【血圧の基礎知識】正常値と血圧が「高い」「低い」と判定される数値まで

あなたは自分の血圧が今、どのくらいの数値か把握していますか。血圧は1日の中で高くなったり低くなったりと、常に変動しています。そのため、月に1~2回病院で測定した値だけでは、例えば高血圧かそうでないかなどの正確な診断は難しく、家庭で毎日数回血圧を測定し、その値を診断の参考とすることが重要視されています。
血圧には「正常値」とされる数値が定められています。血圧が正常値よりも常に高い場合や常に低い場合、または急激に低下した場合、体に影響が出てきます。その影響とは、一体どのようなものなのでしょうか。「血圧」の基本をいろいろな角度から解説していきます。

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01「血圧」とは何なのか
  2. 02血圧の「正常値」を知ろう
  3. 03正常値より血圧が高いとどうなるのか
  4. 04普段の生活で血圧を下げる方法
  5. 05病院でもらう血圧の薬
  6. 06正常値より血圧が低いとどうなるのか
  7. 07こんな血圧低下は危険
  8. 08「血圧計」は一家に一台の時代
  9. 09正しい血圧測定法をマスターしよう
  10. 10まとめ

「血圧」とは何なのか

ここがポイント!

  • 「血圧」とは、血液が血管の中を流れるときに、血管の壁にかかる力
  • 血圧の値は主に、「心拍出量」と「末梢血管抵抗」で決まる
  • 「心拍出量」は心臓から送り出される血液の量、「末梢血管抵抗」は末梢血管での血液の流れにくさ
  • 「収縮期血圧」は心臓が縮んで血液を送り出すときにかかる血圧、「拡張期血圧」は心臓が膨らみ血液が戻ってくるときにかかる血圧

「血圧」は、血液が血管を押す力

「血圧」とは、心臓の働きによって血液が血管を流れるときに、血管の壁にかかる力のことです。
血圧ってなに
この力の強さ、つまり血圧の値は、主に、心臓から送り出される血液の量である「心拍出量」と末梢血管での血液の流れにくさである「末梢血管抵抗(まっしょうけっかんていこう)」で決まります。末梢血管抵抗は、血管の細さ、弾力性の程度(血管の硬さ)、血液のサラサラ度(粘性)などで変わってきます。例えば、動脈硬化によって血管が硬くなっていたり、中性脂肪によって血液がどろどろだったりすると、末梢血管抵抗は高くなり、血圧も高くなります。
血圧の値ってどのように決まるの?心拍出量と末梢血管抵抗で決まる。

心臓の動きと血圧の関連性を見てみよう

心臓は、ポンプのように縮んだり広がったりして、血液を体の隅々まで送り続けています。
心臓がぎゅっと縮んで全身に血液を送り出すときに血管にかかる圧力を「収縮期血圧」と言います。収縮期血圧は「最大血圧」「上の血圧」とも呼ばれており、血圧が最も高くなったときの値です。
血圧にはもう1つ、「拡張期血圧」と呼ばれる値があります。拡張期血圧は、心臓が膨らみ血液が全身から心臓に戻って来るときの血圧です。「最小血圧」「下の血圧」とも呼ばれており、最も低い血圧です。
心臓の動きと血圧

参考

  • 安倍紀一郎・森田敏子 著|循環機能学と循環器疾患の仕組み第三版|日総研
心臓発作危険度チェック

血圧の「正常値」を知ろう

ここがポイント!

  • 成人の血圧の正常値は「140/90mmHg未満」
  • 子どもの血圧の正常値は、成長に合わせて異なる
  • 高齢者、妊婦の血圧の正常値は、基本的に一般的な成人と同じ「140/90mmHg未満」
  • 正常値は「至適血圧」「正常血圧」「正常高値血圧」の3つに分けられる
  • 「至適血圧<正常血圧<正常高値血圧」の順に、心血管病や高血圧になる危険度が上がる
自分の血圧が高めなのか低めなのかを確かめるために、血圧の正常値を確認しましょう。

血圧の正常値は3段階に分けられている

日本高血圧学会が2014年に改訂した最新の「高血圧治療ガイドライン」では、「140/90mmHg未満」を、血圧の正常値としています。この血圧の基準値は、「診察室血圧」と言って病院で測定した場合の基準になります。家庭で測定する場合には「135/85mmHg未満」が正常血圧とされます。

正常値はさらに細かく「正常高値血圧」「正常血圧」「至適血圧」の3つに分けられています。

<正常血圧の分類(単位:mmHg)>
分類 収縮期血圧(最大血圧) 拡張期血圧(最小血圧)
至適血圧 <120 かつ <80
正常血圧 120~129 かつ/または 80~84
正常高値血圧 130~139 かつ/または 85~89
血圧値の分類
出典:日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2014
「至適血圧」の人は、最も心血管病の発症率が低く、生涯を通して高血圧になる人が少ないことが、欧米やわが国で行われた複数の研究から明らかになっています。また、「至適血圧」<「正常血圧」<「正常高値血圧」の順に心血管病の発症率や生涯高血圧に移行する確率が高くなると報告されています。

このように、一口に「自分の血圧は正常値」と言っても、値によって病気のリスクは大きく変わるのです。「今は正常値だから大丈夫」といって安心せずに、日頃から高血圧予防をしていくことがとても大切です。

血圧の基準は、子どもや高齢者も成人と同じなのか

ところで、血圧は子どもや高齢者も同じ基準なのでしょうか。

子どもは、年齢や性別によって成長が大きく異なるため、高血圧の目安となる基準値はそれぞれ異なります。高血圧治療ガイドラインでは、成長に合わせて以下のように基準値を変えています。

<子どもの高血圧の基準>
年齢層 基準値
幼児 120/70mmHg以上
小学生(低学年) 130/80mmHg以上
小学生(高学年) 135/80mmHg以上
中学生(男子) 140/85mmHg以上
中学生(女子) 135/80mmHg以上
高校生 140/85mmHg以上

近年、子どもの肥満の増加が問題になっています。子どもであっても、肥満度が高いほど高血圧になりやすいと知られています。肥満度とは、標準体重の何%体重が上回っているかを示すもので、下の式で算出します。

