【円形脱毛症(AA)とは】大人や子どもに関係なく発症する脱毛症を解説

円形脱毛症(AA)は、生まれつきの脱毛症を除いた「後天性脱毛症」の中で最も発症頻度が高いことで知られています。円形脱毛症を発症する可能性は、年齢や性別の違いに関係なく全ての人にあり、この病気はいつ誰が発症してもおかしくないと言えます。今のところ、円形脱毛症の原因は完全には解明されていませんが、現在最も有力な原因と考えらているのは、ストレスなどが引き金となって起こる「自己免疫応答」という免疫の異常です。そのため、円形脱毛症が必ず治るような治療法はまだ見つかっていませんが、回復を期待する治療として、主に免疫の働きに関する薬が使用されています。ここでは、円形脱毛症の原因、症状、治療法から日々のシャンプーにおける注意点などまで、診療ガイドラインに沿って幅広く解説していきます。

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01円形脱毛症とは
  2. 02円形脱毛症の原因
  3. 03男女で原因は異なるのか
  4. 04治療を受けるには病院の何科を受診すれば良いのか
  5. 05円形脱毛症の治療
  6. 06円形脱毛症に効果的な漢方薬はあるのか
  7. 07円形脱毛症が治りにくいケースと治らない場合の対策
  8. 08日々のシャンプーで気をつけたいポイント
  9. 09円形脱毛症を上手に隠す方法〜かつらについて
  10. 10まとめ

円形脱毛症とは

ここがポイント!

  • 円形脱毛症は髪の毛が主に「円形」に突然抜けてしまう病気
  • 後天性脱毛症の中で発症する人が最も多い
  • 円形以外の場合もあり、脱毛の数、脱毛の範囲、脱毛の形態により大きく4つのパターンに分類されている
  • 4つのパターンとは「通常型円形脱毛症(単発型・多発型)」「全頭脱毛症」「汎発型脱毛症」「蛇行状脱毛症」
  • 年齢や性別の違いに関係なく、全ての人で発症する可能性がある

まずは円形脱毛症とはどのような病気なのか、症状を中心に見ていきましょう。

後天性脱毛症の中で最も多いのが円形脱毛症

生まれつきの脱毛症を除いた「後天性脱毛症」は複数の種類がありますが、円形脱毛症は、後天性脱毛症の中で最も発症頻度が高いと知られています。米国では人口の0.1~0.2%に発症しており、日本も同程度の発症率があると考えられています。つまり、1,000人に1~2人は生涯のうちに円形脱毛症を発症すると言えます。

子どもでも発症する

円形脱毛症は、年齢や性別によらずいつでも誰でも発症する可能性があるため、幼い子どもでも発症する場合があります。子どもの場合は大人に比べて自分の病気を理解することが難しく、脱毛による外見の変化は学校生活などにおいて大きなストレスとなります。子どもの円形脱毛症に対しては治療だけでなく、例えば子ども同士のトラブルなどを防ぐという意味でも、周囲の大人が適切に接し、関わっていくことが大変重要です。

子どもの円形脱毛症の原因、脱毛パターン、治療などについて詳しくは「【子どもが円形脱毛症になったら】病院は小児科と皮膚科のどちらへ連れていくべきか~特徴や治療法、親が気をつけるべきポイントなど」をご参照下さい。

脱毛パターンは4通り

円形脱毛症は、主に「円形」に髪の毛が突然抜けてしまう病気ですが、円形以外の形に脱毛する場合もあります。日本皮膚科学会は、円形脱毛症を「脱毛の数」「脱毛の範囲」「脱毛の形態」によって大きく次の4パターンに分類しています。
<円形脱毛症の分類>
分類 特徴
通常型円形脱毛症 髪の毛が部分的に円形に抜けた状態
・単発型:脱毛部が1つのもの
・多発型:脱毛部が複数あるもの
全頭脱毛症 脱毛部が頭全体に広がった状態
汎発性脱毛症 脱毛部が頭だけでなく全身に広がった状態
蛇行状脱毛症 髪の生え際が帯状に抜けた状態
円形脱毛症の4つの分類
こちらは「通常型円形脱毛症(多発型)」の実際の写真です。
通常円形脱毛症(多発型)写真

