STD(性感染症)について知ろう|病気の種類や検査方法からパートナーへの感染を防ぐために出来ることまで

性感染症(STD)は、性行為によって感染する病気の総称をいいます。性行為が比較的盛んな年代を中心に拡大しています。性感染症は、自分だけでなく性行為を行うパートナーも発症していたり、感染させてしまう恐れがあるため、両者とも治療や検査を受けることが重要です。ここでは、性感染症について解説していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01性感染症(STD)とはどんな病気なのか
  2. 02性感染症(STD)は男女で症状が異なるものもある
  3. 03性感染症(STD)は様々な種類がある
  4. 04性感染症(STD)を予防するためのポイント
  5. 05まとめ

性感染症(STD)とはどんな病気なのか

point
- 性感染症(STD)は20代を中心に多い病気である
- 性行為には膣性交以外のオーラルセックスなども含まれている
- 不特定多数の相手との性交経験が多い人ほど感染のリスクが高い

性感染症(STD)は若い世代に多い

性感染症(STD)とは、性行為で感染する感染症の総称です。
<代表的なSTD(性感染症)>
・AIDS/HIV
・性器クラミジア感染症
・性器ヘルペスウイルス感染症
・尖圭コンジローマ
・梅毒
・淋菌感染症
・HTLV-1感染症 

このような病気にかかる人の年代の中心は、性活動が盛んである20代が多く、東京都感染症サーベイランスの報告によると、STDの中で頻度の高い「性器クラミジア」は、20歳代の男性で34%、女性では53%もの割合を占めていました。一方、性器クラミジアと並んで頻度の高い「淋菌感染症」も、20歳代の男性で33%、女性で40%もの割合を占めていると報告されています。

また、医学書である「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」によると、産婦人科の外来を訪れた10代女性の15.8%、およそ8人に1人がクラミジアに感染していたのだそうです。さらに、20代では6.9%、つまり14人に1人がクラミジアに感染していたとのことです。ここからも、若い世代にとってSTDがとても身近なものであることがうかがえます。

STDの治療はパートナーの協力も必要

STDは、本人だけではなく、性行為の対象であるパートナーも同時に治療や検査をすることが大切です。性感染症(STD)における性行為とは、感染した人の精液や膣粘液に触れるだけでなく、性器周囲の病原体や分泌物に直接触れることも含めます。

つまり「性行為」には、膣性交だけではなく、口腔性交(オーラルセックス・フェラチオ・クンニリングス)、肛門性交(アナルセックス)も含まれます。

性産業に就労している人はSTD感染のリスクが高く、例えばクラミジア感染症の頻度は一般的な若年男女のおよそ5倍程度とされています。

複数の性的パートナーがいる人も、STD感染のリスクが高くなっています。クラミジア感染症は骨盤内へと進行することが知られています。これらを含めて骨盤への感染症を「骨盤炎症性疾患(PID)」といいます。1カ月以内に複数の相手と性行為をした人のPIDリスクは、そうではない人の11倍であるという報告がなされています。相手が複数いるということは、それだけSTDにかかる確率が上がるということを意味するのです。

性感染症(STD)は男女で症状が異なるものもある

ここがポイント!

  • 多く見られる性感染症は「性器クラミジア」と「淋菌感染症」
  • 両疾患とも女性の症状は男性よりも軽いため、見過ごされやすい
  • 重篤な合併症により不妊になる可能性もあるので注意が必要
ここでは、性感染症(STD)で頻度の高い疾患である性器クラミジア淋菌感染症を中心に解説していきます。

細菌感染による性感染症(STD)

クラミジアは、ウイルスではなく細菌に属する菌です。ただし、一般的な細菌とは少し異なります。細胞が無いところでは増殖せず、動物の細胞内に侵入して初めて増殖できる「細胞内寄生菌」の一種なのです。

淋菌もクラミジアと同じく細菌です。淋菌は、尿道や性器に化膿性の症状を発症させることで知られています。この菌は、人間の体に備わった、外敵をやっつけて体を守る仕組みである「免疫」の成立が弱く、何回でも再感染を起こすことで知られています。淋菌に感染した人と同じ風呂に入ったことで、女児に入浴感染した事例もあります。

