【円形脱毛症の治療法とは】ステロイド注射やパルス療法などの効果や治療費用について解説

円形脱毛症の治療は病院の「皮膚科」で受けることが出来ます。治療法には多くの種類がありますが、その理由は、発症の原因がまだ完全には解明されていない点にあります。つまり、原因が明らかになっていないため、まだ確立された治療法がなく、改善につながると考えられるさまざまな治療が行われているのです。
そのような中で、主な原因と考えられている「自己免疫応答」に対するステロイド療法や局所免疫療法は、ある程度の医学的根拠が示されているため、日本皮膚科学会も実施を推奨しています。また、医学的根拠は十分ではありませんが、診療ガイドラインの中で「行っても良い」とされている治療法もあります。ここでは、円形脱毛症の治療法について、日本皮膚科学会が推奨する治療法を中心に、治療の種類や治療期間、治療にかかる費用などまでを解説していきます。

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01まずは円形脱毛症の発症メカニズムをおさらい
  2. 02円形脱毛症の治療はどこで受けられるのか
  3. 03円形脱毛症の治療法はたくさんある
  4. 04円形脱毛症の治療が出来る市販薬はあるのか
  5. 05円形脱毛症の治療におけるステロイド注射の効果
  6. 06円形脱毛症の治療にかかる期間
  7. 07円形脱毛症の治療費
  8. 08まとめ

まずは円形脱毛症の発症メカニズムをおさらい

ここがポイント!

  • 円形脱毛症の主な原因は「自己免疫応答」と考えられている
  • 自己免疫応答は、免疫細胞が誤って自分自身の細胞を攻撃してしまう反応
  • 自己免疫応答が髪の毛を作る細胞に向けて起こるのが原因と考えられている

治療の話を始める前に、円形脱毛症の発症メカニズムについて、かんたんにおさらいをしておきましょう。

円形脱毛症の発症原因は、まだ不明な点が多く残されているものの、主な原因は「自己免疫応答」であると考えられています。
本来「免疫」は、外部から体内に侵入してきた細菌やウイルスを、白血球やリンパ球などの免疫細胞が、自分の体の一部ではない「異物」と認識することで、攻撃をして排除する機能です。この免疫機能が正常に働いていることによって、私たちの体は病気などから守られています。
「自己免疫応答」は、何らかのきっかけによって免疫の仕組みが異常になり、自分自身の細胞を誤って「異物」だと認識して攻撃してしまう反応です。この自己免疫応答が、髪の毛を作る細胞に向けて起こると、攻撃された毛根の周囲で炎症が起きます。炎症によって毛根がダメージを受けると、髪の毛が抜けてしまい、さらに攻撃が長時間続いた場合には、髪の毛が抜けたまま生えて来なくなってしまい、円形脱毛症を発症すると考えられています。

自己免疫応答による円形脱毛症の発症メカニズムなど、円形脱毛症の原因について詳しくは「【円形脱毛症の主な原因について】免疫の病気からストレスの関与などまで、発症メカニズムを正しく理解しよう」をご参照下さい。

参考


脱毛症診断チェック

円形脱毛症の治療はどこで受けられるのか

ここがポイント!

  • 治療は病院の「皮膚科」や「脱毛症専門外来」「毛髪外来」などで受けられる
  • 予約が必要な場合が多いので前もってインターネットや電話で確認をしておきましょう

脱毛症は「皮膚科」の診療領域の病気です。そのため、円形脱毛症の治療は、病院の「皮膚科」で受けることが出来ます。医療機関によっては、「脱毛症専門外来」や「毛髪外来」など、脱毛や髪の毛に関する病気の治療を専門とした医師が診療を行っている専門外来を開設している場合もあります。このような専門外来は、予約が必要な場合が多いので、受診を考えている人は、インターネットで検索したり電話で確認したりしておくと良いでしょう。

参考


円形脱毛症の治療法はたくさんある

ここがポイント!