・脱毛する場所、脱毛しやすい場、脱毛パターンなどについて詳しくは「【円形脱毛症が出来る場所】ストレスなどの原因で脱毛場所は違うのか~診療ガイドラインを基に正しい情報を確認しよう」をご参照ください。
・通常型円形脱毛症の多発型の特徴や推奨される治療法などにについて詳しくは「【多発型(多発性)円形脱毛症の原因や治療について】単発型との違いや完治の可能性まで診療ガイドラインを基に解説」をご参照ください。
・全頭脱毛症の原因、治療法、治療に掛かる期間や費用などについて詳しくは「【全頭脱毛症の原因や治療について】完治までの期間〜再発の可能性やかつらに関する注意点など」をご参照ください。

参考

脱毛症診断チェック

円形脱毛症の原因

ここがポイント!

  • 円形脱毛症の原因は完全には解明されていない
  • 現在最も有力であると考えられている原因は「自己免疫応答」
  • ストレスは、自律神経と内分泌のバランスを崩し「自己免疫応答」の誘因になると考えられている
  • 「自己免疫疾患」「アトピー素因」などの病気や体質も円形脱毛症に関連すると考えられている

ここでは、円形脱毛症の原因と、ストレスとの関連性について解説していきます。

原因はまだ100%解明されておらず不明な点も

円形脱毛症の原因は、まだ完全には解明されていません。最適な治療法を確立するためには、原因の解明は必須です。そのため、まだ多く残されている、明らかになっていない部分の解明に向けて、世界中の医学研究者が日々研究を進めています。

原因として有力なのが「自己免疫応答」

現在円形脱毛症の原因として最も有力であると考えられているのは、免疫の異常である「自己免疫応答」です。
私たちの体に備わっている「免疫」とは、体内に外部から細菌やウイルスなどが侵入してきた際、体内をパトロールしている免疫細胞がそれらを自分の体の一部ではない「異物」と認識して、攻撃を加えて体内から排除する仕組みです。この免疫の働きにより私たちは病気にならないよう守られているのです。自己免疫応答とは、この免疫の仕組みが正しく機能しなくなり、免疫細胞が自分自身の細胞を誤って「異物」と認識して攻撃してしまう状態です。円形脱毛症の場合はこの攻撃が「毛根」にある「毛乳頭(もうにゅうとう)細胞」や「毛母細胞」などの髪の毛を作る細胞に対して働くことで発症すると考えられています。
自己免疫応答により毛が抜ける仕組み

円形脱毛症の原因として最も有力である「自己免疫応答」や要因とされている「自己免疫疾患」「アトピー素因」「遺伝」などについて詳しくは「【円形脱毛症の主な原因について】免疫の病気からストレスの関与などまで、原因とその発症メカニズムを正しく理解しよう」をご参照下さい。

ストレスは原因となるのか

ストレスは、円形脱毛症の直接の原因とは今のところ考えられていませんが、発症の誘因となる可能性は考えられています。身体的・精神的ストレスを感じると、「自律神経」や「ホルモン(内分泌)」のバランスが崩れることで、免疫のバランスも崩れ「自己免疫応答」を誘発し、円形脱毛症の発症につながる可能性があると考えられているのです。この可能性を示す医学論文は複数報告されていますが、ストレスの感じ方には個人差があり、明確な尺度を設けて評価することが困難であるため、十分な医学的根拠が得られていないのが現状です。

ストレスが円形脱毛症に及ぼす影響や円形脱毛症とストレスの関連性に医学的根拠があるとはいえない理由などについて詳しくは「【円形脱毛症とストレスについて】関連性は医学的に証明されているのか~診療ガイドラインを基に正しい情報を解説」をご参照下さい。

他の病気が原因となる場合はあるのか

円形脱毛症の発症に関与している要因として「自己免疫疾患」や「アトピー素因」が挙げられ、これらの病気や体質がある場合には、円形脱毛症を発症しやすいと考えられています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

自己免疫疾患

自己免疫疾患とは、先ほどお話しした「自己免疫応答」の仕組みにより、自分自身の細胞が免疫細胞によって攻撃され、正常に機能出来なくなり発症する病気です。攻撃のターゲットとなる臓器や組織の違いにより、さまざまな病気が発症します。円形脱毛症の診療ガイドラインには「円形脱毛症を発症している人は、髪の毛とは直接関係しない自己免疫疾患も発症している人が比較的多い」と記載されています。円形脱毛症との併発が多い自己免疫疾患は「慢性甲状腺炎(橋本病)」「尋常性白斑」「全身性エリテマトーデス(SLE)」「関節リウマチ」「重症筋無力症」などです。

