【円形脱毛症の薬について】その効果と副作用や市販薬の有無などを紹介します

円形脱毛症は、発症の原因がまだ完全に特定されていないため、その人に対して改善の可能性があると考えられるさまざまな治療法が試されます。こうした背景により、作用の異なる多くの種類の薬が、円形脱毛症の治療薬として使われています。
日本皮膚科学会はそれぞれの治療薬について、これまでの実績を参考に効果や安全性を考慮した上で推奨度を定め、円形脱毛症の診療ガイドラインに記載しています。
ここでは、使用が推奨されている「ステロイド(局所注射)」を始めとしたさまざまな円形脱毛症の治療薬について、効果、副作用、使用に関しての注意点などを詳しく解説していきます。

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01円形脱毛症の治療薬はさまざま
  2. 02使用が勧められる薬
  3. 03使用しても良い薬
  4. 04使用しない方が良い薬
  5. 05使用が勧められる薬/使用しても良い薬の副作用
  6. 06妊娠中の女性が気を付けるべきこと
  7. 07薬局で市販されている治療薬はあるのか
  8. 08治療薬は通販で購入出来るか
  9. 09円形脱毛症治療薬の推奨度と作用/副作用一覧表
  10. 10円形脱毛症の治療薬フロジンとは
  11. 11まとめ

円形脱毛症の治療薬はさまざま

ここがポイント!

  • 円形脱毛症の治療では、改善の可能性があるさまざまな種類の治療薬が使用されている
  • 確実に治せる治療薬はまだないため、最も推奨度の高い薬は2番目のランクである「推奨度B」
  • 薬の推奨度は、過去の診療実績から効果や安全性を割り出して決められている

円形脱毛症の治療薬にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴が異なっています。ここでは、なぜ複数の薬があるのか、また実際にどのような治療薬があるのかについて、円形脱毛症の診療ガイドラインに沿って見ていきましょう。

どうしてさまざまな薬が使われるのか

円形脱毛症の診療ガイドラインには、ステロイド薬を始め多くの種類の薬が治療薬として記載されており、それらの薬の使い方も注射・内服・外用などさまざまです。このように円形脱毛症に対してさまざまな治療薬が使用されている理由は、円形脱毛症はまだ発症原因が完全には解明されていないため、根治する治療法や治療薬も確立されていないからです。つまり、改善の可能性があると考えられるさまざまな治療法が試されるために、多くの治療薬が用いられているのです。

診療ガイドラインにおける薬の推奨度

円形脱毛症の診療ガイドラインでは、皮膚科の専門医が円形脱毛症に対して実際に行っている治療法が幅広く挙げられており、それぞれの治療法や治療薬について、過去の診療実績から効果やリスクを割り出した上で推奨度が決定されています。

推奨度は以下の5段階評価で行われますが、円形脱毛症治療においては、先ほどお話しした理由により、まだAに分類される治療法や治療薬はありません。

診療ガイドラインの推奨度分類
A 行うよう強く勧められる
B 行うよう勧められる
C1 行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない
C2 根拠がないので勧められない
D 行わないよう勧められる

それでは、診療ガイドラインの推奨度別に、どのような治療薬があるのかを見ていきましょう。

使用が勧められる薬(推奨度B)

「推奨度B:行うよう勧められる」に分類される薬は、円形脱毛症の治療薬の中で推奨度が一番高い薬と言えます。該当するのは推奨度Bとされている2つの治療法、「ステロイド局所注射」および「局所免疫療法」で使用される薬で、「局所注射用のステロイド」や「SADBE」「DPCP」などがあります。

「ステロイド局所注射」「局所免疫療法」について詳しくは【円形脱毛症の治療について】ステロイド注射などさまざまな治療法~治るまでの期間や治療費などまで」をご参照ください。

使用しても良い薬(推奨度C1)

「推奨度C1:行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない」に分類される薬には、「ステロイドの内服、外用、点滴薬」や「第二世代抗ヒスタミン」「セファランチン」「グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合剤」「塩化カルプロニウム」「ミノキシジル(外用)」などがあります。
これらの薬は、円形脱毛症に対する効果を示した研究報告などがあるものの、研究対象や評価方法が十分に明確ではないために、今のところ強い医学的根拠があるとは言い切れていないものです。また、中には薬による副作用が効果を上回る可能性がある治療薬もあるため、この推奨度に留まっているものもあります。

