壮年性脱毛症とは|AGAと診断基準の違いはあるのか、男性・女性別の症状の特徴まで

「壮年性脱毛症」は、働き盛りである「壮年期」の人だけに発症する脱毛症のような名前ですが、実は「AGA(男性型脱毛症)」の別名で、大学病院のホームページや研究論文等で、しばしばAGAがこの名で呼ばれているのが見受けられます。したがって、名称は違っても、症状、原因、治療法、治療薬などは全てAGAと同じということになります。ここでは、AGAが「壮年性脱毛症」と呼ばれる理由についてまず触れてから、症状、原因、治療などについて簡単に見ていきます。AGAについては、詳しく解説をした記事が複数ありますので、必要に応じて記事内のリンクからそれぞれご参照ください。

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01「壮年性脱毛症」とは
  2. 02壮年性脱毛症の原因
  3. 03壮年性脱毛症は20代でも発症する可能性はあるのか
  4. 04壮年性脱毛症の治療の流れ
  5. 05女性の壮年性脱毛症とその治療
  6. 06壮年性脱毛症は進行していても治療可能か
  7. 07壮年性脱毛症を対象とした治験は行われているのか
  8. 08まとめ

「壮年性脱毛症」とは

ここがポイント!

  • 壮年性脱毛症は「AGA(男性型脱毛症)」の別名
  • そのため、原因、治療法、治療薬などはAGAと同じ

壮年性脱毛症はAGAのこと~20代でも「壮年性」


「壮年性脱毛症」という病気の名前について、AGAの診療ガイドラインには明記されてはいませんが、ガイドラインに引用されている参考論文や大学病院のホームページ、AGA治療薬であるリアップの添付文書などにはAGAの別名であるとの記載があります。つまり「壮年性脱毛症」と「AGA(男性型脱毛症)」は同じ病気を指します。
最近では、総合病院に脱毛症やAGAの専門クリニックも多く開設されてきていますが、医療施設によっては、AGAの他に「壮年性脱毛症」という名前が記載されている場合があります。

なぜ「壮年性脱毛症」と言うのか

厚生労働省は、21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)の中で、生まれてから死ぬまでの生涯を、0~5歳の「幼年期」(育つ)、5~15歳の「少年期」(学ぶ)、15~25歳の「青年期」(巣立つ)、25~45歳の「壮年期」(働く)、45~65歳の「中年期」(熟す)、65歳以上の「高年期」(稔る)の6段階に大別しています。
「壮年性脱毛症」という名前の由来を明らかに記載した公的な文書はありませんが、AGAは、日本人男性では20代の10人に1人が発症し、30代、40代と徐々に発症者の割合が増えて症状も著明になっていく、つまり、ちょうど壮年期に当たる年頃に発症・進行する脱毛症であるため、この名が付けられたと推測出来ます。

AGAについて詳しくは【AGA(男性型脱毛症)とは】症状・原因・予防法〜病院・AGA専門外来での検査・診断・治療そして気になる費用までを解説をご参照ください。

参考


脱毛症診断チェック

壮年性脱毛症の原因

ここがポイント!

  • 壮年性脱毛症(AGA)の原因物質は男性ホルモン「DHT」
  • 「DHT」が前頭部や頭頂部の毛の細胞に作用して成長を抑制するため薄毛になる

壮年性脱毛症(AGA)の原因は、「DHT」という男性ホルモンであることが明らかになっています。

AGAの原因について詳しくは【AGAの原因について】原因物質「DHT」が薄毛スイッチを入れる仕組みから遺伝やストレスの影響・女性のAGAまでに書いてありますので、ここでは簡単に解説をします。

毛の根元には「毛乳頭(もうにゅうとう)細胞」という、「発毛」の指令を出す細胞があります。DHTは、男性ホルモンの影響を受ける部位に生えている毛の毛乳頭細胞内で作用し、これにより髪の毛の成長を作用する遺伝子に指令が出されます。
この指令は、ひげや胸毛などの体毛では「毛の成長を促進させよ」と出されますが、前頭部や頭頂部の髪の毛では反対に「毛の成長を抑制せよ」と出されます。その結果、前頭部や頭頂部の毛は十分に成長せず「細く短く」なり、壮年性脱毛症(AGA)の症状である薄毛が現れるのです。

参考


壮年性脱毛症は20代でも発症する可能性はあるのか

ここがポイント!