アトピー素因

アトピー素因とは、簡単に言うと「アレルギーになりやすい体質」であり、具体的には次の2つのいずれかに当てはまった場合と定義されています。
1)本人、あるいは血のつながった家族が気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうち1つ以上にかかっている。
2)アレルギーを引き起こす免疫物質のIgE抗体が産生されやすい体の状態である。

アトピー素因の有無は円形脱毛症の発症と治療効果に影響すると考えられています。円形脱毛症とアトピー素因の関連性について調べた論文では、円形脱毛症の日本人200人を調査した結果、本人や家族にアトピー素因があったのは108人(54%)、本人に限定すると82人(41%)であったと示されています。このように、円形脱毛症を発症している人には「アトピー素因」を持っている人が多いことから、両者には関連性があると考えられているのです。

円形脱毛症の要因とされている「自己免疫疾患」および「アトピー素因」について詳しくは「【円形脱毛症の主な原因について】免疫の病気からストレスの関与などまで、原因とその発症メカニズムを正しく理解しよう」をご参照下さい。

参考


男女で原因は異なるのか

ここがポイント!

  • 円形脱毛症は、人種・性別・年齢などの違いに関係なく発症する

円形脱毛症の原因に関して、性別の違いにより異なる特徴が見られたことを示した論文は今のところ報告されていません。また、円形脱毛症の診療ガイドラインには「人種・性別・年齢などの違いに関係なく発症する」と記載されています。前の章で解説しましたが、円形脱毛症は原因が完全に解明されていません。現在、原因として最も有力だと考えられている「自己免疫応答」は、性別に関係なく起こります。そのため、円形脱毛症の原因が男女で異なるとは考えにくく、推奨されている治療法にも男女の違いは特にありません。
また、円形脱毛症の発症は、自己免疫応答以外にも自己免疫疾患、アトピー素因などの病気や体質も関連していると考えられています。自己免疫疾患と円形脱毛症が併発しているケースも多く、橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、重症筋無力症、SLE(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチなどがあります。

男女で特徴的な抜け毛の原因もある

抜け毛の原因には、男女で特徴が異なるものもあります。薄毛の主な原因である「AGA(男性型脱毛症)」は、男女共に発症しますが、原因や症状が異なります。男性の場合、男性ホルモンが原因とされていますが、女性は明らかになっていません。そのため、男女で症状や治療法に違いがあるのです。また、一時的な脱毛ではありますが、産後の抜け毛(分娩後脱毛症)は女性特有の原因であると言えます。若い女性に多い原因には、過度なダイエットもあります。食事制限によりる栄養が不足で髪の毛の成長が阻害され、抜け毛になる場合があります。

参考



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治療を受けるには病院の何科を受診すれば良いのか

ここがポイント!

  • 円形脱毛症の治療は「皮膚科」「脱毛症専門外来」「毛髪外来」などで受けられる

円形脱毛症の治療は病院の「皮膚科」で受けることが出来ます。また、病院によっては「脱毛症専門外来」や「毛髪外来」などの、脱毛や髪の毛に関する病気の治療を専門とする外来を開設している医療機関もあり、こうした外来ではより専門的な治療を受けることが出来ます。
子どもが円形脱毛症を発症した場合には、まずはかかりつけの小児科を受診すると良いでしょう。必要に応じて皮膚科などを紹介してもらう流れとなります。
医療機関によっては事前に予約が必要な場合がありますので、受診前には電話やインターネットなどで確認しておきましょう。
円形脱毛症は、治療を受けなくても自然に症状が治まってくることもあります。しかし、円形脱毛症の治療を希望するのであれば、医療機関を受診し適切な治療をしたほうがいいでしょう。特に、脱毛の範囲が広い、発症してからの期間が長い場合、体質としてアトピー素因や自己免疫性疾患を持つ人の場合は、完治する可能性が低いことが明らかになっています。脱毛の症状が現れた場合には、早期に皮膚科、または脱毛症専門外来や毛髪外来などの医療機関を受診し医師に相談することをおすすめします。

参考



円形脱毛症の治療

ここがポイント!