使用しない方が良い薬(推奨度C2)

「推奨度C2:根拠がないので勧められない」に分類される薬には「シクロスポリンA」「漢方薬」「精神安定剤」「アンスラリン」などがあります。これらはC1に分類された薬よりも研究内容の曖昧さが強く、体に強い悪影響を及ぼす副作用が高い頻度で出現するため、有効な薬であると判断出来ないものです。

使用すべきではない薬(推奨度D)

「推奨度D:行わないよう勧められる」に分類される薬としては「分子標的治療薬」が挙げられています。この治療薬は、発症の原因に関わっていると考えられる特定の物質(分子)を狙い撃って治療効果を期待する薬ですが、まだ臨床試験の初期段階であり、現時点では治療薬の有効性を判断出来る状態ではないため、使用するべきではないとされています。

診療ガイドラインに記載されている治療薬の推奨度分類については最後の章で一覧表にまとめてありますので、ご参照ください。

参考


脱毛症診断チェック

使用が勧められる薬

ここがポイント!

  • 使用が推奨される薬は「ステロイド(局所注射)」と局所免疫療法の「SADBE」や「DPCP」
  • ステロイド薬は「免疫抑制」と「炎症抑制」の作用により自己免疫応答を弱め、症状を改善する薬
  • ステロイド局所注射が推奨される人は「脱毛範囲が25%以下で脱毛の急速な進行がない成人」
  • SADBEやDPCPは、人工的にかぶれを起こして自己免疫応答を弱め、症状を改善する薬

ここでは、円形脱毛症の治療のために使用が推奨されている「ステロイド局所注射薬」と「局所免疫療法に使われる薬」について、詳しく見ていきましょう。

ステロイド局所注射に使われる薬

円形脱毛症の治療において、ステロイド薬を脱毛部に直接注射する「ステロイド局所注射」は、実施しない場合と比較して発毛効果が認められるという信頼性の高い研究結果が出ていることから、円形脱毛症の治療薬として推奨されています。また、推奨度は一段下がりますが、円形脱毛症の治療においてステロイドは内服、点滴、外用薬としても使われています。これらはそれぞれ使用方法は違うものの、ステロイドの作用や副作用は基本的にどれも同じと言えます。

ステロイドの作用

ステロイドには主に「免疫を抑制する作用」と「炎症を抑える作用」があります
円形脱毛症の原因は未だに完全に解明されてはいませんが、日本皮膚科学会は「自己免疫応答」が主な原因であるとしています。「自己免疫応答」とは、「免疫」機能の異常な働きによって、自分自身の正常な細胞が攻撃される状態を言います。ステロイドの作用で免疫機能を抑制すれば、自己免疫応答も弱めることが出来るため、円形脱毛症の改善につながると考えられており、実際に改善効果も認められています。

ステロイド局所注射の対象となる人

ステロイド局所注射は円形脱毛症を発症した全ての人に推奨されるわけではなく、推奨されるのは、脱毛範囲が25%以下で脱毛の急速な進行がない成人に限られています。その理由はいくつかありますが、主に脱毛範囲が広い場合には注射回数が多くなり、注射部位の皮膚がくぼむ(皮膚萎縮)副作用が高い頻度で出現するためです。また、円形脱毛症の子どもに対しては、長期経過を観察した研究が今のところなく、安全性が確認されていないため、基本的に使用しないよう促しています。

局所免疫療法に使われる薬

局所免疫療法では、「SADBE」や「DPCP」という薬が使われますが、これらの薬には、皮膚炎の1種である「かぶれ」を起こす作用があり、頭皮でかぶれを起こすと脱毛の原因と考えられる「自己免疫応答」を弱めることが出来ると分かっています。つまり局所免疫療法は、「SADBE」や「DPCP」を使って頭皮に軽度の炎症を人工的に起こし、「自己免疫応答」を弱めて円形脱毛症が改善することを期待した治療法なのです。

この章で紹介した治療薬の作用や副作用は、最後に一覧表でまとめてありますのでご参照ください。
また、治療法について詳しくは「【円形脱毛症の治療について】ステロイド注射などさまざまな治療法~治るまでの期間や治療費などまで」をご参照下さい。

参考


使用しても良い薬

ここがポイント!