肥満度(%)=(実測体重-標準体重)×100÷標準体重

※標準体重=身長(m)×身長(m)×22

高血圧は今や、大人だけの病気ではありません。早期発見のためには若いからといって安心せず、定期的に血圧測定を行うことが大切です。

では、高齢者ではどうでしょうか。
高齢者の血圧の正常値は、先ほどお話しした成人の一般的な正常値と同じです。
ただし、後期高齢者(75歳以上)においては、高血圧を治療する際の降圧目標が「150/90mmHg未満」と成人よりも高い値になっています。後期高齢者は、腎臓や自律神経の機能が落ちている場合も多く、薬の副作用を見ながら慎重に治療を行っていく必要があるからです。「140/90mmHg未満」を降圧目標値としても体が耐えられる状態だと判断された場合に、一般成人と同じ基準で治療を進めていきます。

妊娠したら、血圧の基準は変わるのか

次に、妊婦の血圧の基準値を確認しましょう。
妊婦も、一般成人と同じ基準が適用され、診察室血圧140/90mmHg以上は高血圧と診断されます。

妊娠20週以降に高血圧を発症した場合、「妊娠高血圧症候群」と診断され、食事療法や降圧薬治療が必要になります。この「妊娠高血圧症候群」は、妊婦の約20人に1人が発症すると知られています。ほとんどが妊娠32週以降に発症しますが、妊娠32週未満に発症する「早発型」の場合には、重症化しやすいので注意が必要です。

妊娠高血圧症候群が重症化すると、お母さんに脳出血、肝臓や腎臓の機能障害などの危険な病気が起こる場合があります。さらに、赤ちゃんの発育が悪くなったり、胎盤が子宮から剥がれて赤ちゃんに酸素が届かなくなったりする場合もあります。赤ちゃんの状態が悪化して、最悪の場合には亡くなってしまうケースもあります。
このように「妊娠高血圧症候群」は、お母さんと赤ちゃんの両方の命に関わる危険な状態を招きかねません。今のところ、この病気の予防法は確立されていません。定期的な健診をしっかりと受けることが早期発見する上でもとても大切です。

血圧の正常値について詳しくは【血圧の正常値を知ろう】20代と70代の正常値や平均値は同じなのかを参照下さい。

参考

正常値より血圧が高いとどうなるのか

ここがポイント!

  • 血圧の高い状態が続くと血管の壁は傷付いたり、弾力性を失い硬くなったりし、「動脈硬化」となる
  • 高血圧を放置すると「動脈硬化」が促進されて、命に関わる危険な病気を引き起こす
血圧の正常値についてお話ししてきましたが、血圧が正常値よりも高い状態である「高血圧」は、体にどのような影響を与えるのでしょうか。

血圧を上げるさまざまな原因

高血圧の約90%以上は「本態性高血圧」といって、原因が明らかになっていません。しかし、血圧を上げている要因はいくつか明らかになっています。例えば、食塩の取り過ぎ、肥満、ストレス、運動不足などの「生活習慣」と、親から受け継いだ遺伝的な体質などが要因となっていることが、今のところはっきり分かっています。

血圧が高いとどうなるのか

高血圧の状態が続くと、血管の壁は傷付き、その傷に脂質などが溜まって厚くなったり、弾力性を失い硬くなったりします。これが「動脈硬化」といわれる状態です。動脈硬化により、血液の通り道が狭くなって、血管は詰まりやすくなります。「動脈硬化」が進むと、やがて心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる危険な病気(高血圧の合併症)が引き起こされます。
動脈硬化の仕組み
高血圧は、自覚症状がほとんどない裏で、長い時間をかけてじわじわと、気付かないうちに動脈硬化を確実に進行させます。そして、ある日突然、心筋梗塞、脳卒中、腎不全などの合併症を発症する場合があります。このことから高血圧は、別名「サイレントキラー」と呼ばれています。「サイレントキラー」は英語で、日本語に直すと「静かなる殺人者」という意味です。
一方で、これらの怖い合併症の「前兆」として、症状を自覚する場合もあります。呼吸困難、むくみ、動悸(どうき)、頭痛、めまいなどの症状は合併症の前兆である場合があります。高血圧の人は、このような症状が現れたらすぐに病院を受診するようにしましょう。

自覚症状がほとんどなくても、高血圧は少しずつ進行していきます。重症化してこれらの怖い合併症が発症するのを防ぐためにも、日頃から生活習慣の改善を心がけていくようにしましょう。
*詳しくは「【高血圧の症状】頭痛・めまいなど高血圧によって引き起こされる主な症状をチェックしよう」をご参照ください。

偏った食事・運動不足が、血圧を高くする

「偏った食生活」は、高血圧につながります。
特に、「塩分の多い食事」は血圧を上げる主な原因であると知られています。塩分を多く取ると、体内の塩分濃度が上がり、それを薄めるために体が水分を多く取り込んで血液量が増えるためです。
日本は塩分摂取量が多い国です。厚生労働省が毎年行っている「国民健康・栄養調査」では、日本人の平均塩分摂取量は1日10~11gだという結果が得られています。一方で、現在のわが国の食塩摂取目標量は「男性8g未満、女性7g未満」とされています。実際の摂取量と目標量の数字を比較するだけでも、日ごろ塩分を取り過ぎていることがよく分かります。
食事で気を付けなくてはいけないのは塩分だけではありません。カロリーオーバーも高血圧の大敵です。揚げ物や甘いお菓子も食べ過ぎると、カロリーオーバーとなり「肥満」につながります。たっぷりついた「内臓脂肪」からは、「アディポサイトカイン」という血圧を上げる作用を持つ物質が分泌されます。この物質の作用により、肥満度が高くなるほど血圧も上昇傾向になることが明らかにされています。高血圧予防のために、塩分・カロリー控えめな、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
高血圧予防のための食生活に関しては、「【高血圧におすすめの食事法】塩分の少ない食べ物・外食メニューまでを徹底解説」をご参照ください。

偏った食生活だけでなく、運動不足も血圧を高くする原因となります。「運動不足」により心臓や肺の機能が徐々に衰えると、血液循環がスムーズに行かなくなり、血圧が上がります。また、カロリーオーバーな食生活に加えて運動不足であると、ますます「肥満」が進みます。肥満が高血圧につながるのは上記の通りです。

国内外の研究結果から、高血圧対策を行うことが、健康寿命を延ばすために最も大切であることが示されています。50歳の時に、服薬の有無にかかわらず高血圧かそうでないかによって、健康寿命が数年異なるともいわれています。最後の10年を最高の10年にするためには、高血圧とどう付き合っていくのか、それが問題です!