  • 円形脱毛症は原因が完全に解明されていないため、確立された治療法はまだない
  • 診療ガイドラインで「行うよう勧められる」治療法は「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」の2つのみ
  • ステロイド薬は、効果が認められている一方で、副作用も多いと知られている

円形脱毛症の原因は完全に解明されておらず、根治出来る治療法が確立されていません。そのため、円形脱毛症の症状を改善出来る可能性があるあらゆる治療が行われています。
ここでは、円形脱毛症の診断から診療ガイドラインで推奨されている治療法までを見ていきましょう。



円形脱毛症の診断

皮膚科、脱毛症専門外来、毛髪外来などを受診するとまず「円形脱毛症」かどうかの診断を受けます。
典型的な円形の脱毛症状がみられる場合には、医師が目で確認をする「視診」などで容易に診断がつくとされていますが、広範囲に及ぶ脱毛パターンの場合には診断が難しい場合もあり、通常下のような流れで診断が行われます。

1)視診、触診
医師が頭皮や毛穴を直接見たり触ったりすることで状態の確認が行われます。
2)簡易抜け毛テスト、脱毛パターンの確認
10~20本の髪の毛を引っ張り、髪の毛の抜けやすさや、毛周期という「成長期」「退行期」「休止期」の3つの生え変わりサイクルに該当する毛包の割合などを確認します。
3)毛根部の確認
円形脱毛症の主な原因は自己免疫応答であると考えられているため、抜けた髪の毛の毛根部を直接観察し、委縮、断裂、先細りなどの障害の有無を確認します。
4)血液検査
円形脱毛症は自己免疫疾患や内分泌疾患を併発している場合があるため、円形脱毛症以外にそれらの病気を発症していないかどうかを調べるために血液検査を行います。また、円形脱毛症ではなく、感染症や栄養不足(亜鉛・鉄)など、他の原因で生じた脱毛症状であるかどうかも、血液検査の結果で分かります。
5)病理組織検査
1)~4)の検査を行っても「円形脱毛症」と診断し切れない状態だった場合には、頭皮の組織を採取して組織検査を行う場合もあります。基本的には脱毛をしている部位と、していない部位の組織を採取して、細胞レベルでどのような変化が起きているのかを調べます。

上記のような複数の検査を行うことで、脱毛を引き起こしているのが円形脱毛症なのか、他の病気が原因なのかを医師が総合的に判断し、診断をします。

主な治療法は2つ

「円形脱毛症」と診断された場合、その人に最適な治療法が医師により選択されます。円形脱毛症の診療ガイドラインでは、さまざまな治療法について、治療効果の医学的根拠と安全性から、それぞれ「推奨度」を決めています。

<診療ガイドラインに記載されている円形脱毛症の治療法の種類とその推奨度>
治療法 推奨度※
ステロイド局注(局所注射) B
局所免疫療法 B
ステロイド内服 C1
点滴静注ステロイドパルス療法 C1
第2世代抗ヒスタミン薬 C1
セファラチン内 C1
グリチルリチン・メチオニン・グリチン複合材(グリチロン) C1
ステロイド外用 C1
塩化カルプロニウム外用 C1
ミノキシジル外用 C1
冷却療法 C1
直線偏光近赤外線照射両オフ(スーパーライザー療法) C1
PUVA療法 C1
シクロスポリンA内服 C2
漢方内服療法 C2
精神安定剤内服 C2
アンスラリン外用 C2
星状神経節ブロック C2
催眠療法 C2
鍼灸治療 D
分子標的治療法 D
カツラ C1
<診療ガイドラインの推奨度分類>
A…行うよう強く勧められる
B…行うよう勧められる
C1…行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない
C2…根拠がないので勧められない
D…行わないよう勧められる

上の表のように、円形脱毛症の治療法は複数あるものの、症状改善に効果的であると医学的に認められている治療法はまだ多くなく、今のところ、円形脱毛症の治療において「A:行うよう強く勧められる」に該当する評価を得ている治療法はありません。また、2番目に高い推奨度である「B:行うよう勧められる」という評価を得ている治療法も「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」の2つのみです。また、3番目に高い推奨度の「C1:行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない」に該当する治療法は複数ありますが、ステロイド療法以外は、その他の治療法と併せて行う「併用療法」の場合にのみ推奨されています。