  • 使用しても良い内服薬は「ステロイド薬(内服)」「第二世代抗ヒスタミン薬」「セファランチン」「グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合剤」
  • 使用しても良い外用薬は「ステロイド薬(外用)」「塩化カルプロニウム」「ミノキシジル(外用)」
  • それぞれ、推奨される対象や条件が限られている

次に、医学的根拠や信頼性は弱いものの、治療に使用しても良いとされている薬について詳しく見ていきましょう。

使用しても良い内服薬(飲み薬)

ステロイド薬

先ほど「ステロイド局所注射」でお話ししたようにステロイドには「免疫」や「炎症」を抑える作用があります。
ステロイド内服薬による治療効果は、主に重症の円形脱毛症患者を対象にした研究により示されており、ステロイド薬を内服すると脱毛範囲が縮小して発毛が促進されたという結果が報告されています。一方で、内服を中止すると再び脱毛する確率が高く、また、ステロイドの副作用である肥満や糖尿病、消化器症状なども認められました。日本皮膚科学会はこれらの結果を総合的に考えた結果、ステロイド内服薬については効果が副作用を上回るという根拠が十分とは言えないと判断し、脱毛範囲が25%以上の重症例で、かつ脱毛が急速に進行している場合に使用期間を限定することを条件に推奨しています。

第二世代抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬とは、体内で炎症の引き金となる物質の「ヒスタミン」を抑える薬で、この薬による治療では、炎症症状の抑制・緩和による脱毛の予防・改善が期待出来ます。第一世代と第二世代の2つの分類があり、第二世代は第一世代と比較して眠気などの副作用が現れにくいとされています。
第二世代抗ヒスタミン薬の治療効果については、軽症例、重症例ともに服用による脱毛範囲の縮小が複数の研究で示されており、加えてアレルギー体質(アトピー素因)を持つケースや他の円形脱毛症の治療と併用したケースではより早期に改善が認められています。そのため、診療ガイドラインでは、アトピー素因を持つ単発型および多発型の場合に、他の治療と併用することを推奨しています。

セファランチン

抗ヒスタミン薬と同様に、セファランチンには「ヒスタミンを抑制して炎症を抑制・緩和する作用」があります。セファランチンについては、服用による脱毛の改善効果を評価する研究がまだ十分に行われていませんが、日本皮膚科学会は、これまでに医療現場で症状改善が見られているという実績を考慮して、単発型および多発型の場合に、他の治療と併用することを推奨しています。

グリチルリチン・メチオニン・グリシン複合剤

グリチルリチン・メチオニン・グリシン複合剤には「炎症を抑制する作用」と「免疫応答を整える作用」があります。
この薬は、服用による円形脱毛症の改善効果を評価する研究が十分に行われておらず、治療の有益性は今のところ証明されていませんが、日本皮膚科学会は、これまでの医療現場での実績を考慮して、単発型および多発型の場合に、他の治療と併用することを推奨しています。

使用しても良い外用薬(塗り薬)

ステロイド薬

ステロイドの外用薬に関しては、頭皮に塗布して円形脱毛症の改善効果が見られたという研究報告がある一方で、治療中に脱毛が再発し、完全には回復しないという結果も報告されています。日本皮膚科学会は、ステロイド外用薬単独での治療は、全頭型や汎発型の円形脱毛症に対して効果が期待出来ないと判断しており、それ以外のより軽症の円形脱毛症を対象とするか、もしくは他の治療を併用して行うことを条件に、円形脱毛症の治療における第一選択薬として推奨しています。

塩化カルプロニウム

塩化カルプロニウムには、頭皮に塗布することにより「発毛・育毛に必要な栄養や酸素を運ぶ血管を広げる効果」と「機能が低下した毛包に作用して発毛を促す効果」があるとされています。
治療効果については、塩化カルプロニウム外用薬とプラセボ(ニセ薬)とで比較した研究により、この薬の有効性が認められたと示した論文報告が出ています。また、他の治療と併用した場合、塩化カルプロニウムを使用する前よりも脱毛範囲が縮小したという結果を示す報告も出ていますが、こちらは薬を使わなかったグループとの比較をしていないため、結果の信頼性が低く、治療を行わなくても自然に回復する確率(自然治癒率)を上回るほどの効果があるのかは不明となっています。こうした背景により、日本皮膚科学会は塩化カルプロニウム外用薬の使用について、単発型および多発型に対して他の治療を併用するように推奨しています。