  • 壮年性脱毛症は、思春期以降に発症する可能性がある
  • よって、20代でも発症する可能性はある

これまで説明してきたように、壮年性脱毛症はAGAと同じ意味で用いられています。AGAは、思春期以降の男性に発症する可能性がある脱毛症です。思春期とは、 WHO の定義によると、身体的には第二次性徴の出現 から性成熟までの段階をいい,年齢的には8∼9歳頃から17∼18歳頃までを指します。つまり、症状の出現が早い男性であれば、17歳前後から発症する可能性があります。20代の男性は、通常であれば第二次性徴は終わっていますので、壮年性脱毛症を発症する可能性は十分にあります。壮年性脱毛症に推奨されている薬剤(内服薬:フィナステリド・デュタステリド、外用薬:ミノキシジル)は、未成年には適応になっていません。よって、未成年の時に発症した場合は、選択できる治療法が限られていますので、注意しましょう。20代で発症した場合は、推奨されている治療法はいずれも選択可能です。加えて、早期に治療を開始した方が改善する可能性も高いと言われていますので、20代で薄毛に気がついた場合は、早めに対策をとることをお勧めします

脱毛症診断チェック

壮年性脱毛症の治療の流れ

ここがポイント!

  • 治療を受けるためにはまず医療機関を受診して、医師の診断を受けましょう
  • 基本的な治療は、外用薬、内服薬による薬物治療
  • 薬物治療の効果が現れなかった場合には、「自毛植毛」や「かつら」の使用が推奨されている

壮年性脱毛症(AGA)の治療の流れは、【AGAの治療について】3つの治療方法・期間・薬の効果と副作用から保険適用まで網羅的に詳しく書いてありますので、ここでは簡単に解説をします。

壮年性脱毛症(AGA)の治療と治療薬


1)壮年性脱毛症(AGA)の診断
治療を受けるにはまず医療機関で医師による「診断」を受ける必要があります。
額が広くなってきた、頭頂部の髪の毛が薄くなってきたなどの自覚症状がある場合には、「脱毛症治療を行っている皮膚科」「脱毛症専門外来」「AGA専門クリニック」等の医療機関を受診して壮年性脱毛症(AGA)であるかどうかの診断受けましょう。

AGAの診断について詳しくは【AGAの診断方法と診断基準】病院での診断の流れから自宅で出来るセルフチェックや遺伝子検査キットなど幅広く解説をご参照ください。

2)外用薬、内服薬による治療
壮年性脱毛症(AGA)の治療薬には、外用薬と内服薬があります。

外用薬は、直接頭皮に付ける薬で、現在国内で製造販売されているAGA治療用外用薬は、ミノキシジル配合の「リアップ」シリーズ(大正製薬)のみです。

外用薬のミノキシジルについて詳しくは【ミノキシジル(リアップ)の効果と副作用】AGA外用薬の基本からフィナステリド(プロペシア)との併用、ロゲインやタブレットの使用までをご参照ください。

AGA治療用の内服薬(飲み薬)は、「フィナステリド」「デュタステリド」の2種類です。どちらも基本的に同じメカニズムで作用する薬ですが、フィナステリドよりデュタステリドの方が発毛効果が高かったという論文報告があります。

フィナステリドについて詳しくは【フィナステリド(プロペシア錠)の治療効果と副作用】AGA内服薬の基本情報からミノキシジル(リアップ)との併用、ジェネリック情報や輸入薬(フィンペシア・フィナロ)の使用についてまで幅広く解説をご参照ください。
デュタステリドについて詳しくはAGA新薬「ザガーロ」(デュタステリド)を徹底解説|正しい飲み方、効果、副作用、価格など~プロペシア(フィナステリド)との比較表付きをご参照ください。

また、治療薬全般についてもっと詳しく知りたい方はAGA治療薬の効果と副作用|主な2タイプの薬とジェネリック薬情報や値段、通販や輸入薬などについて解説を、治療にかかる費用について詳しく知りたい方は【AGAの治療にかかる費用】年間費用の相場を治療法別に比較~ジェネリック情報や確定申告情報もをご参照ください。