それでは、推奨度Bの「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」についてもう少し詳しく見てみましょう。

ステロイド局所注射

ステロイド局所注射は、脱毛部位にステロイド薬を直接注入する方法です。ステロイド薬には免疫の働きを抑える作用があります。それにより、原因の1つと考えられている自己免疫応答を抑えて、症状を改善することが期待出来ます。ステロイド局所注射の治療効果は医学的に認められていますが、注入した部位の皮膚が委縮してへこんでしまう「皮膚萎縮」という副作用や、注入した部位しか毛が再生しないなどの欠点も報告されています。

ステロイド局所注射は「症状が固定している脱毛面積が25%以下の成人(16歳以上)の人」に対して推奨されています。脱毛部位が広範囲の人には、注入回数と薬の量が増えてしまうため勧められていません。また、子どもに対しては効果と安全性が確認されていないため基本的に用いられていません。

局所免疫療法

局所免疫療法は、特殊な薬を脱毛部位に塗って人工的に「炎症(かぶれ)」を引き起こし、かぶれの原因に対する正常な免疫応答を起こすことで、自己免疫応答の働きを抑える治療法です。この治療の効果については、医学的に信頼性の高い根拠が示されていますが、一方で副作用として接触性皮膚炎、局所のリンパ節主張、じんましんなどを併発する可能性があります。年齢問わず、症状が固定している脱毛部位が25%以上の広範囲に及ぶ「全頭脱毛症」などの人に対し、第一選択肢として行うべき治療法とされています。

局所免疫療法は、SADBE(サドべ)療法とも呼ばれます。保険外診療のため、施行できる病院が限られています。SADBE療法を希望する場合は、受診前に病院へ確認した方がいいでしょう。


円形脱毛症の治療の種類、治療に掛かる期間や費用などについて詳しくは「【円形脱毛症の治療について】ステロイド注射などさまざまな治療法~治るまでの期間や治療費など」をご参照下さい。

ステロイド治療薬の効果と副作用

円形脱毛症のステロイド療法は、投与方法によって「ステロイド局所注射」「ステロイド外用」「ステロイド内服」「ステロイドパルス療法(点滴)」の4通りに大きく分けられていますが、ここでは4つの投与方法に共通である、ステロイド薬の効果と副作用を見ていきましょう。

ステロイドの効果

ステロイドには「免疫を抑制する作用」と「炎症を抑える作用」があります。円形脱毛症は、免疫の異常である「自己免疫疾患」が最も有力な原因であると考えられているため、免疫の働きを抑える「ステロイド薬」を用いた治療法が推奨されているのです。

ステロイドの副作用

ステロイド薬は、4つの投与方法に関わらず、次のようにさまざまな副作用を引き起こす可能性もあります。

<ステロイドの主な副作用>
副作用 起こる仕組み
感染を起こしやすくなる 免疫機能が低下するため、細菌やウイルスが体内に侵入した際に抵抗出来ず、風邪などの感染症を起こしやすくなる。
骨粗しょう症 主に骨を形成する「骨芽細胞」の働きが抑制されるため、骨密度が低下し、骨がもろくなる。
糖尿病 体内で糖の合成が促進され、その結果血糖値が上昇する。
消化性潰瘍 胃粘膜の防御機能が減少するとともに、胃酸の分泌が促進されることで潰瘍が出来やすくなる。
血栓症 止血作用のある「血小板」の機能が促進されるため、血管内で血液が固まりやすくなる。
精神症状 不眠症、多幸症、うつ状態などになることがある。
ムーンフェイス(満月様顔貌)、中心性肥満 食欲が亢進することに加えて脂肪代謝が障害されるため体に脂肪が蓄積しやすくなる。
動脈硬化、高脂血症 上記と同様、食欲亢進と脂肪代謝障害によって起こることがある。
高血圧症、むくみ 体内に塩分が蓄積しやすくなることで水分も体内に溜まりやすくなり、血圧上昇などが起こる。
その他 白内障(視界が白く濁る病気)、緑内障(眼球の圧力が上昇する病気)、にきびが出来やすくなるなどがある。

ステロイド薬、および円形脱毛症の治療に用いられるその他の薬について、詳しくは「円形脱毛症の治療に用いられる薬の効果と副作用|診療ガイドラインによる推奨度や市販薬の有無~妊娠中の女性が気を付けるべき点など」をご参照下さい。