ミノキシジル

ミノキシジル外用薬はAGA(男性型脱毛症)の治療薬として日本皮膚科学会が使用を推奨している薬です。「頭皮の血流を改善する作用」や「髪の毛の成長因子の産生を促進する作用」があり、AGAに対しては発毛効果が認められています。
円形脱毛症に対しては、3~5%のミノキシジル外用薬を使用した場合に、プラセボに比べて脱毛範囲が縮小したという結果が報告されていますが、広範囲の脱毛に対しては有効性が示されていないことから、単発型および多発型に対して併用療法の一つとして推奨されています。
ミノキシジルについて詳しくは「【ミノキシジル(リアップ)の効果と副作用】AGA外用薬の基本からフィナステリド(プロペシア)との併用、ロゲインやタブレットの使用まで」をご参照ください。

この章で紹介した治療薬の作用をまとめた一覧表が最後にありますのでご参照ください。
塩化カルプロニウムは以前から、一般的な皮膚科で多く使用されている外用薬です。緑色をしています。効果は強い印象はありませんが、実際の臨床現場では広く使用されています。

塩化カルプロニウムは以前から、一般的な皮膚科で多く使用されている外用薬です。緑色をしています。効果は強い印象はありませんが、実際の臨床現場では広く使用されています。

参考


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使用しない方が良い薬

ここがポイント!

  • 使用しない方が良い薬は「シクロスポリンA」「漢方薬」「精神安定剤」「アンスラリン」
  • 使用が推奨されない理由は、「副作用が強い」「効果や安全性の検証が不十分」など

シクロスポリンA

シクロスポリンAは、「免疫抑制剤(体内の免疫応答を抑える薬)」として知られる内服薬で、臓器移植の際の拒絶反応の予防や、自己免疫疾患(自己免疫応答によって引き起こされる病気)の治療などに使われています。
この薬は、円形脱毛症の原因と考えられている「自己免疫応答」を抑える目的で治療の選択肢の1つとなっています。シクロスポリンAの内服により、脱毛範囲が縮小したという研究報告がありますが、今のところ、薬を内服した場合としなかった場合とで効果の比較が行われていないため、確実に薬が効いているとは言い切れないと判断されています。また、薬を中止すると脱毛が再発すること、さらに高血圧や腎機能障害などの副作用が起こる可能性が高いことから、日本皮膚科学会は、円形脱毛症の日常診療においては推奨出来ないとしています。

漢方薬

円形脱毛症の治療に使われる漢方薬には、「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」や「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」などの、自律神経を安定させストレスを取り除く効果が期待されるものがあります。11種類の漢方薬について円形脱毛症への効果を調べた研究報告があり、その中では単発、多発、全頭、汎発型の全てのケースで脱毛範囲が縮小したとされていますが、日本皮膚科学会は、研究内容や手法について、評価基準、再発の有無、自然治癒力との比較などが不明であり、円形脱毛症に対して効果的であるという信頼性は十分でないため、推奨出来ないとしています。

精神安定剤

円形脱毛症の発症に、ストレスやストレスなどが引き金となる精神疾患が関与している可能性を示す医学論文は複数報告されています。そのため、精神疾患の治療に使用される「精神安定剤」が治療の選択肢の1つとなっていますが、ストレスが円形脱毛症の発症に及ぼす影響については、まだ十分な医学的根拠が得られていないというのが現状です。

診療ガイドラインには、精神安定剤の効果を調べた研究として「三環系抗うつ薬」を飲んだ場合とそうでない場合を比較した研究が紹介されており、その中で、薬を飲んだケースでは脱毛範囲が縮小するという結果が得られていますが、日本皮膚科学会は、この研究結果の信頼性は低いと判断しており、精神安定剤による治療効果の検証はまだ十分でないため推奨出来ないとしています。

円形脱毛症に対するストレスの関与について詳しくは「【円形脱毛症とストレスについて】関連性は医学的に証明されているのか~診療ガイドラインを基に正しい情報を解説」をご参照ください。

アンスラリン

アンスラリン外用薬は基本的に尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)という皮膚の病気に対して使用される薬です。円形脱毛症に対するアンスラリンの治療効果を検証した研究報告は、アンスラリンを使用すると使用前と比較して脱毛範囲が縮小し、また重症のケースでも治療効果が得られたと示すものがいくつかありますが、日本においてアンスラリンは尋常性乾癬に対する治療薬としても認可されておらず、また、発毛効果が副作用を上回る安全な薬と言えるのかは不明であるため、日本皮膚科学会は、円形脱毛症の治療薬として推奨出来ないとしています。

参考


使用が勧められる薬/使用しても良い薬の副作用

ここがポイント!

