧を下げて、命に関わる合併症の発症・進展・再発を防止する目的があります。降圧薬の治療対象となるのは、高血圧単独の場合、血圧が「140/90mmHg以上」の方とされています。
しかし、糖尿病に併発した高血圧の場合は、早期に治療が必要なので、血圧が「130/80mmHg以上」であれば、3ヶ月間を超えない範囲で、生活習慣の改善するための指導が開始されます。また、すでに血圧が「140/90mmHg以上」の場合は、生活習慣の改善と降圧治療を同時に開始するとされています。
このように、糖尿病の方は、そうでない方に比べ、合併症を発症するリスクが高いので、早期に治療を開始しなくてはならないのです。

糖尿病を合併している高血圧の治療法

高血圧の治療は、「生活習慣の改善」と「降圧薬治療」です。
ここでは、糖尿病に併発した高血圧の治療法について解説していきます。

1)生活習慣の改善
高血圧は生活習慣病の一つであり、生活習慣を改善することで血圧が下がることがわかっています。生活習慣の改善では、減塩、食事、減量、運動、節酒、禁煙の6つの項目を中心に行なっていきます。特に、食事療法と運動療法は重要であり、肥満体型の方が減量した場合には降圧効果がさらに期待できるとされています。また、減塩指導(1日あたりの塩分摂取量を6g未満)も降圧には重要です。

血圧の状態によっては、降圧薬によって薬の力で血圧を下げます。しかし、薬の効果が切れれば血圧は再び上昇してしまいます。生活習慣の改善は、継続して行うことが重要です。
血圧を下げるコツについては【血圧を下げる3つの方法とは】食べ物・運動・薬について詳しくご紹介をご参照ください。

2)降圧薬
糖尿病に併発した高血圧の場合は、診察室血圧が「140/90mmHg以上」の場合は、直ちに降圧薬による治療が開始されます。降圧薬は様々な種類があり、血圧の状況や他の病気の有無などにより、医師がその人に合った薬を選択します。
降圧治療の第一選択薬は、「ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)」又は「ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)」を用いることが推奨されています。これらの治療薬には、降圧の効果だけでなく、臓器の保護作用やインスリン抵抗性の改善作用があります。

「ARB」「ACE阻害薬」を用いても、血圧を十分に下げることが出来ない場合は、薬の増量、又はCa拮抗薬、利尿薬を併用することが考慮されます。そして、さらに降圧が必要な場合は、ARB又はACE阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬の3剤を併用する場合もあります。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014
厚生労働省e-ヘルスネット|高血圧
高血圧症発症チェック

高血圧の治療は糖尿病の合併症予防に有効である

ここがポイント!

  • 血圧を下げることで、糖尿病の合併症を予防することが期待できる
  • 合併症予防のための診察室血圧の目標は「130/80mmHg以下」
  • ただし、65~74歳の場合は「140/90mmHg以下」、75歳以上では「150/90mmHg以下」を目標値とする

血圧管理をして合併症を予防をしよう

糖尿病診療ガイドライン2016にも、血圧を下げることで、糖尿病腎症といった合併症を予防する可能性があることが記載されています。合併症を予防するための診察室血圧の目標値は「130/80mmHg以下」です。そのため、たとえ今はまだ血圧が高くないという人も、高血圧予防のために、今のうちから生活習慣の見直しを始めましょう。

高齢者の方は血圧の目標値が異なる

高齢の方は厳格な血圧コントロールをすると健康に悪影響を起こすことがあるため、合併症予防のための血圧の目標値は少し高く設定されます。
65~74歳の場合は「140/90mmHg以下」、75歳以上では「150/90mmHg以下」を目指して降圧治療を行います。このように目標値は、年齢や他の病気の有無などによって目標値は変わってきますので、主治医の指示を下、血圧管理を行うようにしましょう。

家庭で血圧を測ろう

医療機関を受診した際や健康診断でしか血圧を測らないという人はいませんか。
血圧は測る際の状況や、その日の体調によって数値が大きく変動します。医師や看護師がいる医療機関で血圧を測定すると緊張して血圧の数値が高く出る人がいます。そのようなタイプを「白衣高血圧」といいます。他にも医療機関では血圧が正常域であるにも関わらず、家庭血圧が高血圧の基準を超えるものを「仮面高血圧」といいます。このように、診察室血圧だけでは正確な血圧をする事ができないため、家庭血圧測定が重要視されているのです。

家庭で血圧を測定する重要性

糖尿病診療ガイドライン2016では、診察室で測る血圧よりも、毎日同じ時間帯、同じ状態で測定される家庭血圧が、合併症を予防する上で重視されています。家庭での血圧の目標値は「125/75mmHg以下」にコントロールすることが推奨されています。血圧をコントロールすることで、合併症を起こさないようにしましょう。

血圧は正しく測らないと、正確な値を調べることが出来ません。
正しい血圧の測り方は、【正しい血圧測定法とは】血圧計の種類別に測定の原理から正しい手順をご紹介をご参照ください。
そして、家庭で測定した血圧はノートなどに記録しておき、通院時に主治医に見せるようにましょう。

参考

糖尿病診療ガイドライン2016
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014

まとめ

糖尿病も高血圧も、自覚症状が乏しいまま進行していきます。ある日突然、合併症を起こしてしまい気づくこともあるのです。自宅での血圧測定が大切だと触れましたが、そうした自己管理や生活習慣の改善が、重大な合併症を引き起こさないための予防として大切になります。血圧測定は家庭でも継続して続けていきましょう。
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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