  • 円形脱毛症は原因がまだ完全に解明されていないため、今のところ確立された治療法はない
  • 複数ある治療法の中で、「行うよう勧められる」のは「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」のみ

円形脱毛症の治療法は1つではなく、さまざまな方法があります。ここでは、複数ある治療法について、順を追って確認をしていきましょう。

なぜたくさんの治療法があるのか

冒頭でお話ししたように、円形脱毛症の原因の1つは「自己免疫応答」であると考えられていますが、まだ不明な点が多く、今のところ完全には解明されていません。はっきりと特定された原因がないために、治療法も特定出来ず、考えられる全ての可能性に対して治療を行うために、円形脱毛症の治療法は多岐に渡っているのです。

診療ガイドラインに記載の治療の「推奨度」とは

円形脱毛症の診療ガイドラインでは、複数ある治療法にそれぞれ「推奨度」を付けています。日本皮膚科学会は、円形脱毛症の診療に関する世界中の情報を基にして診療ガイドラインを作成しています。その中で、治療法の医学的根拠が強いほど効果や安全性が高いと考え、それぞれの「推奨度」を決めています。

さまざまな治療法とその推奨度

診療ガイドラインに記載されている円形脱毛症の治療法の種類とその推奨度を一覧表で見てみましょう。
治療法 推奨度※
ステロイド局注(局所注射) B
局所免疫療法 B
ステロイド内服 C1
点滴静注ステロイドパルス療法 C1
第2世代抗ヒスタミン薬 C1
セファラチン内服 C1
グリチルリチン・メチオニン・グリチン複合材(グリチロン) C1
ステロイド外用 C1
塩化カルプロニウム外用 C1
ミノキシジル外用 C1
冷却療法 C1
直線偏光近赤外線照射両オフ(スーパーライザー療法) C1
PUVA療法 C1
シクロスポリンA内服 C2
漢方内服療法 C2
精神安定剤内服 C2
アンスラリン外用 C2
星状神経節ブロック C2
催眠療法 C2
鍼灸治療 D
分子標的治療法 D
カツラ C1

※推奨度分類
A…行うよう強く勧められる
B…行うよう勧められる
C1…行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない
C2…根拠がないので勧められない
D…行わないよう勧められる

円形脱毛症の治療法は複数ありますが、先ほどお話ししたように、特定の治療法は今のところないため、推奨度Aの「行うよう強く勧められる」治療法は1つもありません。また、治療法のほとんどには十分な医学的根拠がないため推奨度Bの「行うよう勧められる」治療法は「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」の2つのみです。これら2つの治療法について具体的に見ていきましょう。

ステロイド局所注射(推奨度B)

ステロイド局所注射とは、脱毛部位に直接「ステロイド薬」を注入する治療法です。
ステロイド薬には、免疫の働きを抑えることで炎症を抑える作用があるため、脱毛部位に注射をすると、自己免疫応答による毛根周囲の炎症を抑えることが出来るのです。診療ガイドラインによると、円形脱毛症への治療効果は医学的に証明されていますが、治療は効果が得られるだけではなく、副作用が現れる可能性があることを忘れてはいけません。直接脱毛部位に注射器を用いて薬の注入を行うため痛みが伴いますし、副作用として、注射した部位の皮膚が委縮し、へこんでしまう「皮膚萎縮」という症状が現れる場合があります。また、注射をした部位のみにしか毛が再生しない場合もあります。

この治療法は主に症状が固定している脱毛面積が25%以下の成人(16歳以上)に対して推奨されています。
脱毛面積が広い場合には、注射回数が多くなるだけではなく、その分薬の量も増えるため不適当とされています。また、小児(16歳以下)に対しては、効果と安全性が確かめられていないため、基本的に行われません。

局所免疫療法(推奨度B)

局所免疫療法とは、薬を脱毛部位に塗ることで、皮膚に軽いかぶれを引き起こす治療法です。
「かぶれ」は炎症の1種で、皮膚に塗られた「異物」に対する正常な免疫応答です。したがってこの治療法は、自己免疫応答が起きている脱毛部位で正常な免疫応答を起こすことで、毛根に対する誤った攻撃を弱めるのが狙いです。治療は、1~2週間に1回程度の頻度で行われます。診療ガイドラインによると、円形脱毛症への治療効果は医学的に証明されており、信頼性の高い根拠が見出されていると記載されています。

この治療法は、年齢は問いませんが、症状が固定している脱毛部位が25%以上の広範囲に及ぶ「全頭脱毛症」などの第一選択肢として行うべきであるとされています。一方、副作用として、接触性皮膚炎、局所のリンパ節腫脹、じんましんなどを併発することがあり、注意が必要です。