参考

通院不要の高血圧治療

普段の生活で血圧を下げる方法

ここがポイント!

  • 1日塩分摂取量「6g以下」を目標に、食品の選び方や調理法を工夫して減塩しよう
  • ほうれん草やバナナなどの食品に含まれる「カリウム」には、血圧を下げる効果がある
  • ウォーキングや自転車などの有酸素運動を、出来るだけ毎日、30分以上続けよう
  • 1日30分の運動は、10分以上の運動を2,3回に分けて行い、合計して30分としてもOK
血圧を下げるためには、食事や運動などの生活習慣を改善することがとても重要です。ここでは、血圧を下げるための日常生活のポイントを、食事と運動に分けてご紹介します。

先ほど説明したように、塩分の取り過ぎやカロリーオーバーなどの、偏った食事は血圧を上げる原因になります。高血圧の予防・改善のためには、どのような点に気をつけて食品を選んだり調理をしたりすれば良いのでしょうか。高血圧予防・改善のための食事のポイントを見ていってみましょう。

塩分の取り過ぎに注意

高血圧の人の1日当たりの食塩摂取目標量は「6g以下」とされています。1食2gが目安となるように、食品の選び方や調理法を工夫して減塩を心がけましょう。例えば、ラーメンやうどんの汁は飲み干さずに残したり、しょうゆや味噌を減塩タイプのものに変えたり、煮物や汁物は化学調味料を使用せずに天然のだしを効かせたりすることでも減塩が出来ます。また、辛味や酸味をうまく利用して調理することでも減塩は可能です。

加工食品を食べたり外食したりする際には、食品成分表を確認してみましょう。「ナトリウム」や「食塩相当量」が表示されているので、どのくらい塩分が入っているか知ることが出来ます。

ナトリウムは、食塩を構成している物質です。もしも食塩相当量が表示されておらず、ナトリウムのみ表示されていた場合には、簡単な計算で食塩相当量が割り出せます。

*単位が「g」で表示されている場合は、
ナトリウム(g)×2.54=食塩量(g)

*単位が(mg)で記載されている場合は、
(ナトリウム(mg)×2.54)÷1000=食塩量(g)
高血圧予防のための減塩方法

カリウムの多い食品がおすすめ

食品に含まれている「カリウム」には、血圧を下げる効果があります。カリウムが体に取り込まれるのと引き換えに、体内にあったナトリウムが尿として体外に排出されます。このときナトリウムと一緒に水分も排出されるため、血液量が低下して血圧が下がります。
日本高血圧学会は、血圧が高い人に対し、減塩に加えて積極的にカリウムを取るように勧めています。
世界保健機構(WHO)は、2012年に成人と子どものカリウム摂取量について示したガイドラインの中で、1日にカリウムを3,510mg以上摂取するように勧めています。腎機能が正常な人は、カリウムを多く取り過ぎたとしても、尿の中に排出されてしまうので、摂取上限量は設けられていません。高血圧の人は、腎臓が正常であれば、健康な人の倍くらい取るように心がけましょう。
カリウムはほうれん草、かぼちゃ、たけのこなどの野菜やアボカド、バナナ、メロンなどの果物に多く含まれています。カリウムは熱に弱く、水に溶けやすい性質があるため、調理をすると、ほとんどが失われてしまいます。そのため、カリウムの摂取を目的とする場合には、野菜や果物はサラダなどで生のまま食べるのがお勧めです。
「カリウム」豊富な食材

血圧を下げる飲み物はあるのか

緑茶に含まれる「カテキン」には、血圧を低下させる作用があります。
カテキンには、体内で血圧を上げる「アンジオテンシンⅡ」という物質が作られるときに関わる酵素の活性を邪魔する作用があるのです。そのため、緑茶は高血圧予防に効果的な飲み物だと言われています。

血圧を下げる食べ物については「【血圧を下げる食べ物】食材から飲み物・レシピ情報まで幅広く紹介」をご参照ください。

今日から出来る、血圧を下げる運動とは

国内外の多くの研究により、「適度な有酸素運動を続けることで血圧が低下する」ということが明らかになっています。
そのため、厚生労働省では「ウォーキング、軽いジョギング、水中運動、自転車などの有酸素運動を、出来るだけ毎日、30分以上行う」ように勧めています。また、1回に30分以上続けなくても、10分以上の運動を2,3回に分けて行い、合計して1日30分以上であれば良いいとされています。激しい運動を行うと急に血圧が上昇するので、運動は「ややきつい」と感じる程度に留めてください。
運動に慣れていない人は、まずは「掃除」「洗車」「子どもと遊ぶ」「自転車で買い物に行く」など、生活の中で身体活動量を増やすことから始めてみましょう。
血圧を下げるための運動法

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肥満は血圧を上昇させるだけでなく、糖尿病の発症リスクも高めます。血圧が高く、肥満体型の方は、標準体重を目指して減量をはじめてみてはいかがでしょうか。

肥満解消のポイントは、食事と運動ですが、自分ではどのように行えば良いか分からない方も多いでしょう。そのような方には、医師監修のダイエットプログラム「ドクターズダイエット」を試してみてはいかがでしょうか。医師や管理栄養士が、食事や運動方法についてアドバイスをしてくれます。
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*運動方法についてもっと詳しくは「【血圧を下げる3つの方法とは】食べ物・運動・薬について詳しくご紹介」をご参照ください。

参考

病院でもらう血圧の薬

ここがポイント!

