糖尿病は人工透析の原因の第1位である
ここがポイント!
- 糖尿病性腎症は人工透析の原因疾患の第1位で、4割以上を占めている
- 日本透析医学会が調査している2016年の「わが国の慢性透析療法の現状」によると、国内で透析を受けている人は、約33万人いる
糖尿病特有の三大合併症の一つである「糖尿病性腎症」は、進行すると腎不全に陥り、人工透析が必要になります。日本透析医学会が調査している2016年の「わが国の慢性透析療法の現状」によると、国内で透析を受けている人は、32万9,609人でした。
また、新たに透析が必要になった方の原因疾患の調査では、糖尿病性腎症が最も多く43.2%という結果で、次いで、慢性糸球体腎炎が16.6%、腎硬化症が14.2%でした。かつては、慢性糸球体腎炎が原因疾患の1位でしたが、糖尿病性腎症の増加により、1998年に順位が入れ替わりました。その後も、2009年あたりまで増加の一途を辿っていましたが、ここ数年は横ばいで経過しています。
このように現在では、人工透析の導入が必要な方の4割以上は、糖尿病が原因なのです。


なぜ糖尿病で人工透析が必要になるのか
ここがポイント!
- 糖尿病は血糖値が高い状態が続くため、血管が次第にダメージを受けて動脈硬化を進行させる
- 腎臓の糸球体がダメージを受けるとろ過する機能が低下し、糖尿病性腎症を発症する
- 糖尿病性腎症は進行すると腎不全に陥るため、人工透析を行い血液をろ過する必要がある
なぜ、糖尿病で人工透析が必要な状態になってしまうのでしょうか。
ここでは糖尿病のメカニズムからその理由について解説します。
糖尿病は動脈硬化を進行させる
糖尿病は、血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌に異常をきたし、血糖値が高い状態が続いてしまう病気です。血糖値が高い状態が続くと、次第に全身の血管がダメージを受けてしまい動脈硬化が進行します。腎臓の血管も動脈硬化が進行していく
腎臓には、糸球体という毛細血管が毛玉のように網目状に集まっている部分があります。この糸球体には、血液をろ過し不要な老廃物や塩分を尿として体外に排出したり、必要な水分を再吸収したりする働きがあります。しかし、糖尿病の進行により糸球体がダメージを受けると、ろ過機能が低下し「糖尿病性腎症」を発症してしまうのです。糖尿病性腎症は初期では自覚症状がほとんどない
糖尿病性腎症は、進行の度合いにより5つのステージに分けられますが、初期段階ではほとんど自覚症状が現れません。むくみ、全身倦怠感、貧血などの自覚症状が現れる頃には第4期まで進行している場合がほとんどです。腎臓の機能は、一度失うと二度と回復することはありません。そのため、第5期まで進行してしまった場合には、人工透析を行い腎臓の代わりに、定期的に血液をろ過し続けなければならないのです。糖尿病腎症について詳しくは【糖尿病性腎症とは】ステージごとの症状や治療法から人工透析まで解説をご参照ください。
参考
糖尿病診療ガイドライン2016
CKD診療ガイドライン2013|日本腎臓学会(pdf資料)
CKD診療ガイドライン2013|日本腎臓学会(pdf資料)
人工透析ではどのくらいの費用が掛かるのか
ここがポイント!
- 人工透析にかかる費用は1人あたり1年間で500~600万程掛かる
- 医療費助成制度を受けることができ、負担額は1ヶ月あたり1万円が上限となる
人工透析とは
前の章でも解説しましたが、人工透析には腎臓の代わりに血液をろ過する役割があります。人工透析には「血液透析(HD)」と「腹膜透析(CAPD・APD)」の2種類があります。血液透析
血液透析は、血管を透析の機械に繋いで、血液を体外に取り出しろ過する方法です。血液透析は、たくさんの血液を取り出す必要があるため、シャントと呼ばれる動脈と静脈を結びつけた血液量の多い血管を手術により作る必要があります。血液透析は、週に3回程度、1回につき4~5時間程かかります。費用は、1ヶ月あたり約30万円かかります。腹膜透析
腹膜透析は、腹部に管を通して透析液を注入し、腹膜を介して不要な老廃物や塩分を透析液に移動させることで、血液を浄化させる方法です。腹膜透析の場合、透析液の交換を患者さん自身で、1日に2~4回程行う必要があります。医療機関に行かなくても透析治療が受けられることはメリットですが、自分で行う必要あるため感染などのリスクがあったり、長年の使用はできないため最終的には血液透析か腎移植などの他の方法を選択しなければいけなかったりすることを理解した上で選択することが重要となります。費用は1ヶ月あたり、約40-50万円かかります。人工透析にかかる費用とは
人工透析にかかる費用は、1人あたり1年間で500~600万程度掛かります。しかし、これらの費用を患者さんが全て負担しなければいけない訳ではありません。透析治療の場合には、医療助成制度を利用することが出来ますので、実際に負担する金額は1ヶ月あたり1万円程度となります(患者さんの所得により異なりますが、上限は2万円)。詳しく知りたい方は、医療機関やお住まいの区市町村に相談することおすすめします。