自然治癒もあり得る~その割合は

円形脱毛症は、治療を受けなくても自然に症状が軽快し完治する場合もあります。このような「自然治癒」をする確率は「脱毛範囲が狭い」「発症してからの期間が1年以内」などの場合に高い傾向があります。しかし、これはあくまで確率論であり、病気の進行や回復率は個人により大きく異なるため、全員に当てはまる決定的な完治率を示すことは出来ません。

円形脱毛症が完治しやすいケース、完治しにくいケース、完治までの過程などについて詳しくは「【円形脱毛症の完治と再発】完治の過程や再発の原因などについて診療ガイドラインを基に正しく解説」をご参照下さい。

脱毛症診断チェック

円形脱毛症に効果的な漢方薬はあるのか

ここがポイント!

  • 漢方薬は、 円形脱毛症の診療ガイドラインでは、十分な医学的根拠がないため推奨出来ないと記載されている


漢方とは、漢方医学の理論に基づいて処方される医薬品のことで、複数の生薬を組み合わせて調合しているものです。生薬とは、薬草の根や葉、果実、花などの天然に存在する有効成分のことで、服用することで治癒力を高め、体質の改善を目的として用いられます。
柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」や「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」などの、自律神経を安定させストレスを取り除く効果が期待される漢方薬が、円形脱毛症の治療薬として用いられている場合があります。
しかし、日本皮膚科学会は、漢方薬の治療効果を示している研究の内容、手法、評価基準、再発の有無、自然治癒力との比較などが不明であるため「円形脱毛症に対して効果的であるという信頼性は十分でない」とし、推奨度を「C2:十分な根拠がないため、勧められない」としています。

前の章でも説明してきましたが、円形脱毛症は、発症の原因が解明されていない病気です。そのため、漢方薬に限らず「この治療を行えば必ず円形脱毛症が改善する」といった医学的根拠のある抜本的な治療法はありません。
漢方薬の治療は、体全体を整え本来の自然治癒力を高めることが基本になっています。ストレスは、円形脱毛症の直接の原因ではありませんが、免疫に影響をあたえるなど副次的に影響を与えている要素のひとつである可能性はあります。漢方での治療は円形脱毛症の症状に直接的な効果は期待できませんが、体質改善や体のバランスを整えることを目的であれば、ストレスや血行不良の改善に効果が期待できるとされている漢方薬を試してみるのもいいでしょう。

参考


円形脱毛症が治りにくいケースと治らない場合の対策

ここがポイント!

  • 脱毛期間が長い(3年程度)ケースや脱毛範囲が広い全頭型・汎発型などは回復率が低い
  • 子どもは大人に比べて回復率の低い「蛇行状脱毛症」を発症しやすい
  • 子どもの円形脱毛症では完治した/軽快した割合よりも、症状が残っている/悪化した割合の方が高い
  • 大人も子どもも症状が改善しない場合には、「かつら」の使用の検討も推奨されている

ここでは、治療を行っても円形脱毛症が改善しにくい、または改善しない場合について解説をします。

脱毛期間や脱毛範囲と治りにくさ

円形脱毛症は、「脱毛期間が長い(3年程度)」や「脱毛範囲が広い(全頭型・汎発型など)」場合には完治する可能性が低いことが明らかになっています。
治りにくい円形脱毛症に見られやすい症状
最初の章でお話した4つの脱毛パターンは、回復率に影響することが分かっており、4つの中でも「通常円形脱毛症(単発型・多発型)」は比較的回復率が高いことが明らかになっています。特に、発症してから1年以内と脱毛期間が短かった場合、「単発型」および「少数の多発型」であれば、1年以内に80%が完治したとの報告もあります。一方で、脱毛範囲の広いパターンである「全頭型脱毛症」や「汎発型脱毛症」では回復率が10%以下と示す報告があり、完治する確率が低いことが明らかとなっています。