  • 生活習慣の改善を行っても血圧が下がらなかった場合には、降圧薬による治療が開始される
  • 治療に用いられる主な降圧薬は、「カルシウム拮抗薬」「ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬・ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬」「利尿薬」「β遮断薬」の4種類
  • 高血圧の程度や状態、他の病気を持っているかなどによって、処方される降圧薬の種類が決まる
  • 高血圧の状態によって、いくつかの種類を併用する場合や、服用する量や時間が異なる場合がある
高血圧治療の基本は、「生活習慣の改善」と「薬による治療」です。
「生活習慣の改善」をしても血圧が下がらない場合には、医師の判断で「降圧薬」といわれる血圧を下げる薬を飲み始めます。「降圧薬」にはいくつかの種類があり、その人に合った薬が処方されます。ここでは、降圧薬での治療の開始時期から、薬の種類、副作用までを簡単に解説していきます。

血圧の薬を飲み始めるタイミング

高血圧が見つかって病院へ通うようになり、生活習慣の改善を行っても血圧が低下しなかった場合には、医師の判断で「降圧薬」を飲む治療が開始になります。

降圧薬での治療が開始されるタイミングは、その人の「高血圧の重症度」によって決まります。高血圧の重症度は、血圧の値、心血管病の危険因子(喫煙、肥満、脂質異常症、糖尿病など)、腎臓などほかの臓器の状態を基に行われる評価により「低リスク郡」「中等リスク群」「高リスク群」の3つのグループに分けられます。

高血圧の重症度別・降圧薬治療を開始するタイミング

低リスク群に該当した人の場合
生活習慣の改善を3カ月行っても140/90mmHg以上であれば、降圧薬治療を開始

中等リスク群に該当した人の場合
生活習慣の改善を1カ月行っても140/90mmHg以上であれば、降圧薬治療を開始

高リスク群に該当した人の場合
直ちに降圧治療を開始

主な血圧の薬は4種類

降圧薬にはいくつか種類がありますが、その中でも「カルシウム拮抗薬」「ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬・ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬」「利尿薬」「β遮断薬」の4種類が主に治療で使用されています。
降圧薬の種類

それぞれの降圧薬は、簡単に言うと次のような仕組みで作用します。

カルシウム拮抗薬

血管を拡げて血圧を下げる

ARB、ACE阻害薬

血管を収縮させる作用を持つ体内の物質の働きを一部止めることで血圧を下げる

利尿薬

血管から食塩と水分を抜いて、血液量を減らすことで血圧を下げる

β遮断薬

心臓の過剰な働きを抑えて血圧を下げる

どの種類の薬を飲むかは、高血圧の程度や状態、他の病気を持っているかなどによって決められます。また、高血圧の状態によって、いくつかの種類を併用する場合や、服用する量や時間が異なる場合があります。このように降圧薬は、一人ひとりの状態に合わせて処方されています。血圧が下がったからといって、自己判断で薬をやめたり、飲む量を変更したりするのは危険です。必ず医師の指示に従いましょう。

血圧の薬で気を付けたい副作用

それぞれの降圧薬を飲んだ場合に現れる可能性がある副作用について、主なものを紹介します。

カルシウム拮抗薬

動悸、顔のほてり、むくみ、歯茎の腫れ、便秘など

ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)

高カリウム血症など

ACE阻害薬

空咳(からぜき)、血管浮腫、高カリウム血症など

利尿薬

高尿酸血症、低カリウム血症、日光過敏症など

β遮断薬

呼吸器疾患の悪化、糖脂質代謝異常など

薬にはどうしても「副作用」はつきものです。副作用は必ずしも現れるものではありませんが、現れる可能性はゼロではありません。降圧薬を飲み始めてから、今までなかったような体の不調が出始めたら、薬の副作用の可能性もあるので、薬を処方してくれた医師に相談しましょう。

高血圧の薬について詳しくは降圧薬(降圧剤)について|知っておくべき主な4種類と効果・副作用を解説

血圧の薬はいつかやめることが出来るのか

降圧薬による治療は、高血圧の根本的な治療にはなりません。一時的に薬で血圧を下げているだけなので、薬をやめると多くの場合、高血圧の状態に戻ります。
一方で、医師の指示により、降圧薬を減らしたりやめたりする場合もあります。その条件として、「薬を使っている状態で血圧が正常値である」「減塩・運動など生活習慣の改善が出来ている」の2点は必須です。薬の効果に頼らずに、日頃から減塩や運動を心がけて生活習慣の改善を続けることが、薬をやめるためだけでなく、高血圧を悪化させないためにも、とても重要です。

もしも血圧の薬を飲んで血圧が下がり過ぎたら

血圧の薬は、高血圧の状態に合わせて医師から処方されています。
そのため医師の指示通りに飲んでいる場合は、いつもより血圧が下がっていたとしても、基本的に薬の服用は続けましょう。しかし、上の血圧が90~100mmHg以下になったり、めまいや立ちくらみなどの低血圧の自覚症状が出たりした場合には、医師に相談しましょう。

高血圧対策の基本は生活習慣の改善です。しかし、減塩、減量、運動など、一朝一夕には改善がむずかしい、リバウンドを繰り返しながら時間をかけて良い方向に変化する、といったこともしばしばです。理想の生活習慣を実現するまでのつなぎとして、薬に頼るという選択肢もありでしょう。一旦は薬を始めてしまい、血圧を下げてからの方が安心して仕事やジムワークに取り組むことが出来るでしょう。それから慎重に薬の減量や中止を相談すればよいのです。高血圧を放置すればするほど、治療は難しくなり、薬の量も多くなりがちです。

参考

心臓発作危険度チェック

正常値より血圧が低いとどうなるのか

ここがポイント!