  • 円形脱毛症の治療薬の副作用には、皮膚障害、精神神経症状、消化器症状などがある
  • 特にステロイド薬は、効果が認められている一方で、さまざまな副作用も起こり得る
  • 治療薬を使用中に副作用と思われる症状が現れたら、すぐに医療機関を受診しましょう

ここでは、診療ガイドラインで使用が推奨、もしくは認められている薬の副作用について確認をしていきましょう。

ステロイド薬

ステロイド薬は円形脱毛症の治療において効果的であるとされ、局所注射・内服・外用などさまざまな方法で使用されている一方で、多くの副作用が起こり得ることも知っておく必要があります。
ステロイドの一般的な副作用と、それぞれの副作用が起こる仕組みを一覧表で見てみましょう。
ステロイドの一般的な副作用
副作用 起こる仕組み
感染を起こしやすくなる 免疫機能が低下するため、細菌やウイルスが体内に侵入した際に抵抗出来ず、風邪などの感染症を起こしやすくなる
骨粗しょう症 主に骨を形成する「骨芽細胞」の働きが抑制されるため、骨密度が低下し、骨がもろくなる
糖尿病 体内で糖の合成が促進され、その結果血糖値が上昇する
消化性潰瘍 胃粘膜の防御機能が減少するとともに、胃酸の分泌が促進されることで潰瘍が出来やすくなる
血栓症 止血作用のある「血小板」の機能が促進されるため、血管内で血液が固まりやすくなる
精神症状 不眠症、多幸症、うつ状態などになることがある
ムーンフェイス(満月様顔貌)、中心性肥満 食欲が亢進することに加えて脂肪代謝が障害されるため体に脂肪が蓄積しやすくなる
動脈硬化、高脂血症 上記と同様、食欲亢進と脂肪代謝障害によって起こることがある
高血圧症、むくみ 体内に塩分が蓄積しやすくなることで水分も体内に溜まりやすくなり、血圧上昇などが起こる
その他 白内障(視界が白く濁る病気)、緑内障(眼球の圧力が上昇する病気)、にきびが出来やすくなるなどがある

これ以外に、ステロイドを局所注射した場合には、注射部位で皮膚が萎縮するという副作用が出ます。

SADBE、DPCP

局所免疫療法で使用される「SADBE」「DPCP」は、もともと人工的にかぶれを起こすことを目的とした薬のため、アレルギー性の皮膚反応や目への強い刺激などが副作用として起こり得ます。

第二世代抗ヒスタミン

第一世代の抗ヒスタミン薬よりも軽減されているものの、眠気やだるさなどの精神神経症状、口のかわき・吐き気・食欲不振などの消化器症状などが副作用として起こり得ます。

セファランチン

過敏症(ショック・アナフィラキシー・発疹・むくみなど)と、消化器症状(食欲不振など)が挙げられていますが、発生頻度は不明です。

グリチルリチン・メチオニン・グリシン複合剤

血清カリウム値の低下、血圧上昇、腹痛などが挙げられています。

塩化カルプロニウム

かゆみや一過性の発赤などの過敏症が見られることがあります。また発汗や熱感、それに伴う寒気、吐気などが出現することもあります。

ミノキシジル外用

皮膚障害(頭皮の発赤、かゆみ、かぶれなど)、精神神経症状(頭痛やめまいなど)、循環器症状(胸の痛みや心拍数の上昇など)などが挙げられています。

円形脱毛症の治療薬を使用中に上記のような症状が現れた場合は、副作用の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください

この章で紹介した治療薬の副作用をまとめた一覧表が最後にありますので、ご参照ください。

参考


脱毛症診断チェック

妊娠中の女性が気を付けるべきこと

ここがポイント!

