脂肪肝は肝臓に脂肪が蓄えられた状態をいう
ここがポイント!
- 脂肪肝は、肝臓の肝細胞に30%以上中性脂肪が溜まった状態をいう
- 脂肪肝を放置すると肝炎を発症し、肝硬変に進行する場合もある
脂肪肝は、文字通り「肝臓に中性脂肪が溜まった状態」をいいます。
私たちは、食事からエネルギーを摂取していますが、食べ過ぎや飲み過ぎ、運動不足などで摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余ったエネルギーは糖や中性脂肪となり、内臓脂肪や皮下脂肪として蓄えられていきます。肝臓の肝細胞にも溜まっていき、30%以上に脂肪が溜まると「脂肪肝」と診断されます。脂肪肝を放置すると肝炎を発症し、肝硬変に進行する場合もあるのです。

参考

脂肪肝の主な原因はアルコールと肥満
ここがポイント!
- 肝臓に脂肪が溜まる原因によって「アルコール性脂肪肝」 と「非アルコール性脂肪肝」に分けられる
- 過剰の飲酒は、1日平均純アルコール60g以上の飲酒(常習飲酒家)と定められている
- アルコール性脂肪肝を放置すると、アルコール性肝炎やアルコール性肝硬変や肝がんなどに進行する危険性がある
- 非アルコール性脂肪肝の主な原因は、生活習慣の乱れによる内臓脂肪の増加、ストレスなどである
脂肪肝はアルコール性と非アルコール性のものに分けられる
脂肪肝は、肝臓に脂肪が溜まる原因によって「アルコール性脂肪肝」 と「非アルコール性脂肪肝」に分けられます。アルコール性脂肪肝は、名前の通りアルコールの飲み過ぎが原因の脂肪肝をいいます。一方、「非アルコール性脂肪肝」は、生活習慣の乱れや遺伝的要因により発症することが明らかになっています。最も多い原因は、食べ過ぎによる栄養過多ですので、肥満、糖尿病、過剰飲酒をする方に多くみられます。
アルコールが原因の脂肪肝とは
アルコールの飲み過ぎによる脂肪肝を「アルコール性脂肪肝」といいます。過度な飲酒は、脂肪肝だけでなく、様々な肝障害を引き起こすとされています。ここでいう過度な飲酒は「日本アルコール医学生物研究会(JASABRA)」により、「過剰の飲酒とは、1日平均純アルコール60g以上の飲酒(常習飲酒家)」をいうと定められています。また、女性やお酒の弱い方は1日40g程度の飲酒でも、アルコール性肝障害を発症する可能性があるとされています。1日平均純アルコール60g以上はどのくらいか
過度な飲酒を示す純アルコール60g以上とは、お酒でいうとどのくらいの量なのでしょうか。ビールでは中瓶3本、日本では3合、ワインでは5杯、ウイスキーではダブルで3杯程度で、およそ純アルコール60gです。これだけ見るとかなりの量ですが、晩酌を毎日する方や一次会だけでなく二次会、三次会と遅くまで飲むことが多い方は、アルコールを多量に摂取している可能性もあります。
このような常習飲酒家の90%は、脂肪肝であるとされています。
アルコール性脂肪肝は断酒が必要である
アルコール性脂肪肝は、原因が過度の飲酒であるため、改善には「断酒」が最も重要です。また、常習飲酒家は、生活習慣が乱れている場合がほとんどなので、食事療法や運動療法もあわせて行われます。アルコール性脂肪肝を放置すると、アルコール性肝炎やアルコール性肝硬変や肝がんなどに進行する危険性があります。ですから、脂肪肝の時点で改善を行うことが非常に重要なのです。肥満やストレスなどが原因の非アルコール性脂肪肝とは
非アルコール性脂肪肝(NAFL)は、アルコールが発症の原因ではない脂肪肝をいいます。しかし、これはお酒を全く飲まない方だけが発症するわけではありません。お酒を飲んでいても、少量の場合には「非アルコール性脂肪肝」と診断されます。しかし、飲酒量についての定義は科学的根拠が乏しく、学会によって基準が異なり、純アルコール量10~40g/日程度と幅があります。非アルコール性脂肪肝の主な原因は、生活習慣の乱れによる内臓脂肪の増加、ストレスなどがあります。そのため、メタボリックシンドロームと原因が同じなので、合併率が非常に高いです。
非アルコール性脂肪疾患は遺伝的要因も関係している
非アルコール性脂肪肝は、遺伝的要因も関係していると考えられてきました。実際に、2018年に発表された、松田教授らによる研究報告では、非アルコール性脂肪肝疾患の方902名の遺伝子を調べたところ、非アルコール性脂肪肝疾患に関連する4つの疾患感受性遺伝子を同定しました。これらの組み合わせによっては、リスクが低い方に比べて5.0倍も発症するリスクが高いことが明らかになったのです。あくまでもこれは、なりやすい体質である可能性を示すものであり、発症の原因になるわけではありません。しかし、何らかの遺伝的要因が関与していることは考えられます。
非アルコール性脂肪肝は肝がんになる危険性が高い
非アルコール性脂肪肝は、改善せず放置すると非アルコール脂肪肝炎に進行します。さらに、炎症の状態が継続することで、次第に肝細胞が壊れていき、硬くなっていきます。この状態を「肝硬変」といい、肝硬変の数%は肝がんを発症するとされています。このように、脂肪肝を放置すると、命に関わる重大な病気を発症する危険性があるのです。
参考
薬剤性の肝障害も報告されている
ここがポイント!
- 非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎は、薬剤の副作用により発症する場合もある
- 薬の成分は肝臓で代謝されるため、種類や体質によっては肝障害を生じやすい
- 薬を飲んでいる際に、異常を感じたら主治医に相談しよう
非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎は、薬剤の副作用により発症する場合もあります。
ここでは、なぜ薬に使用により肝障害が引き起こされるのか、肝障害を引き起こす主な薬剤について解説します。
薬の成分は肝臓を通過し処理されている
一般的な飲み薬の成分は、腸で吸収され肝臓へ運ばれます。肝臓では、薬の代謝が行われ、形を変えて血液中から必要な場所へと運ばれていきます。このように、薬の成分はほとんどが肝臓を通るため、種類によっては肝臓に障害を来たす場合もあるのです。
NAFLD/NASHを引き起こしやすい薬とは
非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎を引き起こしやすい薬は、大きく分けて3種類あります。薬の使用により肝障害が生じた場合には、薬の中断や変更などが医師の判断で行われます。薬を飲んでいる際に、異常を感じたら主治医に相談するようにしましょう。<NAFLD/NASHを引き起こしやすい薬>
- 肝細胞ミトコンドリア毒性を起こし、脂肪酸酸化を阻害する薬物(アミオダロン、タモキシフェンなど)
- 内臓脂肪の増加、糖尿病の増悪、脂質異常症の悪化などNAFLD/NASHの危険因子を増強する薬物(タモキシフェン、エストロゲン、グルココルチコイドなど)
- その他(カルシウム拮抗薬、メチルドパ、メトトレキサート、バルプロ酸、カルバマゼピンなど)
