【AGAと遺伝】遺伝の確率や関連遺伝子および遺伝以外の要因について丁寧に解説します

祖父や父が薄毛なので、自分もAGA(男性型脱毛症)を発症するかもしれないと不安を感じている方もいるのではないでしょうか。AGAを発症する人の遺伝子には、ある程度共通した特徴があることが明らかになっています。もちろん、遺伝的特徴があるからといって必ずしも発症するわけではありません。しかし、自分がAGAに関連した遺伝子を持っているか気になる人も多いでしょう。現在、病院での検査や市販されているキットを使えば、AGAに関連した遺伝的特徴を調べることができます。ここでは、AGAに関連する遺伝子や遺伝する確率に加えて、検査キットの種類や費用、信憑性なども合わせて説明していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01AGAの原因は男性ホルモン「DHT」
  2. 02AGA発症に関連した遺伝子
  3. 03AGAは母方の遺伝が強いというのは本当か
  4. 04AGAが遺伝する確率
  5. 05AGA発症につながる他の要因はあるのか
  6. 06AGAの遺伝子検査
  7. 07まとめ
この記事のチェックポイント

AGAの原因は男性ホルモン「DHT」

ここがポイント!

  • AGA発症の原因は「DHT」という男性ホルモンである
  • 「DHT」が前頭部や頭頂部の毛包に作用することで髪の毛の成長を抑制し薄毛になる

AGAと遺伝の関係について見ていく前に、まずはAGAの原因について簡単に説明していきます。

AGAを発症する主な原因は「DHT」という男性ホルモンです。私たちの体内にはテストステロンという男性ホルモンがあります。テストステロンが、髪の毛の根元にある「毛乳頭(もうにゅうとう)細胞」の中に入ると、細胞内にある「2型5α-リダクターゼ」という酵素が働いて「DHT(ジヒドロテストステロン)」という、男性ホルモンとしてより強い作用をもつ物質に変換されます。この「DHT」が、同じく毛乳頭細胞内にある「アンドロゲン受容体(AR)」に結びつくと、前頭部や頭頂部での毛の成長を抑制します。この働きにより、髪の毛の成長期が短くなり、脱毛が進行します。

AGAの原因について詳しくは「【AGAの原因と対策】原因物質「DHT」が抜け毛スイッチを入れる仕組みから遺伝やストレスの影響・女性のAGAまで徹底解説」をご参照下さい。

参考


脱毛症診断チェック

AGA発症に関連した遺伝子

ここがポイント!

  • AGAを発症する人の遺伝子には、ある程度共通した特徴が見られる
  • 以前指摘されていた、アンドロゲン受容体(AR)の遺伝子多型の関与は否定的

AGAの発症には、遺伝的要因が関与していることが明かになっています。
遺伝子の99.9%はどのような人でも同じ構造しています。残りの0.1%の違いによって、肌や目の色、病気のかかりやすさ、薬の効きやすさなどの「個人差」が生じます。このわずかな違いを「SNP(スニップ)」と言います。AGAを発症した人に、いくつかの共通したSNPがあることが分かっています。

AGAの発症に関連した遺伝子は「X染色体」と「20番染色体」にあることが以前より分かっていました。以下の報告により、新たなAGA発症に関連した遺伝的特徴が分かりました。

<2012年カナダからの報告>
約1万3,000人の欧州系のAGAを発症した男性を対象として、遺伝的特徴を調べた

さらに6つのAGAが関連する遺伝的特徴(SNP)が示された

この報告では、上記を合わせて8つのAGA発症に関連したSNPが示されています
(1番染色体上のTARDBP、2番染色体上のHDAC4、7番染色体上のHDAC9、7番染色体上のAUTS2、17番染色体上の17q21.31、18番染色体SETBP1、20番染色体上のPAX1/FOXA2、X染色体上のAR/EDAR2)。
しかし、その後さらに新たな遺伝的特徴の報告も出てきており、今後もさらなる検討が必要な状態であると考えます

※以前に指摘されていた、アンドロゲン受容体(AR)の遺伝子多型(いわゆる「CAGリピート」と「GGCリピート」)の関与は否定的とする報告が多く、現状では発症要因としては否定的と考えます

なお、現在市販されている遺伝子検索キットは、医学的根拠が明確ではない上記のアンドロゲン受容体(AR)の遺伝子多型を調べるものが多いと考えられます。一方、株式会社DeNAライフサイエンスが提供しているmycodeでは20番染色体上のPAX1/FOXA2の変異を調べていると考えられます。よって、市販されている検査キットでは、いずれも全ての疾患関連遺伝子を検索できない可能性が高いです。詳細な検査を希望する場合は、かかりつけの主治医に相談するのが良いでしょう。


SNPについて詳しくは「AGAの原因と対策】原因物質「DHT」が抜け毛スイッチを入れる仕組みから遺伝やストレスの影響・女性のAGAまで徹底解説」をご参照下さい。

参考


参考


AGAは母方の遺伝が強いというのは本当か

ここがポイント!

  • 人間の性別はX染色体とY染色体の組み合わせで決まる
  • 男性の場合、母方からのX染色体を受け継ぐ
  • AGA発症に関連している遺伝子の1つがX染色体上にあるため、母方からの遺伝が強いと言われている
  • しかし、AGAの疾患関連遺伝子はX染色体以外にもあるため、母方からのみ遺伝するとは限らない

先ほどお示ししたように、AGAの発症に関連している遺伝子の1つが「X染色体」上にあります。私たちの性別は「X染色体」と「Y染色体」という2つの性染色体の組み合わせで決定されます。卵子は2つのX染色体でなり、精子はX染色体とY染色体からなります。卵子とX染色体を持った精子の組み合わせでは、「XX」となり女の子が生まれます。一方、卵子とY染色体を持った精子の組み合わせでは、「XY」となり男の子が生まれます。そのため、男性は母方からのみ「X染色体」をもらうことになり、「X染色体」上にあるAGAに関連する遺伝的は母方から受け取ることになります。このことが、母方からの遺伝が強いと言われる理由であると考えられます。しかし、AGAの発症に関与する遺伝子はX染色体に限らず、他の染色体にも存在しているので母方の遺伝のみで決まるわけではありません

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AGAが遺伝する確率

ここがポイント!