  • 治療薬の中には妊娠中の女性が使用出来ない、もしくは使用に際して注意が必要なものがある
  • 妊娠中や授乳中の女性は、医師や薬剤師にその旨を伝えましょう

円形脱毛症に対して推奨、もしくは使用が認められている薬であっても、妊娠中の女性が使用する場合には注意が必要なものがいくつかあります。

例えば第二世代抗ヒスタミン薬のうちの数種類や、セファランチン、グリチルリチン・メチオニン・グリシン複合剤は、妊婦が使用した場合についての安全性が確認されていないため、処方されるのは、治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合のみに限定されています。第二世代抗ヒスタミン薬の中には妊婦または妊娠していると思われる人は使用しないよう促しているものもあります。

また、授乳中の女性が薬を体内に取り入れた場合、薬の成分が乳汁に入ってしまうことから、授乳中の女性には処方しない、もしくは薬を内服中は授乳を避けるよう添付文書に記載されているものもあります。

妊娠している、もしくは妊娠の可能性がある、または授乳中の女性は、円形脱毛症の治療薬を使う場合には薬局で市販されていたとしても自己判断で購入せず、必ず医師もしくは薬剤師に相談してから使用するようにしましょう。また医療機関を受診した場合は妊娠や授乳をしている旨を伝えるようにしましょう。

参考


薬局で市販されている治療薬はあるのか

ここがポイント!

  • 薬局で市販されている治療薬は「第二世代抗ヒスタミン薬」と「ミノキシジル」
  • 第二世代抗ヒスタミン薬は薬剤師のいる薬局で購入出来る
  • ミノキシジルはAGAの治療薬として売られているため、円形脱毛症の人は基本的に購入出来ない

円形脱毛症の治療薬として推奨、もしくは使用が認められている薬のうち、薬局で市販されているのは、「第二世代抗ヒスタミン薬」と「ミノキシジル」です。それぞれについて見ていきましょう。

第二世代抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は、主に花粉症などのアレルギー症状に対して使用されるもので、さまざまな種類があり、薬局で購入出来るものもあります。
円形脱毛症に対して使用される抗ヒスタミン薬として診療ガイドラインに記載されている「アゼラスチン」と「エバスチン」は、それぞれ「スカイナーAL」と「エバステル」という商品名で販売されています。これらの医薬品は、一般の人が自らの判断で使用出来る「一般用医薬品(OTC医薬品)」であるため、薬局で購入することが出来ます。しかし、一般用医薬品の中でも安全性に特に注意を要する「第一類」に指定されており、薬局の中でも購入が出来るのは、薬剤師がいる薬局に限られています

ミノキシジル

ミノキシジルが配合された薬として、日本で唯一製造販売が認められているのは、大正製薬の「リアップ」シリーズです。この薬も一般用医薬品(第一類)に指定されているため、薬剤師のいる薬局で購入が出来ます。しかし、リアップシリーズはAGA治療薬として販売されており、添付文書にはAGA以外の脱毛症の人は使用しないようにとの注意書きがあります。薬剤師は、購入者がAGAであることを確認するため、円形脱毛症の人はミノキシジル配合薬は基本的に薬局で購入出来ないと言えます。

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治療薬は通販で購入出来るか

ここがポイント!

  • 第二世代抗ヒスタミン薬とミノキシジルは通販での購入可能
  • ただしミノキシジルは円形脱毛症の治療目的には購入出来ない
  • 国内で認可されていない薬が通販で出回っている場合もあるが、危険なので購入・使用しない

円形脱毛症の薬は、薬局だけでなく通販でも購入出来るのかどうかについて見ていきましょう。

一般用医薬品のインターネット販売

通販で購入することが出来るのは、前の章でお話しした、薬局で市販されている「第二世代抗ヒスタミン薬」と「ミノキシジル」です。平成26年に厚労省が薬事法及び薬剤師法の一部を改正したことで、同年の6月から薬剤師が販売するという条件のもとで、一般用医薬品のインターネット販売が可能となりました。ただし、先ほど説明したような理由により、円形脱毛症の人はミノキシジルを購入することは基本的に出来ません。

