抜け毛の原因は男性と女性で違うのか|どこまで増えたら異常なのかを解説します

髪の毛は1日に約100本抜けると言われており、ある程度の抜け毛は問題はありません。しかし、AGAや円形脱毛症などの病気を発症した場合や、内分泌機能の異常や栄養状態によって抜け毛が急激に増える場合には、治療が必要になることがあります。また、
抜け毛の原因は、年齢や性別によって多少異なります。ここでは、主に年齢や性別ごとに考えられる抜け毛の原因について説明していきます。

Okada
岡田 里佳 医師監修
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

目次

  1. 01主な抜け毛の原因
  2. 02原因不明の抜け毛
  3. 03成人男性で考えられる抜け毛の原因(20代以降)
  4. 04脱毛症以外の病気が原因で抜け毛が増えることも
  5. 05成人女性で考えられる抜け毛の原因(20代以降)
  6. 06子どもで考えられる抜け毛の原因(10代まで)
  7. 07抜け毛の原因となる食べ物はあるのか
  8. 08まとめ

主な抜け毛の原因

ここがポイント!

  • 主な抜け毛の原因は、AGAと円形脱毛症
  • 薬剤により抜け毛が増え、脱毛症を発症することがある(薬剤性脱毛症)

抜け毛が異常に増えてしまう状態を脱毛症と言い、原因として多いのがAGA(男性型脱毛症)や円形脱毛症です。その他に、抗がん剤など様々な薬剤による脱毛症(薬剤性脱毛症)もあります。ここでは、抜け毛の原因として多いAGAと円形脱毛症、薬剤性脱毛症について説明していきます。

AGA

AGAは30代男性の約5人に1人が発症する脱毛症であり、思春期以降の男性に多く認められる抜け毛の原因です。AGAは、「DHT(ジヒドロテストステロン)」という男性ホルモンが前頭部や頭頂部の毛包に作用して、脱毛を引き起こすことが発症要因とされています。そのため、治療にはDHTの産生を抑制する飲み薬などが使われます。早期発見、早期治療が脱毛の抑制や発毛に重要とされており、若年男性で脱毛が見られた場合は、AGAを発症している可能性を考慮し、早めに医療機関へ相談する必要があります。
また、AGAは女性でも発症する場合があり「FAGA」と呼ばれています。AGAと異なり、FAGAの原因は医学的に明らかになっていません。

AGAについて詳しくは「【AGA(男性型脱毛症)とは】症状・原因・予防法〜病院・AGA専門外来での検査・診断・治療そして気になる費用までを解説」記事、FAGAについて詳しくは「【女性に多い「びまん性脱毛症」の治療と対策】主な3つの原因から病院の治療薬、シャンプーなどの日常対策まで解説」をご参照下さい。

円形脱毛症


円形の脱毛斑(コインのように丸く毛が抜けた部分)が急速に出現した場合、円形脱毛症を発症している可能性があります。円形脱毛症の発症要因は完全に解明されていませんが、現在最も有力であるとされている説は「自己免疫応答」という免疫の異常です。自己免疫応答とは、ストレスなどが引き金となり免疫のバランスが崩れる事で、本来細菌やウイルスなどに対して働く体内の免疫機能が、誤って自分の細胞に働き攻撃してしまう状態を言います。自己免疫応答によって髪の毛を作る細胞が攻撃されると、髪の毛が抜け落ちてしまい円形脱毛症を発症すると考えられているのです。また、アトピー性皮膚炎などの「アトピー素因」も発症に関与していると考えられています。

円形脱毛症について詳しくは「【円形脱毛症(AA)とは】原因・4つの症状・治療など正しく知ろう~ストレスとの関連性やステロイド治療薬、シャンプーのポイント、隠す手段などまで」をご参照下さい。

薬剤による脱毛

投与された薬剤によって脱毛が生じることを、薬剤性脱毛症と言います。脱毛症を引き起こす可能性のある薬剤は多く、抜け毛の原因が薬剤であることを見逃さ れている症例もあると考えられます。まずは脱毛の原因が薬剤かどうか、疑うことが重要です。

薬剤による脱毛症には、主に下記の2つの機序が考えられます。
1)抗がん剤や放射線治療による脱毛(成長期脱毛)
2)抗がん剤以外の薬剤による脱毛(休止期脱毛)