局所免疫療法は、SADBE(サドベ)療法とも言われます。効果は認められてますが、保険診療ではないため治療できる病院が限られています。また、こまめな通院(2週間に1回程度)が必要になります。


全頭脱毛症について詳しくは「【全頭脱毛症の原因や治療について】完治までの期間〜再発の可能性やかつらに関する注意点など」をご参照下さい。

推奨度Bとされる治療法は「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」の2つしかないわけですが、その中でも推奨される治療の対象者は「ステロイド局所注射は脱毛部の狭い成人」、「局所免疫療法は、年齢問わず脱毛範囲の広い人」と限定されており、決して治療の対象者が多いわけではないというのが現状です。

ステロイド薬を始めとした、円形脱毛症の治療に使用される薬について詳しくは「円形脱毛症の治療に用いられる薬の効果と副作用|診療ガイドラインによる推奨度や市販薬の有無~妊娠中の女性が気を付けるべき点など」をご参照下さい。

参考


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円形脱毛症の治療が出来る市販薬はあるのか

ここがポイント!

  • 「ステロイド外用剤」「第2世代抗ヒスタミン剤」「ミノキシジル外用剤」「漢方薬」が市販されている治療薬
  • しかし、円形脱毛症は「病気」であり、医療機関での治療が基本

円形脱毛症の主な原因は、「自己免疫応答」であり、治療には公的な医療保険が適用されます。円形脱毛症は、原因を検索する必要があったり、脱毛が全身に拡大するケースもあったりと医療機関での精査、治療を要する病気です。しかし、すぐに医療機関にかかれない場合もあるでしょう。そのような場合の「応急処置的な役割を果たせる市販薬」について、説明していきます。

前の章で説明したように、円形脱毛症の治療は、日本皮膚科学会により診療ガイドラインが策定されています。診療ガイドラインに記載されている治療法は、治療効果の医学的根拠によりそれぞれ推奨度が定められています。
ここでは、診療ガイドラインに記載されている治療法のうち、市販薬で対応可能な治療法について、推奨度とともに説明していきます。

ステロイド外用剤(推奨度C1)

ステロイド外用剤は、推奨度C1(行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない)と定められている治療法です。国内では多くの診療実績があり、円形脱毛症のために皮膚科を受診した際は、必ず処方される薬と言ってもいいでしょう。市販薬でも、ステロイド剤が含まれている塗り薬があります。ステロイド剤はその効き目によって、5段階に分けられています(I群:もっとも強い〜V群:弱い)。医師は症状の程度や部位によって、ステロイド剤を使い分けており、使用する期間も細かく指示しています。ステロイド剤は使い方を間違えると、感染症や皮膚の陥凹や萎縮などの副作用が生じる危険性が高い薬だからです。よって、自己判断で市販のステロイド剤を使用することは、基本的にはお勧めしません。また、市販のステロイド剤は、ステロイドの他に円形脱毛症に効果がない抗生剤やかゆみ止めなどの、様々な成分が配合されていることが多いです。病院に行けない場合など、応急処置的に使用する場合は、薬剤師としっかり相談し、他の成分が含まれていないステロイド剤を使用するのが良いでしょう。また、漫然と使用を続けず、早めに病院を受診するようにしましょう。ステロイドが含まれている外用剤の多くは、第2類医薬品に区分され、薬剤師や登録販売者がいる薬局などで購入可能です。

第2世代抗ヒスタミン剤(推奨度C1)

第2世代抗ヒスタミン剤の内服は、推奨度C1(行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない)と定められている治療方法です。第2世代抗ヒスタミン剤とは、昔から使われていたヒスタミンを抑える薬(第1世代抗ヒスタミン剤と言います)を改良した薬で、第1世代と比べて眠気などの副作用が少ないと言われています。花粉症によく使われる薬で、「アレグラ」や「アレジオン」と言った薬が代表的なものになります。多くは第2類医薬品に区分され、薬剤師や登録販売者がいる薬局などで購入可能です。第2世代抗ヒスタミン剤は、アトピー素因を持つ円形脱毛症の方に推奨されている治療法であり、市販されている薬剤と病院で処方される薬剤はほぼ同じです。応急処置的には、使用することは認められるでしょう。

ミノキシジル外用(推奨度C1)