第一類医薬品以外の薬の通販

現在、インターネット上ではさまざまな薬が販売されており、その中には医師の診察と処方を必要とする医薬品や、国内で製造販売されていない医薬品もあります。
日本で通販が認められていない薬は、一般の人が自己判断で使用した場合の安全性が確認されておらず、場合によっては予期しない副作用が出てしまう可能性もあります。万が一健康被害を受けたとしても全て自己責任です。円形脱毛症の治療薬に限らず、日本で製造、販売、また医師による診察なしでの処方が認められていない薬を自己判断によりインターネットなどで購入して使用するのは危険なのでやめましょう。

参考


円形脱毛症治療薬の推奨度と作用/副作用一覧表

治療法 推奨度 効果 副作用
ステロイド局所注射(局注) B ・免疫を抑制して、自己免疫応答を弱める作用
・自己免疫応答による炎症の抑制作用
易感染性、骨粗しょう症、糖尿病、消化性潰瘍、血栓症、精神症状、ムーンフェイス、中心性肥満、動脈硬化、高脂血症、高血圧症、むくみなど
局注の場合、注射部位の皮膚萎縮
局所免疫療法 B ・故意にかぶれを起こし、毛根に対する自己免疫応答を弱める作用
ステロイド内服 C1 ステロイド局注同じ
点滴静注ステロイドパルス療法 C1 ステロイド局注同じ
第2世代抗ヒスタミン薬 C1 ・自己免疫応答による炎症の抑制作用 眠気やだるさなどの精神神経症状、口の渇き、吐き気、食欲不振などの消化器症状
セファランチン内服 C1 ・自己免疫応答による炎症の抑制作用 ショックやアナフィラキシー、発疹・むくみなど過敏症、食欲不振などの消化器症状
グリチルリチン・メチオニン・グリチン複合剤(グリチロン) C1 ・自己免疫応答による炎症の抑制作用
・免疫作用を調整作用
血清カリウム値の低下、血圧上昇、腹痛など
ステロイド外用 C1 ステロイド局注同じ
塩化カルプロニウム外用 C1 ・血管拡張による頭皮の血流改善作用
・毛包の活性化作用
発汗、痒み、一過性の発赤など
ミノキシジル外用 C1 ・血管拡張による頭皮の血流改善作用
・髪の毛の成長因子の産生促進作用
頭皮の発赤、かゆみ、かぶれなどの皮膚障害、また頭痛やめまいなどの精神神経症状、胸の痛みや心拍数の上昇などの循環器症状

推奨度分類
A…行うよう強く勧められる
B…行うよう勧められる
C1…行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない
C2…根拠がないので勧められない
D…行わないよう勧められる

脱毛症診断チェック

円形脱毛症の治療薬フロジンとは

ここがポイント!

  • フロジンとは塩化カルプロニウムを有効成分とした外用液
  • 血管を拡げて血流を改善する作用があり、脱毛症の治療に用いられている
  • 円形脱毛症の診療ガイドラインでは、塩化カルプロニウムは「十分な根拠はないが、治療に用いても良い」という評価がされている

フロジン外用液5%は、塩化カルプロニウムを有効成分とする緑色液体のアルコール性外用液をいいます。ここでは、円形脱毛症の治療に用いられている「フロジン」という薬の効果と副作用について紹介します。
フロジンとは

フロジンの効果

塩化カルプロニウムには、局所の血管拡張作用があるので、使用した部位の血管を拡げて頭皮の血流を改善する作用があります。
髪の毛は、頭皮の毛細血管を流れる血液から栄養や酸素を取り入れています。血流が改善されると、髪の毛に十分な栄養や酸素が行き渡ることで成長をサポートすることが出来ます。こうした作用から、フロジンは医療保険が適用される脱毛症の治療薬として以前から用いられています。日本皮膚科学会が策定している「円形脱毛症診療ガイドライン」では、「使用しても良い薬(推奨度C1)」に分類されています。塩化カルプロニウムの発毛・育毛効果には十分な医学的根拠はないとされていますが、これまでの膨大な診療実績を考慮して、「円形脱毛症の単発型および多発型に対して、他の治療と併用する場合には推奨する」と診療ガイドラインに記載されています。。

使用方法

フロジン外用液5%の添付文書には、使用方法について「1日2~3回適量を患部に塗る、あるいは頭部全体にふりかけ、軽くマッサージをする」と記載されています。。量を多く使用すると、誤って眼に入る可能性があり注意が必要です。もし、眼に薬が入ってしまった場合には、直ちに水で洗い流してください。また、薬を使用する前には、必ず添付文書をよく読み、用法用量を守って正しく使用するようにしましょう。