  • 低血圧は主に「本態性低血圧」「症候性低血圧」「起立性低血圧」の3つ
  • 「本態性低血圧」は原因となる病気や異常がなく、低血圧が続いても危険な病気を引き起こさない
  • 血圧が低いと体を巡る血液量が減少して細胞や臓器に十分な酸素や栄養素が送られないため、体が酸素不足、栄養不足となり「だるさ」を感じる
  • 血圧が大きく低下すると、脳への血液量が減って「めまい」や「立ちくらみ」などの症状を引き起こす
高血圧についてざっと分かったところで、ここからは、低血圧について見ていってみましょう。
低血圧は高血圧と違って、いくつから低血圧であるという明確な数値の基準は、現在定められていません。つまり、今のところ低血圧の厳密な定義はないというわけですが、日本の病院では、収縮期血圧が100mmhg未満を低血圧の目安としているところもあります。

低血圧のさまざまな原因

血圧が低くなる原因はさまざまです。
低血圧は、原因から大きく「本態性低血圧」「症候性低血圧」「起立性低血圧」の3つに分けられます。

1.本態性低血圧:原因が分かっていないもの

一般的に低血圧と言われる場合のほとんどは、原因となる病気や異常がない「本態性低血圧」です。原因となる病気はありませんが、常に血圧が低いため、めまいや立ちくらみなどさまざまな症状が現れます。体の不調を訴えて医療機関を受診しても、原因となる病気が見つからないために、精神的な病気として取り扱われるケースもあるようです。
本態性低血圧は、高血圧とは違い合併症を引き起こすことはないとされています。

2.症候性低血圧:病気が原因であるもの

何らかの病気が原因で血圧が低下していることが明らかな場合は「症候性低血圧」とよばれます。この場合、原因となっている病気の治療が必要になります。

3.起立性低血圧:立ち上がったときの急激な血圧低下によるもの

急に立ち上がったり、長時間立ち続けていたりすると血圧が下がり、めまいや立ちくらみなどの症状が現れるものを「起立性低血圧」といいます。
立っているとき、血液は重力に引っ張られて下半身に増加する傾向があります。通常は、自律神経が働き下半身の血管を収縮させることで、立っているときに血液が大幅に下半身に偏らないように調整しています。この自律神経の働きが悪くなると、血液の調整がうまくいかなくなり、起立性低血圧となる場合があります。特に高齢の人で起こりやすい低血圧です。

主な低血圧は上の3つですが、その他に、高血圧治療で降圧薬を飲んでいる人も、低血圧に注意が必要な場合があります。降圧薬の1種である「利尿薬」は、体の水分を減らすことで血圧を下げる薬です。体全体の血液量も減るため、低血圧(特に起立性低血圧)が起こりやすくなっています。

利尿薬の服用以外にも、体から多くの水分が失われる「出血」「嘔吐」「下痢」「多量の発汗」なども、起立性低血圧を引き起こす原因となります。

血圧が低いと起きる症状

低血圧の人に現れる症状は、「だるさ」や「めまい」などです。なぜこのような症状が現れるのか、その仕組みを簡単に説明します。

私たちの体は、血液に必要な酸素や栄養素を乗せて体の隅々まで運んでいます。血圧が低いと、体中に十分な血液量を循環させることが出来なくなります。そのため、細胞や臓器が酸素不足や栄養不足になり、「だるさ」を感じるようになるのです。低血圧の人が朝なかなか起きられないのは、「循環する血液量が少ないため体が活動モードに入るまでに時間が掛かってしまう」というのも1つの原因だと考えられています。
血圧が低いとどうなるの
血圧が大きく低下した場合には、脳への血液量が減って「めまい」や「立ちくらみ」などの症状を起こします。脳は、体の一番高い位置にあるため、重力に逆らって血液を運ぶときに一番血圧が必要になり、低血圧の影響を受けやすい臓器です。

低血圧の改善法

それでは、低血圧の改善方法をいくつかご紹介していきます。

1日に水を1.25L~2.5L飲む

水をたくさん飲むことで、血液量は増加し、血圧は上がります。脱水は低血圧の原因の1つです。しっかりと水分を取るようにしましょう。ただし、水分の取り過ぎはむくみの原因になりますので、飲む量は適宜調整するようにしてください。

塩分を適度に摂取する

先ほど高血圧の話のところで説明したように、塩分を多く取ると体内の塩分濃度が上がり、それを薄めるために体が水分を多く取り込んで血液量が増え、血圧が上がります。低血圧が気になる場合は、いつもより少し多めに塩分を取るように意識してみてください。例えば、塩分量の多い「梅干し」を、いつもの食事に1つプラスするだけでも効果的です。

下半身の筋力をつける

筋肉には、下半身に溜まった血液を心臓に押し戻す働きがあります。そのため、筋力が低下していると、血液を心臓に戻す力が弱くなり、起立性低血圧を引き起こしやすくなります。低血圧の症状が強くつらい場合には、座ったり寝たりしながら下半身を鍛える運動がおすすめです。

足を圧迫する

弾性ストッキングには、はくことで足が圧迫されて、下半身に溜まっていた血液が心臓に戻るのを助ける効果があります。そのため、弾性ストッキングは低血圧だけでなく足のむくみ防止にも効果的です。弾性ストッキングは、薬局などで購入することができます。

これらは、「本態性低血圧」「起立性低血圧」の改善法です。「症候性低血圧」の改善のためには、原因となっている病気の治療を行いましょう。

低血圧による、めまいや立ちくらみの対処法

起立性低血圧では、急激な血圧低下によってめまいや立ちくらみなどの症状が現れます。
このような症状が現れたときは、転倒の危険があります。無理をせず、すぐにしゃがみこみ、横になりましょう。めまいや立ちくらみの原因は、下半身に血液が貯留し、脳への血液量が不足していることにあります。横になったら、頭を低くして、足を上げ、脳へ血液が流れるような体位を取り、症状が落ち着くのを待ちましょう。

参考

こんな血圧低下は危険

ここがポイント!