  • AGAの発症には遺伝的要因が関与していることは明らか
  • しかし、遺伝的要因のみで発症するわけではない

AGA発症に関する双子の研究は、これまで多く施行されています。
一卵性双生児(1つの受精卵から生まれた、同じ遺伝子を持つ双子)でのAGA発症の一致率は、92.3〜100%であったという報告や、二卵性双生児(別々の受精卵から生まれた、別の遺伝子を持つ双子)でのAGA発症の一致率は、50〜68.7%であったという報告があります。このことからも、AGA発症には遺伝の影響が大きいとは言えますが、それだけで発症するわけではありません。

参考


AGA発症につながる他の要因はあるのか

ここがポイント!

  • AGAの主な原因は男性ホルモンと、遺伝的要因
  • 生活習慣の乱れやストレスがAGAの発症に関与している可能性はあるが、その関連性について医学的に証明されていない

AGAの発症要因は、男性ホルモンと遺伝の影響であると考えられています。そのため、生活習慣の乱れやストレスがAGAの発症に関与していることについての医学的根拠はありません。しかし、睡眠不足や偏った食事などで生活習慣が乱れていると、髪の毛や頭皮の状態に悪影響を与える可能性はあります。

円形脱毛症について詳しくは「【円形脱毛症(AA)とは】原因・4つの症状・治療など正しく知ろう~ストレスとの関連性やステロイド治療薬、シャンプーのポイント、隠す手段などまで」をご参照下さい。

参考


脱毛症診断チェック

AGAの遺伝子検査

ここがポイント!

  • AGAの遺伝子検査では、AGAのなりやすさを調べている
  • 病院の皮膚科や専門のクリニックで受けることができる
  • 市販されている遺伝子検査キットを利用して自宅でも行うこともできる

AGAの遺伝子検査は、病院の皮膚科やAGA専門のクリニックなどで受けることができます。また、市販の遺伝子検査キットも販売されているため、自宅で検査をすることも可能です。ここでは、AGAの遺伝子検査について説明していきます。

何を調べているのか

AGAの人には、いくつかの遺伝子に共通した部分があることが分かっています。AGAの遺伝子検査では、この共通してみられる特徴の有無を調べ、AGAの発症リスクを調べています。

信憑性はあるのか

AGAの発症に関連した遺伝子は、先ほど示したように複数のSNPが報告されており、今後さらに新たな遺伝的特徴が見つかる可能性もあります。また、以前はAGA発症との関連が指摘されていたもの(ARの遺伝子多型)が、新たな研究によって否定されることもあります。市販されている遺伝子検査キットは、現状では関与が否定されているARの遺伝子多型を調べるものであったり、複数指摘されているSNPの1つを調べるものと考えられます。よって、信憑性については疑問が残ります。詳細な検査を希望される場合は、かかりつけの主治医に相談することをおすすめします。

病院で行われる遺伝子検査とその費用

病院でAGAの遺伝子検査を受けられる場合があります。AGAは医療保険が適用にならない疾患のため、検査や治療も「自由診療」で行われます。医療機関によって自由に料金が設定されるため、AGAの遺伝子検査には料金が定められていませんが、相場としては2万円程度と考えられます。検査の料金に加えて、どのような遺伝子が調べられるかなど主治医としっかり相談することをおすすめします。

AGAの検査について詳しくは「【AGAの検査を知ろう】病院(皮膚科・AGA専門科)で行われる検査方法から自宅で出来る遺伝子検査まで、方法や特徴を解説」をご参照下さい。

市販の遺伝子検査キットとその費用

AGAの遺伝子検査は病院に行かなくても、市販の遺伝子検査キットを用いて自宅で簡単に受けられます。
AGAの遺伝子検査キットは複数の会社からインターネットを通して販売されています。費用の相場は1万円〜1万3,000円程度ですが、サービスを提供している会社によって検査方法や調べる内容、料金が異なります。また、これまで示しているように検査の信憑性については、医学的根拠が乏しい場合もあることを知っておきましょう

遺伝子検査キットの検査方法や費用について詳しくは「【AGAの検査を知ろう】病院(皮膚科・AGA専門科)で行われる検査方法から自宅で出来る遺伝子検査まで、方法や特徴を解説」をご参照下さい。

まとめ

AGAの人の遺伝子には、ある程度共通した特徴があることが明らかになっています。これはAGAのなりやすさを示すものであり、遺伝的特徴があるからといって必ずしもAGAを発症するわけではありません。生活習慣やストレスがAGA発症に結びつくとは医学的には証明されていませんが、事前にAGAのなりやすさを知っておくことで髪の毛や頭皮の健康を目的とした行動をとることができます。しかし、AGA発症に関連した遺伝子については、まだ全てが明らかになっていないこと、検査(特に市販の検査キット)の信憑性については、医学的根拠が乏しい可能性があることを知っておきましょう。また、医療機関やサービスを提供している会社によって検査方法や調べる遺伝子、料金などが異なります。遺伝子検査を希望する場合は、このことを理解した上で主治医と相談してみるのはどうでしょうか。

円形脱毛症・前頭脱毛症などの脱毛症でお悩みの方へ

Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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