1)成長期脱毛
抗がん剤投与や放射線治療を行った数週間後に、頭部全体に抜け毛が生じることがあります。治療により成長期の毛包細胞の増殖が抑制されることで生じ、成長期脱毛と言われます。しかし、治療による抜け毛は一時的なものであり、治療が終了すれば数カ月で髪の毛は再び生え始めます

2)休止期脱毛
薬剤によって成長期の毛の発育が抑制され、休止期の毛が増加することで脱毛症を引き起こします。まれではありますが、ほぼ全ての薬剤が原因となります。薬剤投与開始から発症までは、2〜4ヶ月程度かかると言われています。スタチン系の高脂血症治療薬やパーキンソン病治療薬が原因として多いです。薬剤中止後も、脱毛は数ヶ月継続します。脱毛の原因として薬剤が考えられる時は、投薬の中止や変更などをかかりつけの主治医と相談しましょう。

参考


脱毛症診断チェック

原因不明の抜け毛

これまで示したように抜け毛の原因は性別・年齢・経過などによって異なり、抜け毛の対処方法も原因によって異なります。しかし、AGAや円形脱毛症、薬剤性脱毛症以外にも原因は多岐に渡り、時に原因が特定できない場合もあります。
採血検査などの精査を行うことで、自分では気がつかないような脱毛の原因となっている病気が見つかる可能性もあります。大切なことは、一人で悩まず皮膚科や脱毛症専門のクリニックへ相談することです。

成人男性で考えられる抜け毛の原因(20代以降)

ここがポイント!

  • AGAは思春期以降に発症する脱毛症であり、成人男性の抜け毛の主な原因である
  • 円形脱毛症は年齢や性別に関係なく発症する脱毛症のため、成人男性の抜け毛の原因になる

成人男性に「抜け毛」の症状が現れた場合に考えられる原因を見ていきましょう。

AGA(男性型脱毛症)

成人男性の脱毛の主な原因として、初めの章で紹介した「AGA」があります。
AGAは思春期以降に発症する脱毛症であり、日本における男性の発症率は「20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降は40%以上」と年齢と共に高くなることが分かっています。そのため成人男性であれば、いつ誰が発症してもおかしくはない脱毛症です。

円形脱毛症

円形脱毛症の原因は完全に解明されておらず、年齢や性別に関係なく誰でも発症する可能性がある脱毛症です。そのため、成人男性の脱毛の原因が円形脱毛症である可能性は十分にあります。症状は男性も女性も同じで、通常型であれば一部分が円形に脱毛します。

参考


脱毛症診断チェック

脱毛症以外の病気が原因で抜け毛が増えることも

ここがポイント!

  • 内分泌の異常,自己免疫疾患、栄養障害、皮膚炎など皮膚の病気などにより脱毛症以外の病気が原因で抜け毛が増える場合もある
  • 病気とは異なり、毛周期の中の休止期にあたる毛包の割合が増えてしまうことにより生じる脱毛

脱毛の主な原因は、AGA(男性型脱毛症)や円形脱毛症などの脱毛症です。しかし、脱毛はこれら以外の病気が原因で生じているケースもあり、その場合は、脱毛を引き起こしている病気の治療が必要になります。ここでは、AGAや円形脱毛症以外に脱毛を引き起こす可能性がある病気を紹介します。

内分泌異常による脱毛

甲状腺ホルモンの分泌が過剰になったり、減少したりする甲状腺機能の異常によって脱毛が生じる場合があります。主な病気には、バセドウ病や橋本病などがあります。円形脱毛症の診療ガイドラインでは、円形脱毛症の人の約8%が甲状腺の病気を持っていると記載されており、内分泌異常が少なからず脱毛の原因になっていることが分かります。

膠原病

膠原病とは、細菌やウイルスと戦うべき免疫が、自分自身の正常な細胞や組織に対しても攻撃を加えてしまい、さまざまな臓器障害が生じる病気です。攻撃対象は、全身の血管や皮膚、筋肉、関節などであり、炎症が起きる場所によっていくつかの病気に分けられています。攻撃対象に髪の毛を作る細胞や頭皮などが含まれると、炎症によって脱毛が増えたり、髪の毛の成長に影響を与えてしまったりする可能性があるのです。