出産時に赤ちゃんに感染する可能性もある

淋菌は、出産のときに赤ちゃんに感染し、「新生児膿漏眼」という目の病気などを起こす場合があります。新生児膿漏眼の初期症状は、強い結膜充血や大量のクリーム状の目やになどです。重症化した場合は、角膜に穴があいてしまい、失明の危険もあります。赤ちゃんだけでなく、「淋菌性結膜炎」として成人もかかる恐れがあり、注意が必要です。

小見出し2:STDの中には男女で異なる症状が現れるものもある
クラミジアと淋菌感染症は、頻度が高いだけではなく、併発している場合も多いと知られています。また、男女で異なる症状が見られるという特徴があります。

クラミジア感染症

クラミジア感染症は、男性の非淋菌性尿道炎の半数を占めていると言われます。しかし症状は軽く、尿道がむずかゆくなったり排尿時に軽い痛みを感じる程度だったりします。淋菌性感染症に比べると、症状が軽度である場合が多い疾患です。下着の汚れに気付いたのを機に受診する人もいます。

また、クラミジア感染症は、女性では無症状の場合が多い疾患として知られています。おりものの増加に気付く程度の場合が多く、受診することなく過ごしている人もいます。しかしその結果、初期治療が遅れ、癒着や卵管の閉塞を来たして不妊の原因となってしまうことがあります。

クラミジア感染を放置すると、子宮頚管炎が起こり、骨盤腹膜炎、腹腔内、さらには肝臓まで感染が広がり肝周囲炎へと進行することもあります。この症状を特に、「フィッツ・ヒュー・カーティス(Fitz-Hugh-Curtis)症候群(FHC)」と言います。FHCでは、呼吸に伴う激しい右上腹部痛が見られ、驚くほどの痛みに襲われる人もいます。思春期の女性に多く見られ、注意が必要です。

淋菌感染症

淋菌感染症で、男性に多く見られる症状は、「尿道の痛み」や「膿性の分泌物の排出」です。尿道にかゆさを感じ、粘液や黄色い膿(うみ)が出るので、驚きを感じて受診する人も大勢います。ペニス全体が大きく腫れ上がる場合もあります。一方、淋菌感染症は女性で症状が出にくい場合が多くあります。気付かずに放置すると、子宮頸部が侵され、次いで尿道炎やバルトリン腺炎、子宮内膜炎などと徐々に感染が進行して、不妊の原因にもなります。
淋菌感染症は、女性の症状が男性よりも軽いことから、女性が感染源となりやすいという特徴があります。そのため感染に気付くのが遅れ、不妊期間が長引くこともあります。

病院での診断の際、クラミジア感染症と淋菌感染症の鑑別には、症状以外に細菌の潜伏期間が重要となります。淋菌は潜伏期が数日であるのに対し、クラミジアはおよそ2週間程度です。

性感染症(STD)は様々な種類がある

ここがポイント!

  • STDには多種多様な疾患が含まれている
  • HIV感染のように数年間潜伏期間がある疾患も存在する
  • 長期間罹患した場合、命に関わる重症な状態になることもある

性感染症(STD)とは、性行為によって感染した多種多様な疾患を総称した名称です。

前章で説明した「性器クラミジア」や「淋菌感染症」を始めとして、数多くの疾患がSTDの中に含まれています。STDの中には、性行為で感染するとは思わなかったような疾患も含まれているかも知れません。この章では、主なSTDの特徴や症状などについてそれぞれ解説していきます。

尖圭コンジローマ(病原体:ヒト乳頭腫ウイルス HPV)

尖圭コンジローマは、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の感染により起こる、ウイルス性のSTDです。女性では、外陰部・膣・子宮頸部・肛門周囲などの性器周辺に、良性のいぼができます。男性では、亀頭の先端部・陰のう・尿道口・肛門周囲などにいぼが発生します。HPVはタイプ別に分類されており、100種類以上もあるのですが、尖圭コンジローマの原因となるのはほとんどがHPV6型とHPV11型であり、子宮頸がんの原因となるHPV1のタイプとは異なる場合がほとんどです。

また、頻度は少ないのですが、妊婦がこの疾患にかかっていると、生まれてくる赤ちゃんが尖圭コンジローマになっていたり、赤ちゃんの咽頭部(のど)に「咽頭乳頭腫(いんとうにゅうとうしゅ)」という良性腫瘍がみられたりする場合もあります。
尖圭コンジローマは、再発する可能性の高い疾患なので、病院での治療後も最低3ヶ月は再発がないことを確認する必要があります。治ったからと勝手に通院をやめないで、医師の指示に従って受診を続けるようにしましょう。