ミノキシジル外用は、推奨度C1(行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない)と定められている治療法です。ミノキシジル外用は、AGA(男性型脱毛症)で推奨されている治療法であり、「リアップスリーズ」として市販されています。円形脱毛症には、AGAほどの効果は認められていませんが、他の治療と併用して使用することが推奨されています。AGAを合併している円形脱毛症の方には、推奨される治療法です。ミノキシジルは病院で処方してもらうことはできず、市販薬のみです。第1類医薬品に区分され、薬剤師がいる薬局などで購入可能です。

小見出し:漢方薬(推奨度C2)

漢方薬の内服は、推奨度C2(根拠がないので勧められない)と定められている治療方法です。ガイドラインに記載がある漢方薬は、「柴胡加竜骨牡蛎湯エキス」と言う薬ですが、効果は明確に認められてはいません。「柴胡加竜骨牡蛎湯エキス」は、第2類医薬品に区分され、薬剤師や登録販売者がいる薬局などで購入可能です。補助的な役割を期待して、服用することは認められますが、漢方薬にも副作用はあります。市販品を購入して服用する場合は、必ず主治医に相談するようにしましょう。

円形脱毛症の治療におけるステロイド注射の効果

ここがポイント!

  • 脱毛範囲が25%以内と比較的狭い場合には、ステロイド局所注射の適応となる
  • ステロイド局所注射は、脱毛症状の改善に効果がある

ステロイド局所注射の効果

ステロイド局所注射は、脱毛範囲が25%以内と比較的狭い場合に有効な治療方法です。海外からの報告では、脱毛範囲が25%以内の円形脱毛部位に、ステロイド(トリアムシノロンアセトナイド:商品名ケナコルト)を2週間おきに3回局所注射した群と、プラセボとして生理食塩水を局所注射した群で、治療効果を比較しました。ステロイドを局所注射した群は、71%で発毛を認め、一方、生理食塩水を局所注射した群は7%でした。このことからも、脱毛範囲が比較的狭い円形脱毛症には、ステロイド局所注射は有効な治療法と言えます。しかし、疼痛を伴うことから小児への適応は限られること、広範囲な円形脱毛症には適応がないことに注意が必要です。

ステロイド局所注射の実際の治療

それでは、実際にはどのように局所注射が行われているのでしょうか。ステロイドを局所注射することで、注射部位の皮膚の陥凹、萎縮、血管拡張が認められることがあるため、注射間隔は、4〜6週間空けた方が良いと言われています。また、皮下脂肪まで到達するほど深くは注射せず、比較的浅い部分(真皮レベル)に注射することになっています。
局所注射を中止すると、再燃する場合があり、継続的な治療が必要なケースもあります。頭部だけではなく、眉毛部分の脱毛にも効果があったとする報告もあります。

参考


脱毛症診断チェック

円形脱毛症の治療にかかる期間

ここがポイント!

  • 治療期間は、脱毛範囲の広さと脱毛が始まってからの期間に影響される
  • 脱毛範囲が狭く脱毛期間が短いほど、回復は早く回復率も高い
  • 脱毛範囲が狭いからといって必ずしも全員が回復するわけではない

円形脱毛症は、どの程度治療を続けることで効果や完治を望めるのでしょうか。ここでは、円形脱毛症の治療にかかる期間を確認していきましょう。

おおよその治療期間は脱毛範囲に影響される

円形脱毛症のおおよその治療期間は、脱毛範囲の広さに影響されると知られています。得られる治療効果には個人差がありますが、脱毛範囲が広いほど治療期間も長くなる場合があると言えるのです。「脱毛範囲」は、その広さや部位によって、いくつかに分類されています。

脱毛範囲や抜け方による重症度の分類

円形脱毛症は脱毛範囲と抜け方のパターンによって、おおよその重症度を把握することが出来ます。

脱毛範囲の広さによる分類

米国の円形脱毛症評価ガイドラインでは、「脱毛している面積の割合(S)」と「頭部以外の脱毛の程度(B)」により、重症度を決定しています。

脱毛している面積の割合

S0:脱毛がみられない
S1:脱毛部位が頭部全体の25%未満
S2:脱毛部位が25~49%
S3:脱毛部位が50~74%
S4:脱毛部位が75~99%
S5:100%脱毛している(全頭脱毛)