栄養障害

髪の毛の成長と健康には、十分な栄養が必要となります。過度なダイエットや拒食症などにより、栄養が不足すると髪の毛を作る細胞が栄養不足となり、髪の毛の成長に影響を与える可能性があります。また、偏食などによる栄養素の偏りも髪の毛の健康や成長には、悪い影響を与えます。亜鉛が不足する亜鉛欠乏症には、脱毛症状が現れることも明らかになっています。

上記のように、脱毛はさまざまな病気が原因で生じる可能性があり、その原因によって対処法が異なります。脱毛症以外の病気が原因の場合には、元の病気の治療をしないと、脱毛症状を改善することはありません。そのためには、医療機関を受診し脱毛の原因を特定する必要があります。脱毛症状が気になる方は、医療機関を受診して医師に相談することをおすすめします。また、これらの病気で通院されている方は、かかりつけ医に相談してみましょう。

参考

慶応義塾大学病院 膠原病
「統合医療」情報発信サイト|亜鉛
日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン2010(pdf資料)

成人女性で考えられる抜け毛の原因(20代以降)

ここがポイント!

  • AGAは女性でも発症する場合があり、成人女性の抜け毛の原因になる
  • 円形脱毛症は年齢や性別に関係なく発症するため、成人女性の抜け毛の原因になる
  • 女性の場合、分娩後に休止期脱毛症が生じる場合がある

成人女性に「抜け毛」の症状が現れた場合に考えられる原因を見てきましょう。

AGA(FAGA)

AGAは「男性型脱毛症」という病名ですが、女性でも発症する場合があり「FAGA(女性男性型脱毛症)」とも呼ばれています。男性のAGAは「男性ホルモン」が関与していることが明かになっていますが、女性のAGAの原因は完全には明らかになっていません。そのため、治療においては男性ホルモンの働きに作用する内服薬の効果は認められていません。

円形脱毛症

前の章でも紹介しましたが、円形脱毛症の原因は完全に解明されておらず年齢や性別に関係なく発症します。そのため、成人女性で抜け毛症状が現れた場合には「円形脱毛症」の可能性があります。症状は男性と同じで、通常型であれば一部分が円形に脱毛します。

分娩後の抜け毛

出産後に頭部全体がびまん性に脱毛することを、「分娩後脱毛症」と言います。妊娠後期にエストロゲンが毛包に作用し、休止期に入ることを遅延させ、本来は休止期に抜けるはずの毛が残ってしまいます。そして、分娩後にエストロゲンの低下とともに、それらの毛髪が同時に休止期に入るため、通常より抜け毛が増加します。分娩後の抜け毛の増加は、可逆性の休止期脱毛であり、治療を必要としません

その他

男性と同じくAGAや円形脱毛症以外に、栄養障害や内分泌の障害によって脱毛が生じる場合があります。

女性の抜け毛について詳しくは「【女性に多い「びまん性脱毛症」の治療と対策】主な3つの原因から病院の治療薬、シャンプーなどの日常対策まで解説」をご参照下さい。

参考


脱毛症診断チェック

子どもで考えられる抜け毛の原因(10代まで)

ここがポイント!

  • 円形脱毛症は年齢や性別に関係なく発症するため、子どもの抜け毛の原因になる
  • 子どもの場合、自分で髪の毛を抜いてしまう「抜毛症」、アトピー性皮膚炎に伴う脱毛なども考えられる

円形脱毛症

円形脱毛症は、性別や年齢に関係なく誰でも発症する可能性がある脱毛症であり、子どもでも発症する可能性があります。また、子どもの円形脱毛症は、予後が不良と言われている「蛇行(だこう)状脱毛症(髪の生え際が帯状に抜ける脱毛症)」という脱毛パターンを発症する確率が高いとの報告があります。また、成人では 推奨される「ステロイド全身療法」と「PUVA 療法」は、原則的に小児には行わないなど、成人とは予後や治療方法が異なる部分があります。そして、子ども自身が自分の病気を理解出来るよう、両親や教員など周囲の大人がサポートしていくことが必要とされています。

子どもの円形脱毛症について詳しくは「【子どもが円形脱毛症になったら】病院は小児科と皮膚科のどちらへ連れていくべきか~特徴や治療法、親が気をつけるべきポイントなど」をご参照下さい。

