【多発型(多発性)円形脱毛症とは】単発型との違いから完治の可能性までを解説

円形脱毛症は、症状として円形の脱毛部位が複数現れる場合があり、これは円形脱毛症の多発型(多発性)と言われます。これに対し、円形の脱毛部位が1つの場合には「単発型」と言われます。多発型と単発型は、どちらも「通常型円形脱毛症」に分類されますが、通常型を含む4つの脱毛パターンは、症状の回復率に影響すると考えられており、推奨される治療法も異なっているため、自分がどの脱毛パターンであるか把握しておくことは重要です。
ここでは円形脱毛症の「多発型」に焦点を当てて、完治の可能性や原因、推奨される治療法など、日本皮膚科学会の診療ガイドラインに沿って解説をしていきます。

Ito
伊藤恭太郎 医師監修
日本救急医学会救急科専門医

目次

  1. 01多発型(多発性)脱毛症は「通常型」の1パターン
  2. 02多発型は単発型より完治しづらいのか
  3. 03多発型になりやすい原因はあるのか
  4. 04多発型に推奨される治療法
  5. 05まとめ

多発型(多発性)脱毛症は「通常型」の1パターン

ここがポイント!

  • 円形脱毛症は脱毛パターンの違いにより「通常型」「全頭」「汎発性」「蛇行状」の4つに分類される
  • 「多発型」は「通常型円形脱毛症」の細分化されたパターンであり円形の脱毛部位が複数あるものをいう

まずは、円形脱毛症の4つの分類について確認をしましょう。

円形脱毛症という病気は「脱毛の数」「脱毛の範囲」「脱毛の形態」の違いにより、大きく次の4つに分類されます。
分類 特徴
通常型円形脱毛症 髪の毛が部分的に円形に抜けた状態
・単発型:脱毛部が1つのもの
多発型:脱毛部が複数あるもの
全頭脱毛症 脱毛部が頭全体に広がった状態
汎発性脱毛症 脱毛部が頭だけでなく全身に広がった状態
蛇行状脱毛症 髪の生え際が帯状に抜けた状態
円形脱毛症の4つの分類
上記のように、「多発型」は「通常型円形脱毛症」の1つです。「通常型円形脱毛症」は、円形の脱毛部位の数の違いで「単発型」と「多発型」に細分化されており、脱毛が1カ所だけの場合には「単発型」、複数みられる場合には「多発型」に分類されるのです。

こちらは通常型円形脱毛症(多発型)の実際の写真です。
通常型円形脱毛症(多発型)写真


参考


脱毛症診断チェック

多発型は単発型より完治しづらいのか

ここがポイント!

  • 完治のしやすさは、脱毛部位の数ではなく脱毛部位の面積や経過時間などに影響される
  • そのため、多発型は単発型に比べて完治しづらいとは言えない

円形脱毛症の回復率は、「単発型」と「多発型」の違いによって差が出るわけではなく、脱毛範囲の広さや、発症からの経過時間などに影響されると考えられています。したがって、多発型が単発型に比べて完治しづらいとは言えず、円形脱毛症の診療ガイドラインには、円形脱毛症の誘因として知られる「アトピー素因」や「自己免疫疾患」などを持たない人の場合、発症して1年以内の「単発型」もしくは脱毛部位が少数の「多発型」であれば、80%が1年以内に完治したという国内の調査結果報告が引用されています。

脱毛範囲の広さによる差に関しては、一般的に、単発型であっても脱毛面積が広い場合には回復しにくく、一方で多発型であっても少数で脱毛範囲の総面積が狭い場合には、比較的回復しやすいと知られています。ただし、「蛇行状脱毛症」は脱毛範囲が狭い場合でも回復率が低いことで知られています。

また、発症からの経過時間による差に関しては、上記のように発症して1年以内では80%と高い割合で完治が見られたのに対し、通常型円形脱毛症であっても発症してからの経過が3年程度と長い例では完治の可能性が低かったという結果が同報告内で示されれています。

補足ですが、通常型円形脱毛症は、他の3つのパターンよりも回復率が比較的高いとされています。また、アトピー素因や自己免疫疾患を持っている人は、完治の可能性が低いと知られています。

円形脱毛症とアトピー素因や自己免疫疾患がどのように関連しているのかについて詳しくは「【円形脱毛症の主な原因について】免疫の病気からストレスの関与などまで、原因とその発症メカニズムを正しく理解しよう」をご参照下さい。

円形脱毛症は完治するのか、また再発の可能性もあるのかについてもっと詳しく知りたい人は「【円形脱毛症の完治と再発】完治の過程や再発の原因などについて診療ガイドラインを基に正しく解説」も併せてご参照下さい。

参考


多発型になりやすい原因はあるのか

ここがポイント!