  • 血圧が極端に低くなると重要な臓器への血流が維持できないために、細胞や臓器に障害が生じる「ショック」状態となる
  • ショックは原因から「循環血液量減少性ショック」「心原性ショック」「心外閉塞・拘束性ショック」「血液分布異常性ショック」の4つに分けられる
  • 「ショックの5徴候」は、「蒼白」「虚脱」「冷や汗」「脈拍触知不能」「呼吸不全」
最後に、一般の人にはあまり知られていない低血圧状態である「ショック状態」についてお話ししておきます。

先ほど説明したように、体を巡る血液の量が減ると低血圧になり、体は酸素不足、栄養不足の状態になってしまいます。これが極端だった場合、「ショック状態」という、命に関わるとても危険な状態に陥る場合があります。

命に関わる「ショック」状態とは

血圧が極端に低くなると、「ショック」という状態になります。
ショックとは、「体を循環する血液量が減少して必要な血流が維持出来なくなり、細胞や臓器に障害が生じた状態」のことです。ショックは、命に関わるとても危険な状態です。
ショック状態とは
ショックは原因によって、次の4つに分類されます。

1.循環血液量減少性ショック

原因:出血、脱水、腹膜炎、熱傷など
けがなどによる大量出血や激しい下痢などによる脱水で、体内の循環血液量が減少して起こります。

2.心原性ショック

原因:心筋梗塞、弁膜症、重症不整脈、心筋症、心筋炎など
心臓のポンプの機能が障害され、血液を十分に送り出すことが出来なくなって起こります。

3.閉塞性ショック

原因:肺閉塞、心タンポナーデ、緊急性気胸など
心臓自体に異常はなく、心臓の外側で起きた問題により心臓のポンプ機能が障害されて起こります。

4.血液分布異常性ショック

原因:アナフィラキシー、脊髄損傷、敗血症など
アナフィラキシーと呼ばれる危険なアレルギーの一種、神経の損傷、細菌感染などにより、急激に血圧が低下することで起こります。

ショックで見られる血圧低下以外の症状

ショックでは、「血圧低下」以外に「蒼白」「虚脱」「冷や汗」「脈拍触知不能」「呼吸不全」という特徴的な症状が現れます。これらはまとめて「ショックの5徴候」と呼ばれています。それでは、症状を一つ一つ見ていってみましょう。

蒼白

ショックでは体の循環血液量が減少するため、皮膚への血液量も減少します。そのため顔色は、青白く血の気のない「蒼白」状態になります。敗血症ショックの場合、初期には血管が拡張するため「蒼白」の状態は見られません。

虚脱

ショックでは体の循環血液量が減少するため、極度の脱力状態である「虚脱」が引き起こされます。周囲に無関心な状態となり、場合によっては意識障害も引き起こされます。

冷や汗

ショックにより血圧が大幅に低下すると、何とか血圧を維持しようと交感神経の働きが活発になります。これにより発汗量が増えて、「冷や汗」が現れます。

脈拍触知不能

ショックでは心臓から送り出される血液量が低下するため、脈拍が次第に触れなくなり、「脈拍触知不能」となります。

呼吸不全

ショックでは体の循環血液量が減少するため、酸素と二酸化炭素の交換がうまく出来なくなり、「呼吸不全」の状態となります。

ショックは、死と隣り合わせの危険な状態です。すぐに病院での治療が必要になります。

突然の「血圧低下」は英語でどう説明したらいいのか

低い血圧をそのまま英語にすると、「low blood pressure (ロウ・ブラッド・プレッシャー)」ですね。
医学的な用語として「低血圧」を伝えたい場合には、「hyotension (ハイポテンション)」と言います。日常英会話がある程度出来る人でも、医学的な単語は知らないという人が割と多いのではないでしょうか。海外で急に気分が悪くなったときに、こういった単語を1つ覚えておくだけでも役に立つでしょう。
ちなみに、起立性低血圧は「orthostatic hypotension (オーソスタティック・ハイポテンション)」と言います。起立性低血圧を起こしやすい人は覚えておいても良いかも知れません。

参考

通院不要の高血圧治療

「血圧計」は一家に一台の時代

ここがポイント!

  • 家庭血圧計の普及率は約4,000万台と推定されおり、この数は1家庭に1台に相当する
  • 病院の血圧計には「水銀」「アネロイド」、家庭血圧計には「上腕式」「手首式」「指式」がある
  • 日本高血圧学会は、より正確な値が測定できるとして手首式や指式よりも「上腕式血圧計」の使用を勧めている
血圧は、1日の中で、活動に合わせて高くなったり低くなったりと、常に変動しています。そのため、日本高血圧学会は、病院で月に1~2回程度測定した「診察室血圧」よりも、毎日何回か測定した「家庭血圧」の値の方が、高血圧の診断を行う際に重要であるとしており、同学会による「高血圧治療ガイドライン」にもそのように記載されています。

ここからは、家庭血圧計や病院で使われる血圧計の種類や特徴などについて簡単に解説していきます。

日本における家庭血圧計の普及率を見てみよう

あなたの家に、血圧計はありますか。厚生労働省が毎年行っている国民健康・栄養調査によると、わが国における家庭血圧計の普及率は、約4,000万台と推定されています。この数字は、1家庭に1台血圧計がある数に相当します。
また、高血圧の人は約77%、そうでない人も約44%は血圧計を持っており、家庭で日常的に血圧を測定していると報告されています。血圧計は「今やどの家庭にも当たり前にある時代となっている」と言っても過言ではないのです。

病院にある昔ながらの「水銀血圧計」の仕組みを見ておこう

家庭血圧計について見ていく前に、病院で昔から使われている「水銀血圧計」について少し触れておきます。

今では「電子血圧計」が一般的ですが水銀血圧計は100年以上前に開発された、最初の血圧計です。
水銀血圧計は、「水銀柱」という圧力計の目盛りで、血圧の値を読み取ります。血圧の単位として用いられている圧力の単位は「○○mmHg」ですが、実はこれは、水銀の元素記号「Hg」が由来です。血圧が高いほど、水銀柱が高く押し上げられた目盛を読むことになるため、血圧の単位は「水銀を何mm押し上げる力に相当する圧力であるか」を現す「mmHg」とされているのです。
血圧の単位は「mmHg」

アネロイド血圧計~病院で使われる水銀を使わないタイプの血圧計

アネロイド血圧計は、血圧を、水銀柱を押し上げる力ではなく、針を回す力に置き換えて読み取る血圧計です。有害である水銀を使わなくて良い、コンパクトである、などの利点があります。一方で、衝撃や経年劣化により、測定値に変化が出る場合があり注意が必要です。

