尖圭コンジローマとは
ここがポイント!
- 尖圭コンジローマは、性行為などにより「ヒトパピローマウイルス(HPV)」に感染することにより発症する
- ヒトパピローマウイルス(HPV)には100種類以上の型があり、尖圭コンジローマの原因となるのは、主に「HPV6型」「HPV11型」
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因
尖圭(せんけい)コンジローマとは、梅毒、性器ヘルペス、性器カンジダ症、性器伝染性軟属腫、ケジラミ症といった「性行為感染症(STD)」の一つです。国立感染症研究所によると、日本では尖圭コンジローマは、年間10 万人あたり30 人程度の発症しています。1999年4月以降、他の性感染症と同様感染者は増えてきていて、徐々に女性の占める割合が高くなってきているとされています。
尖圭コンジローマは、主に性行為などにより「ヒトパピローマウイルス(HPV)」に感染することにより発症します。ヒトパピローマウイルスは、珍しいウイルスではなく、生涯でほとんどの女性が感染するとも言われています。ヒトパピローマウイルスに感染しても、ほとんどが自覚症状もなく、身体の持つ異物を排除しようとする免疫力の働きで、ウイルスが自然に排除されると言われています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)にはたくさんの型がある
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、100種類以上の型があります。この全ての型が尖圭コンジローマの原因となる訳ではありません。「尖圭コンジローマ」の原因となるのは、主に「HPV6型」と「HPV11型であり、時に「HPV16型」の感染でも尖圭コンジローマの原因になる可能性があります。
HPVはがんの発症にも関与している
「日本性感染症学会の尖圭コンジローマガイドライン2008」によると、外陰部の尖圭コンジローマを発症している人の約40%では、子宮頸部に病気を併発することがあるとされています。尖圭コンジローマは、良性の腫瘍なので、自然に治癒することも多い疾患になりますが、原因のHPV型によっては、悪性へと進行することもあることから、注意深く経過観察することが必要になります。HPVは、子宮頸がん以外にも、外陰がん、中咽頭がん、肛門がん、腟がん、陰茎がんなどにも関連があるとされています。
子宮頸癌のリスクの高い型とは
全てのパピローマウイルスの型が、子宮頸がんの原因になるわけではありません。子宮頸癌の発症に関与するHPVの型は、下図のように高リスク型、中間リスク型、低リスク型に分けられています。高リスク型でも特にリスクが高いとされているのが、HPV16・18・31・33・35・52・58型になります。
<子宮頸癌のリスク>
子宮頸癌になるリスク | ヒトパピローマウイルス(HPV)の型 |
高リスク型 | 16・18・31・33・35・39・45・51・52・56・58・59・68・73・82 |
中間リスク型 | 26・53・66 |
低リスク型 | 6・11・40・42・43・44・54・61・70・72・81・89 |
尖圭コンジローマはうつるのか
ここがポイント!
- 尖圭コンジローマの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は、性行為またはその類似行為によって感染する
- ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しても尖圭コンジローマの発症には、数週間から3カ月程度かかる
- 感染予防には、性行為の際にコンドームを使用することが大切になる
尖圭コンジローマは、「性行為感染症(STD)」の一つと解説してきましたが、ここでは他人に感染する危険について確認していきましょう。
性行為により感染する
尖圭コンジローマは、性行為またはその類似行為によって、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症します。皮膚や粘膜から感染し、性器周辺にイボなどが生じるとこがありますが、自分で感染していることに気づいていないということも多く、知らないうちにパートナーに感染させてしまうことがあります。感染してから発症するまでの期間
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染から尖圭コンジローマの発症には、数週間から3カ月程度かかるといわれています。感染してから発症までの潜伏期が長いことや、自分でも気づかないうちに感染していることも多いため、感染を特定できないということも多くなります。感染を予防するためにできること
尖圭コンジローマは、性行為などにより肌が接触することで、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚や粘膜の微小な傷から侵入し感染します。感染を予防するためには、性行為の際にコンドームを使用することが大切になります。コンドームでカバーできない広範囲に尖圭コンジローマの感染がある場合は、コンドームだ けで完全に予防することは出来ません。湿疹などの皮膚炎がある場合は、治療し清潔に保っておくことも感染予防には重要です。治っても再発するとこともある
尖圭コンジローマは、治癒しても3ヶ月以内に25%も再発することがあることが、「日本性感染症学会の尖圭コンジローマガイドライン2008」に記載されています。治ったからと勝手に通院をやめないで、医師の指示に従って受診を続けるようにしましょう。自分が完治してもパートナーが治っていない場合は、また感染してしまうことになり、パートナーと共に治療をしていくことも大切になります。尖圭コンジローマはイボが特徴的な症状
ここがポイント!
- 尖圭コンジローマを発症すると性器周辺にイボが出来る
- 自覚症状を感じないまま発症している場合もある
尖圭コンジローマの特徴的な症状
尖圭コンジローマは、淡紅色ないし褐色な、乳頭状、鶏冠状の先のとがった特徴的なイボが出来ますが、自覚症状を感じないまま発症している場合も多く、自分自身で病気に気づくことが難しいこともあります。まれにイボが巨大化した場合や、発症した部位により、違和感や痛みやかゆみといった症状を感じることもあります。イボが好発する部位
・男性の場合男性では陰茎の亀頭部、冠状溝、包皮内外板、陰嚢部に症状が好発します。
・女性の症状
女性では大小陰唇、会陰、膣前庭、膣、子宮頸部に症状が好発します。
他にも、男女ともに、肛門及び周辺部、尿道口にも出現します。
尖圭コンジローマの治療法
ここがポイント!
- 症状などにより、外用薬による治療または、外科的治療が行われる
- 特に自覚症状がなくても検診を定期的に受けよう
日本性感染症学会の性感染症診断・治療ガイドライン2016によると、尖圭コンジローマの治療方法には、外用薬を塗布する薬物療法と外科的療法があります。ここでは、いくつかある治療法についてそれぞれ解説していきます。
液体窒素による凍結療法
液体窒素で凍らせた綿棒を、数秒間いぼに接触させて凍らせ壊死させる。一度で完治するわけではなく、1~2週間ごとに消失するまで繰り返し治療する。
外用薬治療
イミキモドクリームを週に3回就寝前にイボに直接塗り、起床時に石鹸で洗い流す。イボの消失までは比較的時間がかかる。
電気焼灼
局所麻酔を行い、イボを電気メスにて焼灼する。レーザー蒸散術
局所麻酔を行い、炭酸ガスやホルミウムレーザーにて蒸散させる。治療による周辺組織の損傷が少なく患者負担が軽い。