HIV感染(病原体:ヒト免疫不全ウイルス HIV)

HIV感染は、「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」の感染によって起こる疾患です。体を守る「免疫」の仕組みで活躍する免疫細胞の一員である「CD4+T細胞」と「マクロファージ」に感染してしまうウイルスです。HIVが感染した免疫細胞は働くことができなくなってしまうので、体は免疫不全となり、多様な合併症を起こします。

HIVの感染は、感染初期→無症候期→エイズ発症期という経過をたどります。
無症候期は数年~10年以上続く場合もあります。免疫細胞が次々とウイルスに冒されて免疫不全がすすみ、合併症を発症した状態をエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)といいます。代表的な23の合併症が決められており、これらが発症した時点でエイズと診断されます。

HIVが感染する経路は、主に「性的感染」「血液感染」「母子感染」の3つです。HIV感染をしている妊婦の場合は、赤ちゃんに感染する可能性があります。赤ちゃんがおなかにいるときに感染する「胎内感染」、出産時に感染する「産道感染」、母乳を与える時に感染する「母乳感染」など、あらゆる時期に感染する可能性があります。

B型肝炎(病原体:B型肝炎ウイルス HBV)

B型肝炎というと、病院での医療関係者による針刺し事故や、輸血などによる「血液感染」のイメージがある人もいるかもしれません。国や医療施設が感染防止対策に力を入れた結果、血液感染は激減しました。そして現在は、ほとんどが性交渉による感染となっています。

「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」によると性交渉によってB型肝炎ウイルス(HBV)に感染した場合の潜伏期間は、1~6カ月と考えられています。
HBV感染で恐ろしいのが、急性肝炎(高熱・咽頭痛・腹痛・黄疸・吐気がみられる疾患)と、急性肝炎が急激に重症化する劇症肝炎です。急性肝炎が重症化することはまれですが、劇症化すると生存率が20~40%といわれ、非常に恐ろしい疾患です。

またHBV感染が慢性化すると肝障害を来たすことがあります。肝臓で慢性炎症が続くと最終的には肝細胞がんの原因になってしまいます。

成人T細胞性白血病(病原体:ヒトT細胞白血病ウイルス1型 HTLV-1)

成人T細胞性白血病は、もともと九州と沖縄に患者が集中している病気でした。現在でも九州、沖縄に多発する傾向がありますが、交通網の充実などのため、地域性は薄れてきています。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染者の大半は、「キャリア」です。キャリアとは、ウイルスに感染していても、無症候で過ごしている人のことです。厚生労働省の調べによると、HTLV-1キャリアは、40歳を超えるまでほとんど白血病を発症せず、40歳を超えると1000人に1人の割合で発症しています。生涯発症率(死ぬまでに発症する人の割合)は約5%だと言われています。

HTLV-1の感染経路は、「輸血」「性行為」「母子感染」です。このうち、現在の唯一のハイリスク因子は母子感染であり、なかでも母乳を介した母乳感染が主なものであることが知られています。

性器カンジタ症(病原体:カンジタ菌)

カンジタは、カビの仲間である「真菌」の一種です。性行為でも感染しますが、体に住んでいる「常在菌」の一種です。例えば風邪や激しい疲れなどで免疫能が落ちて体が弱ったときや、妊娠したときなどに発症をします。

特に、HIV感染者の免疫能が低下した時にカンジタ症を発症することはよく知られています。

膣トリコモナス症(病原体:膣トリコモナス原虫)

肉眼では見分けることのできない「原虫」という種類の病原体が性器内に入り込み、炎症を起こします。男性にはほとんど症状が出ず、女性に強い症状が出ると知られています。潜伏期間は1~3週間であり、悪臭のする黄白色の泡状のおりものが膣からでてくることに驚いて受診される人が多い病気です。
おりものの他に、外陰部や膣の強いかゆみや痛みが伴います。まれに女性でも症状のない感染者もいますが、治療せずに放っておくと炎症が卵管まで進み、不妊症や流産を招く可能性もあるので注意が必要です。

性器ヘルペス感染症(病原体:単純ヘルペスウイルス HSV)