  • 円形脱毛症の原因は完全に解明されていない
  • 多発型になりやすい原因も明らかになっていない

円形脱毛症の原因について、現在は免疫の異常である「自己免疫応答」が最も有力であると考えられていますが、まだ完全には解明されていません。そのため、円形脱毛症がどのような原因で4つの分類に分化するのかも明らかになっておらず、多発型になりやすい原因があるかどうかは「まだ分からない」と言えます。

円形脱毛症の原因について詳しくは「【円形脱毛症の主な原因について】免疫の病気からストレスの関与などまで、原因とその発症メカニズムを正しく理解しよう」をご参照ください。

参考


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多発型に推奨される治療法

ここがポイント!

  • 症状が固定しており脱毛範囲が狭い多発型の成人に対しては「ステロイド局所注射」
  • 年齢に関係なく脱毛範囲が広い多発型の人に対しては「局所免疫療法」
  • 十分な根拠はないが行っても良いとされる治療法は複数あり、一部は「併用療法」として推奨されている

ここでは、「多発型」円形脱毛症に対して推奨される治療法と、行っても良いとされている治療法を簡単に紹介していきます。

円形脱毛症は原因がまだ完全には解明されていないため、確実な治療法も確立されていません。そのため、症状改善の可能性が考えられるさまざまな治療が、各医療機関で実施されています。こうした背景に基づき円形脱毛症の診療ガイドラインでは、医学的根拠に基づき、かつ治療内容や治療の実績などを考慮しながら、いくつかの治療法に対して推奨度を決めています。円形脱毛症の場合、推奨度が最高の「A:行うよう強く推奨される」の評価を得ている治療法は今のところなく、最も推奨度の高い治療法は「B:行うよう推奨される」となっています。
それでは、具体的な治療法を見ていってみましょう。

多発型に対して推奨される治療法

円形脱毛症の治療法の中で、行うことが推奨されている「B」の評価を得ているものは「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」の2種類です。どちらの治療法も「多発型」への実施が推奨されていますが、次の表のように、脱毛範囲の広さによって推奨される治療法が異なっています。

ステロイド局所注射 症状が固定している脱毛範囲が25%未満の成人(16歳以上)
局所免疫療法 年齢に関係なく脱毛範囲が25%以上の人

多発型に対して行ってもよいとされる治療法

次に、「多発型」に対して推奨度「C1:医学的に十分な根拠はないけれども治療として行っても良い」に分類される治療法について見ていきましょう。

ステロイド療法

免疫応答や炎症を抑える作用を持つステロイド薬を用いた「ステロイド療法」は、多発型への使用が推奨されていますが、「多発型」の中でも次の表のように、投与方法によって適用範囲が異なっています。

ステロイド療法の多発型への適用範囲
ステロイド外用 年齢や脱毛範囲に関係なく全ての人
ステロイド内服 発症後6カ月以内の急速に進行する脱毛範囲25%以上の人
点滴静注ステロイドパルス療法 脱毛が急速に進行している脱毛範囲が25%以上の成人(16歳以上)

併用療法として推奨されている治療法

「多発型」に対して、その治療法を単独で行うことは推奨されていませんが、他の治療法と併用して行う(併用療法)場合であれば推奨されるという治療法は、次のように複数あります。

・セファラチン内服
・グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合剤
・塩化カルプロニウム外用
・ミノキシジル外用
・冷却療法
・直線偏光近赤外線照射療法(スーパーライザー療法)
・第2世代ヒスタミン内服

このうち、最後に挙げた「第2世代ヒスタミン内服」は、アトピー素因がある人のみに併用療法が推奨されています。他は、全ての「多発型」に対して併用療法として推奨されています

円形脱毛症の治療法についてもっと詳しく知りたい人は「【円形脱毛症の治療について】ステロイド注射などさまざまな治療法~治るまでの期間や治療費などまで」を併せてご参照下さい。

直線偏光近赤外線照射療法(スーパーライザー療法)は、一般的な病院の皮膚科ではほとんど行われていないでしょう。冷却療法や塩化カルプロニウム外用などは広く行われています。

参考


まとめ

円形脱毛症は脱毛の数、範囲、形態の違いで大きく4つに分類されており、そのうちの1つである「通常型円形脱毛症」は、円形の脱毛部位が1カ所の場合「単発型」、複数の場合「多発型」と言われます。
単発型と多発型の違いで完治の可能性が変わってくることはなく、回復率は基本的に発症してからの年数、脱毛範囲の広さ、脱毛の分類に影響を受けます。そのため、多発型であっても脱毛部位の数が少なかったり、総面積が狭かったりする場合には回復率は高いとされています。
多発型の円形脱毛症に対して推奨されている治療法は「ステロイド局所注射」と「局所免疫療法」です。また、他の治療と併用して行う場合に推奨される治療法もいくつかあります。治療の効果は人によって違うため、医師と相談しながら自分に最も適した治療法を行っていくことが重要です。

円形脱毛症・前頭脱毛症などの脱毛症でお悩みの方へ

Ito
伊藤恭太郎 医師
日本救急医学会救急科専門医

プロフィール

東北大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院および聖路加国際病院の救命救急センターにて、救急集中治療医として診療に従事。聖路加国際病院では、救急部チーフレジデントを務め、救急科専門医資格を取得。一般内科外来や在宅診療、重症患者への高度救命処置まで、幅広い分野の診療を経験。

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