3)植毛やかつらといった選択肢もある
薬の効果は個人差があるため、外用薬や内服薬で改善する人もいれば全く効果が現れないという人もいますAGAの診療ガイドラインでは、外用薬・内服薬による治療を1年間続けても効果が現れなかった場合には、自分の後頭部の髪の毛を脱毛部に移植する「自毛植毛」や、「かつら」の使用などを検討してみるように推奨しています。
また、現行の診療ガイドライン(2010年版)にはまだ記載されていませんが、最近では「HARG療法」という新しい治療法も、発毛効果がある治療の選択肢の1つとして注目されています。

植毛について詳しくは【自毛植毛によるAGA治療について】植毛後の経過、費用、メリット・デメリット、失敗例など幅広く解説をご参照ください。
かつらについて詳しくは【AGAや円形脱毛症でも使う医療用かつら(ウィッグ)とは】男性、女性、子ども用の違いや特徴、値段の相場と医療費控除や保険適用などをご参照ください。
HARG療法について詳しくは【AGAの治療について】3つの治療方法・期間・薬の効果と副作用から保険適用まで網羅的にをご参照ください。

参考


女性の壮年性脱毛症とその治療

ここがポイント!

  • 女性の壮年性脱毛症の原因は明らかになっていない
  • 症状の特徴は「頭頂部の比較的広い範囲の髪の毛が薄くなる」
  • 内服薬による治療は受けられず、ミノキシジル1%配合の外用薬による治療は可能

壮年性脱毛症はAGA(男性型脱毛症)の別名で、「男性型」と名前に付いていますが、女性も発症する場合があります。女性のAGAについては【AGA(男性型脱毛症)とは】症状・原因・予防法〜病院・AGA専門外来での検査・診断・治療そして気になる費用までを解説で詳しく解説していますので、ここでは、女性の壮年性脱毛症の原因、症状、治療について簡単に確認しておきましょう。

女性が壮年性脱毛症になるメカニズム

男性の場合、壮年性脱毛症の原因には「DHT」という男性ホルモンが関与していることが証明されていますが、女性の場合は現在も研究中で、まだ明確になっていません。女性の体の中にも男性ホルモンは存在しており、女性ホルモンが少なくなる閉経後に症状が現れる人が多いなどの理由から、女性の壮年性脱毛症の原因にも男性ホルモンが関与していると考えて研究を進めているグループもあります。

AGAの原因について詳しくは【AGAの原因について】原因物質「DHT」が薄毛スイッチを入れる仕組みから遺伝やストレスの影響・女性のAGAまでをご参照ください。

女性の壮年性脱毛症に特徴的な症状

男性の壮年性脱毛症は「前頭部(額)の生え際」と「頭頂部」が薄毛になるという特徴がありますが、女性の場合は額の生え際に症状が出ず、「頭頂部の比較的広い範囲の髪の毛が薄くなる」という特徴があります

AGAの症状について詳しくは【AGAの症状について】初期症状から特徴的な症状まで正しく理解して対策を立てよう~かゆみや髪質の変化は本当に起こるのか?セルフチェック付きをご参照ください。

女性の壮年性脱毛症の治療

壮年性脱毛症(AGA)治療薬のうち、内服薬は、女性における安全性と有効性の検証が行われていないため、女性の使用は禁止されています。
内服薬は使用出来ませんが外用薬である「ミノキシジル」は、女性も使用が可能です。ただし、男性は5%ミノキシジル配合薬の使用が許可されているのに対し、女性は濃度の低い1%配合薬のみ使用が許可されています。

AGAの治療薬について詳しくはAGA治療薬の効果と副作用|主な2種類の薬~ジェネリック薬情報や値段・通販・輸入薬などについて解説をご参照ください。

参考


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壮年性脱毛症は進行していても治療可能か

ここがポイント!