円形脱毛症の診療ガイドラインに引用されている、欧米の複数の医療機関の報告をまとめた文献によると、円形脱毛症を発症して1年以内の人のうち3人~2人に1人(34~50%)は毛髪が改善し、7人~4人に1人(15~25%)は、重症である全頭型や汎発型に移行したと示されています。これは、発症してからの期間が短い場合には比較的回復率が高いと言えますが、必ずしも全員回復するというわけではなく、いくら治療をしても改善せず、ときには悪化するケースもあるということを意味します。診療ガイドラインでは、回復が見られない場合には、
脱毛部位を隠す手段として「かつら」の使用も推奨しています。

円形脱毛症の完治しやすいケース、完治しにくいケース、完治までの過程や再発に関して詳しくは「【円形脱毛症の完治と再発】完治の過程や再発の原因などについて診療ガイドラインを基に正しく解説」をご参照ください。

子どもが治らない場合

円形脱毛症は、年齢に関係なく発症する病気であるため、子どもであっても発症する可能性があります。子どもの場合、大人に比べて「蛇行状脱毛症」を発症しやすいことが明らかになっています。実際に日本国内で蛇行状脱毛症の発症頻度を調べた研究によると、対象年齢を限定していない調査では円形脱毛症全体のうちの1.4%であったのに対して、子どもに限定した場合には2.8%であったという結果が出ています。
この「蛇行状脱毛症」は全頭型や汎発型と同様に「重症」に分類されており、脱毛範囲の広さに関係なく回復率が低いとされています。さらに、国内の円形脱毛症の子ども271名の経過を15年間観察した調査では、完治:13%、軽快:25%、症状が残っている:37%、悪化:25%という結果が出ています。この結果からも、子どもの円形脱毛症は比較的治りにくく症状が残ってしまったり悪化してしまったりするケースが多いことが分かります。
子どもも大人と同様に、完治しない場合には経過観察もしくは「かつら」を使用しても良いとされています。

子どもの円形脱毛症の原因、なりやすい脱毛パターン、治療法、親が気を付けるべきポイントなどについて詳しくは「【子どもが円形脱毛症になったら】病院は小児科と皮膚科のどちらへ連れていくべきか~特徴や治療法、親が気をつけるべきポイントなど」をご参照下さい。

参考


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日々のシャンプーで気をつけたいポイント

ここがポイント!

  • シャンプーは刺激の少ない種類を選びましょう
  • 毎日のシャンプーは、頭皮を傷めないように正しい方法で行いましょう

円形脱毛症の予防や改善のためには、毎日のシャンプーでどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。ここでは、頭皮に優しいシャンプーの種類と洗髪方法を紹介していきます。

刺激の少ないシャンプーを選ぼう

円形脱毛症の原因と考えられている「自己免疫応答」は、精神的・身体的ストレスが引き金となり誘発される可能性があると先ほどお話ししました。頭皮に強い刺激を与えるシャンプーは「身体的ストレス」となるため、予防のためにも改善のためにも、出来るだけ刺激の少ないシャンプーを使用する必要があります。刺激が少ないシャンプーには、洗浄主成分が私たちの体に優しい「アミノ酸シャンプー」や、吸着力の強いシリコンを使用していない「ノンシリコンシャンプー」などがあります。

頭皮に優しいシャンプーの仕方

毎日のシャンプーは正しい方法で行い、頭皮への不要なダメージを出来るだけ抑えるようにしましょう。頭皮に優しいシャンプーの手順は次の通りです。

1)シャンプーの前にはブラッシングを行う
2)熱すぎないお湯で、地肌までしっかりと濡らす
3)シャンプーは手のひらで泡立ててから使用する
4)爪を立てず、指の腹でマッサージするように洗う
5)洗い残しがないようにしっかりと洗い流す
髪と頭皮に優しいシャンプーの手順

円形脱毛症の方におすすめのシャンプーや髪と頭皮に優しい洗髪方法などについて詳しくは「【円形脱毛症におすすめのシャンプーと洗い方】髪と頭皮に優しい毎日のシャンプーの仕方とは」をご参照下さい。

円形脱毛症を上手に隠す方法〜かつらについて

ここがポイント!