上腕式血圧計と手首式血圧計の特徴

基本的に医療機関でのみ使用されている水銀血圧計から、話を家庭血圧計に戻しましょう。
血圧計と言えば、腕に巻くタイプが一般的ですが、最近は手首に巻くタイプも売られています。それぞれの血圧計の特徴について見ていきましょう。

巻き付け型上腕式血圧計

上腕式血圧計は、いわゆる「腕に巻くタイプ」で、最も一般的な血圧計です。
このタイプの血圧計は、比較的正確な値が測れるので、日本高血圧学会は、家庭では「上腕式血圧計」で測定をするように勧めています。

アームイン型上腕式血圧計

アームイン型血圧計は、上腕式血圧計のうち、「腕を機械に通すタイプ」のものです。病院や薬局などに設置されているのを見かけたり、実際に使ってみたりしたことがあるという人もいると思います。
このタイプの血圧計は、腕を血圧計に通すだけで、血圧測定のための正しい姿勢に自然となるので、より正確な値を測定しやすいという特徴があります。

手首式血圧計

手首式血圧計は、手首に巻くだけで簡単に測定出来る血圧計です。小型なので持ち運びにも便利です。

指式血圧計

指式血圧計は、指にカフを巻いて血圧を測定します。

指式血圧計および手首式血圧計は、手軽ではありますが、正確性に乏しいと考えられています。日本高血圧学会は、家庭用血圧計として、上腕式血圧計の使用を推奨しています。

血圧の変化を記録できるスマホアプリ

健康管理のために血圧を測定する場合には、毎日測定をして記録を付け続けることがとても大切です。最近では、血圧の記録を手伝ってくれるスマートフォンアプリケーション(スマホアプリ)もいくつか登場しており、これらは「血圧管理アプリ」と呼ばれています。

記録表や筆記用具をいちいち用意しなくても、いつも手元にあるスマホのアプリに測定した血圧の値を手軽に入力することが出来ます。面倒な作業が省けて、記録を続けやすいというわけです。
また、ほとんどの血圧管理アプリは、単に値を数字として記録しておくだけのものではなく、日々の血圧の変化をグラフにして表示させることも出来ます。いつ高かったのか、どんなときに高かったのかなど、グラフを見れば一目瞭然です。

さらに、せっかく測定しても「後で記録しようと思ってうっかり記録をし忘れてしまった」「うっかり測定値を間違えて記録してしまった」、などに心当たりがあるという人はいませんか。そんな「うっかり」を防ぐために、血圧管理アプリと連動出来るタイプの血圧計も販売され始めています。
血圧を測定すると、Bluetoothを介して自動的にアプリに測定値が記録される仕組みになっており、入力ミスや入力漏れを防ぐことができます。

血圧の記録をつい忘れがちな人や、記録表への記入が面倒な人は、「血圧管理アプリ」を試してみてはいかがでしょうか。

この章では血圧計の種類についていろいろ見て来ました。血圧計についてもっと詳しく知りたい人は「【血圧計について】種類・特徴・価格など選び方の参考になる情報を幅広く解説」をご参照ください。

参考

小原拓, 大久保孝義, 菊谷昌浩, 福永英史, 村井華代, 浅山 敬, 目時弘仁, 橋本潤一郎, 戸恒和人, 今井潤. わが国にお ける家庭血圧測定の現状: 外来患者8506人の実践と意識: 家庭血圧測定の現状に関する調査研究. 血圧. 2006; 13: 447 54.

正しい血圧測定法をマスターしよう

ここがポイント!

  • 上腕式血圧計による測定では、カフ(腕に巻く部分)を正しい位置で巻くことが重要
  • 上腕式血圧計は、手のひらを上に向けて肘のくぼみから1、2cm上に、指が1本入る程度のきつさでカフを巻く
  • 手首式血圧計は、手首と手のひらの境目から指1本程度間隔をあけて、手首にぴったり巻く
  • 血圧を測定するときは、必ずカフと心臓が同じ高さになるようにして測定する
  • 血圧は、座って1~2分間安静にしてから、原則2回続けて測定して平均値を取る
血圧の基準や血圧計の種類などについて確認してきたところで、最後に、正しい血圧の測定法について解説します。
血圧は、正しい方法で測定する必要がありますが、測る位置やカフを巻く強さが間違っていると血圧の値に影響してしまい、正しい値が測定出来ません。せっかく毎日血圧を測定していても、正しい値が測定できていなければ意味がありませんので、ここでマスターしましょう。

まずは血圧測定の原理から

正しい血圧測定法を知るに当たり、そもそも血圧がどのような仕組みで測定されているのかを軽く知っておきましょう。
血圧測定の方法には、「血管の音を聴いて測るコロトコフ法」と「血管の振動で測るオシロメトリック法」があります。それぞれの原理についてみていきましょう。

コロトコフ法

カフ(腕に巻く部分)に空気を送り込んで上腕の動脈を圧迫し、いったん血流を止めます。徐々に空気を抜いてカフの圧迫を緩めていくと、血圧がカフの圧力を上回った時点で、心臓の拍動に合わせて血流が再開します。このとき、聴診器では血管を血液が流れる音を聞き取ることが出来ます。この音は「血管音(コロトコフ音)」と呼ばれています。
聴診器でコロトコフ音が聞こえ始めた点が「収縮期血圧」、次第にカフの圧力を緩めていき、ついにコロトコフ音が聞こえなくなった点が「拡張期血圧」です。
コロトコフ法による測定は、聴診器を用いるので医療機関で行われている方法です。

オシロメトリック法

コロトコフ法は技術的に難しいため、簡単に測定出来る方法として開発されたのがオシロメトリック法です。カフに空気を入れていったん血流を止め、徐々に空気を抜いて血流を再開させるという方法はコロトコフ法と同じです。コロトコフ法では、血管を流れる血液の音を聞いていたのを、オシロメトリック法では血流によって発生する振動(脈圧)を電気的に検出し、血圧を測定するという原理になっています。
家庭用の電子血圧計のほとんどで、この方法が用いられています。オシロメトリック法の開発により、カフを巻いてボタンを押すだけで、誰でも簡単に血圧を測定することが出来るようになったのです。