抜毛症

子どもに多い脱毛症には、抑えきれない衝動で自らの手で毛髪を引き抜いてしまい脱毛が生じる「トリコチロマニア(抜毛症)」があります。学童期に好発する疾患であり、学校や家庭環境が影響している可能性もあり、心理面での加療を要する場合があります。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の湿疹が頭皮に生じた場合には、脱毛症状が現れる場合があります。また、アトピー性皮膚炎など「アトピー素因」を持つの児は、円形脱毛症を発症しやすいことも明らかになっています。

その他

成人と同じく、内分泌・栄養などの異常や休止期脱毛症が原因になる場合があります。

コメント円形脱毛症の発症には、遺伝的要因と環境因子が関与すると言われており、子供の円形脱毛症は、遺伝的要因の影響が大人に比べて強いとも言われています。

参考


抜け毛の原因となる食べ物はあるのか

抜け毛を防ぐことが医学的に証明されている食べ物はありません。しかし、髪の毛や頭皮の健康をサポートするという点で、タンパク質、ビタミンB群、亜鉛などの栄養素が重要だとされています。
これらの栄養素について詳しくは「【AGAの予防と対策】食事やシャンプーなどの日常生活で出来る対策から予防薬の情報までを解説」をご参照下さい。

脱毛症診断チェック

貧血が原因で抜け毛は増えるのか

ここがポイント!

  • 貧血と抜け毛の関連性に医学的根拠はない

貧血とは、血液中の赤血球や血色素(ヘモグロビン)が正常よりも少ないことをいいます。ヘモグロビンは酸素を全身に運搬するという重要な役割を担っています。体内に含まれる鉄分が減少してしまうと、ヘモグロビンの量も減り酸素を運搬する能力が低下してしまいます。このように、鉄が欠乏することにより発症する貧血を「鉄欠乏性貧血」と言います。
主な脱毛症の原因である「AGA」や「円形脱毛症」の診療ガイドラインには、脱毛と貧血の関連性についての記載はありません。そのため、貧血が直接的に脱毛の原因となる医学的根拠は乏しいです。
しかし、貧血によって酸素を運搬する能力が低下することで、髪の毛に十分な酸素が行き渡らず髪の毛の成長に影響を与えてしまう可能性があります。
また、貧血は脱毛以外に、めまいやたちくらみなど身体の不調を引き起こします。

貧血にならないためには、食事から必要な栄養素を取り入れることが重要です。
貧血に効果があるとされる栄養素は、「鉄分」と、ヘモグロビンなどの材料になる「たんぱく質」、鉄の吸収を高める「ビタミンC」です。さらに赤血球が作られるときには、「葉酸」や「ビタミンB12」なども必要になります。動物性食品・植物性食品をバランス良く組み合わせて食べることがポイントになります。
下の表に、これらの栄養素が多く含まれている食べ物を紹介しています。

<貧血に効果があるとされる栄養素>
成分 豊富に含まれている食品
鉄分・タンパク質 牛肉やレバー・カツオなどの赤身の魚・あさりなど
ビタミンC 緑黄色野菜・果物など
葉酸 ホウレンソウ・アスパラガス・ブロッコリー・納豆など
ビタミンB12 レバー・魚介類・チーズなど

貧血の予防 e-ヘルスネット

まとめ

抜け毛には様々な原因があります。思春期以降の男性に好発する脱毛症である「AGA」は、その原因が男性ホルモンであることが明かになっています。AGAは男性だけではなく女性でも発症するとされており、成人男女の抜け毛の重要な原因であると考えられます。また、「円形脱毛症」は年齢や性別に関係なく発症するため、子どもでも発症する場合があります。子どもに多い脱毛症には、自分で髪の毛を抜いてしまう「抜毛症」やアトピー性皮膚炎に伴う脱毛症などもあります。また、内分泌機能や栄養などの異常により抜け毛が増加してしまう場合もあります。
このように抜け毛の原因は様々であり、原因が不明なこともあります。抜け毛が気になる方は、まずは医療機関を受診して、主治医と相談し原因を特定してみてはいかがでしょうか。

円形脱毛症・前頭脱毛症などの脱毛症でお悩みの方へ

Okada
岡田 里佳 医師
TMクリニック院長、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、日本内科学会認定 認定内科医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医

プロフィール

2008年名古屋市立大学医学部卒業。内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を取得。2017年11月、誰にでも最適な医療を提供するためTMクリニック 皮フ科を開設。

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