性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染によって発症します。HSVは人に感染すると、神経を伝わって上行し、体の中の「神経節」という部分に潜伏をします。神経節でHSVが活性化することで、体に悪影響を及ぼします。

医学的には性器ヘルペスは「初発」と「再発」で分類されます。
初発の場合は、感染から数日潜伏した後に発症します。女性は突然、外陰部に浅い潰瘍や水疱が複数個出現します。治療をしなくても2週間程度で自然治癒する場合もあり、受診しない人もいます。
近年ではオーラルセックスなどの性の多様化により、口の周りに水疱が見られることもあります。再発の場合は、陰部に痛みを伴う水疱が生じます。痛みが伴うため、肉体的だけではなく精神的にも苦痛を感じる疾患です。

性感染症(STD)を予防するためのポイント

ここがポイント!

  • 予防のポイントは、No SEX/SAFE SEX/SAFER SEX
  • 性交渉を行わないことが性感染症の最大の予防法である
  • 安全な性交渉を心がけ、必ずコンドームを使用することが重要である

STDの予防には、以下の3点が重要だと言われています。
・NO SEX
・SAFE SEX
・SAFER SEX

<NO SEX>
まずはNO SEX(性行為をしない)です。当たり前のことですがSEXをしないことは性感染症の最大の予防になります。しかし現実的に性行為を全くしないのは難しいことです。性行為により性感染症にかかる恐れがあるのだと、常に考えておくことが性感染症予防の一歩となります。

<SAFE SEX>
SAFE SEX(安全な性行為)についてですが、これは安全な性行為を心がけるということです。例えば、現在は特定の性的パートナーを持っていても、それ以前に違うパートナーとの性行為を行ったことで、既に性感染症に感染している可能性もあります。互いが性感染症に感染しておらず、互いしか性的なパートナーがいない状態であれば安全であると言えるでしょう。不特定多数との性行為は、性感染症のリスクが上がります。

<SAFER SEX>
SAFER SEX(より安全な性行為)。まずはコンドームを使うことを重視してください。コンドームを使っても100%安全だとは言い切れません。しかし、安全度は桁違いに高くなります。オーラルセックスのためのコンドームも販売されています。コンドームの使用は性感染症に対する安全度を高めるために有効です。

清潔を保つことも心掛けよう

清潔を保つことも、感染のリスクを低下させるポイントです。
例えば性行為の前にシャワーを浴びるだけでも、性器や皮膚についている常在菌が少なくなり、感染のリスク低下に繋がります。同様に排便や排尿を済ませておくことも大切です。糞尿にはウイルスなどがいることもあるので、感染予防に繋がります。

体調不良の場合や、出血などがあるときも性行為は避けるようにしましょう。先ほど説明したように、性感染症には血液を介して感染するものもあります。また、体調が悪く免疫能が低下しているときほど、感染のリスクは高くなります。

パートナーの性器などに異常を見つけた場合も性行為は避けるようにしてください。疾患の中には特徴的な症候を示すものがあります。通常では見られないような水疱や膣分泌物などを見たときは性行為を避けましょう。

まとめ

一言で性感染症(STD)と言っても、多種多様な疾患があり、体にさまざまな影響を引き起こしてしまうと説明してきました。性行為の後で体の異常などがあった場合は、迷わず病院に行くべきであると気付いていただけたと思います。

STDの中には、潜伏期間が数カ月から数年と、大変長い病気も含まれています。そのため、体調不良を感じても心当たりがないため気のせいだと思って病院へ行かずに過ごしてしまう場合があります。数年前であっても、不特定な相手との性交渉があった経験がある人は、その時STDに感染している可能性があります。
しかし、性行為の経験については「恥ずかしいから病院でも言いたくない」という方もいるのではないでしょうか。しかしこれは、病気を診断する上で大切な情報です。医療従事者には個人の秘密を守ることが義務付けられていますので、心当たりのある方は、病院へ行き、身の安全を第一として、信頼して医師や看護師に気になることを相談するようにしましょう。STDの早期発見・早期治療に繋がり、パートナーへの感染を防ぐことにも繋がります。

参考

ジェネラリストのための内科診断リファレンス|医学書院
東京都福祉保険局
性感染症 |厚生労働省
NIID 国立感染症研究所
性感染症 診断・治療ガイドライン2016(改訂版)(pdf資料)
Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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