頭部以外の脱毛の程度

B0:頭部以外の脱毛なし
B1:頭部以外に部分的な脱毛がみられる
B2:全身の脱毛あり

「S」と「B」それぞれの数字が大きいほど脱毛範囲が広く、重症で治りにくいとされています。日本の診療ガイドラインでは、Bは考慮に入れず頭部の脱毛であるSのみを評価の対象としており、S2以上を「重症」として治療の推奨度を決めています。

抜け方による分類

また、円形脱毛症は、抜け方のパターンによって4つに分類されており、このパターンも重症度に関連しています。
円形脱毛症の治療に使用される薬について詳しくは「円形脱毛症の治療に用いられる薬の効果と副作用|診療ガイドラインによる推奨度や市販薬の有無~妊娠中の女性が気を付けるべき点など」をご参照下さい。
分類 特徴
通常型円形脱毛症 髪の毛が部分的に円形に抜けた状態
・単発型:脱毛部が1つのもの
・多発型:脱毛部が複数あるもの
全頭脱毛症 脱毛部が頭全体に広がった状態
汎発性脱毛症 脱毛部が頭だけでなく全身に広がった状態
蛇行状脱毛症 髪の生え際が帯状に抜けた状態
円形脱毛症の4つの分類
この分類では、全頭脱毛症や汎発性脱毛症は、通常型円形脱毛症に比べて重症度が高いと言えます。また、蛇行状脱毛症については、脱毛範囲に限らず重症度が高く、回復率が低いと知られています。

脱毛範囲と治療期間

脱毛範囲の分類が分かったところで、治療期間への影響を見ていきましょう。

繰り返しになりますが、治療効果が得られるまでに要する期間は脱毛範囲の広さに影響を受けます。加えて、脱毛している期間が短いほど、回復も早いと知られています。診療ガイドラインには、脱毛範囲が比較的狭いとされる「単発型」あるいは「少数の多発型」の円形脱毛症は、脱毛している期間が1年以内であれば、治療を始めて1年以内に80%が完治すると記載されています。

脱毛範囲が治療期間に与える影響を示した論文は複数報告されていますが、ここでは診療ガイドラインに引用されている2報をご紹介します。これらはいずれも、10年以上に渡る追跡調査という形で、治療効果が得られるまでの期間を示した報告です。

脱毛範囲の広さ別に17年間追跡した研究

イタリアの研究グループが円形脱毛症の191人を17年間追跡した報告によると、脱毛面積が50%未満の人は全体の過半数である56%で回復が見られましたが、脱毛面積が50%以上の人の場合は、17年経ってもわずか3.7%しか回復しませんでした。

抜け方の分類別に15年間追跡した研究

こちらは日本で行われた研究です。円形脱毛症の271人の子どもを15年間追跡した報告によると、脱毛範囲が狭い「単発型」では80%で症状の完治または軽快が見られたのに対し、「多発型」では61%、「全頭型」では34%、「汎発型」と「蛇行型」では38%と、脱毛範囲が広い場合、明らかに15年後までの回復が悪いと分かりました。

脱毛範囲が狭くても必ずしも完治するとは限らない

脱毛範囲が狭く、発症から1年以内の場合、治療効果が得られて回復する人は80%程度と確かに多いのですが、残りの20%程度の人は回復が見られず、脱毛範囲が狭いからといって必ずしも完治するとは限らないと言えます。円形脱毛症の場合、回復の個人差は大きく、治療をしなくても自然に完治する人もいれば、どのような治療を行っても回復しない人もいます。そのため、数年以上治療を続けても回復しない場合には、かつら等で対処することも1つの選択肢であると考えられています。

円形脱毛症の完治について詳しくは「【円形脱毛症の完治と再発】完治の過程や再発の原因などについて診療ガイドラインを基に正しく解説」をご参照下さい。

参考


円形脱毛症の治療費

ここがポイント!