  • 男性は「ハミルトン・ノーウッドの分類」女性は「ルードヴィヒの分類」で進行度が分けられる
  • 診療ガイドラインには、症状の進行度により治療に限界があるとは記載されていない

最後に、壮年性脱毛症の治療は、症状の進行度によって限界があるのかどうかを確認しておきましょう。

症状の進行度とは

まずは症状の進行度について確認をしましょう。壮年性脱毛症は、症状の進行度によって「軽症」「中等症」「重症」の3つに分類されます。
重症度の判定には、男性は「ハミルトン・ノーウッド分類」、女性では「ルードヴィヒの分類」が用いられています。どちらも薄毛の状態をパターンごとに視覚的に分かりやすく分類したものです。

ハミルトン・ノーウッドの分類

ハミルトン・ノーウッドの分類

ルードヴィヒの分類

ルードヴィヒの分類

これらの分類が「軽症」「中等症」「重症」のどれに当てはまるのかを表にまとめると下のようになります。
男性 女性
軽症 Ⅱ,Ⅱa, Ⅱvertex LudwigⅠ
中等症 Ⅲ,Ⅲa,Ⅲvertex,Ⅳ,Ⅳa,Ⅴ LudwigⅡ
重症 Ⅴa,Ⅵ,Ⅶ LudwigⅢ

AGAの症状について詳しくは【AGAの症状について】初期症状から特徴的な症状まで正しく理解して対策を立てよう~かゆみや髪質の変化は本当に起こるのか?セルフチェック付きをご参照ください。

どこまで進行しているものが治療可能なのか

AGAの診療ガイドラインには、治療可能な進行度の限界は示されていません。つまり、進行度が重症だからといって治療が出来ないという風な考え方はされていません。

早期で治療を開始した方が、効果が得られやすいことは示されています。高い発毛効果を期待する場合は、早めにこれまで示した治療法(内服薬、外用薬)を開始した方が良いでしょう。

参考

壮年性脱毛症を対象とした治験は行われているのか

ここがポイント!

  • 壮年性脱毛症を対象とした、毛髪再生医療の治験は行われている
  • 資生堂と東京医科大学皮膚科が協力して、治験を行っている

壮年性脱毛症(AGA)は、医学的根拠を持った治療方法が確立されていますが、全ての人に効果が認められるわけではありません。AGAのガイドラインでは、有効とされる治療方法を1年以上試しても効果が得られない場合は、植毛術やかつらの着用が推奨されています。特に、壮年性脱毛症の影響を受けにくい後頭部の毛の組織を脱毛部へ移植する「自家移植」は、有効性が認められており、高い推奨度で勧められています。しかし、頭部全体の毛は増えるわけではありませんので、自家移植の治療方法には限りがあります。そこで、頭部の毛の本数自体を増やすことを目的とした、毛髪再生医療が注目されています。現在はまだ治験(新しい治療方法の、有効性や安全性を確かめる臨床試験)の段階ですが、数年後には実用化が期待されています。
現在、資生堂と東京医科大学皮膚科が協力して、壮年性脱毛症の患者を対象とした治験が行われています。患者さんの後頭部などの毛のある部分から、毛包を含む頭皮を数ミリ程度取り出し、その中から毛の再生を誘導する能力が高い細胞を培養し、それを脱毛部分に注入することで、毛髪を再生させようとする試みです。その他にも、iPS細胞を用いた毛髪再生医療の研究も行われており、壮年性脱毛症や薄毛に悩んでいる方にとって、大きな期待となっています。

毛髪の再生医療の詳細については、【毛髪再生医療の最前線】毛髪が生え変わるサイクルから、再生医療の可能性について最新知識を徹底解説を参照してください。

参考


脱毛症診断チェック

まとめ

壮年性脱毛症は、AGA(男性型脱毛症)の別名です。したがって、壮年性脱毛症の症状、原因、治療は、AGAと同じです。名前に「壮年性」と付いていても30歳代初めから40歳代半ばの働き盛りの人にのみ発症するわけではなく、20代であっても発症する可能性があります。また、別名の方に「男性型」と付いていますが、女性でも発症する可能性があります。詳しくは、【AGA(男性型脱毛症)とは】症状・原因・予防法〜病院・AGA専門外来での検査・診断・治療そして気になる費用までを解説をご参照ください。

円形脱毛症・前頭脱毛症などの脱毛症でお悩みの方へ

Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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