  • 症状が改善しない場合には、精神的ストレスへの対策としてかつらの使用も推奨されている
  • かつらは脱毛部位を隠すだけでなく、頭皮を紫外線や外傷から守る効果もある
  • かつらは品質基準が決められている「医療用かつら」を使用しましょう
  • 女性は髪の毛を伸ばしヘアアレンジをすることで隠す方法もある

脱毛症による外見の変化は、人によっては大きな精神的ストレスとなる場合があるため、日本皮膚科学会は、脱毛部位を隠す手段として「かつら」の使用も推奨しています。ここでは、そのような場合に使用される「かつら」について紹介をしておきます。

脱毛範囲が広い場合は「かつら」がお勧め

かつらには、円形脱毛症の症状を改善させる効果はありませんが、かつらを使用し脱毛部位を隠すことは、円形脱毛症の人の精神的ストレスを和らげ、社会的な生活の質を上げる効果があると考えられています。そのため、円形脱毛症の診療ガイドラインでは、治療を行っても症状が改善されない全頭型や汎発型などの脱毛範囲の広い人に対しての、かつらの使用が推奨されています。また、こうした重症の円形脱毛症では、頭皮があらわになっている面積が広いことにより通常の人よりも頭皮が紫外線によるダメージや外傷を受けやすいため、それらを防ぐ目的でもかつらの使用が推奨されています。

かつらには「おしゃれ用」「医療用」などいくつか種類がありますが、円形脱毛症の場合には、品質基準が定められている「医療用かつら」を使用するのが良いでしょう。

医療用かつらの種類や特徴、購入方法や値段の相場などについて詳しくは「【AGAや円形脱毛症でも使う医療用かつら(ウィッグ)とは】男性、女性、子ども用の違いや特徴、値段の相場と医療費控除や保険適用など」をご参照下さい。

エクステはお勧め出来ない理由

髪の毛用のエクステンションは、生えている自分の毛にエクステンションを編み込むことで装着するため、頭皮は通常よりも負担が掛かった状態となります。円形脱毛症の診療ガイドラインには「エクステンション」に関する記述はありません。残っている髪の毛の負担を軽減するためにも、エクステンションは行わない方が良いでしょう。

女性は髪形でカバーも

脱毛範囲が狭い場合には、周囲の髪の毛で脱毛部位を隠すという方法もあります。男性では難しいかも知れませんが、女性であれば比較的容易に、髪の毛を伸ばして脱毛部位を覆ったり、髪の毛を縛ったり編み込んだりすることで脱毛部位を隠すような髪型を作ったりすることも出来るでしょう。

参考


脱毛症診断チェック

まとめ

円形脱毛症は、後天性脱毛症の中で最も発症する人が多く、1,000人に1人〜2人程度の頻度で発症すると知られています。その名の通り、主に「円形」に突然髪の毛が抜ける病気ですが、円形でない脱毛パターンもあり、脱毛部位や範囲などにより「通常型円形脱毛症(単発型・多発型)」「全頭脱毛症」「汎発型脱毛症」「蛇行状脱毛症」の4つに分類されています。
円形脱毛症の発症原因はまだ完全には解明されていませんが、今のところは免疫の異常である「自己免疫応答」が最も有力であると考えられています。また、自己免疫応答の引き金として身体的・精神的ストレスの関与が考えられています。
円形脱毛症の治療は病院の皮膚科などで受けることが出来ますが、原因が解明されていないため、根治が可能な治療法はまだ確立されていません。そのため、医療機関では改善の可能性が考えられるさまざまな治療法が行われており、診療ガイドラインではそれらの治療法に対して、医学的根拠と安全性から「推奨度」を定めています。そのうち最も推奨度の高い治療法は「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」の2つで、どちらも免疫に働きかける治療法です。
円形脱毛症の回復は、個人差が大きいものの、一般的に発症からの経過時間が短く脱毛範囲が狭い方が、回復率が高いとされています。また、4つの脱毛パターンのうち、通常型円形脱毛症は比較的回復率が高いとされており、さらに子どもは大人に比べて「蛇行状脱毛症」になりやすく、大人よりも治りにくいと知られています。
適切な治療を行っても円形脱毛症が治らず広範囲に脱毛している場合には、見た目による精神的ストレスや、紫外線や外傷によるダメージを軽減するために、かつらの使用も推奨すると診療ガイドラインに記載されています。該当する場合には検討してみても良いでしょう。
円形脱毛症は年齢や性別の違いに関係なく、いつ誰が発症してもおかしくないため、慌てずに適切な対処をするためにも、普段から正しい知識を身につけておくことが重要だと言えるでしょう。

円形脱毛症・前頭脱毛症などの脱毛症でお悩みの方へ

Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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