イラストで解説~家庭血圧計での正しい測定法を確認しよう


それではここから、家庭で主に使われている「上腕式血圧計」と「手首式血圧計」について、それぞれの正しい測定方法を見ていきましょう。

上腕式血圧計の正しい測り方

血圧を測るときは、下のイラストのように背もたれある椅子を用意して深く腰掛け背筋を伸ばしましょう。
カフを心臓と同じ高さになるように巻きましょう。カフは素肌の上から巻いてください。うまく袖がまくれないときには、袖を抜いて血圧測定をするようにしてください。上着の袖を無理やりたくし上げる行為は、腕の血管を圧迫してしまい測定結果に影響してしまうからです。
血圧の正しい測り方

カフの正しい巻き方

上腕式血圧計は、カフを巻く位置が重要です。
まずは、肘の内側を指先で触れ、ドクドクと脈打っている部分を探してみましょう(下の図の左側「測りどころ!」という部分を目安に探してみてください)。その、ドクドクとしているのが「動脈」です。その位置をしっかりと覚えておきましょう。
次に、見つけた動脈にチューブが沿うようにカフを巻いていきます。目安としては、手のひらを上に向けて、肘のくぼみから1~2cm程度上にくるように巻きましょう。
カフは、巻く強さも重要です。きつ過ぎても緩過ぎても、血圧の値に影響してしまうからです。人指し指が1本入る程度の隙間が出来る強さで巻きましょう。
カフの正しい巻き方

手首式血圧計の正しい測り方

手首式血圧計で測定する際は、まず左手の親指を上に向けます。親指の直線上に、血圧計の表示部分が来るようにして、手首に血圧計を被せます。このときに、カフが手首の関節部にかからないよう、手首と手のひらの境目から人指し指1本程度の間隔を空けましょう。(イラストのように自分で指を入れてみましょう。)
手首式血圧計を巻くときは、手首にぴったりとつくように巻きます。心臓の高さで測定をするのは上腕式と同じです。手のひらを胸に当てて測定すると、心臓の高さに血圧計を合わせやすくなります。
緊張やストレスなどでも血圧は変動するので、測定はリラックスして行いましょう。
手首式血圧計の正しい測り方
「上腕式血圧計」と「手首式血圧計」、それぞれの
正しい測定方法は以上です。
一般的に「上腕式血圧計」の方が、測定の正確性が高いとされています。日本高血圧学会は、家庭での血圧測定では「上腕式血圧計」の使用を勧めています。やむを得ない場合以外は「上腕式血圧計」を使用するのが良いでしょう。

血圧測定はいつ行ったらいいのか

血圧は、体の活動リズムに合わせて変化します。
朝から日中にかけて上昇し、夜になるにつれて低下していきます。睡眠中は更に低下して最も低くなります。このように、血圧は一日の中で大きく変動しています。これを血圧の「日内変動」といいます。
血圧の日内変動を考慮し、日本高血圧学会は、家庭で正しく血圧を記録していくためには、「朝」と「夜」の決まった時間に上腕で測定するように勧めています。

さらに血圧は、日内変動以外にも、緊張やストレス、寒暖差などの影響も受けて一時的に変化します。こうした一時的な変化を考慮し、血圧測定は、1機会に2回行いその平均値を取るように勧められています。朝と夜に1回ずつ測るのではなく、朝に2回、夜に2回測定し、それぞれの平均値を取っていきましょう。また、平均値のみを記録するのではなく、測定した全ての値を記録していくようにします。先ほど紹介した「血圧管理アプリ」などを活用すると簡単に記録をつけることが出来て便利です。時間がなくやむを得ず1回のみの測定になってしまった場合でも、血圧の値は必ず記録に残しましょう。
血圧の変動パターンは人それぞれです。病院では緊張して上がってしまう人や、夜間のみ高血圧になる人もいます。これらの特徴に気付くためにも、家庭血圧の記録は、高血圧の診断や治療を行っていく上で重要視されています。

<家庭で血圧測定をする際の注意点>
  • 測定前にたばこ、お酒、カフェインを含む飲み物は摂取しない
  • 静かで寒すぎず、暑すぎない部屋で行う
  • カフの位置を心臓の高さに維持出来るような環境で行う
  • 背もたれ付きの椅子に足を組まずに座り、1~2分間安静にしてから行う
  • 測定中はしゃべらない
  • 朝は、排尿後、食事や服薬をする前に行う
  • 夕は、就寝前に行う
血圧を測るときの注意点

*血圧測定について詳しくは「【正しい血圧測定法】血圧計の種類別に測定原理から正しい血圧測定法、血圧測定連動アプリ情報まで幅広く解説」をご参照ください。

参考

心臓発作危険度チェック

まとめ

血圧の基本についていろいろ見て来ましたが、いかがでしたか。今まで知らなかったような、ためになる情報が得られたり、自分の血圧の知識を再確認出来たりしたのではないかと思います。
血圧は、高過ぎても低過ぎても体に影響を与えます。高血圧は、動脈硬化を招き、放っておくと心臓や脳に、命に関わる怖い合併症を引き起こします。低血圧は、ほとんどの場合怖い病気につながることはありませんが、だるさや立ちくらみなどの症状により、生活に支障が出る場合もあります。
血圧の異常は、測ってみないと分からないというケースが多くあります。さらに、血圧は1日の中で高くなったり低くなったりと、常に変動しています。そのため、月に1~2回病院で測定した値だけでは、例えば高血圧かそうでないかなどの正確な診断は難しいとされており、家庭で毎日数回血圧を測定し、その値を診断の参考とすることが重要視されています。
このように、普段の自分の血圧を知るために、家庭での血圧測定は重要なのです。家で血圧を測る場合には、正しい方法で測定しなくては正しい値が得られません。正しく測定するためにも、自分に合った家庭用血圧計を選び、正しい方法で使うようにしましょう。

心臓発作の発症リスクをチェックしてみませんか?

Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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