副作用

フロジンは頭皮に直接つける外用薬です。そのため、主な副作用には塗った部分の皮膚が赤くなる、かゆみがでるなどがあります。
お風呂あがりに使用すると、副作用が強くあらわれる傾向があり、副作用があらわれたときは、使用部位を水等で洗い流すよう薬の添付文書に記載されています。また、副作用の症状が現れた際は、直ちに使用を中止し、医療機関を受診しましょう。

参考

フロジン外用液5%|添付文書 (pdf資料)


 円形脱毛症にアンテベートローションは効果的か

ここがポイント!

  • アンテベートローションは、ステロイド剤であるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルを有効成分とした外用液
  • ステロイド薬は円形脱毛症に効果がある

アンテベートローションは、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルを有効成分としたローションタイプの「ステロイド外用薬」です。ここでは、アンテベートローションの効果と副作用について紹介します。

アンテベートローションの効果

ステロイド外用液には、免疫機能を抑える働きがあります。円形脱毛症の原因は、自己免疫応答という免疫異常であると考えられているため、ステロイド薬によって免疫機能を抑えることで症状を和らげる効果が期待されています。
ステロイド外用液は、日本皮膚科学会が策定している円形脱毛症診療ガイドラインにおいて、「使用しても良い薬(推奨度C1)」に分類されています。しかし、ステロイド外用液単独での使用の場合は、全頭型や汎発型で効果が得られないとの研究結果もあり、軽症の円形脱毛症を対象とするか、もしくは他の治療を併用して行うことを条件に、円形脱毛症の治療の最初の治療に用いる薬として推奨されています。

使用方法

アンテベートローションの添付文書には、使用方法につてい「1日1~数回、適量を患部に塗る」と記載されています。ステロイド外用液は、症状の程度によって塗る回数が異なりますので、医師の指示を守って使用するようにしましょう。

副作用

主な副作用に、皮膚が赤くなる、かゆみ、発疹などの皮膚症状があります。また、稀ではありますが重大な副作用として、白内障や眼圧が上がり緑内障の原因となる可能性もあるようです。万が一、眼に薬が入ってしまった場合には、直ちに水で洗い流すようにしましょう。
ステロイド薬は、免疫機能を低下させる強力な薬です。外用薬は、内服薬に比べて副作用は少ないですが、取り扱いには注意が必要です。医師の指示の下、用法容量を守って正しく使用しましょう。

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まとめ

円形脱毛症の薬について詳しく見てきました。
円形脱毛症は原因がまだ完全には解明されていないため、根治する治療法もまだ確立されていません。このような背景により、効果が得られる可能性があるさまざまな治療が行われているため、円形脱毛症の治療に用いられている薬にもさまざまな種類があります。薬によっては、まだ発毛効果の検証が十分でないものも多くあります。
円形脱毛症に対する治療薬として推奨度が最も高いものは免疫や炎症の抑制作用がある「ステロイド薬」の局所注射と、人工的にかぶれを起こす作用のある「SADBE」や「DPCP」です。
次に推奨されるものには「内服、外用、血管からの点滴投与によるステロイド薬」「第二世代抗ヒスタミン」「セファランチン」「グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合剤」「塩化カルプロニウム」「ミノキシジル外用」がありますが、これらの薬は治療効果を検証した研究の信頼性が低いことや、治療効果が副作用を上回ることが明らかでないなどの理由から、「使用しても良いが十分な根拠がない薬」という位置付けとなっています。
以上の治療薬以外にも、「シクロスポリンA」「漢方薬」「精神安定剤」「アンスラリン」が円形脱毛症の治療薬として処方されていることがありますが、診療ガイドラインでは薬の効果の検証が不十分で安全性も確認されていないとして、「推奨出来ない」としています。
円形脱毛症に対する有効性が確認されている薬も、効果だけなく副作用が起こり得ます。副作用と思われる症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。
円形脱毛症治療薬の中には薬局や通販で購入出来るものもあるため、場合によっては自己判断で使用を開始出来ますが、副作用があること、また妊娠中の女性が薬を使用する場合は注意が必要な薬などもあることなどを理解した上で、正しく使用しましょう。

円形脱毛症・前頭脱毛症などの脱毛症でお悩みの方へ

Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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