  • ステロイド療法は医療保険が適用になるため、比較的金額が低い
  • 局所免疫療法は、自由診療のため医療機関ごと料金設定が異なり、確認が必要
  • その他の特殊な治療に関しては、医療保険が適用されない場合が多い

円形脱毛症の治療は、基本的に医療保険が適用となるため、AGAのように自由診療となる脱毛症に比べて低い金額で治療を受けることが出来ます。ここでは、主な治療法の費用について見ていきましょう。

ステロイド療法の場合

ステロイド薬は、原因の1つと考えられている自己免疫応答を抑えるために使われる薬で、治療に使われる薬には、直接脱毛部位に塗る「外用薬」、ステロイド薬を飲む「ステロイド内服薬」、脱毛部位に注射をする「ステロイド局所注射」、ステロイド薬を点滴する「ステロイドパルス療法」の4つのタイプがあります。それぞれの薬にかかるおおよその費用を紹介します。

ステロイド軟こう/ローションの外用の場合
ステロイド軟こう・ステロイドローションは、1本数百円程度です。これらは円形脱毛症のどのような症例にも使用可能とされており、第一選択薬(最初の治療に用いる薬)としても推奨されています。
ステロイド内服薬
ステロイド内服薬にかかる費用は1カ月で数百円程度で、治療期間や処方される日数によって多少前後します。
円形脱毛症を発症して6カ月以内の、急速に進行する発毛範囲が広い成人への使用が推奨されています。
ステロイド局所注射の場合
ステロイド局所注射は、1回数千円以内で受けることが出来ます。前の章でもお話ししましたが、脱毛範囲が広くなるほど注射する箇所と薬剤量も多くなるため、脱毛範囲が比較的狭い人への使用が推奨されています。
ステロイドパルスの場合
ステロイドパルス療法は、3日間続けてステロイド薬を点滴する治療法です。薬の費用自体は、3日間で1万円程度ですが、入院が必要となるので別途で入院費用がかかります。
ステロイド薬は、免疫力を低下させるため副作用も多い薬です。ステロイドパルス療法は、ステロイド療法の中でも多量のステロイドを3日かけて集中して投与するため、緊急度の高い「脱毛範囲が25%以上の症状が急速に進行している場合」に使用が推奨されています。
ステロイド治療の費用目安
ステロイド軟こう
ステロイドローション
数百円/(本)+診察料
ステロイド内服薬 数百円/(月)+診察料
ステロイド局所注射 数千円/(回)+診察料
ステロイドパルス 1万円(三日間)+入院費用

局所免疫療法の場合

広範囲に脱毛しており、症状が6カ月以上継続している場合に推奨される局所免疫療法ですが、この治療法はまだ研究段階であり、治療を受ける場合には必ず同意が求められます。医療保険が適用になっておらず医療機関によって独自に料金が設定されていますので、治療を受ける前におおよその費用を確認しておきましょう。

局所免疫療法は、ステロイド療法に比べると費用はかかりますが、日本皮膚科学会は学会のホームページ上で「現在の円形脱毛症治療法の中で最も有効な治療法」で、「治療を受けた人の60%以上に効果が見られたとの報告もある」と記載しています。重症例や子どもに対しても治療効果が得られていますが、治療を中断すると再び脱毛が起こり、何年間も繰り返し治療が必要になるケースもあります。

その他の治療法の場合

最初にお話ししたように、円形脱毛症は原因が完全に解明されていないため、さまざまな治療法が存在しています。医学的に十分な根拠がない治療法も、効果が少しでも期待出来るものは実施されている傾向にあるようです。特殊な治療の場合には保険適用外が多く、料金設定も医療機関ごとに異なるため高額なケースもあります。
こうした治療法は、医師の説明を受け、治療効果の医学的根拠が薄いことや費用が高額になる場合があることなどを理解して納得した上で選択していきましょう。

参考


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まとめ

円形脱毛症の治療について見てきました。円形脱毛症は原因がまだ完全に明らかになっていないため、治療法が確立されておらず、効果が期待出来ると考えられる全ての可能性に対して治療を行うために、たくさんの治療法が存在しています。そのような中で、主な原因の1つとして「自己免疫応答」が考えられているため、免疫機能に関係した「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」の2つの治療法が推奨されています。ステロイドは医療保険が適用になるのに対して、局所免疫療法は自由診療ですが、どちらも有効な治療法とされています。円形脱毛症は、脱毛範囲が広くなり、また、脱毛が始まってからの時間が経っているほど、回復率が低くなり、回復までの時間もかかることが明らかになっています。狭い範囲であっても脱毛部位を見つけた場合には、早期に「皮膚科」もしくは「脱毛症専門外来」「毛髪外来」を受診すると良いでしょう。

円形脱毛症・前頭脱毛症などの脱毛症でお悩みの方へ

Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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